■ 窪田空穂記念館(松本市和田)で開催中の「空穂と源氏物語」を23日に見てきた。なお、この企画展の会期は10月27日まで。
空穂が現代語訳した「桐壺」の原稿
歌人で国文学者の窪田空穂が源氏物語を現代語訳していることは知っていた。学生時代から源氏物語に親しんで以来、最晩年まで関心を寄せていたという。会議室が展示会場に充てられ、源氏物語の現代語訳原稿などが展示されていた。
上段:昨年(2023年)作品社から刊行された窪田空穂訳の『源氏物語』全4巻(各巻2,700円+税)
下段:マンガ『源氏物語 あさきゆめみし』大和和紀
会場には窪田空穂(昭和)の他に与謝野晶子(明治)、瀬戸内寂聴(平成)、角田光代(令和)の「桐壺」の書き出しの訳文を並べて展示してあった。読み比べると違いがあり、興味深い。
会場に掲示されていた解説文によると、空穂の現代語訳の特徴は逐語訳にあるという。逐語訳って? 原文の一つの文章をそのまま一つの文章として訳す方法、と説明されていた。このために原文を読むにはもってこいの教科書を評されていたと、館内で得た別の資料にある。
資料に続けて書かれていた文章を載せる。
**文章の持つ味わいは説明し難いものであるが、強いて言うと情熱を抑えた緊張味のある文章で、したがって音楽的(リズミカル)な文章である。しかもその文章は気品を備えていて、読みはじめると人の心を捉え、心を落ち着かせつつ引っ張ってゆくのである。文章の魅力という言葉があるが、これは源氏物語の文章の評語として生まれて来たかの感さえあるほどである。**
原文を読まなければ分からない源氏物語の魅力を説いた文章。原文を読むことなどとても無理、現代語訳を読んだということで満足、ということにしておこう・・・。
以前書いたことがあるけれど、源氏物語全54帖(もちろん現代語訳)を再読するのはとてもできそうにないが、宇治十帖だけならできそうな気がする。2023年に窪田空穂訳の『源氏物語』が刊行されていたことは知らなかった。さて、どうする。空穂訳で宇治十帖を読んでみようかな・・・。