青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

無為に過ぎる夏

2021年08月28日 13時00分00秒 | 西武鉄道

(だれもいないせせらぎ@西武池袋線・東吾野~武蔵横手間)

7月の上信電鉄遠征以降、新型コロナ感染者数の拡大に伴い、特にどこにも行かない無為な夏が過ぎて行きます。子供と一緒に過ごす夏休みですが、エアコンの中で結局何もしなかったし、させてもあげられなかった。そういう後悔だけが残っています。最近、世間が辺て自粛して引きこもってるせいか、個人個人がそれぞれ好きだった趣味にすらなんの気持ちも動かなくなってて、抜け殻みたいになっていませんかね。あんだけ好きだった旅行、あんだけ好きだったゴルフ、釣り、あんだけ好きだった観劇、コンサート・・・いつの間にか、自粛しているうちに関心すら薄れてやしませんかい?と。この手の「趣味」ってもんはさ、別に人間やんなきゃやんないで次第にそこに順応してしまうというか、いつの間にか熱意が失われて「なんでこんなこと好きだったんだろう?」って思ってしまうもんなんですよね。世の中がこの疫病の災禍に包まれてかれこれ1年半になる訳ですが、そういう趣味に対する色気みたいなものが無くなっちゃったら、人間として生きていく豊かさが確実に褪せてしまうじゃないですか。こういう「趣味の喪失、意欲の減退、苛まれる空虚感」みたいなものも、コロナによる健康被害みたいなものだなあと思うんだけど・・・最近さ、休みに出掛けないし、飲みにも行かないし、平日も外食しないし、カメラを持たないから機材も買わないので、カネを使わないんですよね(笑)。先月なんか、正直小遣いが余っちゃったしさ(笑)。それだけでも未曽有の事態って事なんだけど。まあね、弊社いわゆる休業要請とかテレワークとか一切無縁の職業なので、今んトコ前と同じだけ給料が支払われているから呑気なことが言えるというのもある。職を失ったり働く場所が狭まったりしている人もいる中では、そこは有り難いことだとは思うのだけどね。

ともかく、自粛して家のテレビで暗いニュースばかり見ているくらいなら、あまり気乗りはしなくてもたまにはカメラ触ったり軽く乗り鉄したり・・・(もちろんマスクをするなりワクチン打つなり感染対策はちゃんとした上ですが)自分を保つためのリハビリは必要かなと思うんですよね。さすがにここまで全世界に広まってしまったらもうコロナウイルスは滅亡しないんだろうし、さりとてこのままコロナに怯えて死ぬまで暮らして行く事なんてまっぴらごめんだし。部屋に籠って感染に怯えて生きていく、それって意味のある人生なのか?と問われれば、大手を振って「自粛反対!コロナはただの風邪!医療従事者は全員コロナ患者を診ろ!」とまでは言わんけども、結局ある程度「コロナは怖い」を前提としつつも、自分なりの線引きをしてリスクテイクしつつメンタルを維持する方法を見付けないと、と思うのです。為政者は「不要不急はやめてください」と言われるが、個人個人の何が不要不急かなんて、誰も分かんないんだからさ。

誰もいない高麗川のせせらぎで、流れに素足を浸してカメラを持った。
密とは無縁の撮影スタイル、このくらいはいいでしょうというささやかな自粛レジスタンス。
通り抜ける30000系、荒み切ったコロナの御世に、スマイルを。

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秩父線今昔

2020年05月21日 17時00分00秒 | 西武鉄道

(吾野の定番アングル@西武新型特急Laview)

1001レを高麗カーブで押さえた後は、1003レ狙いで吾野のSカーブ軽俯瞰にやって来ました。折角2本あるんだから、同じところで撮影するのは能がないってんで・・・古くからの西武秩父線界隈の名撮影地らしいですけど、さすがにこの時期はニューレッドアローの秩父方面撤退のニュースもあって、そこそこの撮影者がいらっしゃいましたね。まだ「密です!」なんて言われてなかった時期。駆け抜けていく新型特急Laview・・・秩父の新しい顔として投入された新車ですが、側面窓の上下の長さと航空機的な円形の先頭部がインパクトあり過ぎます。初めて見た時、個人的には「カブトムシの幼虫みたい」というのが率直な感想でした(笑)。

1003レの露払いではるばる横浜からやって来たS-TRAIN。コウペンちゃんトレインというキャラクターラッピングでの登場です。あ、吾野のSカーブを「西武秩父線の名撮影地」なんて言ってますけど、正確には池袋から吾野までが西武池袋線なんですよね。便宜的に飯能から先が西武秩父線だと解釈しがちですが、たまにそこらへんに煩いマニアがいるので念のため(笑)。しっかし西武40000はLED写らんな。最近のフルカラーLEDはどの鉄道の車両もこうなっちゃうからあんまり好かん。小田急の更新1000とかも相当に撮り鉄泣かせである。

長瀞・三峰口行き快速急行1003レ。周囲は西武秩父線内でのニューレッドアローのお別れ勢・・・という感じだったんで、私たちのような4000系快速急行をピンポイントで撮りに来た人間は少数派だったようです。ちなみに西武4000系は、1989年(昭和63年)の秩父鉄道乗り入れ開始に伴って作成された車両なのですが、西武秩父線が開通した当初は、秩父鉄道的には「(対東京で)客が取られる」的な感情があって乗り入れに否定的だったとも聞きます。かつての秩父鉄道は、東武東上線から寄居経由で「急行ながとろ・みつみね」が乗り入れていた、というのもあったのかもね。結局、西武乗り入れの3年後、1992年3月をもって東武からの乗り入れは消滅しています。

我々的にはオマケのニューレッドアロー。待ってる間は隣に陣取ってたおじさんと話し込んでたんだけど、「ここでE851の貨物列車を良く撮影してたんだヨ。E851のさよなら運転の時は、下の斜面から撮り鉄で鈴なりになったなァ・・・」なんてアツい時代の話も聞いた。個人的にはE851の牽引する西武秩父線のセメント貨物ってのは目にする事の出来なかった憧れの列車なんで、実に羨ましい話である。私鉄にはありえない体躯の大型電機が、重連で正丸峠を超えて行く写真をカラーブックスとかで見て興奮したもんだ(笑)。

「貨物列車の目玉は、前日に用意された荷を満載した早朝5:55東横瀬発の2250列車で、セメントを満載したタキ1900と途中の狭山ヶ丘で切離すセメントバラ積みのテキ400、両端に国鉄乗り入れ規格の車掌車を連結した1000トンの列車(略)横瀬を重連単機で出庫し、東横瀬から次の芦ヶ久保までの連続上り25パーミルの難所をE851の重連が登坂していた(RM314号「西武秩父線開通40周年」より引用)」

おお・・・と言う感じで、在りし日のこんな文章を読むだけで血がたぎってしまうのですが、現在ではすっかり都市間輸送と観光路線になった西武秩父線。当初の建設目的には「武甲山の豊富な石灰石産業の一翼を担い、秩父地域の鉱工業の発展に寄与する」という名目もあった事を忘れてはいけません。三菱マテリアルによる東横瀬からのセメント出荷は1996年の春に廃止されてしまったのですが、貨物盛業だった頃の西武秩父線沿線にも、ぜひ来てみたかったですね。

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栄光の、紫紺の幕よ永遠に

2020年05月19日 17時00分00秒 | 西武鉄道

(梅見月の高麗カーブ@快速急行長瀞・三峰口行き)

四国・中国遠征から帰った後くらいでしたか、西武線の春のダイヤ改正で「土休日池袋発の長瀞・三峰口行き快速急行が廃止されるようだ」という話を聞きつけ、子供と撮影に行きました。時はダイヤ改正の1週前、朝早めに起きて圏央道をかっ飛ばし、飯能から先では有名撮影地であるはずの高麗カーブへ。そこそこ同業者いるかな?と思ったのですが、どうやら朝の下り快急を撮影するには光線が悪すぎたですな。まあ誰も来ないので子供と温かいお茶を飲みながらマッタリと待てたのだが。

インからじゃないと8連はケツ入らなさそうだったんでインに構えたんですが、高麗カーブってアウトからやるのが王道なんですね(笑)。子供にアウト側行って貰って自分がインから打てば良かったかなあ。前の日に雨が降ってしっとりと濡れた梅見月の朝、西武4000系の晴れ舞台とも言える、快速急行の8連運用1001レが高麗カーブを駆け抜けて行きます。

土休日の朝の2本の秩鉄直通快速急行。1001レが池袋7:05、1003レが8:05と長い事このダイヤは変わらなかったように思います。現在の1001レ・1003レは秩父線内への乗り入れこそ継続されていますが、飯能発の各駅停車に姿を変え、この「快速急行」の紫幕を見る事は出来ません。

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秩父支えて30年

2020年05月17日 10時00分00秒 | 西武鉄道

(窓辺のあの子@西吾野駅)

西吾野駅での4000系同士の交換風景。単線で駅間距離もそこそこあるので、秩父線の交換待ちは結構長い。静寂が支配する乗客も疎らな車内から、冬の低い日差しが射し込むホームをぼうっと見ていると、交換の飯能行きが滑り込んで来た。対向電車の窓辺に跳ね返ったライオンズカラーの向こうに、街に向かう女の子の朧な影が見えて、一瞬目が合った。おもむろに走り出した4000系は、奥武蔵の山を詰めながら、正丸峠のサミットへ登って行きます。

武甲山が見守る西武秩父の駅のホーム。シーズンオフの平日ともあって、西武秩父まで各駅停車に乗車して来たのは疎らな観光客と商用客がチラホラといるだけであった。正直、高麗から横瀬までの中間各駅の顧客流動から考えても、秩父線に平日の4連は過剰かなあ・・・という気がしないでもない。4000系の製造から30年が経過して、次世代の秩父ローカル運用を考えるに、新車投入によって日中の短編成化(2両?)はあってもおかしくないのかな、と。新車を製造するほどのニーズはないなら、30000系の増結2連とかをワンマン改造した上で、山岳線区用にバッキバキに改造して突っ込むとかあったら面白そうですが・・・

西武秩父線は昨秋に開業50周年を迎えました。西武の本社自体はニューレッドアローに代わるLaviewの投入や、土休日のS-TRAINによる横浜からの秩父乗り入れの実施と、「祭の湯」を中心とした西武秩父駅の大規模リニューアルなどなど積極的なCMの展開によって秩父観光にテコ入れをしております。そんなこんなで西武秩父駅の跨線橋なんかも、以前に来た時とは見違えるほど観光ムードに包まれていて、飾りつけなんかも華やかになっていました。祭の湯は、週末は仮眠の出来る健康ランド的な使い方で一夜を過ごす事も出来るようなので、秩父の山に朝から登りたいとか、三峰神社でご来光を拝みたいとか、そういうニーズに応えられる施設になっています。温泉好きとしては、秩父にも渋い鉱泉宿いっぱいあるからそっちにも泊まってあげてね!と思ってしまうのだけど。かおる鉱泉とか新木鉱泉とかいいよね。

抵抗制御のモーター音も高らかに、今日も秩父と奥武蔵を駆けるライオンズカラー。西武鉄道が正丸峠を穿ち、秩父盆地に鉄道を通して50年、その50年の歴史のうちの30年を、縁の下の力持ちとして秩父線に捧げて来たのが4000系という車両です。いつかは後進に道を譲る時が来るのだろうけれど、決して華やかな活躍が報じられることもなく、その車歴のほとんどを地域輸送に徹し切った働き。しっかり記録しておかないとならんなと思います。

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奥武蔵徒然草

2020年05月15日 17時00分00秒 | 西武鉄道

(春の芝桜臨@東吾野駅)

神奈川県民である私にとっては、西武鉄道の路線というものはそう縁があるものではありません。西武を使うシチュエーションと言えば、専ら国分寺から電車(多摩湖線)に乗って西武球場へ行く時がほとんどでしたが、オトナになってからは、秩父観光やらなんやらで西武秩父線を使う事が多くなりましたね。まあ観光っていうよりも、秩父にデキ撮りに行くための交通手段として使うことが多かったかもしれん。という訳で、ここでは少し前の西武4000系の姿をプレイバックしてみます。芝桜の多客対応で4+4の8連の普通列車がホームギリギリに停車します。どっかの交換待ちで撮影したと思うんだけど、東吾野かな?昔は方向幕にアルファベットは入っていなかったんですね。

SL芝桜号を撮影しに行った際の三峰口での一コマ。三峰口乗り入れ車は、午後の返しまで側線で留置されていましたね。秩父鉄道も、まだ国鉄101系上がりの1000系が主力だった時代。たった10年ちょっと前でしかないんですけど、現在の東急車天国とは隔世の感があります。この頃は、パレオの客車もまだ深緑でしたね。

大雪の降った次の日、まだ夜も明けやらない横瀬付近を走る4000系。後方には秩父のシンボル・武甲山がどっかりと聳え立つ。芦ヶ久保から滝の枕を降りて来て、生川の谷を高架橋で渡ったあたりだったと思う。どうしても秩父のデキは両パンの時期(冬季)に撮影に行く事が多いので、いきおい4000系の画像は冬時期のものが多いような気がする。

芦ヶ久保の駅で撮影した快速急行長瀞・三峰口行き。池袋から秩父方面の土休日の行楽列車としてお馴染みでありました。ちなみにこの秩鉄乗り入れの快速急行は、先日の2020年3月改正を最後に運行を終了しております。この快速急行は朝早く武蔵丘の検車区から回送で池袋まで送り込んで運用していたので、面倒くさいっちゃ面倒くさい列車ではあったんですよねえ。3月改正で秩父線系統の特急は全車「Laview(ラビュー)」に切り替わってしまったので、「秩父行きたい人は新しい特急乗ってくださいよ」という事なのだろう。また、土休日に2往復だけとはいえ2ドア車を池袋口に入れるとなると、中長期的にはホームドアの設置計画に影響してしまうとかもあったのかも。

現在の秩鉄乗り入れ列車は、行路を短縮した上で飯能発の各駅停車に置き換えられていますが、こんな活躍の場の狭まり方も「リバティ」の導入により浅草乗り入れが打ち切られた東武6050系と似てるんですよねえ。どちらも落成から30年を経て、私鉄急行型にも曲がり角が来ている事実をヒシヒシと感じてしまうのであります。

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