(北国の朝は早い@弘前市旧市街の某旅館にて)
夜の大鰐線を一往復した後は、中央弘前の駅から宿に戻り、ビールをひと缶呑んで寝てしまう。朝4時にトイレに起きた際に、もう外はほの明るく。ただでさえ北国の朝というのは夜明けが早いものだが、夏至の時期の朝はなおのこと早い。部屋の障子を開けたら、濡れ縁の向こうから既に6月の津軽の朝日は昇り始めていて・・・暫くテーブルの上に放り投げてあった飲みさしのお茶のペットボトルをカラにして、朝5時のNHKニュースをぼんやりと眺める。折しも、継続支援で合意がなされた弘南鉄道の大鰐線のニュースが流れていた。テレビだけ見ていると東京には伝わってこないニュースだが、地元では一定の関心を持って受け止められているらしい。
すっかり目も覚めてしまい、ニュースを見ながら身支度を整えて朝5時半、帳場の隅に部屋のカギをお返しして宿を出る。すっかり灯りの消えた朝の土手町繁華街には、昨夜の夜の香りがそこはかとなく残っていた。秘密のケンミンショー調べであるが、日本一の早起き県民は青森の人であるらしい。自分も土休日限定だけどこのくらいの時間には起きてしまうので、青森県民になる素質はあるんだよな。そして、それが旅先だとなおさら。宿でゆっくり朝ごはん・・・という思考にはなかなかならないの、いつも宿泊費がやや勿体ない泊まり方になってしまう。ただ寝るだけならカプセルホテルだってサウナだっていいわけなんだけども。
朝の中央弘前駅には、昨夜の最終列車で大鰐から戻って来た「りんごねぷた列車」がそのまま留置されていた。土淵川のほとりの駅は、いつ眺めても派手な風景はなくとも心に沁みてくるような味わいがあって、改めて愛着が出てしまう。中央弘前の始発電車は朝6:50と少々遅め。まだまだ電車の動く時間ではないので、折角レンタカーを借りていることもあるし、とりあえず朝の顔洗い的なお湯に行きます。津軽来て朝風呂しない理由がないのよ。青森県民の「三大早起きしてやること」と言えば「朝湯・朝市・農作業」なのでね(笑)。青森の温泉銭湯の朝の早さというものは、あなたたちいつ寝てるんですか?と聞きたくなるような早さで稼働していて、朝5時からオープンの温泉銭湯に朝5時に行ったらもう開いていて、浴室で4~5人のオッサンたちがお湯をザバザバ使っているのである。営業時間の概念って。
弘前市街から大鰐線に沿ってリンゴ畑の中を走る事30分、大鰐の温泉街に来ました。かつての津軽の奥座敷、温泉とスキーで栄えた街の面影は褪せつつありますが、今でもいくつかの雰囲気ある老舗宿と共同浴場が湯の街を守り続けています。お邪魔したのは「公衆浴場・青柳会館」。大鰐温泉の三つある共同浴場の一つ。200円で入れる街の共同浴場は、朝6時からのオープン。番台に座っていた気のいいおばちゃんが「どちらからいらしたの」なんて声をかけて来る。広いタイル張りの浴室に、なみなみと湯を湛えた大きな浴槽が一つ。無色透明にして清澄、温泉らしい温泉のビジュアルはピリッと44℃くらいの熱めで目が覚めます。肌触りにとろみがあっていいお湯ですね。
「お気をつけてネ」なんて送り出された大鰐温泉を後に、湯上りの体をクルマのエアコンをガンガンに効かせて宥める。今日も梅雨晴れのムワッとした暑さだ。津軽大沢の駅近く、大鰐線をオーバークロスする県道の上に陣取った。りんご畑の中に、農薬を噴霧する作業車が次々と入って行く。既に靄に霞んだような岩木山を見晴るかすストレートの遠くに、見えてからなっかなか近付いてこない大鰐線の始発電車の姿があった。気付いてくれたのか四種があるのか、電車は短いタイフォンを鳴らして足元を通り過ぎる。いやはや、こういう何の気ない地方私鉄の朝の一コマには、アタマの中の澱みたいなものを浄化する力があります。こういう風景が、どこかの誰かの「行ってみたいな」に繋がればいいなと思うのだけど。
朝7時。少し遅めの始発電車を、リンゴ畑で捕まえた。
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