著者加治将一氏は、小説やビジネス書、カウンセリング書など多彩な才能を発揮している作家である。歴史を題材にした作品も多数手がけているが、純粋な「歴史家」には分類されないだろう。
本書の副題は「明治維新と英国諜報部、そしてフリーメーソン」となっている。グラバー邸で知られるイギリスの商人グラバーをキーパーソンとして、幕末に活躍した坂本龍馬、五代友厚、伊藤博文らの動きを解明する。
たとえば、薩英戦争。砲火が交わされる直前に、薩摩藩の商船三隻が拿捕されている。それに乗っていた五代友厚と寺島宗則(当時は松木弘安)とが捕虜としてとらえられた。薩摩側では二人は捕虜として扱われているが、イギリス側の記録には捕虜という記述はないと著者は指摘する。つまり五代と寺島はイギリスと示し合わせて、生麦事件の賠償金の担保として、戦争を回避するために独断で商船を引き渡したというのである。文書に残された証拠はない。飽くまで状況証拠のみであるが、思わず「なるほど」と唸るだけの推理である。
しかし、この本の記述の大半は、状況証拠を積み上げた推論ばかりである。龍馬暗殺の真犯人―――これがこの本のキモだと思われるが―――これまで同じ手法で料理されてしまうと、さすがに説得力に欠ける。龍馬暗殺の真犯人は、「まさか!」と叫びたくなるような人物である。「これは凄い」と感心するか、「そんなアホな!」と呆れ果てるかは読む人次第であるが、私は「そんなアホな!」と思いました。
本書の副題は「明治維新と英国諜報部、そしてフリーメーソン」となっている。グラバー邸で知られるイギリスの商人グラバーをキーパーソンとして、幕末に活躍した坂本龍馬、五代友厚、伊藤博文らの動きを解明する。
たとえば、薩英戦争。砲火が交わされる直前に、薩摩藩の商船三隻が拿捕されている。それに乗っていた五代友厚と寺島宗則(当時は松木弘安)とが捕虜としてとらえられた。薩摩側では二人は捕虜として扱われているが、イギリス側の記録には捕虜という記述はないと著者は指摘する。つまり五代と寺島はイギリスと示し合わせて、生麦事件の賠償金の担保として、戦争を回避するために独断で商船を引き渡したというのである。文書に残された証拠はない。飽くまで状況証拠のみであるが、思わず「なるほど」と唸るだけの推理である。
しかし、この本の記述の大半は、状況証拠を積み上げた推論ばかりである。龍馬暗殺の真犯人―――これがこの本のキモだと思われるが―――これまで同じ手法で料理されてしまうと、さすがに説得力に欠ける。龍馬暗殺の真犯人は、「まさか!」と叫びたくなるような人物である。「これは凄い」と感心するか、「そんなアホな!」と呆れ果てるかは読む人次第であるが、私は「そんなアホな!」と思いました。