青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

卯月・更地

2024年12月13日 17時00分00秒 | カレンダー

(桜は、いつまでも待っている@旧名鉄谷汲線・更地駅跡)

4月。2024年の桜は、樽見鉄道を中心にした根尾谷の桜を愛でに行きました。岐阜県美濃地方の北部、根尾川の周辺は「根尾の薄墨桜」で有名な桜の名所。樽見鉄道では、谷汲口駅の桜が有名ですけど、そこにお邪魔する前に立ち寄ったのがこの駅の桜。名鉄谷汲線・更地駅跡。平成中期に全廃された「名鉄600V区間」のうち、最北の路線であった名鉄谷汲線は、谷汲山華厳寺へ向かう参詣鉄道として、廃線まで戦前生まれの旧型ツリカケ電車がのんびりと走っていた路線です。谷汲線が現役だった頃は、春になるとこの一本桜とオールドタイマーの赤い電車の組み合わせを求めて、多くの鉄道ファンがこの駅を訪れたそうです。この駅の春の情景を旧型電車と収めた写真の情景が素晴らしくて、いつか訪れたいと思っていたんですけどね。谷汲線の廃止って2001年(平成13年)9月のことなので、それこそ笠松競馬に行くついでにでも岐阜で一泊して訪れることは出来ていたのではないか。そう思うと、戻らない時計の針を無理矢理でも戻したくなる。

春は更地の桜、夏は根尾川に作られる赤石の簗(やな)、秋は谷汲山の紅葉、そして冬は根尾谷を白く染める雪景色。
四季折々を走る谷汲線の鉄路の風景を思い浮かべながら、今なお残されたのっぺらぼうのキロポストに語り掛ける、更地の春の朝です。

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弥生・養老渓谷

2024年12月11日 17時00分00秒 | カレンダー

(石神暮色@小湊鐵道・上総大久保~養老渓谷間)

弥生三月、小湊鐵道。春になるとアクアラインを渡って、束の間の里山風景に包まれに行くことは定番のルーティーンなんですが、房総半島の里山も、私がカメラを握り始めて20年も経ちますとですね、だいぶ変わってきていますよね。コロナ前から上総牛久以南が特に顕著でしたが、小湊自慢の里山風景に翳りが見えています。田んぼが減り、畑が減り、雑草が跋扈して、空き家が増えて・・・20年前にこの風景を支えていた元気な60代が、現在80代。当たり前だけど、亡くなる人もいるのだろうし、離農して後継ぎがいなかったり、農家を捨てて老人ホームへ入ったりと、さまざまな事情によって人口がだんだん減っているんだなあという印象がありましたけど、コロナ禍以降はそれが加速度的に広がっている感じがするんです。年寄りに「コロナの5年」ってのは何かを手仕舞ういいきっかけになってしまったというか。対する小湊鐵道自身も、全線がコロナによって減便されてダイヤもそのままなんだけど、そもそも運転士不足でダイヤが戻せないんですよね。目玉商品の里山トロッコは牽引機がエンジンの重大故障で長期運休中なのですが、その代替役を担うはずだったキハ40を使った土日の観光急行が運転士不足で運行休止になっているし・・・小湊は収益の柱であったバスも要員不足が甚だしくて、度重なる減便減便で公共交通としての体を成さなくなっている悪循環。小湊鐵道グループ、首都圏に近いことが売りでもあり弱みでもあって、風の噂では給与体系のいい同業他社や運輸業界に人員が流出してるとも聞きますね。どこも人員確保をするのに給与を引き上げているけど、それができる会社とできない会社があるのは資本主義の論理。行政から低廉に運賃を抑えられている公共交通ならではの悩みと言えましょうか。

なんかつまんない話をしてしまったが、春の夕暮れの石神の菜の花畑。昼間の喧騒はどこへやら、この時間まで粘ってカメラを振り回しているのは私だけだった。
うすぼんやりした黄色の絨毯の上を、最終の中野行きのキハが通り過ぎます。

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如月・中塩田

2024年12月09日 17時00分00秒 | カレンダー

(塩田平、冬の夜@上田電鉄・中塩田駅)

2月。1月とか2月のうちは、クルマのタイヤもスタッドレスに変えて、どこかの路線の雪景色でも・・・というのが通例。そこら辺を狙って、「北陸フリーきっぷ(能登復興割)」を使って新幹線の敦賀開業直前の北陸路に行ったりしたんですよね。北陸だからね、それなりに雪景色なんかも見れるかなって思ってたんですけど、福鉄もえち鉄も雪なんか全然なかった。旅自体はそれなりに楽しかったんだけど、さすがにそこはかなりの拍子抜け・・・ということで、2月のアタマに長電に行ったついでに立ち寄った塩田平の冬景色を。長電も、山ノ内界隈にちょこっと雪があっただけでもの足りないことこの上なかったのだが。いやいや、北陸と甲信越でこんなに雪がないのなら、もうスタッドレスいらないんじゃないのかと。総体的な話をすれば温暖化ということなんだけど、本当の雪景色を見るのも楽じゃなくなってきましたねえ。2024~25の冬はエル・ニーニョでそれなりに寒く、降雪も多いという長期予報ですが、どうなりますでしょうか。

「上田ブルー」とも言える、独特の緑がかった薄水色。別所温泉・八木沢・そしてここ中塩田に残るレトロな駅舎は、「上田丸子電鉄」時代の面影。
あの頃と同じ色をした電車が、そっと夜のホームに滑り込みます。

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睦月・川間

2024年12月07日 10時00分00秒 | カレンダー

(川面に映る青空や@東武野田線 南桜井~川間)

早くも12月なので、恒例のカレンダー企画をぼちぼち始めてみることにするのだが、2024年はどうでしたかねえ。まあ、そもそも1月1日から能登半島の巨大地震が起こってしまったし、各地の自然災害は続いて東北や中国地方で鉄路の寸断は続くし、少子高齢化の中でのインフレと雇用状況の悪化で経営自体がままならず、いすみ鉄道は脱線事故に起因した全面的な路盤回収の必要があって長期運休中だし、やはり脱線事故から全線のレール補修で長期運休を余儀なくされた弘南鉄道は、長年存廃論議に揺れていた大鰐線の廃止を表明しましたよね。単なる乗客減の赤字困窮というこれまでの形とは異なり、働く側からのインフラの瓦解みたいなものが目立ってきて、鉄道を維持するための新たなフェーズに入って来たなあ・・・という感じも致します。JR東日本も、12月に入って2025年春以降の大規模な値上げを発表しましたが、とかく喧伝されるのが少子高齢化&コロナによる収益の先細りと、高騰するインフラ維持コストと従業員確保のための人件費増という四重苦。そもそも、JREなんかは社長自らが「いかに鉄道に依存しない収益体制を作るか」と言ってはばからないですからねえ。JR東日本も久留里線の末端区間の廃止を表明しましたけど、これは災害などの外的要因に因らない初めての廃線なんだそうですね。そういう「今までになかったこと」は、来年以降もボ-ダレスに次々と現れて来るであろう鉄道業界。「なくなる」とか「終わる」の話はこの趣味の常なので、したいことはさっさとしておいたほうがいいようです。

さて、2024年1月は・・・年末に撮りに行って消化不良だった東武8111Fを改めて追っかけて江戸川の鉄橋まで行ったんだっけかな。野田線も、新車の80000系の投入が発表されてますし、東武本社も「野田線は新車を入れて5両に減車」というのが基本計画なので、8111Fはあくまでそれまでの時間稼ぎでしょうからね。いついなくなってもいいように、しっかり撮り残しのないように撮っておくほうがよさそうです。

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霜月・山崎/師走・海芝浦

2023年12月30日 12時00分00秒 | カレンダー

(晩秋は黄金の輝き@玉野~山崎間)

11月。・・・というか正確には12月の初めである。このブログでは触れていないのだが、12月の初めに、愛知県は稲沢市(旧祖父江町)に「祖父江のイチョウ」を撮影しに行った。小田原から豊橋まで新幹線、豊橋からは勝手知ったる名鉄の「まる乗り1DAYフリーきっぷ」で一宮へ。名鉄の尾西線は、一宮から津島に向かう名鉄の中では非常に地味な路線なのだけど、この時期だけは文字通り黄金の輝きを見せる。山崎から森上にかけての沿線にびっしりと植えられたイチョウの畑のなかを走る真っ赤な名鉄電車。個人的に、紅葉の中でもイチョウの葉の色付き(黄葉ですが)というものが非常に好きで、この「祖父江のイチョウ」には何年か前から行ってみたいなあと思っていたのですよね。黄色と赤のコントラストが非常に美しく、素直に「来てよかったなあ」と思える一枚になりました。愛知県は日本一のギンナンの生産量を誇っているのだが、そのほとんどはこの祖父江地区で生産されたものであるらしい。ギンナンなんて、普通に生活していると茶碗蒸しに入っているくらいでしかお目にかからないですけど、ないと淋しいアイテムではあります。乾煎りにしたギンナンとか、塩を振って食べるとナッツっぽいコクがあっておつまみにもいいですよね。

12月。駆け足で振り返った2023年。12月になるとついこないだになるのだが、都内に出かけた帰りに、ふと夕景が見たくなって乗りに行った鶴見線。京急の花月総持寺から国道駅へ歩いて乗り換えたのだけど、普段の鶴見線とは明らかに異なる混雑・・・あ、そうか。鶴見線の車両、205系からE131系に変わっちゃうんで、お名残り撮影&乗車ってことなんでしょうね。個人的に、205系ってそこまで一生懸命に撮影する車両なんですかね・・・?という思いはある。仙石線に行けばまだ走っとるやないかい。何だか関西でフィーバーしていた和田岬線の103系の最後を見るような思いなのだが。あの時も「まだ播但線行けば103系走っとるやないかい!」って思ってましたものね(笑)。人が多過ぎて、正直「浸れる」感じもなかったけど、京浜工業地帯の運河の向こうに暮れて行く夕景の美しさ。これが冬の鶴見線の醍醐味か。

駆け足で振り返った2023年。こんな感じで自分なりにカレンダーを作ってまとめて行くことは、平成29年から始めているのでもう7年目になる。毎年の傾向を見ていると、行く場所がそんなに変わらないなあ・・・という感じもあるのだが、さすがにこの趣味もやってる年数が長くなってくると「自分が気に入った」場所にしか行かなくなるというのはあるな。それでも、今年も一畑電車みたいなちょっと遠めのご新規の開拓も出来たし、悪くない一年だったんじゃないかなと思いますけどね。一年を振り返るカレンダーづくり、あなたも、ぜひに。

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