透明タペストリー

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「日本狛犬大全」

2024-12-24 | A 読書日記


『日本狛犬大全』荒 勝俊(さくら舎2024年)

 この本の新聞広告を見て即買いしていた。狛犬好きとして、関連本は読みたいと思っているので。著者の荒 勝俊さんは生物学、生物工学の研究者。30年ほど前に狛犬沼というそれこそ底なし沼にヌマって今日に至っておられるようだ。

関東、北海道・東北、中部、近畿・中国、四国・九州・沖縄と全国を5つのブロックに分け、各ブロックの個性的な狛犬を紹介している。その数270体。写真は全てカラー。

この本に書かれている狛犬の歴史を読む。**中国では皇帝の守護獣として獅子像が定着しており、それを見た遣唐使が日本に持ち帰ってきてから、宮中にその文化を持ち込みました。これが日本独自の「狛犬」のはじまりで、時期は平安時代中期から後期といわれています。**と書かれている。

このことについて、『新・紫式部日記』には次のような描写がある。彰子の出産。**中宮の出産ということで、土御門第には宮中から一対の獅子・狛犬が、中宮の御帳台の守護のため運び込まれた。**(114頁)この小説の作者・夏山かほるさんはもともと古典文学の研究者、このような文化的背景にも詳しい方なのだろう。

『日本狛犬大全』に戻ろう。

獅子、狛犬を見たことがない石工たちは想像をめぐらせ、造形したのだろう。掲載されている写真を見ると、実に多様な姿で楽しい。欲を言えば、文章をもっと減らし(って、それ程多くはないが)、文字サイズも小さくして、掲載写真をできるだけ大きく掲載して欲しかった。