(ことでんの心臓部@仏生山駅)
高松築港のお堀端を出て、軽のレンタカーで県道を南下。ことでんの車両基地と工場がある仏生山の駅にやって来ました。同じ高松市内ですが、築港や瓦町の辺りと比べるとだいぶ郊外感があるというか、少し古めの住宅街の中にありました。高松から南に降りてきた線路は、仏生山から西に針路を取って琴平方面に向かって行きます。ここから高松築港までは電車に乗ると15分くらいですかね。駅前の自転車の数を見ると、利用している乗客の数もなかなか多いようです。
レンタカーを駅に近いコインパーキングに置いて、まずは駅の周りをグルっと回り歩いて仏生山の車庫と工場を見学してみます・・・が、駅前の路地を曲がったところにいきなり120号(レトロ電車)が留置してあってビビる。何というか、もうちょっと大事にクラの中に保管されていると勝手に思っていたのだけど。そこに置きますか。目の前家やんけ(笑)。玄関開けたら5秒でレトロ。何という鉄道マニア冥利に尽きる家なのだろうか。まあたぶん家の住人は何とも思わない日常の風景でしかないのだろうけど。
マルーンとクリーム色のツートンカラーに塗られたこの1000形120号は、大正15年の高松琴平電気鉄道開業に際して準備された車両で、現役を引退後も仏生山の車庫で動態保存されて来ました。大正時代のクルマらしい武骨なリベット打ちと、波打った外側の鋼板が時代を感じさせますねえ。この車両を含めて4両の旧型車両が「ことでんレトロ電車」として月一回の運転を行っており、ことでんの人気のイベントだったのですが、先日「レトロ電車の廃車計画について」という公式発表により、とうとうお別れの時期が発表されてしまいましたね・・・
工場の奥に置かれていた500号。こちらの製造は昭和3年。開業時に用意された1000形の増備車という位置づけだったらしい。それにしても車齢90年を超えるオールドタイマーを、令和の世までよく4両も保存し実際に運行してきたものである。ただ、車両限界の小さい志度線では平成19年頃まではこのような旧型車が普通に現役で走り続けていたそうで、それはことでん自身の問題(平成13年の会社更生法申請)により設備投資や近代化のスピードが鈍化していたことも要因としてはあるのだろうなと。一気に旧型車の置き換えが進まなかった分、保守管理技術の継承や旧型車同士の部品のやりくりなど、レトロ車両を保存するためのバックボーンが維持されたのかもしれない。もちろん、更生法を申請した会社がこのような車両を経費をかけてまで今まで保存してきた事に敬意しかないのだけど。
会社側は、今回のレトロ車両廃車の理由を「老朽化した車両の保守費用などのコスト面・維持管理に当たる社員の技術継承の問題」と並行して、現在進められている複線化工事に際しての「仏生山の車庫のスペース不足」を挙げています。現在ことでんでは栗林公園~三条間の複線化と中間への新駅(伏石駅)設置が進められていますが、最終的に仏生山まで複線化となると、車両なんかも増備の検討をしなくてはならないし、複線化工事に際する工事用地も捻出しなければならないしで、正直なところ車両を置いておく場所がないのだろう。
そう考えると、駅から出たすぐ裏の路地にレトロ電車が置かれていたのは「あそこしか置き場がない」という車庫スペースの逼迫具合の結果だと納得してしまう。身近な事例では、小田急なんかも下北の複々線開通によるダイヤ改正と運用増で喜多見の車庫の中に置き場がなくなって、泣く泣く何両かの保存車を解体したという経緯があったのを思い出したね。鉄道マニアは無責任に引退させるな解体するな保存しろと騒ぐけど、複線化という「ことでんの未来」のために去って行くならば、それはそれで健全なのかもしれない。
これは翌日の夜に仏生山を訪れた際、路地裏に置かれていた23号。闇夜に潜む「琴電」由来のファンタゴンレッド。あれ、昨日はここにいたの120号だったのになあなんて不思議に思っていたら、どうやら「レトロ廃車」のプレスリリースがかかってから、週末は公式なイベント運行の他にも個人による貸し切り運行のお声がかかる事も多いらしいですね(どのくらいの¥で貸し切りやってるのか興味はあるな)。貸切は主に仏生山~琴電琴平間を運行するようで、おそらくイベント列車のスジと同じなんだろうなとは思う(別スジ引くのも面倒そうだし)。ひょっとしたら走行するシーンも撮れたのかもしれないけど、そーいう有料のフォトラン的なモノのおこぼれをあからさまにマニアが狙うのって結構主催者側とモメるんだよね(よーするに「貸切のカネ払ってねえヤツが撮るな!撮るならカネ払え!」的な考え方ね)。だから貸切って主催者と参加者は事前の情報は徹底的に秘匿するんだけど。話がそれた。
「仏生山」という何だかありがたいお名前の街に、それこそ生き仏様のように残された4両の古豪。計画では2021年のGWにて全車廃車となるようですが、幸いなことに何両かは引き取り手も見つかっているようですね。割と長めな花道を作ってくれたことでん関係者の皆様に感謝しつつ、残された日々を楽しむ事に致しましょう。
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