透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「虚空の冠」

2013-03-20 | A 読書日記



■ 楡 周平の『虚空の冠』、今日(20日)下巻を一気に読み終えた。文庫化するとき副題の「覇者たちの電子書籍戦争」を加えたそうだが、この説明的な副題が必要だったのかどうか。私は不要だったと思う。

上下巻で約730ページの長編は終戦から3年後のある事件から始まる。極東日報の掛け出し記者の渋沢大将(ひろまさ)は緋色島で発生した火災取材に船(きく丸)で向かう。当時遠距離の情報伝達手段として一般的だった鳩と共に。

船はアメリカの軍艦に衝突されて日本人50人と共に沈没する。この時衝突した軍艦は救助活動もせずに現場を立ち去った・・・。アメリカ軍艦の当て逃げ事件。この不祥事は日米間の政治的判断によって隠蔽される。

漂流の末、ただ一人救助された渋沢大将。

時は流れて現代。高層ビルから見る夜の東京、光の洪水。

渋沢は日本最大のメディアグループのトップの座に就いている。メディアグループとIT業界の寵児率いる通信事業会社との「プラットフォーム」と「コンテンツ」を巡る熾烈な戦い。

戦いの勝利、新メディアの確立に貢献した功績による最高位の叙勲。渋沢は成功の頂点を手にして、人生の終焉を迎えることができるかと思われたが・・・。ラスト、戦後のあの事件の真相が明らかにされる、それも鳩によって。

長編を一気読みさせる楡 周平の力量に脱帽。


 

 


413 白馬村の火の見櫓

2013-03-20 | A 火の見櫓っておもしろい


413 北安曇郡白馬村北城森上の火の見櫓 撮影日130319

 白馬村は長野オリンピックでジャンプなどの競技が行われた村です。この写真の後方に写っているのは、八方尾根スキー場ではないかと思います。まだまだ積雪量が多く、スキーが楽しめます。この火の見櫓の脚元にもこのように雪が残っています。

梯子の段数はざっと数えて20段あります。間隔を40センチメートルとすると、見張り台の床面まで約8メートルの高さです。床面から屋根のてっぺんまでの高さを約3メートルとみると、この火の見櫓の高さは約11メートルとなります。それ程高くは見えませんが案外高いんですね。高いところが苦手という人は上ると怖いでしょう。



3角形の櫓に円形の屋根と見張り台、よく見かけるタイプの火の見櫓です。特徴を探せば、手すりがやけに高いということでしょうか。屋根との間が狭いです。

昨日(19日)は風が強く、半鐘が大きく揺れていました。近くに吊るしてある木槌(写真に写っています)が時々半鐘に当たって、カ~ン、カ~ンといい音をたてていました。それほど大きな音ではありませんでしたが。



残念ながら櫓の下部に脚がありません。ブレースを1ヶ所設置しないで櫓内部への出入りを容易にしています。このような省略型も珍しくありません。

防錆塗装をしたばかりのようで、火の見櫓全体がきれいです。このようにきちんとメンテナンスをしてある火の見櫓を見るとうれしくなります。地域の人たちが今でも大切にしていることの証ですから。