青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

夢の中へ 秋の西上州訪問記その6

2013年10月31日 23時56分00秒 | 上信電鉄

(何も聞いてなくても@南蛇井駅)

はい、日本の珍駅名では5本の指に入ってもおかしくない南蛇井駅。上信電鉄をこの駅名で知る人もいるんじゃないかなあ。もちろん狙ってこんな駅名を付けた訳ではなく、この駅があるのが群馬県富岡市南蛇井と言う場所だから。昔この辺りは上野国甘楽郡那射郷(なさごう)と言われ、また山裾に水が豊富に湧いていた事から「那射の井」→「なさい」→「なんじゃい」となったそうなのだが諸説あります。


地元のおばちゃんとお別れした直後、南蛇井交換で上下の列車がやって来る。おばちゃんと話しながらこの鳥居の天地をどうするかでしばし悩んでいたのだが、西上州の夕暮れ模様を大きい秋の青空の下で切り取ってみます。過ぎて行く秋の日、どん曇りを承知で訪れた自分に対するささやかなゴホービと受け止めた(笑)。やって来た6000系@日野ラッピングが、赤い車体を夕日に染めて。


返しは下仁田に下って行った西武新101系@ララクラッシュ編成。妙義の山から一直線に伸びて来る鉄路、架線柱の輝きの中を、淡い車体が夕日に追われるように足早に走って行きます。山と田んぼと鉄道と、材料は素朴でも一瞬キラリと光るこんな風景に、ローカル私鉄の魅力と言うのはあるのかなあと思いまする。


茜差す南蛇井駅で6000系と交換する1000系@桃源堂ラッピング。自社発注車両同士の交換と言うだけで地方私鉄では贅沢な風景と言えなくもない。上信電鉄も沿線が一気に高崎のベッドタウンとして開けた時期は、急行列車なんかも走らせていたそうで、それだけの投資効果も見込めたと言う事なのでしょうか。自社発注車だけは右ハンドルと言う上信電鉄の車両ですが、これはタブレット交換を運転席同士で行うための名残なんだそうです。左右ハンドルの混在するワンマン運転ではドア扱いも勝手が違うんで大変でしょうねえ。今度の新車はさすがに左ハンドルのようですが。

 

日中から夕方になって、車両の運用数が増えた下仁田駅。左側に止まるクハ1301を先頭にしたヨコオデイリーフーズのラッピング編成。元々真ん中に止まっている1000系は3連であったのですが、乗客減の傾向にある中で持て余し気味になり2連へ減車改造の憂き目に。そして余ったクハ1301は元々単行用のデハ252と組んで、新たに2連の編成を組成しました。一回運転台を譲り渡しているので、オリジナルの1000系とはちょこっと違う取って付けたようなのっぺり気味の表情が特徴。のっぺり感を消すためか、オデコに付けたうさぎのマークがかわいらしい。ヨコオデイリーフーズも沿線の甘楽町にあるコンニャク食品メーカーで、レバ刺し風味のコンニャクが大ブームになっているそうなw


秋の夕暮れは足早に周囲を闇に染めて行く。上信線唯一のトンネルである白山隧道にやって来た頃には、既に暗くなってしまった。唯一のトンネルで、トンネル飛び出しをやろうと思ったのだけど雰囲気的には時既に遅し…と言う感じ。さすがに撮影もこれまでかなあ、と言う事で、下仁田の山奥の温泉へ行って休憩。真っ暗な山の中でばあちゃんが一人で番をする温泉に行ったのだが「だーれもこねえから今日は閉めちゃおうかと思ってた!」だってw

携帯電話の電波も届かない山奥の湯でまったりと浮世の垢を流して、待合室のソファーに寝っ転がってたらどうやら一時間ほど夢の中…いつの間にか寝てしまったらしい。そして番をしているばあちゃんはどっか行っちゃったらしく姿を見ないし、客も一人も来ないし、これ自分が気が付かなかったら朝までそのまま寝てたんじゃねーのかと。なんたる放置プレイ(笑)。時計を見るともう7時を回っている。誰に言うともなく「おじゃましゃーした!」と声を掛け、真っ暗な山道を抜けて里に戻ってみたらヨメから「いつ帰って来るの?」と言うメールが…
ああ、シンデレラはそろそろ家に帰らなければなりませぬ。


夜の帳が降り、既に眠りについたように静まり返る下仁田の街の中で、駅だけが煌々と水銀灯の明かりを灯している。側線では既に今日は上がりとなった編成たちがお休みモード。出発を待つ桃源堂ラッピングの1000系だけが、来るとも来ないとも分からぬ客を待つ。子供向けのおもちゃがラッピングされた車体が、何だか夢の世界へ行くおとぎの国の列車のように見えなくもない。もちろん、夢の国行きの電車に乗ることは許されないのでありますが(笑)。

しばしバルブを愉しんで、帰るとしましょう。
秋の西上州訪問記、上信電鉄の旅でした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする