(画像:軒先のハイビスカス)
八丈島の家の垣根には、ハイビスカスが咲いている。
垣根の前で、日傘を差した老婆が暫く来ないバスを待っている。
八丈島は、スーツの人のいない島。
見ているだけで、のんびりとした風景だねえ。
●三日目
朝方昨日に引き続いてまたも20分のスコール。今日は寝坊して朝日を見に行くのを忘れた。朝飯は冷めた塩ジャケと小さな玉子焼きの寂しいおかずでコメをなるべく多く食う。今日は、登山ですから。
●八丈富士へ登る
今日も天気はピーカン。スコールの後の路面が太陽を浴びてモワモワと水蒸気を上げている。八丈富士は、八丈島の北西にそびえる独立峰で、高さは標高854m。今日の午前中は、この山に登ってみようと思う。
入念に宿で水と氷の準備を済ませ、いざ八丈富士へ。
地図を見ると、八丈富士には山腹に山を一周する鉢巻状の道路があり、そこから山頂へ徒歩でアプローチをするようだ。鉢巻道路の取り付きまでは車で行けるので、比較的楽チン。お手軽登山を楽しもうと言う訳。
まずは空港の裏手から続く登山道を上がってみる。これがなかなかの急勾配で、ハイゼットには辛い坂道だ。ベタ踏みしても上がらねえwまあ、854mとは言え良く考えたらほぼ海抜0mに近い場所から移動しているのだから、結構相対的な高度差はあるんだよな…。で、やはり海抜を上げるにつれて涼しくなって来た。下界はうだるように暑かったから、登山やるにゃあこれくらいでちょうどいいかも。鉢巻道路との合流地点辺りに展望台があって、登龍峠とは逆サイドからの展望が開けている。つか、空港がでけえなあ。ここからだと左が三根、右が大賀郷になります。
鉢巻道路に入ってすぐに登山口到着。頂上付近は青空が出たり雲が掛かったりと目まぐるしい空模様だが、まあ雨は降らなさそうだ。それにしても結構車で登ってきたつもりだったんだが、頂上まではまだまだあるなあ…w説明板によると、「ゆっくり歩いても一時間」らしいし、ここまで来て引き返すのは相当のヘタレだと思うので(笑)喜朗のクーラーから冷たい水を取り出して、タオルをかぶって準備万端。歩き始めるとしましょうか。
登り始めてから暫くは展望も開けず、なんともつまらない低木に囲まれた階段が続く。つか、登り始めて若干5分で既に心の臓がバクバク言ってて情けないんですがw地図を見るまでもなく、単独峰の登りってただただ登るだけだから辛いよな。尾根も鞍部もないし。またこの階段の幅が中途半端だし、岩が苔むしてて滑りやすいので余計に疲れるな。周囲の草木を照り付ける太陽で蒸れた空気の中、ダクダクの汗をかきながら男が肩で息をする。こんな真夏に山に登るのは伊達であり酔狂なのか、人っ子一人見当たらない登山道(笑)。ハイカーどうしたw
20分ほど登って、ようやく周囲の視界が開けて来た。雲の切れ間から見えるのは…おお、あれは昨日爆釣を納めた神湊漁港ではないか。つか、今日もあそこでのんびり釣りでもしとけばよかったよwもう遅いんだけど。登山道は間断ない階段の登りなので、どこで休んだらいいかペースがつかめず、とりあえず20段登ったら一休み、と言うペースを決めて黙々と登り続ける。ピーヒョロと言う鳥のさえずりと、何故かブンブンと飛ぶカナブンの羽音だけが聞こえる山登り。ヘタれてカメラを持つ手も既に水平が取れていないのはご愛嬌だwシャツは前も後ろも全面的に濡れてしまい、色が変わってしまった。水もしたたる何とやら。それでも上を見ると、刻一刻と山の稜線が近付いてくるのが救いだろうか…そんなこんなで登山口から40分。疲れてるんだけど、もう足を前に進ますしかないから。視界を遮るものは少なくなって来た。あと少しで、ようやく頂上。
登り切って、目の前に、八丈富士の火口が現れた。
火口は小さなカルデラ状になっていて、噴火で出来たと思われる中央火口丘を囲むように外輪山が続いている。火口はびっしりと低木に覆われていて、まーったく人の手の掛かってないその光景は不気味ささえ感じさせる。自分以外誰もいないというのもあるんだろうが。
不気味な火口から目を山麓に向けてみると、ただただ青い海が眼下に広がる。頂上付近から北斜面にかけてはガクアジサイと言う花の群落になっており、小さな花弁の向こうに海を行く船の白い航跡が見えた。
ここから本当の八丈富士の頂上までは、火口の周りを一周する「お鉢巡り」と言うルートを辿ってあと15分らしい。腰を上げて、いざと足を踏み出したのだが…
道は、自然に還っていた(笑)
ダメだこりゃw
戻りましょう。
●汗を流そう
山の下りは早いもので、自分の体重でどんどんスピードが上がってしまう。ペースを乱さないように降りて来たつもりだったのだが、車をデポした場所に戻って来たときには、膝がガクガクと大笑いの状態。山を降りてまずは「樫立向里温泉・ふれあいの湯」でパンツまでビショビショになった体の汗を流す。ここも塩分の強い茶色く濁った熱く塩辛い湯で、少し鉄の匂いもする。泉質はナトリウム塩化物強塩温泉。露天風呂付きのこんないい湯で300円とはお値打ち。里帰りしたらしい家族のじいちゃん&息子とそのガキが、仲良く入浴。島の暮らしを豊かにしているなあ。
●なんて素敵にオーシャンビュー
塩辛い温泉と言うのは、入っている時はいいのだが結局湯上がりに汗をかいてしまうもので、この後はまたも藍ヶ江の港へ行って泳いでしまったw滞在中に島の南部の温泉は全部制覇してしまおうと思っていたので、藍ヶ江の後は末吉地区の「末吉温泉・みはらしの湯」へ。暖まったり冷やされたりのハシゴ湯だ。ここは500円とこの島の中では割と高めの入浴料金のせいか、ほっとんど人がいなかった。受付のババアがヒマそうに入浴券をもぎる。
末吉地区の崖の上にあるこの温泉、「みはらし」と付けられたその名の通り、露天風呂からの眺めは…
なんて素敵なオーシャンビュー。
この島に来て、海ばかり見ている。空ばかり見ている。
ここでは、お湯に浮かぶ青空を初体験。
青にも、色々ある。
一人でぼーっと海を見ていたら、後から入って来た観光客らしいオヤジが一言。
「…明日から仕事なんて、どうでも良くなっちゃうなあ」
「仕事」、それはここではNGワード。
続く。
八丈島の家の垣根には、ハイビスカスが咲いている。
垣根の前で、日傘を差した老婆が暫く来ないバスを待っている。
八丈島は、スーツの人のいない島。
見ているだけで、のんびりとした風景だねえ。
●三日目
朝方昨日に引き続いてまたも20分のスコール。今日は寝坊して朝日を見に行くのを忘れた。朝飯は冷めた塩ジャケと小さな玉子焼きの寂しいおかずでコメをなるべく多く食う。今日は、登山ですから。
●八丈富士へ登る
今日も天気はピーカン。スコールの後の路面が太陽を浴びてモワモワと水蒸気を上げている。八丈富士は、八丈島の北西にそびえる独立峰で、高さは標高854m。今日の午前中は、この山に登ってみようと思う。
入念に宿で水と氷の準備を済ませ、いざ八丈富士へ。
地図を見ると、八丈富士には山腹に山を一周する鉢巻状の道路があり、そこから山頂へ徒歩でアプローチをするようだ。鉢巻道路の取り付きまでは車で行けるので、比較的楽チン。お手軽登山を楽しもうと言う訳。
まずは空港の裏手から続く登山道を上がってみる。これがなかなかの急勾配で、ハイゼットには辛い坂道だ。ベタ踏みしても上がらねえwまあ、854mとは言え良く考えたらほぼ海抜0mに近い場所から移動しているのだから、結構相対的な高度差はあるんだよな…。で、やはり海抜を上げるにつれて涼しくなって来た。下界はうだるように暑かったから、登山やるにゃあこれくらいでちょうどいいかも。鉢巻道路との合流地点辺りに展望台があって、登龍峠とは逆サイドからの展望が開けている。つか、空港がでけえなあ。ここからだと左が三根、右が大賀郷になります。
鉢巻道路に入ってすぐに登山口到着。頂上付近は青空が出たり雲が掛かったりと目まぐるしい空模様だが、まあ雨は降らなさそうだ。それにしても結構車で登ってきたつもりだったんだが、頂上まではまだまだあるなあ…w説明板によると、「ゆっくり歩いても一時間」らしいし、ここまで来て引き返すのは相当のヘタレだと思うので(笑)喜朗のクーラーから冷たい水を取り出して、タオルをかぶって準備万端。歩き始めるとしましょうか。
登り始めてから暫くは展望も開けず、なんともつまらない低木に囲まれた階段が続く。つか、登り始めて若干5分で既に心の臓がバクバク言ってて情けないんですがw地図を見るまでもなく、単独峰の登りってただただ登るだけだから辛いよな。尾根も鞍部もないし。またこの階段の幅が中途半端だし、岩が苔むしてて滑りやすいので余計に疲れるな。周囲の草木を照り付ける太陽で蒸れた空気の中、ダクダクの汗をかきながら男が肩で息をする。こんな真夏に山に登るのは伊達であり酔狂なのか、人っ子一人見当たらない登山道(笑)。ハイカーどうしたw
20分ほど登って、ようやく周囲の視界が開けて来た。雲の切れ間から見えるのは…おお、あれは昨日爆釣を納めた神湊漁港ではないか。つか、今日もあそこでのんびり釣りでもしとけばよかったよwもう遅いんだけど。登山道は間断ない階段の登りなので、どこで休んだらいいかペースがつかめず、とりあえず20段登ったら一休み、と言うペースを決めて黙々と登り続ける。ピーヒョロと言う鳥のさえずりと、何故かブンブンと飛ぶカナブンの羽音だけが聞こえる山登り。ヘタれてカメラを持つ手も既に水平が取れていないのはご愛嬌だwシャツは前も後ろも全面的に濡れてしまい、色が変わってしまった。水もしたたる何とやら。それでも上を見ると、刻一刻と山の稜線が近付いてくるのが救いだろうか…そんなこんなで登山口から40分。疲れてるんだけど、もう足を前に進ますしかないから。視界を遮るものは少なくなって来た。あと少しで、ようやく頂上。
登り切って、目の前に、八丈富士の火口が現れた。
火口は小さなカルデラ状になっていて、噴火で出来たと思われる中央火口丘を囲むように外輪山が続いている。火口はびっしりと低木に覆われていて、まーったく人の手の掛かってないその光景は不気味ささえ感じさせる。自分以外誰もいないというのもあるんだろうが。
不気味な火口から目を山麓に向けてみると、ただただ青い海が眼下に広がる。頂上付近から北斜面にかけてはガクアジサイと言う花の群落になっており、小さな花弁の向こうに海を行く船の白い航跡が見えた。
ここから本当の八丈富士の頂上までは、火口の周りを一周する「お鉢巡り」と言うルートを辿ってあと15分らしい。腰を上げて、いざと足を踏み出したのだが…
道は、自然に還っていた(笑)
ダメだこりゃw
戻りましょう。
●汗を流そう
山の下りは早いもので、自分の体重でどんどんスピードが上がってしまう。ペースを乱さないように降りて来たつもりだったのだが、車をデポした場所に戻って来たときには、膝がガクガクと大笑いの状態。山を降りてまずは「樫立向里温泉・ふれあいの湯」でパンツまでビショビショになった体の汗を流す。ここも塩分の強い茶色く濁った熱く塩辛い湯で、少し鉄の匂いもする。泉質はナトリウム塩化物強塩温泉。露天風呂付きのこんないい湯で300円とはお値打ち。里帰りしたらしい家族のじいちゃん&息子とそのガキが、仲良く入浴。島の暮らしを豊かにしているなあ。
●なんて素敵にオーシャンビュー
塩辛い温泉と言うのは、入っている時はいいのだが結局湯上がりに汗をかいてしまうもので、この後はまたも藍ヶ江の港へ行って泳いでしまったw滞在中に島の南部の温泉は全部制覇してしまおうと思っていたので、藍ヶ江の後は末吉地区の「末吉温泉・みはらしの湯」へ。暖まったり冷やされたりのハシゴ湯だ。ここは500円とこの島の中では割と高めの入浴料金のせいか、ほっとんど人がいなかった。受付のババアがヒマそうに入浴券をもぎる。
末吉地区の崖の上にあるこの温泉、「みはらし」と付けられたその名の通り、露天風呂からの眺めは…
なんて素敵なオーシャンビュー。
この島に来て、海ばかり見ている。空ばかり見ている。
ここでは、お湯に浮かぶ青空を初体験。
青にも、色々ある。
一人でぼーっと海を見ていたら、後から入って来た観光客らしいオヤジが一言。
「…明日から仕事なんて、どうでも良くなっちゃうなあ」
「仕事」、それはここではNGワード。
続く。