青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

みどりほほえむ季節

2012年05月07日 22時59分47秒 | 日常

(伸びゆく新東名@浜松SA)

浜松SAの展望台から新東名の都田川橋高架橋を俯瞰。山の中を一気に貫いて作った新東名の姿が良く分かる。ちなみに上り線の車列は浜松SAへの入場待ちの車列で、我々もこのSAに入るのに20分近く並んだ事を付け加えておきます(笑)。下り線のSAは高台を切り開いたところに作られていて、SAから本線への流入路が結構ありえないスケールになっちゃってるのもここの特徴かね。

 

喧騒の浜松SAで各方面へのお土産(笑)なんぞを購入しつつ島田金谷ICへ。島田金谷のICってのは大井川鉄道の線路の真上に出来たようなICで、これまでの東名相良牧之原ICから30分かかるアクセスが目覚ましく改善を致しました。駅で言うと五和駅の北側の横岡新田と呼ばれる辺りですが、そのままR473で南に降りればすぐSL始発駅の新金谷だし、北へ上がれば地蔵峠を抜けて家山なら15分程度。便利になったもんだ。


♪夏も近付く八十八夜…の時期、川根路は新茶の若々しい緑に包まれる。あんまりにもその新茶の緑がきれいだから、国道を逸れて茶畑の中の農道に踏み入ってしまった。山の斜面に伸びて行く茶畑の畝、その鮮やかさは蛍光色を纏ったようでもあり。

  

GWはSLも増発しいつものダイヤではないので、まずは本日のダイヤを確認しに家山駅へ。お、今日は三往復だ。いつもなら電気機関車で押される大井川のSLも、三往復の日は一本だけ補機なしになります。ダイヤでは返しのSL一本目が補機ナシになるみたいですね。家山駅の横の駐車場でジュースを飲みながら近鉄吉野。電車待ちの子供がはしゃぐ後ろに家山名物の桜並木。すっかり葉桜になりました。


一本目の補機ナシは「SLの見える丘公園」で。返しのSLは下り勾配が多いからあんまり煙を出さないものだけど、加えて今日は気温も高いからまーったく煙が見えません(笑)。それでも笹間渡発車に大井川の谷間に響き渡るSLの汽笛とドラフト音には癒されます。SLってのは音によるヒーリング効果もあるよね。


同じ位置から対岸の抜里駅付近を走るSLの姿を。抜里駅の周辺は広大な茶畑になっていて、その緑の中をゆるゆると走るSLの姿は一枚の絵を見ているようでもあり。これで煙が立ってたらもっと素敵な絵になってたと思うのだが、SLの煙に関しては水モノなんでしゃーないっす。悔しかったら通えって事でしょう。

 

2本目は笹間渡駅の発車を茶畑の茶摘み風景とともに。去年は原発事故の関係でお茶の話も色々と影響があったみたいですが、今年はどうなんでしょうねえ。一応何の話も聞こえて来ないですけど、お茶くらい安心して普通に飲める日が来るといいのですが。息子を連れて茶摘み中の畑の隅っこを失礼したのですが、茶摘み中のばあちゃんに教えてもらったけど茶摘みってのは上の若い芽をちょんちょんとむしって行くものなんですね。


最後の3本目は笹間渡のお隣である地名の駅で。駅の千頭方には索道覆いの短いトンネルがあるのですが、索道はとうの昔に撤去されて、トンネルだけが茶畑の中に奇妙な姿で残っております。トリを飾るC56、独特のタッタカタッタカと言うドラフト音が好き。人に言わせるとC56のドラフト音は仔馬のギャロップなんだそうだ。これ、本当ならタテ構図だったなあ。トンネルが目立ちゃしねえ(笑)。

SL見せないとメシも食わないと言う相変わらず無類のSL好きである我が子。「我が子のため」と言うエクスキューズがあるので、ここまでアクセスが良くなると大井川に来る機会が一層増えそうだ(笑)。下手すりゃ家から2時間弱で来れるからなあ。最近は撮ってばっかだから、今度は子供を連れて乗ってみようか。大井川の運賃は高いけどね!
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四文の得

2012年05月05日 18時00分32秒 | 日常

(夜明けの奥浜名湖@部屋の窓から)

今回は新東名をコンプリートするために三ケ日に宿を取ったのだが、珍しくリゾートホテルに宿泊してしまった。いつもなら渋いひっそりとした温泉宿が好みなんだけど、まあ家族がいるとこう言う選択肢もアリなのかなと。ひっさしぶりにバイキングなんか食っちまったぜ(笑)。リゾートホテルらしくお部屋はすべてレイクビュー、朝5時の奥浜名の夜明け。


家族と一緒だとテツ活動も制約を受けるので、じっくりと撮るなら早朝の時間が一番いい。
そっと部屋を抜け出して朝の奥浜名を走る天浜線を狙いに行きます。
ヨメさんと子供が起きるまでは何枚か撮れるでしょ!と言う事で車を走らせ、寸座駅からスタート。
高台から奥浜名の入り江を望む風光明媚な駅。

 

まだ4月の終わりだと言うのに朝から気温が高く、ムシムシとした空気の中で新所原行きの始発列車。
6時前の始発だと言うのに、地元民が一人乗車。
朝から利用者があると言うのも何だか嬉しくなってしまいますね。
駅を出ると、寸座から浜名湖佐久米にかけての小さなサミット、寸座峠に向けての登り坂。
THR2100のエンジンが唸る向こうには、朝もやに霞む奥浜名の入り江。


都築~三ケ日間では湖面に近い場所を走る天浜線。昨日車の窓からちらっとロケハンしていた場所で構える。
朝の静かな湖面にその姿を映して…


三ケ日でさっきの列車と交換した掛川行き始発列車。
新緑の息吹感じるトンネルを抜けて来ました。


浜名湖佐久米駅は、湖岸に最も近い駅。駅の目の前は浜名湖。
ちょっと朝日の逆光がきつくて撮り辛いが、入り江に舫われた船の横を行くTH。


三ケ日の街に流れる釣橋川の鉄橋を渡る。
遠く向こうに見る山は、遠州と三河を隔てる本坂峠。
今日もいい天気になりそうだな。朝練はこれで終了。

何食わぬ顔をしてホテルに戻って朝食。少し眠いが、旅先の早起きは三文どころか四文の得なのである。
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回る回るよ 時代は回る

2012年05月03日 19時48分17秒 | 日常

(青空に腕を広げて@天竜二俣車両基地)

車庫の片隅に残る腕木式信号機が、青空の下で腕を広げております。これは既に引退してるみたいですが、いかにもローカル線らしい風景です。現役の腕木式ってのはJRでは八戸線の陸中八木駅を最後になくなったようですが、まだ福島臨海とかには残ってるんじゃないかな。


さて、おばちゃんガイドに引率されて駅裏の通路を歩き車両基地方面へ。まず現れたのがSL時代の給水塔。コアなファンなら別に説明の必要もないものだろうね。当然これも文化財なんですが、現在も隣の井戸から水を引き上げて洗車機用の水源に使ってるらしい。用途は変わっても未だ現役で使われてるってのは珍しいのかな。おばちゃんの説明にも力が入ります。

  

木造の機関区詰所。正式名称は天竜二俣運転区事務室。当然登録有形文化財。杉板を外壁に使った建物は田舎の分校を思わせる雰囲気があります。色んな場所でこのようなものを見てますけど、明治から昭和初期にかけての木造および煉瓦作りの産業設備ってのは何だか自分の琴線に触れるんですよね。かと言って江戸時代以前のものに興味があるかと言われたらそんな事はないのだが(笑)。職員用の風呂場も登録有形文化財ってのはちとやり過ぎ感もありますが、この浴場で蒸気機関車のスス汚れを流していたんだなあと在りし日を偲べば、それもアリかと思ったり。

  

そして転車台と扇形機関庫。転車台には「鉄道省 昭和十二年横河橋梁製作所東京工場製作」の銘板が入ってます。結構この時期の年代物の鉄道橋梁って横河橋梁が作ったものが多い気がするなあ。と思って調べたら鉄道院時代からの橋梁製作の指定業者だったみたいですね。天浜線のDCは両運車だけなんで転回させる必要はないのですが、扇形機関庫と言う設備の形状上、転車台を動かさないと車庫に入れられないのでSLが去っても70年近くも現役。扇形機関庫と言えばみんなで山陰に行った時に津山でも見ましたけど、あれよりは小ぶりだよね。基本的に扇形機関庫ってのは円形にする事でスペースを取らずにたくさんの蒸気機関車を収容するための設備ですから、だいたいは屋根が高くて煙抜きの窓が付いているのが特徴。現存するのは全国でも10ヵ所程度みたいですね。

「では実際に動くところをご覧にいれまーす」

おばちゃんガイドの声のトーンもひときわ高くなる。「動かしてくれるんだね!」と趣味に付き合わされているヨメもちょっとご興味。息子は何だか良く分からないが、目の前に鉄道の車両がいっぱいいるから楽しいみたいだな。と言う事で先日の長野に続いてD90の動画機能で撮影してみました。


いつもより多めに2回転。ちなみに画面の端っこで見切れているのはウチの息子ではありませんので念のため(笑)。


扇形庫の横には、当時はSLの修繕用に使われていたであろう作業場を使って小さな資料館が開かれております。入っていきなり「空襲警報發令」と言う物々しい掲示板が…元々国鉄二俣線は日本が軍事色を強めて行く昭和15年に、国防の観点から軍部の要請によって全通した路線でもあります。浜名湖に架かる橋梁が連合軍の艦砲射撃によって破壊された際の代替ルートとしてのオーダーだったらしい。さらに歴史を紐解けば、天浜線に沿って浜松から本坂峠を通って豊川に抜ける道は姫街道と言って、江戸時代には浜名湖にあった新居の関所の厳しい監視を避ける裏街道として、ワケアリの人々が使う裏道であったそうな。東海道を光とするなら、影の部分にその意味があった天浜線なのであります。

  

薄暗い作業場に、部品加工用の旋盤やテーパーに交じって置かれた国鉄二俣線時代の遺品。そして、タブレット閉塞時代の通票や鉄道電話、信号テコ、鉄道荷物用の台秤。なかなか魅力のある品々を一個一個見ていたらキリがないのだが、昔はどこでも駅にはこんな感じの設備が一通りあったんでしょう。時代が流れても、光の当たらない裏街道然とした天浜線には、まだその時代の空気が残っていると言う事なんだろうねえ。真ん中に鎮座した遠江二俣駅のジオラマ、留置されている車両は国鉄色のキハ17。


軒下に干された作業服。坪庭の向こうには、そんな整備士さんたちの洗濯場が見える。
垣根の上に並べられているのは、整備士さんたちが使っているであろう大量の軍手。
天竜浜名湖鉄道天竜二俣運転区、今なお現役。
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五年越しのリベンジ

2012年05月01日 22時25分12秒 | 日常

(画像:浜松浜北IC)

御殿場JCTから新東名をゆるゆると走りつつ、SAなんかに寄りながらお昼前に浜松浜北ICで降りる。あれ、新東名コンプリートじゃなかったんか?と訝る向きには申し訳ない、三ケ日JCTはまだ先ですが、道活動の後は鉄活動もしっかりしなきゃいけません(笑)。あ、旧東名だと静岡から浜松って走ってても結構長げえなあなんて思ったのだが、新東名だと静岡~浜松の体感距離が短いような気がしますね。新静岡からトンネル越えて、大井川を渡って島田金谷から牧之原台地の北側をバンバントンネルで抜けるともう森掛川だし、そっから少し走れば天竜川を渡って浜松浜北ICですからね。朝早いので子供もヨメさんも夢の中。一人でK-MIX(FM静岡)とか聞いてたらあっという間に着いてしまったよ。

 

浜松浜北ICから天竜方面へ国道を北上し、やって来たのは天竜浜名湖鉄道天竜二俣駅。略称天浜(てんはま)線。確か平成19年の秋に掛川から新所原の全線を往復したんだっけかな。浜名湖の北岸を迂回するように走る第三セクターである天浜線の中間点にある主幹駅で、ここに同社の本社がございます。二面三線のホームと木製の上屋を持ち、東の掛川から来る列車、西の新所原から来る列車、半数程度はこの駅で折り返して行く系統の分断点でもあります。焦げ茶色の木造平屋建ての駅舎は昭和15年建造のものですが、駅出口にある丸ポストとかがいい感じですなあ。

  

駅前には交通の要衝らしく小さな公園があり、国鉄二俣線時代に活躍していたC58389号機が鎮座しております。ここ天竜二俣駅(当時は遠江二俣駅)には国鉄二俣機関区が置かれ、天竜川流域で切り出された材木や沿線の農産物なんかをせっせと貨車で出荷していたそうだ。秩父のC58363とナンバーが近いけど、あっちは川重製でこっちは汽車会社が作ってるんですね。最終的には汽車会社ってのは川重と合併してしまったのだけど。ローカル線向きとは言え、やはりテンダ機ってのはタンクとは迫力が違います。


時刻はお昼どき、まずは昼食をと言う事で、駅に併設されたラーメン屋「ホームラン軒」へ。静岡まで出て来てラーメン屋ってのもアレですが、天竜浜名湖鉄道は駅へのテナント誘致に熱心なのが特徴でしてね。ここの他にも宮口駅と浜名湖佐久米駅に喫茶店、金指駅にラーメン屋、西気賀駅には洋食屋、都築駅にはパン屋があり、特に西気賀駅の洋食屋「グリル八雲」は普通に評判らしいっすよ。金指駅以外は無人駅ですが、店を誘致する事で間接的に無人化を防ぎ、なおかつ駅の荒廃を防ぐと言う思惑なんだろ~ね。西気賀駅の洋食屋みたいに評判が良ければ、鉄道に乗って来ようと言う人も多少はいるだろうし…何より駅に店があるだけで、ややもすると失われつつある「地域における駅の存在感」の回復に繋がる効果はありそうですが。GW初日の昼時、「ホームラン軒」は近所の住民や天竜川畔を流すサイクリストで満員。勢いで注文したジャンボラーメン950円は、麺2玉&チャーシュー7枚&ニンニクの効いたワンタンが載った豪華版。麺はともかくバラ肉のチャーシューが胃に来る(笑)。細麺にスープはちょっと懐かし系のさっぱり味で、普通に美味しくいただきました。


さて、わざわざここまでただラーメンを食いに来た訳ではなくここからが本チャンの鉄活動。五年前の天浜線訪問時、天竜二俣駅の旧二俣機関区が見学出来る事を知り、いつかそのリベンジを果たそうと思っていたんですよね(笑)。果たそうと思っておいて既に時間はかなり流れていますが…その当時は入場券だけ買えば好きなように見れたようですが、今は一日一回、GWは午前と午後にそれぞれ一回見学時間が設定されて、ガイドの社員さん付きで案内をして貰えます。この会社、開業当時から残る古い施設を、平成23年に「産業的価値のあるもの」としてみ~んな登録有形文化財に登録し、そんなお上のお墨付きをこの鉄道は「国登録有形文化財を巡る旅」みたいなコンセプトでウリにしてしまいました(笑)。何だかそれって世界遺産ビジネスみたいだな。深読みすると、文化財登録しちゃえばそんな簡単に廃線に出来ないでしょ!ってのはうがった見方過ぎるのかなあ。

  

腹も膨れて、午後の見学時間まで駅の待合室で一休み。子供の手を引いて一緒に駅の中を危なくない程度に散歩してみると、ローカル線の駅とはいえさすがに本社を持つ主幹駅だけあって人の表情が駅にあります。交代する運転士、対向の列車を待ちながらフロントガラスをフキフキする運転士、GWを楽しそうに過ごすおじいちゃんと孫たち。都会のせかせか感と比べるべくもないのんびりした空気が、夏を思わせる日射しの下で流れているような感じでした。


ちょうど時間となりまして、集まった人数は20人程度。もっとマニアっぽい人種が集まるのかと思ったら、フツーの家族連れが多くて意外だったな。ともかく、そんなこんなで見学ツアーにそれなりの人数が集まるのだから戦略は成功してるのでしょうか。現れたガイドのおばちゃんの前説も終了し、構内踏切を渡って行く見学ご一行様。結構来るもんですねえなんて聞いたら、おばちゃん曰く「平日は苦戦しておりますです」との事だが…

と言う訳で、天竜二俣駅の文化財巡りは後篇へ続く。
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