tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

長崎ちゃんぽん VS 奈良ちゃんぽん/昭和レトロ食堂(番外編1)

2021年09月03日 | グルメガイド
奈良県内の昭和レトロ食堂を追いかけていて、新発見があった。私は1978年(昭和53年)に奈良市に移り住んで以来40年以上、せっせと県内の食堂に足を運んでいたのに、今まで気づかなかったとはうかつだった。その新発見とは「奈良のちゃんぽんには、とろみがついている!」。これを知ったのは「昭和レトロ食堂」シリーズの第25回のために「和廣飯店」(奈良市)を取材したときのことだ(2021.8.20)。
※トップ写真は和廣飯店のちゃんぽん、たっぷりとろみがついていた

麺類のメニューがたくさん並んでいた。見ると醤油ラーメン、味噌ラーメン、カレーラーメン、もやしラーメン、野菜ラーメン、五目ラーメン、ちゃんぽん、エビ玉ラーメン、スタミナラーメン、フライ麺、焼きそばのすべてが税込み500円だった。例外的にジャンボラーメンとチャーシュー麺だけが同700円だった。これは良心的な価格設定である。ご主人の松田孝一さんに「なぜ皆、500円なのですか?」とうかがうと「計算しやすいからです」、なるほど。そこで私は「長いことちゃんぽんを食べていないな」と思い出し、ちゃんぽんと焼き飯(同500円)を注文した。出てきたのが写真のちゃんぽんだ。



「あれ、スープがずいぶん少ないな」と思いつつかき混ぜてみようとしたが、なかなか混ぜられない。強烈なとろみがついているので、箸が底の麺まで到達できないのだ。これは初めての体験だった。私は猫舌なので、とろみのついた料理は基本的に苦手だ。この時も食べ終わるまでに、ずいぶん時間を要した。時間がたつほど、とろみが固まるのだ。なお味はとても美味しく、単に食べにくいというだけなので、念のため。



あとで、この店を紹介して下さった年上の友人のKさん(もっぱら「出前」で和廣飯店を利用されている)にその旨お知らせすると、「ちゃんぽんにはとろみがついていましたか。出前では麺がのびるので、いまだ一度も麺類を食べたことがありません。一度、店で麺類を食べなくっちゃ。ちなみに僕はとろみがあるちゃんぽんというか、汁麺が苦手です。初めての店でちゃんぽんを注文する時は、とろみの有無を確認します。とろみ有り、との答なら他の料理に変えます」とのこと。Kさんも、とろみが苦手だったのだ。


大和軒本店の五目そば

その後、大和軒本店(天理市)、清眠(ちんみん)(大和郡山市)と立て続けに昭和レトロな「町中華」を訪ね、その都度「こちらのちゃんぽんにはとろみがついていますか?」と聞いたが、どちらも「とろみがついています、とろみのついていないのは五目そばです」。私は迷わず、どちらも五目そばをいただいた。


清眠の五目そば

その後、「奈良グルメ図鑑」の大和軒本店のところを見ると、〈天理発祥といわれるあんかけチャンポンは豚骨、鶏がら、煮干しを使った醤油ベースのスープに熱々のあん〉。さらに東来軒のところには〈天理市民会館近く、創業60年以上という老舗中華料理店。ここの人気メニューはチャンポン。熱々でとろみのあるスープを自家製麺にからめていただく〉とあった。天理の老舗が2軒とも「とろみあり」。天理発祥とするなら、おそらくこの2軒のどちらかが始めたに違いない。


リンガーハット「ミ・ナーラ店」のちゃんぽん(税込み650円)。9/1に撮影

ちなみに『世界大百科事典』の「ちゃんぽん」には〈長崎の名物料理。ブタ肉,イカ,小エビ,かまぼこ,ちくわ,たけのこ,シイタケ,キクラゲなどをラードでいためて調味したスープを加え,ゆでた中華めんともやしを入れてさっと煮上げたもの。スープを半量ほどにへらして同じ材料を煮,水溶きした片栗粉でとろみをつけて平皿に盛っためんの上にかけたのが「皿うどん」である。明治の中ごろ長崎にいた中国人の考案になるという〉。そうだ!とろみをつけた具材を麺の上にかけるのは「皿うどん」であって、ちゃんぽんではない。


白濁したとんこつスープがうまい!


麺は中太麺だ

念のため「長崎ちゃんぽん リンガーハット」を訪ねて注文してみると、やはり「ちゃんぽん」は太麺に白濁したとんこつスープと具材をかけたもの、「皿うどん」はパリパリの揚げ麺のうえに醤油味でとろみのついた具材をかけたものだった。揚げ麺は熱くないので、とろみがついていても食べるのには支障がない。


同「ならファミリー店」の皿うどんと餃子(同760円)と半チャーハン(同290円)、9/2撮影

Wikipedia「ちゃんぽん」には各地のちゃんぽんが紹介されている。目次には、

1.ちゃんぽん/2.和風スープのちゃんぽん/3.あんかけのちゃんぽん/
4.沖縄のちゃんぽん/5.韓国のちゃんぽん


と5種類のちゃんぽんが紹介されていた。「1.ちゃんぽん」には、長崎、小浜(長崎県)、久留米、戸畑(福岡県)、天草、水俣、三軒茶屋(東京都世田谷区)が載り、いずれも「リンガーハットの長崎ちゃんぽん」流のちゃんぽんが紹介されていた。


皿うどんの底には、細打ちのフライ麺が眠っていた

「2.和風スープのちゃんぽん」では彦根(滋賀県)、八幡浜(愛媛県)、福岡(ちゃんぽんうどん)が紹介されている。そういえば以前「秘密のケンミンSHOW」で、「ちゃんぽん亭総本家」(ドリームフーズ株式会社)の和風スープの「近江ちゃんぽん」が紹介されていた。

「3.あんかけのちゃんぽん」では、残念ながら奈良(天理)のあんかけちゃんぽんではなく、秋田の味噌味ちゃんぽんと〈日本各地に、醤油ベースのスープを餡掛け状にしたちゃんぽんも存在する。兵庫県尼崎市の「尼崎ちゃんぽん」(通称「尼チャン」)、和歌山県由良町の「由良ちゃんぽん」、鳥取県・島根県の「山陰ちゃんぽん」など〉が紹介されていた。日本各地にあったのだ。

つまり「皿うどん」(フライ麺、かた焼きそば)や「中華丼」にかけるとろみのついた具材をゆがいた麺の上に載せたのが「あんかけちゃんぽん」ということになり、これは文字通り「皿うどん」と「長崎ちゃんぽん」をちゃんぽんして(ミックスして)できたのだということがうかがえる。

「しかし、なぜ今まで気づかなかったのだろう」と我が身を振り返ってみると、私は「ちゃんぽんは中華屋さんではなく、専門店で食べるもの」という思い込みがあったことに気がついた。ちゃんぽんは、田原本町の「千蘭」(ちらん=天草ちゃんぽん、2020年3月に熊本に移転)や浪花麺だらけ(大阪難波)の「長崎ちゃんぽん 成有亭」(2007年2月に閉店し長崎に移転)、各地の「長崎ちゃんぽん リンガーハット」などでいただいてきた。ラーメン専門店のラーメンと、中華屋さんのラーメンが別物というのと同じ理屈からだ。

ここまで調べるのに手間がかかったが、何とか私もスッキリできた。皆さんの「ちゃんぽんライフ」のご参考になれば、幸いである。
コメント (4)
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