■ スターバックス松本なぎさライフサイト店の顔見知りの店員さんのひとり、Hさんが最近(2024.08.27)オープンした松本笹部店に移動したことを知った。昨日(27日)の朝、笹部店に行ってみた。Hさんがわざわざカウンターから出て来て、私の名を呼び、にこやかに迎えてくれた。
ホットのショートをマグカップで、と注文する必要はもちろんなかった。
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この数日、忙しくて、本を読む時間が取れていなかった。毎日少なくとも1時間は本を読もうと思っているのに・・・。持参した『R62号の発明・鉛の卵』安部公房(新潮文庫1974年発行、1993年24刷)を小一時間読んだ。新しい店舗はやはり気持ちが良い。
自室に安部公房の作品が新潮文庫で23冊ある。既に15冊読んだ。残り8冊を月2冊をノルマにして年内4か月で読み終えようと考えているが、今月はこの『R62号の発明・鉛の卵』1冊しか読めそうにない。
『R62号の発明・鉛の卵』には安部公房の初期の短編が12編収録されている。うち8編を読み終えた。表題作の「R62号の発明」はカバー裏面の紹介文に**会社を首にされ、生きたまま自分の「死体」を売ってロボットにされてしまった機械技師が、人間を酷使する機械を発明して人間に復讐する**とある。
人間社会の危うい未来予想のようだ。この作品は1953年に発表されているが、今日的な問題の提起ではないか。人間の一部がロボットなのか、ロボットの一部が人間なのか・・・。ロボットをAIに置き換えてもよい。
**僕たち、生きているか死んでいるのかのどちらかに割切ってしまう常識論に、こだわりすぎていたと思うんです**(10頁)という登場人物の発言を唐突に引用したが、医学部出身の安部公房らしい自問、そして読者への問いかけだと思う。
自己の存在を規定するものは何か、それを手放すとどうなる・・・。安部公房が読者に問うているテーマは今日的だ、と『箱男』の読後に書いたが(2024.06.29)、「R62号の発明」の読後の感想も同じだ。
「盲腸」は羊の盲腸を移植された男が藁(わら)だけの食事をとる話。それは食料危機のために世界の人口の90パーセントが慢性的な栄養失調状態に陥っているという状況解消のための実験的な試み。ここでも次のような台詞を男に言わせる。**「私はこの腹の中にうえられた羊の盲腸と、まだしっくりやれるところまではいっていないのです。分かりますか、先生、思想のことを言っているんですよ。羊の盲腸をくっつけた私と、くっつける前の私と、いったいどっちが本当の自分なんだ。(後略)}**(128頁 下線は私が引いた)
人間の存在を根拠づけるのもは何か、人間は何を以って存在していると言うことができるのか・・・。人間の存在の条件とは? 安部公房はこの哲学的で根源的な問いについて思索し続けた作家だったと、『箱』の読後に書いたが(2024.05.29)、「盲腸」からもこのような安部公房評は変わらない。
12編すべて読了後に改めて書きたい。