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■ 角田光代現代語訳の『源氏物語』を読み進めながら、他の小説なども読んでいる。4月の読了本は6冊だった。買い求めたまま、読んでいない作品を読み終えたら、『源氏物語』と源氏関連本だけにしようかとも思うが、新聞の書評欄などを読むと読みたいと思う本が次々出てくる。
『本所おけら長屋 十八』畠山健二(PHP文芸文庫2022年)
このシリーズ、いつまで続くのか分からないが追っかける。
『人新生の科学 ニュー・エコロジーがひらく地平』オズワルド・シュミッツ(岩波新書2022年)
**人類のさまざまな活動は、「人新世」と呼ばれる新たな地質時代をもたらした。その影響を世界規模で考え、持続可能な社会を維持するには、人間と自然を一体として捉える思考、ニュー・エコロジー(新しい生態学)が必要だ。社会経済のレジリエンスを高め、人類が「思慮深い管財人」として自然と向き合うための必読書。** カバー折返しの本書紹介文にはこのように書かれている。決して無関心ではいられないテーマについて書かれた本だが、ひたすら字面を追うだけだった。
『さがしもの』角田光代(新潮文庫2021年第26刷)
9編の本の物語。
表題作。「その本を見つけてくれなきゃ、死ぬに死ねないよ」病床のおばあちゃんに頼まれた本を探し求める私。
『マザコン』角田光代(集英社文庫2011年第3刷)
8編の短編で描きだされる母親の諸相。
『九紋龍 羽州ぼろ鳶組③』今村翔吾(祥伝社文庫2022年第14刷)
火消時代小説で江戸の火消事情を知る。**半鐘の打ち方によって意味が異なる。一打は「火元遠し」、二打は「火消出動」、連続して打てば「火元近し」、鐘の中に木槌を差し込んで搔きまわす乱打は「火焔間近」の意である。**(92頁)
**源吾は櫓の下から呼びかけた。方角火消は通常より高い火の見櫓の設置が許されており、よく遠くが見通せる。**(201頁)
※ 文中太文字化は引用者による。
『昭和の名短篇』荒川洋治 編(中公文庫2021年)
収録された14篇の中では小林 勝の「軍用露語教室」と佐多稲子の「水」、深沢七郎の「おくま嘘歌」 この3篇が印象に残った。敢えて1作品を挙げるなら「おくま嘘歌」。
おくまには子どもがふたりいる。ある日、おくまは娘のサチ代の嫁ぎ先へバスに乗っていく。
**サチ代が、
「あれ、おばあちゃんが来たよう、坊の顔を見たくて」
と言ってこっちを向いた。孫の顔を見たくて来たのだとサチ代は思ってるので、
「坊の顔を見たくて来たのオジャンけ」
とおくまは嘘を言った。シゲオの顔も見たいが娘のサチ代の顔を見たくて来たのである。
だが、シゲオの顔を見たくて来たと言った方がサチ代は喜ぶだろうと思ったからだった。**(134頁)
この短篇には娘や嫁、家族に思慮して暮らすおくまの様子が描かれている。いいなぁ、昭和の静かな小説。