(600系ク524@養老駅)
養老駅で桑名行きの電車を待っていると、上り大垣行きでク524を先頭にした3連がやって来ました。ひとまとめに養老鉄道の600系と言っても、近鉄時代から600系・610系・620系と細かく形式が分かれていて、色々なところに違いがあるようです。1067mmの狭軌ということで、軌間1435mmの標準軌の近鉄名古屋線の車両がそのまま入線が出来ない養老線。どうしても養老線に導入する車両は、同じ狭軌の南大阪線系統を走っていた車両が多くなる傾向にあります。時には南大阪線の車両から抜いた台車に、上には名古屋線のボディを乗っけた車両が回されて来たりと、近鉄の主力路線の車両繰りによってその時々のお古があてがわれる傾向は変わりません。
ひょうたんの吊り下がる養老駅に到着のク524先頭の3連。養老線は桑名で近鉄名古屋線と接続していますが、昭和30年代に標準軌に改軌された名古屋線には倣わず、こちらは1067mmを維持しました。名古屋線と軌間を揃えなかったのは、その当時はまだまだ養老線には国鉄を介した貨物輸送が盛んであったためだそうです。養老線は昭和の末期まで貨物輸送が残されていて、国鉄樽見線の本巣にあった住友大阪セメント岐阜工場の製品が、大垣を通って桑名の手前の東方貨物駅にあった住友セメントのヤードまで運ばれていました。養老線の車両は、日々の検査こそ西大垣の車庫でやっていますが、重要検査と言う事になると近鉄名古屋線の塩浜検収庫まで運ばなくてはなりません。塩浜に行くために台車を標準軌に履き替えるのが、かつてのセメントヤードだった東方貨物駅の跡地。ここから近鉄の電動貨車に連れられて、養老線の車両は塩浜に入区します。
我々が乗り込む桑名行きもモ624を先頭の近鉄マルーン3連。モ621・モ624ともに元南大阪線の6800系。3回目の乗車でようやく近鉄車が回って来ました。マニアックな話ですが、近畿車輛の台車らしいシュリーレン台車がかっこいいですね。編成ごとに100周年記念の方向板が微妙に違っているのも一興。ちなみに養老から大垣方面に行く客はそこそこいたのだが、桑名方面に行く客は我々親子のみでありました。
養老山地の東側の裾を緩やかに走って行く養老鉄道。僅かに乗っていた高校生の二人組が駒野で降りてしまって、日曜日の昼下がりの電車は楽しい貸し切り状態。大垣からの乗客が使うのはせいぜい美濃高田か養老までで、そこを過ぎると養老南線は乗客の数がぐっと減るようです。現在の養老鉄道は、運営の赤字金額については3億円を上限に沿線の自治体が応分に負担をしておりますが、この乗車率だと確かに厳しいんだろうなあと言う感じ。養老山地は花崗岩の山らしく、流れ出す川は堆積物が多く天井川になっています。鉄路はそんな天井川を何本かトンネルで抜けて、一路桑名を目指します。
電車の交換待ちで停車した美濃山崎の駅、ここで東急と交換。ホームの垣根に貼られた大きなスローガンの横断幕がひときわ目を引きます。地方自治体の財政についてはそりゃどこも厳しいのだろうけど、沿線自治体の赤字補填や基金への資金拠出などを見ていると、やっぱりおらが町の鉄道がなくなってしまっては・・・という意識はあるものと思われる。沿線自治体の中では、旧南濃(なんのう)町を含む海津市のアピールが一番強いように感じましたが、皮肉なことに乗った感じだとその旧南濃町の区間が一番乗客が少なかった。大垣と桑名の間の空白地帯となっているこの辺りが養老線内ではドーナツ現象を起こしているようで、おそらく住民は鉄道で大垣や桑名へ向かうより、クルマで川を渡って津島方面に出てしまっているものと思われる。
三重県に入り、多度辺りから今度は桑名の街に向かう乗客が増え始めて、終点の桑名に着く頃には意外にも車内の椅子はほぼ埋まってしまいました。養老鉄道の流動を見ると、大垣都市圏・桑名都市圏の周辺20kmエリアくらいのニーズはあれど、大垣~桑名を結ぶニーズは正直見込み辛い感じ。ちょうど海津市の辺りを抜かして、桑名~多度・養老~大垣~揖斐に切り分けられる可能性はあるかもしれないなあ。たぶんその辺りが薄々分かってるから、海津市が一番養老鉄道の存続アピールに必死だったのだろうけど。
桑名到着。旅も終盤戦。DDを追い掛けてはしょっちゅう来ている関西本線の駅なので、ここまで来ると勝手知ったる、と言った感じもある。貨物の時間が合えば四日市に貨物でも撮りに行こうかなとも思うんだけど、残念ながら夏の時期は土日だとおそらく財源の石油輸送がなさそう。という訳で・・・
駅前のロッテリアで遅い昼食。もともとこっからは予定はなかったんだけど、ハンバーガーを食べてから、ナローの旅に出る事に致しましょう。もう何度か乗ったことがある三岐鉄道北勢線、子供は762mmの特殊狭軌(ナロー)は初めての体験。「電車ちっちゃ!」というのはなかなか正しい反応である(笑)。甲高い吊り掛け音を響かせて西桑名を出る列車、車両の大きさが足りずに、冷房の車両があったりなかったりするのもご愛敬なのである。