【咲き出したお気に入りの小菊】
午前中、妻と二人の家に静かなときが流れている。
庭に干してあるシャツに、赤トンボがとまった。近づいて顔を見ると真っ白なマイコアカネだった。 顔を触れるほどに手を近づけると、首をかしげた。しばし、思う存分に温かい小春日を浴びよと話しかけた。
昔書いた小さなエッセイ集を拡げた。
そこには、確かにあった「こころの足跡」があった。
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「もの思う感傷的な秋」
庭の花壇のヘリの色あせたチジミザサの叢に、オニヤンマの亡骸が横たわっていた。ついこの前、スイスイと庭を巡っていた雄姿がよみがえり、哀れを誘われた。また、張るに任せていた網を、ジョロウグモが緩慢な動きで繕っていた。季節はずれの風鈴がかすかに鳴り、さらにもの悲しさが漂いいよいよ秋の深まりを覚える。
今朝はこの秋一番の濃い霧が立ちこめた。散歩の畦道に、チカラシバの暗紫色の花序が朝露にぬれ、ひときわ幻想的に美しく印象に残った。刈り取り後の切り株を眺めながらしばし佇むと、田植えの梅雨のころや真夏の陽にむせかえるような香り、そしてついこの間の実りて頭を垂れるイネの情景などが次々と思い浮かんで来た。秋の深まりを覚えながら、やがてこの田にも雪が降り積もり、吹雪の中、夜空を焦がすどんと焼きの炎を思った。
秋は、どうして物思い、感傷深くなるのだろうか。繰り返し移ろう時の流れを思い、心静かに人生を思った。
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午前中、妻と二人の家に静かなときが流れている。
庭に干してあるシャツに、赤トンボがとまった。近づいて顔を見ると真っ白なマイコアカネだった。 顔を触れるほどに手を近づけると、首をかしげた。しばし、思う存分に温かい小春日を浴びよと話しかけた。
昔書いた小さなエッセイ集を拡げた。
そこには、確かにあった「こころの足跡」があった。
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「もの思う感傷的な秋」
庭の花壇のヘリの色あせたチジミザサの叢に、オニヤンマの亡骸が横たわっていた。ついこの前、スイスイと庭を巡っていた雄姿がよみがえり、哀れを誘われた。また、張るに任せていた網を、ジョロウグモが緩慢な動きで繕っていた。季節はずれの風鈴がかすかに鳴り、さらにもの悲しさが漂いいよいよ秋の深まりを覚える。
今朝はこの秋一番の濃い霧が立ちこめた。散歩の畦道に、チカラシバの暗紫色の花序が朝露にぬれ、ひときわ幻想的に美しく印象に残った。刈り取り後の切り株を眺めながらしばし佇むと、田植えの梅雨のころや真夏の陽にむせかえるような香り、そしてついこの間の実りて頭を垂れるイネの情景などが次々と思い浮かんで来た。秋の深まりを覚えながら、やがてこの田にも雪が降り積もり、吹雪の中、夜空を焦がすどんと焼きの炎を思った。
秋は、どうして物思い、感傷深くなるのだろうか。繰り返し移ろう時の流れを思い、心静かに人生を思った。
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