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■ 正直に書く。ぼくはこの作家をずっと原田ハマだと思っていた。書店で平積みされている本を見て、アート小説か、原田ハマって確かキュレーターをしている人だったな、などと・・・。この本も我が村の文化祭の企画「中古本プレゼント会」で見つけた。あ、原田ハマの本だ、読んでみようと思って。家でカバーを見ていてようやく気がついた、あ、ハマじゃない、マハだと。源氏物語に鬚黒という人物が出てくるが、ぼくは黒鬚だと思い込み、ブログにもそう書いていた(気がついて訂正したけれど)。思い込みってこわい。
さて、『モダン』原田マハ(文春文庫2018年)はMOMA(ニューヨーク近代美術館)が舞台の短編集。MOMAは大規模な増改築が行われ、2004年に再オープンしたけれど、その設計者は1997年の国際コンペで選ばれた谷口吉生氏。谷口氏の作品はあまり見ていないが、豊田市美術館、土門拳記念館、法隆寺宝物館が印象に残っている。長野市にある信濃美術館の東山魁夷館も谷口氏の設計。どの作品も隅々まで端正で実に美しい。
収録されている5編の短編には3.11、そう東日本大震災と福島第一原発の大事故やニューヨークの9.11が取り上げられている。
「中断された展覧会の記憶」 3.11の時、福島の美術館で開催中だった「アンドリュー・ワイエスの世界」展にMOMAは「クリスティーナの世界」を貸し出していたが、連れ戻すことにする。やはり放射能の影響が心配されたのだ。で、MOMAの展覧会ディレクターの杏子がその役で日本へ飛び、福島へ向かう。ふくしま近代美術館で対応した学芸員の長谷部伸子と杏子との僅かな時間の交流、ふたりの間で交わされる言葉がなかなか好い。
原田マハさんは美術作品に関わる仕事を経験してきているだけに、リアルなフィクションだと感じた。開催される作品展の裏側には人間ドラマがあるんだなぁ・・・。