■ ヒトがするデザインには意味のない、つまり特にこれといった役割のないものもある。デザイナーが気まぐれで「なんとなく」するデザイン。意味のあるのがデザインだとすれば、意味の無い気まぐれなデザインはデザインとは言えないのかもしれない・・・。
これに対し、自然(造物主、神)のデザインにはすべて意味がある。ならば、蝶の翅の鱗粉にも意味、役割があるはずだ。それが知りたい。ネットで検索すると、水に濡れないようにするためという答えが出てくる。鱗粉は水をはじくので、雨が降った後でも翅が濡れず、すぐ飛び立つことができるというわけだ。でもそれだけだろうか・・・。
自室の書棚でこんな本を見つけた。2003年3月発行と奥付にあるから、7、8年前に読んだのだろう。この本にもしかしたら先の疑問の答えが出てくるかもしれない。再読してみよう。
ヒトと昆虫とでは可視光線の領域が違っていて、昆虫は紫外領域を感受できる。モンシロチョウの雄と雌の翅はヒトには同じ色に見えるが、彼らには全く違う色に見えている。ヒトにはモンシロチョウの雄雌の区別が視覚的にはつかないが、彼らははっきり区別できている。
著者は雌の翅を花嫁衣装に喩えて、**モンシロチョウの雄を魅了し、交尾行動に駆り立てるものは、雌がまとっているまぼろし色の打ち掛けであることにほとんど疑いありません。**(45頁)と書いている。
その打ち掛けの柄は鱗粉でできているのだ。
**雄が交尾した雌に自分の子を産ませるために編み出した、第二の戦術は驚きに値します。雄はなんと、交尾栓、つまり貞操帯で雌の交尾口を封じるのです。**(134頁)
「家内安全、子孫繁栄」 神様のデザインの意味は全てここに通じている、ということなのであろう・・・。
**しかし、交尾栓の交尾阻止効果は必ずしも完全ではないようです。ギフチョウなどある種のチョウの雄は、前の雄が残した交尾栓を取り除くことがあるからです。(135頁)
やれやれ。
メモ)
ドイツのカール・フォン・フリッシュは1967年にミツバチが紫外線を感受できることを発見している。その後いくつかの昆虫で同じことが知られるようになった。
まえがきに**本書を中高生と一般の方々を念頭に置いて書き記しました。**とあるが、確かに興味深い内容が平易な表現で分かりやすく書かれている。
「モンシロチョウ キャベツ畑の動物行動学」 小原嘉明/中公新書