■ 寅さんシリーズ第32作「口笛を吹く寅次郎」を観た。この作品でもマドンナが寅さんの気持ちを確認する場面が印象に残る。
備中高梁、博の実家の菩提寺・蓮台寺の娘さん(朋子 竹下景子)がマドンナ。
高梁に来ていた寅さんは蓮台寺で博の父親のお墓参りをする。そこで朋子さんに会って、寅さん一目惚れ。お茶でも一杯と誘われた寅さん、いつの間にか和尚さん(2代目のおいちゃんを演じた松村さん)と居間で飲んでいる。で、寅さんそのまま寺に泊まることに。翌日、二日酔いの和尚に代わり寅さんが檀家の法事をする。「南無大師遍照金剛」法話もこなして無事法事を務めた寅さん。その後はすっかり寺の人に。
さて、途中省略で、ラスト。とらやを訪ねてきた朋子さんを見送って寅さんはさくらと柴又駅へ。ホームでの寅さんと朋子さんの会話。
「ごめんなさい」と朋子さんが切り出す。
「え、何?何が・・・?」
「いつかの晩のお風呂場のこと」
「え、何だっけな」ここでも寅さんはとぼける。
「あ~、あのことか」
「あの三日ほど前の晩に父が突然お前今度結婚するんやったらどげな人がいいかって訊いたの」
「それでね・・・、それで、私・・・」
「寅ちゃんみたいな人がいいって言っちゃたんでしょ」
朋子さん頷く。
「和尚さん笑ったろ。おれだって笑っちゃうよ。ハハハ なあ、さくら」
「ね、寅さん。私、あの晩父ちゃんの言うたことが寅さんの負担になって、それでいなくなってしまったんじゃないか思うて、そのことをお詫びしに来たの」
「おれがそんなこと本気にするわけねーじゃねーか」
落胆した朋子さんは
「そう」
「じゃ、私の錯覚・・・」と悲しそうな表情に。
「安心したか」という寅さんのことばに朋子さんは目を潤ませ、首を横に振る。
「お兄ちゃん東京駅まで送ってあげたら」とさくら。
「もういいの、私はこれで。さくらさんありがとうございました」
シリーズ中、最も印象的な場面と言っていいだろう。
光枝さんは寅さんの優しさに惹かれ、朋子さんは寅さんの明るさ、楽しさに惹かれたんだろうな。