エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

母のちぎり絵

2008-09-27 | 文芸

  父に先立たれた母は、月に1、2度ちぎり絵を習っていた。
 ときどき故郷会津の我が家へ来るとき、いくつかの作品を持ってきてくれた。

  母の作品のいくつかを壁に下げてある。本格的な額に入っている色紙をはずしスキャナーで取り込んだ。
階段の壁の紅い実の作品は、熟した柿と思っていた。身知らず柿が好きだった母が、故郷を思いながら制作したのだと思い込んでいた。でも、よくながめるとツルが見え、葉はブドウのようだ。そう言えば、鮮やかな紅い実は朱色だし、形も多少楕円形、これはカラスウリに違いないと結論づけた。

 母のちぎり絵の作品は、確かに年寄りの拙いものが多いが、この作品は素人の域を出た素晴らしいものだと思う。秋の自然を素直に見つめ、何日もかけて一生懸命つくったものだろう。たぶん母が米寿を迎えたころの作品だと思う。秋の自然に心なごむ、好きな作品だ。

 よく私のところに滞在するとき、母は私を真似て、スケッチブックに磐梯山を描き色鉛筆で染めていた。目も悪く、絵も上手いとは言えなかったが、絵心があったのだろう。そんな母の気持ちを嬉しく、懐かしく思い出した。

 母が一生懸命工夫して作ったちぎり絵をながめていると、元気なころの姿が浮かんで来た。