tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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田中利典師の「自分の命は、大自然、地球、宇宙とつながっている」

2023年05月01日 | 田中利典師曰く
金峯山寺長臈・田中利典師のブログ「山人のあるがままに」から、印象に残った過去の名作を紹介している。今回は「今年の奥駈修行が教えてくれたこと」(2007.6.29)。なお、当ブログで「利典師の文章だけを読みたい」という読者のために、「田中利典師曰く」というカテゴリを作り、そこにまとめたので、ご覧いただきたい。
※トップ写真は、吉野山の馬酔木(アシビ 2023.3.28撮影)

今回紹介するのは、この年の大峯奥駈修行を終えての師の感想である。師は何度か、このような感想をブログやFacebookに書かれている。般若心経の末尾の一節を、高田好胤さんが「往こう、往こう、彼岸に往こう、彼岸へ皆往こう、さとりに幸あれ」と訳していたことは今回、初めて知った。では利典師のブログ(2007.6.29付)から全文を紹介する。

今年の奥駈修行が教えてくれたこと
奥駈から帰ってきて早速仕事に復帰です。でも疲れが抜けずに眠くて眠くて、くたくたです。ただ今年も大きな感動を覚えたことがありました。忘れないうちに書き留めておかなくっちゃ…。

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今年の奥駈修行が教えてくれたこと
今年も大峯奥駈修行に参加した。そしていつも以上に大きな感動を覚えた山修行の日々となった。あれは奥駈2日目…、七曜岳遥拝所での勤行の時だったろうか?

霧もやに煙る山深い山容を前に、みんなで一心不乱に般若心経を唱えていたら、ちょうど「羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提娑婆訶(ぎゃていぎゃてい・はーらーぎゃてい・はらそうぎゃてい・ぼうじそわか)」と読み終えたそのとき、突然に「自分の目の前に広がる、草も木も、土も山も、空も空気も、全部が全部自分とつながっている。地球とつながっている。地球の命とつながっている。宇宙の命とつながっている…すべての命に幸いあれ!」って叫んでいるように私には聞こえた。

「羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提娑婆訶」を、あの薬師寺の高田好胤さんは「往こう、往こう、彼岸に往こう、彼岸へ皆往こう、さとりに幸あれ」と訳したことは有名だが、山伏修行での般若心経は、自分の命と大自然・大宇宙との命のつながりを、五体を通じて教えてくれたのだった。

人間も自然の一部でしかない。人のささやかな営みも自然の一部なのだ。もっと言うなら、神も仏も自然の一部だし、宇宙の一部だと私は思っている。神仏が自然そのもので、宇宙そのものと思ってもよい。そんな中で私たちは生かされて生きている。当たり前のようなことだが、今年の奥駈はその当たり前のことを目の当たりに教えてくれたのだった。

毎年同じ道を歩いている。でも毎年毎年歩く自分が違っているし、そこで見つめる自分自自身も違っている。奥駈修行はほんとに深い。年々、行くたびにからだはきつくなるけど、回を重ねるほどに、道を踏みしめるほどに、心のひだに沁みいるような大きな大きな感動を、実感している。
コメント
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