透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ゆいの森あらかわ 見学記

2019-09-22 | A あれこれ


荒川区立ゆいの森あらかわ外観 撮影日190920

 ゆいの森あらかわは図書館・吉村昭記念文学館・こどもひろばからなる複合施設。延床面積約10,900㎡、地上5階・地下1階 (設計:梓設計 2017年3月開館)。

建築を複数のボリュームで構成し、外壁をいくつもの表情で構成することで、また薄くてフラットな庇を連続的に設置することで分節している。それほど大きい建物のない周辺に配慮してのデザインか。


1階 エントランスホール

ホールの奥からエントランス方向を見る。左は総合カウンター、ここで館内の撮影許可を得た。


1階 エントランスホール カフェの前から見る

ずいぶん広いエントランスホールだ。このサイズが最適なのかどうか。


1階 エントランスのすぐ横に配置されたカフェ

ホールと一体的なスペースではなく、独立性が高いカフェ。本に囲まれた喫茶スペースだったら好かったのに・・・、以前の東京駅前の丸善本店のカフェのように。


1階 ゆいの森ホール 

両側の壁は書架になっている。「本の森」というイメージの具体的な表現であろう。後方はガラスでエスカレータが見えている。


1階 えほん館 

このスペースにソファーがあれば、カーブした書架によってつくり出された楽しい空間で絵本を読むことができると思うが・・・。


2階 コミュニティブリッジと名付けられたスペース

大きな吹き抜けの周りにカウンターデスクが配されている。落ち着いてじっくり使うということを意図した設えではない。今はこのような空間が好まれるのであろう。


2階 吉村昭記念文学館

記念館内は撮影禁止。文学館に展示されている小説の原稿などを興味深く見た。


私の自室の書棚に並ぶ吉村昭の作品


4階から3階を俯瞰する 

なんともユニークな空間構成だ。移動(動線)スペースと閲覧スペースが区分されていない。エスカレーターが設置された吹き抜けに向けてカウンターデスクが設置され、利用者はガラス越しにその吹き抜けを見ながら読書することになる。

 
えんぱーくの吹き抜け空間 吹き抜け沿いにカウンターデスクを設置してあるところはゆいの森あらかわと同じ構成


塩尻市のえんぱーくでも同様の空間構成、吹き抜けに向けてカウンターデスクを設えてあるが、空間の質というか雰囲気が違う。えんぱーくの場合、カウンターの前の隔ての上の手すりのような形状の部位に照明器具が設置してある。このような設えが利用者個人のエリアというか、領域を上手く決めている。


4階

他の階と同様の設え 敢えて閲覧空間と動線空間を明確には区分ていない。これだけ閲覧者の背後が大きく開いていたら落ち着かないのでは・・・。

樋口忠彦氏は『日本の景観 ふるさとの原型』(ちくま文芸文庫)で**広がりのあるところでは背後によるところがないと落ち着かないものである。背後によるところがある場所は、人間に心理的な安心感・安定感を与えてくれる。** と書き、続けて**日本の古くからある集落を見ても、それが盆地や谷や平野であろうとも、ほとんど山や丘陵を背後に負う山の辺に立地している。**と指摘している。

山の辺空間を現代人はもはや欲していないのだろうか、この様子を見ていてふと思った。いや、人の心理的条件は変わらないと思うのだが・・・。そもそもこの施設の空間構成のねらいというか意図は別のところにあるのかもしれない。


4階 香のてらす



1階から最上階の5階まで吹き抜けによって空間が繋がっている。贅沢な空間構成だと言えなくもない。


5階(最上階)

あくまでも吹き抜けを囲むようにデスクカウンターを配置している。



書架の外側にはこんな空間も。 デスクがないから長時間の利用を意図してはいないだろう。



落ち着いた雰囲気の空間もある。



私は本に囲まれたやや閉じた空間で本が読みたい。

ゆいの森あらかわを見学して思った。「図書館、読書空間はどうあるべきか、再考しなければ」 






今回初めて都営荒川線の路面電車に乗った。


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