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田中利典師の「チベット旅行記」(6)

2024年09月10日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、〈「チベット旅行記」(6)〉(師のブログ 2016.9.5付)。今回の旅行のハイライト、白居寺・クンブム大塔の前で、師の一行は思わぬハプニングに見舞われる。どんなハプニングかは、本文をじっくりお読みいただきたい。
※トップ写真は、ハプニングに見舞われる直前の利典師(2006年)


白居寺とギャンツェ・クンブム。西遊旅行のHPから拝見した

「チベット旅行記」(6)田中利典著述集を振り返る280905
10年前に綴ったチベット旅行記のその6です。

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「白居寺の感動」ーその2
本堂参観に続いていよいよクンブム大塔へ向かう。「チベット密教中、最も優れた壁画群」が残る期待の場所である。ところが大塔前で、私と同行の一人が巡礼者たちに取り囲まれてしまった。

「あの二人は日本のお上人さまだ」と噂が立ち、次々とお加持を求める群衆が集まってきたのである。私たちが法衣姿で参観していたことが原因であろう。そのお加持をする姿を見て、次々と他の人も列を作り出した。

うわー、えらいことになったなあと思いつつ、群衆に乞われるまま二百人以上はお加持をしただろうか。何度も何度もお加持を願う人もいる。油でこてこてに固まった髪の毛ごしにひとりひとりお数珠でさすってあげるのだが、いよいよ際限がなくなってきた。

逃げようと、同行者を引っ張って、ついに這々の体(ほうほうのてい)で逃げ出したのであった。お上人様でもない私たちにはあれが限界だった。

なんとかクンブムに入る。ここは一階から右回りに仏画や仏像を拝みながら登るのだが、その道程は悟りへの過程になるように造られている。聞きしにまさる素晴らしい仏像、仏画群だ。

上に上がるほど悟りへの過程を昇るというのは、仏教の発展過程をなぞることでもあり、最上階には待ちわびた後期密教の無上瑜伽タントラ群が待っていたのである。

この夥しいかぎりの合体仏、秘密マンダラ群を見たとき、私の思い描いたチベット密教の最奥にようやくたどり着いた気がしたのである。

素朴で真摯な巡礼者たちに取り囲まれ、そして夥しいマンダラ画や仏たちに包み込まれ、これこそチベット仏教だ、というパルコン・チューデ(白居寺)感激のひとときであった。
※仏教タイムス2006年9月掲載「チベット旅行記」より
※写真はギャンツェ郊外白居寺前での筆者。このあと、書いたように、巡礼者に取り囲まれる。
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