(晩秋に立つ@上総久保駅)
小湊鉄道の晩秋の風物詩と言えば、里山風景の中にすっくと立つ上総久保の大銀杏。陽当たりがいいのか場所が良いのか、毎年毎年実に見事な色に黄葉するこの大銀杏のおかげで、何の変哲もない田んぼの中の無人駅がこの時期だけは金色の衣装を纏います。ちょうど日の出の時刻に到着した上総久保の駅、正直ピークは一週前だったかもしれないけど、大銀杏はまだまだ十分に葉を残して私を待っていてくれました。
朝の日の光により一層輝きを増す上総久保の大銀杏。普段の乗客は日に10数人いるかいないか…という小駅ですが、この時期は休みともなると撮り鉄の連中のみならず純粋にカメラの愛好家が被写体としてのこの駅を訪れますが、この日は平日だったから誰もおらず。五井行きの列車に乗る僅かな地元の通勤客の方がちらほらと駅に繋がる畦道を歩いて来る。大銀杏の下をやって来るのは、いつもおなじみの朱色とクリームのツートンカラーの気動車。
上総久保の大銀杏。西側の半分はやや葉を落としかけていたんですが、東側はまだたっぷりと太い枝に黄葉を湛えており、その輝きはただ溜息しか出ないような見事な黄金色。少し冷たい風の強い朝、古びたトタン屋根の待合室から覗いて見れば、大銀杏は強い風にハラハラと葉を落とし、駅の周りを絨毯のように黄色く染めて行きます。
まだ朝早く、紅葉のお客さんを乗せるには少し持て余し気味の下り養老渓谷行きキハ200の2連。里山風景の中に佇む上総久保の駅ですが、置かれたユンボと張られたロープで分かる通り、駅の高滝側では県道へ続く新しい道路が工事中。そして、車の通れる道など通じていなかった上総久保の駅に向かって、新しい道路から続く駅前広場らしきものを作るようです。
抜けるような青空に映える上総久保の大銀杏。最近開通した圏央道の市原鶴舞インターにもほど近いためか、この久保の里もインターに通じる道の整備事業が進められている様子。そんな難しい工事じゃなさそうだから、ひょっとしたら来年あたりは駅前広場が完成しているかもしれないねえ。そうすると、駅の雰囲気もガラッと変わってしまうかもな。確かに鉄道の活性化という観点からも駅に車寄せくらいあった方が利用者は便利なのは分かるんだけど、この里山風情は失われないような整備を望みたいものです。