■ 新潮新書の創刊時(2003年)のキャッチコピーは「現代を知りたい大人のために700円で充実の2時間」だった。2時間で読了できるのかどうかはともかく、手軽に読んで欲しいという願いが込められていたものと思われる。新書もいろいろ。かなり分厚くて内容も濃いとなると、読了するのに何時間もかかるものもあるが・・・。
『ゴッホは星空に何を見たか』谷口義明(光文社新書2024年)の大半を昨晩(25日)読み、今朝読み終えた。約180ページと、それ程厚くない上、図版が多く、文章が冗長でなく簡潔なので、読了するのにそれ程時間がかからなかった。3時間くらいだっただろうか。
著者の谷口義明さんは天文学者で光文社新書にも『宇宙はなぜブラックホールを造ったのか』、『宇宙を動かしているものは何か』、『宇宙・0・無限大』などの著書がある。
さて、『ゴッホは星空に何を見たか』。
谷口さんは本書で「星月夜」をはじめ、「夜のカフェテラス」「ローヌ川の星月夜」「糸杉と星の見える道」など、星空が描かれている絵を取り上げ、そこに描かれている星座が何か、同定を試みている。本の帯の絵は「星月夜」。
ゴッホといえばひまわり、ひまわりといえばゴッホだけれど、上に挙げた絵も、どれも有名だ。谷口さんは天文学者、これらの絵に描かれている星空が気になっていたようだ。
帯の「星月夜」に描かれている星について、「はくちょう座」説が紹介されている。この絵の星座に関する論文もあることを知った。単なる趣味の世界ではなさそうだ。ただ、同定はできていないとのことだ。
本書を読んで知ったのは、ゴッホが星の色まで観ていた、ということ。このことが分かる手紙を弟や妹に宛てて書いている。本書ではその手紙が紹介されている。
ゴッホは星空に豊かな色彩を見出し、それに魅せられていたのだな。凄い画家だ。
『たゆたえども沈まず』原田マハ(幻冬舎文庫2022年11月25日12版)のカバーも「星月夜」だ。
この小説でで原田さんは画家のゴッホと弟の画商・テオ、それからやはり画商の林 忠正という3人の実在の人物に林の助手の重吉という架空の人物を加えて、リアルな物語を紡いだ。
今年から来年にかけて「大ゴッホ展」が開催されることを知った。神戸、福島、東京と巡回する展覧会。東京では上野の森美術館で2026年5月29日~8月12日の会期で開催される。 ゴッホの絵の力強いタッチを観たいなぁ。