■ガス本来の性能を引き出す装置■
前回のガス編でも触れたが、沸点が高いノーマルブタンが多く配合されている低価格帯のガスであっても、性能を引き出す方法がある。今回はその「ガス本来の性能を引き出す装置」を紹介していこう。
「ガスの種類によって温度は異なるが、低温で火が着かなく」なり、「使い続ければ使い続けるほど気化熱が奪われ、缶内が更に冷えて悪循環が起こる」のは前回の説明で記したとおりだが、特に後者は「ドロップダウン」という言葉が使われている。
各社から販売されている燃焼器具の一部にはその低温&ドロップダウン対策が施され、その結果、低温下であっても価格の安いノーマルブタン100%缶が使用可能になっているモデルがあるから、「知らなきゃ損」の話なのだ。
■ブースター(ヒートパネル)を装備した器機■
低温&ドロップダウン対策で一般的なのはイワタニ製を始め、各社が販売する家庭用のカセットコンロの多くでも採用している「ヒートパネル」がある。
その機能と効果はイワタニの説明によると、
「ガスの気化を促進し、ガスを最後まで使い切るようにヒートパネル方式等の加温装置を採用しています。 」
「ヒートパネルやバーナーからの熱や輻射熱により、ボンベの上面は熱くなります(60℃から70℃位)が、容器(ボンベ)の下面はそれほど熱くはなりません。(ボンベの下面は液体のガスがあるため)」
とあるが、つまりこの装置は、火口から出る炎の熱を金属パネルを通じてボンベに伝える装置だ。その装置の有無は、「カセットコンロ」と呼ばれる、家庭用のコンロの場合はボンベ室を覗いてみるとすぐに判る。ボンベを抱き込むように金属板が配置され、その金属板をたどれば火口まで続いていることで存在が確認できるだろう。
同様の装置が「ブースター」などと呼ばれてアウトドア用の燃焼器具の一部にも採用されており、例えばランタンだと下の写真
●ユニフレームUL-Xのブースター●
のように、火口とボンベ室を繋ぐ銅製、もしくは真鍮製のパネルが装着されていることで確認できる。
しかし、ランタンでは中~大型の3機種、「ユニフレームのUL-X」と「SOTO(新富士バーナー)のST-233(虫の寄りにくいランタン)」、そして新富士バーナーがアルペングループ用にOEM供給している「ランタンCB-550」にしか装着されていないようだ。
機種は限られるが、ウレシいことに、この3機種は全てカセット缶規格だ。したがって、気温が下がっていても最初に火さえ着けば、このブースターが缶を暖めてくれるおかげで、ノーマルブタン100%の格安缶であっても、火力の低下が少ないままでの使用が可能になる。但しその場合は、イソブタンが高濃度に配合されている、例えばユニフレームのプレミアムガスを装着した時よりも少し明るさが落ちることと、器具とガス缶のメーカーが別になるので、あくまでも自己責任での使用になることを理解しておいて欲しいが…。
残念ながら、アウトドア缶を採用したモデルのランタンにブースターを装着した機種は見あたらない。したがってアウトドア缶仕様のランタンを手にした場合は、現状ではそれがハイパワー(=明るい)であればあるほど比例的に気化熱が奪われるので、低温時には純正品の割高なハイグレード(寒冷地対応)ガスを使わざるを得ないことになる。
目をバーナー(ストーブもしくはコンロ)に向けると、もう少しブースター採用機種が増えてくる。
●ユニフレームUS-1800のブースター(1900と共通仕様)●
上段で触れたイワタニ社製の家庭用カセットコンロ「カセットフー」シリーズは、ほとんどの機種でヒートパネル(ブースター)を採用しているし、それをマネてか、他社でもブースター類を装備する製品は多い。更に、家庭用のカセットコンロには法律上、ボンベの圧力が4~6kg/平方cmになると自動的に火が止まる安全装置の取付が義務化されているから、そう言った意味では安全で基本性能の高いモデルが多いのだ。
また、家庭用のスタイルをとりながら、初めからアウトドアユースを想定したモデルもあるので、それらであればそのまま内外兼用で使うこともできる。しかし、特別にアウトドアユースをうたった製品でなくても、防風対策をすればアウトドアでの使用も基本的に可能だ。(「雰囲気」は無いけど…。)
目をアウトドア用品メーカー製に向けると、カセット缶対応機種では2バーナーの「ユニフレームUS-1900(USシリーズの最新モデル)」のみがブースターを標準装備している。
別売りで対応しているのは、「SOTOのツーバーナー及び3バーナー」の3機種だ。特にSOTOでは「ガスシンクロナス・システム」(http://www.shinfuji.co.jp/contents/products/soto/burner.html#st525 を参照)も同時に採用しているので、ドロップダウン対策としては更に強力だ。(ボク自身が実際に使用したことはないので「受け売り」だけど…。)
アウトドア缶対応のツーバーナーでは新富士バーナーがOEM供給している、「アルペングループ用2バーナーのD-X 2バーナー11000」の1機種しか販売されていないようだ。
また、アウトドア缶対応のシングルバーナーではEPIが別売りで対応しているが、このメーカーは、シングルバーナーのみの展開であるし、プロパンを高濃度に配合した高性能ガス缶や、缶自体に気化促進機能を付けたモノも合わせて販売していることから、その狙いの中心は冬山での性能向上にあると思う。
■缶の使い分け■
ガスの適応温度が広がるブースター機能についての理解があれば、低温時であっても様々な配合率が存在するガスの中から、「自己責任」ではあるものの、最適なモノを段階的に選ぶことによってコストダウンがはかれるようになる。
例えばイワタニのオレンジ缶は前回に示したようにノーマルブタンが70%、イソブタンが30%の構成比だが、外気温が低くなって、それまで使っていたノーマルブタン100%の格安缶では火がほとんど付かない状況になっても、このオレンジ缶だと30%入っているイソブタンがまず先に着火し、その熱がブースターを伝って缶を暖めることによって、残り70%のノーマルブタンにも継続して火が着くようになる。現在オレンジ缶は250gあたり約182円だが、ブースター無しの器機では低温下だと、より高価なガスを使わざるを得ない。しかも配合具合によっては、沸点の高いガスが缶内に気化せず残ってしまうだけに、その価格差がかなり大きくなるのだ。
ただし、バーナーように点火、消火を繰り返す器機よりも、継続して燃焼させることの多いランタンの方が熱循環の途切れが少ないので、よりブースターの効果が高くなるということは理解しておいて欲しい。
■ブースターを使わない低温対策■
技術は進歩し、ブースターを装備しなくても低温時に安定して燃焼するよう、工夫している製品も一部にある。
SOTO(新富士バーナー)では、「マイクロレギュレター」というシステムを導入した結果、かなりの低温下であってもノーマルブタンに火が着くようになっている。
ボクが実際に使用していて、その効果を実感しているが、「youtube」でもこのシリーズのランタンに、-10℃に冷やした格安カセット缶を装着して燃焼させる実験がアップされているから、その効果を確認してみるとイイだろう。(http://www.youtube.com/watch?v=y3oWpYYjOLg)
その他、このレギュレーターを搭載したSOTO製アウトドア缶対応モデル「SOD-300」の対比実験も面白く、効果が判りやすいので見て欲しい。(http://www.shinfuji.co.jp/ECweb.html (「下段の●『マイクロレギュレーターの効果』を動画で見る。」を参照)
ちなみに、このSOD-300は厳しい目を持つと言われている、アメリカ、ドイツ等のアウトドア専門誌から表彰されているから、ある種のお墨付きだ。
●マイクロレギュレーター搭載のランタン「SOTO ST-260」●
●マイクロレギュレーター搭載のバーナー「SOTO ST-310」●
「youtube」内の、-10℃に冷やしたノーマルブタン100%缶を装着&燃焼させた実験で見比べてみると、大量のガスを出して燃焼させるバーナーよりも、一定量を燃焼させ続けることの多いランタンの方が、より効果が大きいようにもとれる。(ブースターと同じ結果のようだが、意味は違う。)
しかし、一般的なキャンプでは氷点下の気温の中で1日を過ごすことは少ないだろうから、極限に近い話はさて置いて、バーナー、ランタン共に未対策の器機との組合せだと失火し始める10℃以下の温度帯であっても、ノーマルブタン100%の格安ガス缶が普通に使えるメリットの方が計り知れないことだと思う。
上記の他には「液出しタイプ」というシステムがある。これは缶を通常とは逆さまに(倒立)セッティングすることでガス化していない燃料を直接液体のままで取り出し、ガソリンバーナーのように火口の熱で強制気化させて燃焼させるシステムだそうだが、缶内の気化状況には影響されないので当然低温には強くなる。
しかし、液出しとガス出しの両方に対応したタイプでは「作動が不安定になるから、通常はガス出しで」と説明している場合もあるし、同一モデルであっても海外では液出しOKでも日本国内では不可という場合もあるので、一般的ではなく、緊急的な場合のみに対応しているともとれる。
その他、一部に液出し専用タイプもあるにはあるが、今のところ品数が少なく、器機そのものがベラボーに高価だし、その特性から、専用缶の指定をより厳しく守る必要があるので、高いランニングコストが更にのしかかってくることを覚悟しなければならない。
■番外として■
ここまで、「ガスの能力を引き出してコストを下げる方法」について説明してきたが、ここで更に番外として「熱を効率よく拾う鍋」を紹介したいと思う。
実は、バーナーの火口から出た熱の多くは、鍋の底に当たった後は外周から逃げて大気へと放出されてしまうそうだ。その逃げる熱を効率よく拾う鍋が数社から販売されており、ボクも3種類を所有している。
高効率の鍋を使用すると燃料消費が押さえられるので、持ち込む燃料が少なくて済むから、少しでも荷物の重量や体積を減らしたいという、登山者のニーズがあって開発されたようだ。だから初めのうちはソロユース(個人用)のサイズが中心だったが、日本では未発売であるものの、今では容量2.9L程度までがラインナップされている。
●右端がプリムス、それ以外はジェットボイルの製品●
コノ手の鍋の湯沸かしの早さは特筆すべきモノがある。例えばカップ麺用に湯を沸かす場合、ストーブに水を張った鍋を乗せ、箸を用意し、カップの袋をフタをはがし終わった頃には既に沸いているといった感じだ。(要するに猛スピードということ)
こういった鍋はバーナーとのセット販売が多いのだが、ボクの場合は鍋だけ単体で買ったモノとセットで買ったモノが混在している。
●このヒダが集熱してくれる●
所有物の中からボクは最速の湯沸かし装置になる組合せを探っているが、今のところ上述のSOTO-ST310とジェットボイル1.5Lクッキングポットの組合せが好感触だ。
●SOTO ST-310との組合せ●
このあたりは、さほどこだわらなくても火口から出る炎の拡散具合と、鍋の面積のバランスさえ合えばかなりのスピードで湯が沸く=熱効率が格段に高くなることを頭に入れておくだけでイイと思う。
しかし、高効率な鍋を見てつくづく思うことは、パテントの問題等はあろうかと思うが、家庭用のヤカンや鍋などに導入すれば省エネ効果間違いなしなのに、「ナゼどこもやらないのか?」ということだ。
「でも、それが元で鍋類が高くなるのなら、結局アウトドアマン以外は買わんだろうな…。」それが結論なのかも?。
以下、ランタン編に続く。
※前回の「ガス缶編」と今回の「気化促進装置編」で、バーナーとはメーカーの違うガス缶を使用する際は「自己責任で」と書き続けているが、カセット缶対応の燃焼器具をメインに販売する新富士バーナーのH.P.内で下記のような記述を見付けた。
ライフラインが寸断され電力やガスの供給が停止した時、カセットボンベを燃料とした器具が役立ちます。カセットボンベはホームセンターなどで手軽に準備しておくことをおすすめします。また、災害時の支援物資としても比較的手にいれやすい燃料です。同じ規格であれば1本のカセットボンベを調理バーナーやランタンなどに使いまわすことが可能ですから無駄なく燃料を使うことができます。
前回でも「最近では語気が弱められている」と書いたが、メーカー自身でも上記のようにカセット缶の流用を容認する姿勢が示されているのはウレシイ限りだ。
付け加えれば、1998年以降に生産され、JISに適合したガス缶は、全長の寸法差が0.8mm以下に抑えられて互換性があるそうだ。その結果、1999年3月に液化石油ガス法が改正されて、ガス缶に「同一メーカー同士でないと使用不可」という表示義務は無くなったということだ。現在でもJIS適合製品でありながら、一部の製品にその表示が残っているのは、「組み合わせでガスが出にくいことがまれにある」としたメーカー側の”自主的”な行為なのだそうだ。
シロートのボクが言うのもナンなので、詳しくは京都府消費センターのH.P.内「http://www.pref.kyoto.jp/shohise/15400109.html」を参照のこと。
前回のガス編でも触れたが、沸点が高いノーマルブタンが多く配合されている低価格帯のガスであっても、性能を引き出す方法がある。今回はその「ガス本来の性能を引き出す装置」を紹介していこう。
「ガスの種類によって温度は異なるが、低温で火が着かなく」なり、「使い続ければ使い続けるほど気化熱が奪われ、缶内が更に冷えて悪循環が起こる」のは前回の説明で記したとおりだが、特に後者は「ドロップダウン」という言葉が使われている。
各社から販売されている燃焼器具の一部にはその低温&ドロップダウン対策が施され、その結果、低温下であっても価格の安いノーマルブタン100%缶が使用可能になっているモデルがあるから、「知らなきゃ損」の話なのだ。
■ブースター(ヒートパネル)を装備した器機■
低温&ドロップダウン対策で一般的なのはイワタニ製を始め、各社が販売する家庭用のカセットコンロの多くでも採用している「ヒートパネル」がある。
その機能と効果はイワタニの説明によると、
「ガスの気化を促進し、ガスを最後まで使い切るようにヒートパネル方式等の加温装置を採用しています。 」
「ヒートパネルやバーナーからの熱や輻射熱により、ボンベの上面は熱くなります(60℃から70℃位)が、容器(ボンベ)の下面はそれほど熱くはなりません。(ボンベの下面は液体のガスがあるため)」
とあるが、つまりこの装置は、火口から出る炎の熱を金属パネルを通じてボンベに伝える装置だ。その装置の有無は、「カセットコンロ」と呼ばれる、家庭用のコンロの場合はボンベ室を覗いてみるとすぐに判る。ボンベを抱き込むように金属板が配置され、その金属板をたどれば火口まで続いていることで存在が確認できるだろう。
同様の装置が「ブースター」などと呼ばれてアウトドア用の燃焼器具の一部にも採用されており、例えばランタンだと下の写真
●ユニフレームUL-Xのブースター●
のように、火口とボンベ室を繋ぐ銅製、もしくは真鍮製のパネルが装着されていることで確認できる。
しかし、ランタンでは中~大型の3機種、「ユニフレームのUL-X」と「SOTO(新富士バーナー)のST-233(虫の寄りにくいランタン)」、そして新富士バーナーがアルペングループ用にOEM供給している「ランタンCB-550」にしか装着されていないようだ。
機種は限られるが、ウレシいことに、この3機種は全てカセット缶規格だ。したがって、気温が下がっていても最初に火さえ着けば、このブースターが缶を暖めてくれるおかげで、ノーマルブタン100%の格安缶であっても、火力の低下が少ないままでの使用が可能になる。但しその場合は、イソブタンが高濃度に配合されている、例えばユニフレームのプレミアムガスを装着した時よりも少し明るさが落ちることと、器具とガス缶のメーカーが別になるので、あくまでも自己責任での使用になることを理解しておいて欲しいが…。
残念ながら、アウトドア缶を採用したモデルのランタンにブースターを装着した機種は見あたらない。したがってアウトドア缶仕様のランタンを手にした場合は、現状ではそれがハイパワー(=明るい)であればあるほど比例的に気化熱が奪われるので、低温時には純正品の割高なハイグレード(寒冷地対応)ガスを使わざるを得ないことになる。
目をバーナー(ストーブもしくはコンロ)に向けると、もう少しブースター採用機種が増えてくる。
●ユニフレームUS-1800のブースター(1900と共通仕様)●
上段で触れたイワタニ社製の家庭用カセットコンロ「カセットフー」シリーズは、ほとんどの機種でヒートパネル(ブースター)を採用しているし、それをマネてか、他社でもブースター類を装備する製品は多い。更に、家庭用のカセットコンロには法律上、ボンベの圧力が4~6kg/平方cmになると自動的に火が止まる安全装置の取付が義務化されているから、そう言った意味では安全で基本性能の高いモデルが多いのだ。
また、家庭用のスタイルをとりながら、初めからアウトドアユースを想定したモデルもあるので、それらであればそのまま内外兼用で使うこともできる。しかし、特別にアウトドアユースをうたった製品でなくても、防風対策をすればアウトドアでの使用も基本的に可能だ。(「雰囲気」は無いけど…。)
目をアウトドア用品メーカー製に向けると、カセット缶対応機種では2バーナーの「ユニフレームUS-1900(USシリーズの最新モデル)」のみがブースターを標準装備している。
別売りで対応しているのは、「SOTOのツーバーナー及び3バーナー」の3機種だ。特にSOTOでは「ガスシンクロナス・システム」(http://www.shinfuji.co.jp/contents/products/soto/burner.html#st525 を参照)も同時に採用しているので、ドロップダウン対策としては更に強力だ。(ボク自身が実際に使用したことはないので「受け売り」だけど…。)
アウトドア缶対応のツーバーナーでは新富士バーナーがOEM供給している、「アルペングループ用2バーナーのD-X 2バーナー11000」の1機種しか販売されていないようだ。
また、アウトドア缶対応のシングルバーナーではEPIが別売りで対応しているが、このメーカーは、シングルバーナーのみの展開であるし、プロパンを高濃度に配合した高性能ガス缶や、缶自体に気化促進機能を付けたモノも合わせて販売していることから、その狙いの中心は冬山での性能向上にあると思う。
■缶の使い分け■
ガスの適応温度が広がるブースター機能についての理解があれば、低温時であっても様々な配合率が存在するガスの中から、「自己責任」ではあるものの、最適なモノを段階的に選ぶことによってコストダウンがはかれるようになる。
例えばイワタニのオレンジ缶は前回に示したようにノーマルブタンが70%、イソブタンが30%の構成比だが、外気温が低くなって、それまで使っていたノーマルブタン100%の格安缶では火がほとんど付かない状況になっても、このオレンジ缶だと30%入っているイソブタンがまず先に着火し、その熱がブースターを伝って缶を暖めることによって、残り70%のノーマルブタンにも継続して火が着くようになる。現在オレンジ缶は250gあたり約182円だが、ブースター無しの器機では低温下だと、より高価なガスを使わざるを得ない。しかも配合具合によっては、沸点の高いガスが缶内に気化せず残ってしまうだけに、その価格差がかなり大きくなるのだ。
ただし、バーナーように点火、消火を繰り返す器機よりも、継続して燃焼させることの多いランタンの方が熱循環の途切れが少ないので、よりブースターの効果が高くなるということは理解しておいて欲しい。
■ブースターを使わない低温対策■
技術は進歩し、ブースターを装備しなくても低温時に安定して燃焼するよう、工夫している製品も一部にある。
SOTO(新富士バーナー)では、「マイクロレギュレター」というシステムを導入した結果、かなりの低温下であってもノーマルブタンに火が着くようになっている。
ボクが実際に使用していて、その効果を実感しているが、「youtube」でもこのシリーズのランタンに、-10℃に冷やした格安カセット缶を装着して燃焼させる実験がアップされているから、その効果を確認してみるとイイだろう。(http://www.youtube.com/watch?v=y3oWpYYjOLg)
その他、このレギュレーターを搭載したSOTO製アウトドア缶対応モデル「SOD-300」の対比実験も面白く、効果が判りやすいので見て欲しい。(http://www.shinfuji.co.jp/ECweb.html (「下段の●『マイクロレギュレーターの効果』を動画で見る。」を参照)
ちなみに、このSOD-300は厳しい目を持つと言われている、アメリカ、ドイツ等のアウトドア専門誌から表彰されているから、ある種のお墨付きだ。
●マイクロレギュレーター搭載のランタン「SOTO ST-260」●
●マイクロレギュレーター搭載のバーナー「SOTO ST-310」●
「youtube」内の、-10℃に冷やしたノーマルブタン100%缶を装着&燃焼させた実験で見比べてみると、大量のガスを出して燃焼させるバーナーよりも、一定量を燃焼させ続けることの多いランタンの方が、より効果が大きいようにもとれる。(ブースターと同じ結果のようだが、意味は違う。)
しかし、一般的なキャンプでは氷点下の気温の中で1日を過ごすことは少ないだろうから、極限に近い話はさて置いて、バーナー、ランタン共に未対策の器機との組合せだと失火し始める10℃以下の温度帯であっても、ノーマルブタン100%の格安ガス缶が普通に使えるメリットの方が計り知れないことだと思う。
上記の他には「液出しタイプ」というシステムがある。これは缶を通常とは逆さまに(倒立)セッティングすることでガス化していない燃料を直接液体のままで取り出し、ガソリンバーナーのように火口の熱で強制気化させて燃焼させるシステムだそうだが、缶内の気化状況には影響されないので当然低温には強くなる。
しかし、液出しとガス出しの両方に対応したタイプでは「作動が不安定になるから、通常はガス出しで」と説明している場合もあるし、同一モデルであっても海外では液出しOKでも日本国内では不可という場合もあるので、一般的ではなく、緊急的な場合のみに対応しているともとれる。
その他、一部に液出し専用タイプもあるにはあるが、今のところ品数が少なく、器機そのものがベラボーに高価だし、その特性から、専用缶の指定をより厳しく守る必要があるので、高いランニングコストが更にのしかかってくることを覚悟しなければならない。
■番外として■
ここまで、「ガスの能力を引き出してコストを下げる方法」について説明してきたが、ここで更に番外として「熱を効率よく拾う鍋」を紹介したいと思う。
実は、バーナーの火口から出た熱の多くは、鍋の底に当たった後は外周から逃げて大気へと放出されてしまうそうだ。その逃げる熱を効率よく拾う鍋が数社から販売されており、ボクも3種類を所有している。
高効率の鍋を使用すると燃料消費が押さえられるので、持ち込む燃料が少なくて済むから、少しでも荷物の重量や体積を減らしたいという、登山者のニーズがあって開発されたようだ。だから初めのうちはソロユース(個人用)のサイズが中心だったが、日本では未発売であるものの、今では容量2.9L程度までがラインナップされている。
●右端がプリムス、それ以外はジェットボイルの製品●
コノ手の鍋の湯沸かしの早さは特筆すべきモノがある。例えばカップ麺用に湯を沸かす場合、ストーブに水を張った鍋を乗せ、箸を用意し、カップの袋をフタをはがし終わった頃には既に沸いているといった感じだ。(要するに猛スピードということ)
こういった鍋はバーナーとのセット販売が多いのだが、ボクの場合は鍋だけ単体で買ったモノとセットで買ったモノが混在している。
●このヒダが集熱してくれる●
所有物の中からボクは最速の湯沸かし装置になる組合せを探っているが、今のところ上述のSOTO-ST310とジェットボイル1.5Lクッキングポットの組合せが好感触だ。
●SOTO ST-310との組合せ●
このあたりは、さほどこだわらなくても火口から出る炎の拡散具合と、鍋の面積のバランスさえ合えばかなりのスピードで湯が沸く=熱効率が格段に高くなることを頭に入れておくだけでイイと思う。
しかし、高効率な鍋を見てつくづく思うことは、パテントの問題等はあろうかと思うが、家庭用のヤカンや鍋などに導入すれば省エネ効果間違いなしなのに、「ナゼどこもやらないのか?」ということだ。
「でも、それが元で鍋類が高くなるのなら、結局アウトドアマン以外は買わんだろうな…。」それが結論なのかも?。
以下、ランタン編に続く。
※前回の「ガス缶編」と今回の「気化促進装置編」で、バーナーとはメーカーの違うガス缶を使用する際は「自己責任で」と書き続けているが、カセット缶対応の燃焼器具をメインに販売する新富士バーナーのH.P.内で下記のような記述を見付けた。
”災害時にはカセットボンベが役立ちます”
ライフラインが寸断され電力やガスの供給が停止した時、カセットボンベを燃料とした器具が役立ちます。カセットボンベはホームセンターなどで手軽に準備しておくことをおすすめします。また、災害時の支援物資としても比較的手にいれやすい燃料です。同じ規格であれば1本のカセットボンベを調理バーナーやランタンなどに使いまわすことが可能ですから無駄なく燃料を使うことができます。
前回でも「最近では語気が弱められている」と書いたが、メーカー自身でも上記のようにカセット缶の流用を容認する姿勢が示されているのはウレシイ限りだ。
付け加えれば、1998年以降に生産され、JISに適合したガス缶は、全長の寸法差が0.8mm以下に抑えられて互換性があるそうだ。その結果、1999年3月に液化石油ガス法が改正されて、ガス缶に「同一メーカー同士でないと使用不可」という表示義務は無くなったということだ。現在でもJIS適合製品でありながら、一部の製品にその表示が残っているのは、「組み合わせでガスが出にくいことがまれにある」としたメーカー側の”自主的”な行為なのだそうだ。
シロートのボクが言うのもナンなので、詳しくは京都府消費センターのH.P.内「http://www.pref.kyoto.jp/shohise/15400109.html」を参照のこと。