透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 2023.08

2023-09-01 | A ブックレビュー

420

 時の経つのは早い。今日から9月。8月は小説ばかり5冊読んだ。一番印象に残ったのは昨日読み終えた『あかね空』山本一力(文春文庫2004年第1刷、2019年第30刷)。この時代小説で山本一力さんは直木賞を受賞している。

涙無くして読めない小説をぼくは「涙小説」(過去ログ)と呼んでいるけれど、『あかね空』はまさに涙小説で、読みながら何回も涙した。

読み始めて、これは家族の絆、家族愛がテーマの小説だと思った。家族がお互いに理解し、信頼しあうことの難しさ、尊さが描かれている。

永吉という豆腐職人の若者が京から江戸に下ってきて、深川蛤町の長屋を訪ねてくる。そこで桶屋の娘、おふみと出会う。長屋で豆腐屋を始めた永吉をおふみが手伝い、やがてふたりは所帯を持つ。それからふたりの波乱万丈の人生が始まる。

ものがたりのラスト、クライマックスで傳蔵という人物が言う。**「堅気衆がおれたちに勝てるたったひとつの道は、身内が固まることよ。壊れるときは、かならず内側から崩れるもんだ。身内のなかが脆けりゃあ、ひとたまりもねえぜ」**(397頁)
読み始めて思った通りだった。この傳蔵の言葉こそ作者が読者に伝えたいことだ。

そうか、傳蔵はあの人か・・・。やはり最後は傳蔵がこの家族を大ピンチから救うんだ。

なぜこの小説を読んだのか、まだその理由は明かせないけれど、なかなかの涙小説だった。一点だけ、書いておきたい。三人の我が子に対するおふみさんのこころの動き、変わり様は今一つ理解できなかった。

他4作については省略。

鄙里はもう秋の気配。9月は何を読もう・・・。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。