透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「11 男はつらいよ 寅次郎忘れな草」 

2021-06-28 | E 週末には映画を観よう

根無し草の寂しさ

 週末の夜は寅さん。昨日(27日)は寅さんシリーズ第11作「寅次郎忘れな草」を見た。

例によってとらやで大喧嘩して旅に出た寅さん、北海道は網走へ。夜汽車で寅さんはひとり涙する美女・リリー(浅丘ルリ子)を見かける。街なかでリリーから声をかけられた寅さん、ふたりは連れ立って漁港へ。ここで印象的な会話が交わされる。

「故郷(くに)はどこなんだい?」と寅さん
「故郷? ないね、私」と答えるリリー

「兄さん 何て名前?」
「葛飾柴又の車寅次郎ってんだよ」

港から漁船が出ていく。父親を見送る母親と子ども達。ふたりはこの光景を見ながら会話する。さみしそうな表情のリリー。

旅回りの歌手・リリーと寅さんとは似た者同士、だが、リリーには故郷も家族もなく(母親がいるにはいるが)、寅さんには故郷・柴又があり、とらやに家族がいる。この決定的な違い・・・。

寅さんシリーズのテーマである「故郷と家族」がこの第11作では際立っている。

柴又で寅さんと再会したリリーはとらやで家族のあたたかさに浸り、寅さんは幸せだなと思う。

何日か後の深夜、リリーが酔っぱらってとらやを訪ねてくる。この時の寅さんの大人の対応はなかなか好い。似た者同士だと思っていたのに私と寅さんは全然違う・・・。根無し草の寂しさに泣くリリー、このシーンにぼくは涙、涙。

その後リリーは歌手をやめて、すし職人と結婚。リリーからとらやに届いたはがきを頼りにさくらは店を訪ね、旦那(毒蝮三太夫)と幸せそうに店を切り盛りするリリーと再会する。そのころ寅さんは再び北海道へ。上野駅の食堂でお兄ちゃんを送るさくら、財布にお金が入っていないと分かり、自分の財布を取り出して・・・。このシーンにも涙。

リリー(浅丘ルリ子)はこの後、4作(*1)に出演する。幸せそうな暮らしは続かなかったのだろうか・・・。


*1 第15作、25作、48作、49作