青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

鞍馬、クラファン、ケーブルカー。

2024年11月11日 22時00分00秒 | 叡山電鉄

(開山1200年の歴史@鞍馬寺)

さて、せっかく鞍馬まで来たことだし、トンボ帰りするのも勿体ないので鞍馬の山にお参りをして行こうと思います。別にそこまで寺社仏閣の類が好きなわけでもないんだけど、どうも旅先ではその土地土地の神社仏閣を訪ねることが多い。これは、日本のいわゆる「中小地方私鉄」というもの、大半の開業理由が1.鉱山型、2.温泉型、3.寺社仏閣型のどれか、というのが実感としてあって、必然的に「沿線で何かをする」ことの中に「お参り」が入ってくることが多いからだ。関東や京阪神の都市間鉄道(例えば新宿~八王子の京王帝都電鉄とか)は概ね大手私鉄になってしまうから、地方私鉄は「確たる目的」を持って作られ、そしてその目的のために生き残っているものが多い。鉱山型・・・は、今残っているので代表的なところでは三岐鉄道(藤原岳からのセメント輸送)ですかね。昔は石炭(三菱大夕張)硫化鉄(同和鉱業片上)とか亜鉛(栗原電鉄)、ニッケル(加悦鉄道)、硫黄(松尾鉱山)などの鉱物を運搬する小私鉄が全国にあったものですが、もはや日本では絶滅危惧種でもある。2。の温泉型は定山渓鉄道、山形交通の湯野浜線、花巻電鉄、北陸鉄道の廃止路線(山中線・山代線)、現役では福島交通(飯坂温泉)、上田交通(別所温泉)、神戸電鉄も祖を辿れば有馬温泉を目指した神戸有馬電気鉄道に行き当たる。

そして3.の寺社仏閣型。なんだかんだこれが一番多いんじゃないですかね。ここ叡山電鉄の鞍馬線がそうだし、同じ関西では水間鉄道(水間観音)、能勢電鉄(妙見山)、南海電鉄の高野線だって高野山への参詣鉄道である。特に関西は、この「お山の神社仏閣」×「鉄道線」×「鋼索線」のコラボというものが異常に多い。高野山も南海電車とケーブル連絡、妙見山も廃止されてしまったが能勢電の妙見口からケーブル&リフトで連絡、近鉄の生駒山(宝山寺)や信貴山にも生駒ケーブル・信貴山ケーブルがあって、そして「叡山」こと比叡山には、京都側からは比叡山ケーブルとロープウェー、そして滋賀県側からは坂本ケーブルが繋がっている。

そして、ここ鞍馬山にも「鞍馬ケーブル(鞍馬山鋼索鉄道)」があって、麓の鞍馬山の山門と本堂近くまでを結んでいる。途中で交換することのない全線単線のケーブルで、搬器も少し小ぶり。鞍馬山で天狗相手に修業を積んだ牛若丸にちなんで「牛若號Ⅳ」という名前が付いている。高低差90m程度、距離は僅か207mしかなく、この鞍馬山のケーブルが「日本一短い鋼索鉄道」ということになるのだそうです。いわゆる一般的なケーブルカーだと、路線の真ん中あたりで上り下りがすれ違いますよね。両方の搬器を釣瓶のようにして動かすことにより重さのバランスを取る訳でありますが、この鞍馬山のケーブルは全線単線。そのため、対になる搬器の代わりに、鋼索にはカウンターウエイト(おもり)を結び付けているのだそうです。

そして、この鞍馬山鋼索鉄道の特異なところと言えば、なんと言ってもお寺(鞍馬寺)が直営している・・・ということ。宗教法人が運営する日本で唯一の広義の鉄道(鋼索線)ということになりますが、そのため、運賃は「御寄進票」ということで寄付扱いになっておるのですね。宗教法人でも営利でやったらその売り上げは課税対象になってしまうから、あくまで鞍馬寺に「御寄進」をいただいた方々に、お礼としてケーブルカーの乗車を認めるという考え方で運営されています。なんかあれだな、寄付への返戻が乗車の権利という考え方は、今流行のクラウドファンディング的な考え方だな(笑)。

ということで、御寄進200円を納めさせていただいて訪れた鞍馬寺なのですが、「来年まで塗装工事中」ということで本堂の姿が全く見えなかった(笑)。なんともまあ締まらない話である。ってかね、夏の大宰府に続いてまたですかという感じで笑ってしまったよ。どうして私は「旅先の寺社仏閣に訪問した際に、そこが何故だか工事中」という輪廻から抜けられないのであろう。なんかこんな感じで方々の神様仏様の覚えが悪かったりするのは、やはり「普段のおこない」ということなのだろうか。悔い改めるべく、線香に火を付けて祈る初秋の鞍馬山。石段を登った背中に、一筋の汗が流れました。

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