(残された時が決まり@弘南鉄道大鰐線・大鰐駅)
弘南鉄道大鰐線廃線へ/27年度末で運行休止へ(Web東奥日報)
今週の水曜日、突如もたらされた悲報。弘南鉄道大鰐線の廃止決定。正直、2013年に弘南鉄道側が廃止の意向を表明してからここまで、何度も存廃論議が浮かんでは消え、浮かんでは消えてきた路線です。その中で沿線自治体の懸命な支援もありましたし、それでも一向に回復しない乗客数と改善しない採算はどうしようもないレベルまで達していましたし、昨年は脱線事故からの抜本的な路盤整備で大鰐線・弘南線ともども長期間の運休を余儀なくされましたし、まさしく万策尽きた末、いや万策はとっくに尽きていたのかもしれないけど、何というか意地だけで維持していた近況ではありました。ただ、少なくとも弘前市と大鰐町に限っては今年の6月の会合で「ある程度支援していくこと」には前向きであったので、ここに来ての突然の決定は「経営支援があったとしても、これ以上の大鰐線への資本投下、設備投資、人的リソースの投入は困難である」という弘南鉄道側のギブアップ宣言なんでしょうね。一部の話では、弘南鉄道沿線5市町村(弘前市、黒石市、平川市、大鰐町、田舎館村)の中で、大鰐線の沿線ではない平川・田舎館・黒石からの「これ以上大鰐線の収支の改善が見込めない中で、弘南鉄道へ公金を投入する事への是非」という議論から逃げられなかった、というのもあったそうで。大鰐線を諦めて弘南線の経営に集中するというのも、それは賢明な選択でしょう。
しかしまあ、縁もゆかりもないすんげぇ遠くの電車のことだけど、大鰐線の廃止が事実上決定してしまったことはひとしおに寂しい。6月に行ったばかりというのもあるし、たぶん、津軽が好きなんだよね、自分。大鰐線と言えば、戦後まもなく弘前電気鉄道として設立されて以来、そもそもろくに客が乗らなくて常にカツカツ経営ではあったんですよね。車両も富士身延鉄道からの買収国電とか元西武の川造型とか、そういう伝説級の古い電車をかき集めて走らせていて、当初から採算の見込みが極めて薄い路線でした。経営に行き詰まった弘前電気鉄道は、弘南鉄道の創業家である菊池家を頼りに経営を譲渡。当時の弘南鉄道は、大鰐線に続き黒石線を引き受けるなど、「大弘南」とも言える津軽地方の公共交通を一体に、拡大経営を指向していたこともありましたのでね。なんだかんだと紆余曲折がありながら、ここまで何とかレールを繋げてこれたのも、ひとえに弘南鉄道のレールへの思いと、沿線自治体の頑張りの証拠でもあるのでしょう。今回も休止(事実上の廃止)を発表はしましたけども、即時廃線じゃなくて27年度までは運行するというのは、沿線に点在する高校生たちが卒業するまでの時間の猶予なのだそうで。課せられた公共交通の使命を全うするため、しっかりと最後までケジメを付けて行くのは、立派な最期であるとすら思える。
大鰐線の廃線は、直接の関係はなくとも先日破綻を発表した中三弘前と根っこの部分は同じであって、それは弘前市の旧市街地の完全な衰退を示している。それだけに、中央弘前駅とその周辺の土手町あたりは何とも昭和なノスタルジックに包まれていて、得難い雰囲気がある。中央弘前の駅って、個人的には日本最高の「郊外電車の始発駅」という称号を与えたいほどの収まりのいい雰囲気があって、大好きなんだよなあ・・・。こうなってしまっては、あと三年の命だから、せめてそれまでに弘前の旧市街を泊まりで味わって、ぜひその雰囲気に一人でも多くの人が触れて欲しいなあと思う。別に遠来のマニアが何の力にもならないことはよく知ってるけどさ。そして、やっぱり津軽は冬だと思うので、来年の1月あたりにまた行ってみようかなあと。