■ 今月読んだ本、4冊。
『終らない旅』小田実/新潮社
ベトナムのホテルで偶然再会したふたり。男は日本人、女はアメリカ人。男がかつてアメリカに留学した時に知り合った女性との奇跡の再会。「偕老同穴」の恋のはずだった・・・、しかし男は阪神大震災で死亡、女は9.11に衝撃を受けて病没。
ふたりの恋をべトナムに神戸に辿ることになるそれぞれの娘、久美子とジーン。
戦争とはなにか、平和とはなにか、そして民主主義とは・・・。小田実の思索が恋愛小説という形式を通じて綴られていく。
例えばこんなくだり。
**「私の母はよく言っていました。」ジーンは久美子の反応に力を得たのか、先刻よりも自信のこもった、そう久美子に感じられた声で、軽くウェーブのかかった薄栗色の髪に手をやりながら言った。
「民主主義は、価値の多様性を政治的に容認、保障するとともに、各価値観の対等、平等関係を政治的、社会的に形成、維持する政治技術だ、と。」
久美子はそのあともつづけようとするジーンを、また「ジーン」と呼んでさえぎった。「私の父も私によく同じようなことを言っていました。」
ふたりの恋は理性的で良識的だった、と思う。
『風花』川上弘美/集英社
真人(まこと)、マコちゃんはのゆりの叔父。この物語はふたりが東京駅で待ち合わせて東北の温泉に出かけるところから始まる。
ふたりが叔父、姪の関係だという設定が不自然だと感じさせないところがこの作家。
**「ねえマコちゃん、わたし、離婚した方がいいのかな」のゆりが突然聞いた。真人は答えなかった。考えているらしい。
雪はまるで空気よりも軽いものであるかのように、なかなか地面には落ちず空中をただよっている。
「風花(かざはな)っていうんだっけ、こういうの」真人は言った。**
雑誌「すばる」に連載された恋愛小説、「風花」から季節は巡って「下萌」までの13章。
さて5月はどんな本と出会うことになるだろう。
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