青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

信濃平蒼雪

2019年01月20日 23時00分00秒 | 飯山線

(冬の守護神、現る@信濃平~戸狩野沢温泉間)

風に舞う雪を突き、道に積もる雪を払って信濃平を驀進するJRの新世代除雪車両・ENR-1000型。以前は真っ赤なDD16が担当していた冬の鉄路の守護神役ですが、現在は真っ青なカラーリングに身を包んだこの車両がその任務を請け負います。164Dの戸狩到着以降、約2時間に渡って戸狩~十日町を除雪運休にするというこの日のダイヤだったので、除雪基地のある飯山からENRが飛んでくるのを待って常盤の集落で迎え撃ち。


戸狩野沢温泉で飯山色と並んだENR。カラーリングがお揃いでお似合いのコンビですね。平成20年から飯山線に投入されたENR-1000は、これまでの除雪車の機能を色々と盛り込んで設計されていて、羽根を広げて線路脇の雪を切り崩すウイング、掻き込んで遠くに飛ばすロータリーヘッドと投雪用のローター、そしてウイングを折り畳めば片寄せ型のラッセルヘッドにもなるという除雪の十特ナイフのような車両です。


早速ウイングを開いて、構内の除雪から開始したENR。これまで除雪用に使われていたDD16とENRの大きな違いは、もちろん除雪性能もそうなのですが、あくまでDD16が機関車だったのに対してENRは線路保守車両という事になりましょうか。ここらへんがJR東日本が推し進める合理化のための保線業務の外注化への施策と関連しているような気がしないでもないのですが、まあ難しい話はひとまず置いておく事にしましょう。


恥ずかしながら、ロータリー型の除雪車が雪をぶん投げる姿は初めて見ましたもので、こんな小規模の構内除雪ですけれども結構興奮してしまいました(笑)。そりゃ信越山線みたいなDD14の豪快な投雪とか、只見の魚沼側みたいに積もった雪を段切りして大アーチを描きながら破間川に投げ込むみたいなシーンじゃないけどさ。結局この手の「大きな機械がなんかの作業をしているシーン」に興奮してしまうのは、幼少のみぎりに「はたらくくるま」なーんて絵本をキャッキャしながら見ている男の子の「メカメカしいものに反応してしまうDNA」にアツーくアツーく訴えかけてくるからなんでしょうね(笑)。
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飯山雪路

2019年01月19日 17時00分00秒 | 飯山線

(白き森の谷渡り@上境~戸狩野沢温泉間)

旧道の雪道を慎重に、一駅一駅に丁寧に止まりながら戸狩を目指す164Dを追う。上境の駅先、いいやま湯滝温泉の脇にあるガーター橋を見上げて。列車が通過すると、ガーター橋に積もった雪がはらはらと落ちてきた。雪覆いの小サミットを抜けて来る姿、飯山色のストライプが映えます。この小さな沢は、上流の温井(ぬくい)という集落から流れて来るようだ。飯山線は河岸段丘の段丘崖の下を走っていますが、温井は元々は千曲川の流路であった広い段丘面にある集落で、広々とした耕地が続いている。

 

走って行く飯山色を追い掛けて、戸狩野沢温泉はほぼ同時着。進行方向の幌側には雪がくっつき、床下には巻き込んだ雪の塊が台車に凍り付いている。越後川口から約70kmのロングラン。今朝の長総出区から考えたら既に180kmを走行しているのだから結構な走行距離である。軽油を満タンにしてキハ110がどのくらいの距離を走れるのか知らないけど、電車と違って内燃車は給油のタイミングなどを考えた車両運用を構築するのは大変なのではないかと思う。冬場と夏場では燃費も違いそうだしねえ。
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上境雪描

2019年01月16日 22時30分00秒 | 飯山線

(千曲川のシュプール@上桑名川~上境間)

真っ白な、真っ白な河岸段丘の森に沿って続く鉄路。鋼色の川の流れと、落雪除けの片持ちのスノーシェッドが飯山線らしさ満載の光景。戸狩野沢温泉~津南周辺まで、飯山線は千曲川と付かず離れずのランデブーを繰り返しますが、一番接近して走るのがこの上境の辺り。鉄道が走る前はもっぱらこの地区の交通手段は千曲川の水運によって行われていたそうですが、この雪国の隘路を切り開いた飯山鉄道(飯山線の前身)のスポンサーは、西大滝ダムの建設を推進した地元の電力会社だったとか。ダムの建設のため、そしてダム建設によって影響を受ける水運に代わる交通手段を確保するため、鉄道の建設が急がれたのではないかと思われます。


千曲の名の通り、地形に合わせて屈曲する川の流れ。特にトンネルを掘る事も、橋を架ける事もなく、大地に描いた流路に沿って優しく寄り添う飯山線の線路。桑名川から戸狩にかけては、あたかもスキーヤーがゲレンデに描くシュプールのように、流麗なS字を描いて走って行きます。線路がカーブしているのと、最高速度も65km/hと控えめな区間。追っ掛けていると、走っている列車には簡単に追い付いてしまう。下境の集落を、コトンコトンと飯山色が通り過ぎて行きます。
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桑名川酔雪

2019年01月14日 17時00分00秒 | 飯山線

(雪の桜並木…@桑名川~上桑名川間)

春には桜の美しい、桑名川は照岡の旧小学校脇。雪に静まった集落に踏切の警報音が響けば、積もった新雪を飛ばして雪の桜並木の向こうから飯山色が飛んでくる。大自然の中の風景も良いけれど、こういう雪国の里の風景も素敵なものだと思います。ってか、飯山色待ってる時に頭上の電線の雪が落ちて来て、アタマっからおもくそ雪かぶってしまった。つっめてええええ。


そして通過時の飯山色からの雪煙ブシャー。つっめてええええ(二回目)。トドメを刺される。よく見ると窓際に缶ビール並べて呑み鉄と洒落込んでるお客様もいらっしゃいますね。午前中から結構な事でございます。眦吊り上げて追っ掛けするのも良いけれど、ぼんやりと雪景色に目をやりながら、冷酒片手にほろ酔って行くのも、冬の飯山線の味わい方としては実に正しいものでしょう。

新潟支社には「越乃Shu*Kura」という呑み鉄に特化したような列車があるのですが、3月から11月の間に限って運行(上越妙高駅〜十日町駅)されておりまして、冬場の運行がありません。ぜひ冬場にも飯山線の十日町~長野あたりで「雪見酒Shu*Kura」とかやって欲しいんだけどなあ(笑)。新津のクルマであんまり長野支社管轄の飯山線には縁がないのか、そもそも冬季は除雪運休のリスクがあるので、酒肴の用意を伴ったびゅう商品が売りにくいのか、キハ40ベースの3連とか、雪の中に突っ込むのはリスクが高いのか。バリッバリの北信の雪景色をバックに走る姿も、見てみたいと思わなくもないな。
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田中雪中譜

2019年01月13日 17時00分00秒 | 飯山線

(雪の轍を踏んで@津南~越後田中間)

確か、去年も雪の時期に飯山線を訪れて、この田中の軽俯瞰からSカーブを見下ろしていた。その時も、飯山色は164Dに充当されていた。あの日と同じか。いや、雪の降り方だけは今日の方が激しいかな。手早く履いている長靴でガンガンと雪壁に足場を作り、二丁のカメラでターゲットを待つ。いつもなら風に乗って聞こえて来るはずのジョイント音が全く頼りにならないので、Sカーブの先の雪の森に目を凝らす。気温がそこまで低くないせいか、降る雪はすぐにべちゃべちゃとカメラやコートを濡らして鬱陶しいことこの上ない。雪が強いので遅れを持ってくるか…と心配していたのだが、これしきの雪は飯山線ではものの数ではないらしい。定刻きっちりに、飯山色がSカーブに姿を現しました。


雪の進軍、氷を踏んで…と言うのは大袈裟だけれども、大人の肩以上は確実に積もっているであろう雪の中を進む164D。秋の暮れ行く山々を眺めながら、ススキ輝く道を撮影したのがついこの間なのが信じられない。一面の銀世界である。雪壁の中を進む列車は足元までなかなか抜きにくいのが難点だけど、それも深雪の里を行く雰囲気と捉えればさもありなん。集落の道も至るところで繰り返し行われた除雪の結果、うず高く積もった雪の壁が迷路のように続いているのであった。


森宮野原を越え、雪はどんどん深くなっていく。これだけの雪に閉ざされる日々の暮らし。冬の間の雪国の、特に農業に生きる人は何をして生きているのだろうと不思議に思ってしまう。昔のように、春になったら農作業で使う草鞋や菅笠を編んで、秋に漬けた野沢菜を噛んで暮らしている訳でもないだろう。それこそ国鉄の時代には、冬場の沿線農家の人々はほうぼうで除雪要員として駆り出され、それが貴重な冬場の現金収入になっていたそうだが。

除雪の来ない道へ、カメラを抱えて腰まで埋まりながらの雪中行軍。
カンジキ買って来れば良かったぜ。
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