入院に備えて購入した本の二冊目が本書である。本屋で面白そうな本を探していて本書を見付けた。著者三澤敏博氏は、「江戸東京幕末維新グルメ」や「東京「幕末」読み歩き」といった幕末関連書籍があり、いずれも私は座右に置いている愛読書である。ということで迷わず購入した。
帰宅してメールを開くと、筆者三澤氏から
――― この度、交通新聞社より「幕末維新 銅像になった人、ならなかった人」という本を上梓致しました。
というメールが届いていた。購入した日に筆者その人からメールをいただくという偶然に驚きと興奮を隠せなかった。
本書は「第一章 靖国神社の大村益次郎像」「第二章 上野公園の西郷隆盛像」「第三章 皇居外苑の楠木正成像」「第四章 二宮金次郎像」「第五章 銅像の悲劇」という章立てになっている。第一章から第三章までは、いわゆる東京の三大銅像を紹介したものである。
先日、大阪から上京してきた義父と姪に付き合ってはとバスツアーに参加した。皇居から浅草、東京タワーを回るありきたりのコースであった。皇居外苑の楠木正成像を見た後、ガイドさんが
「東京の三大銅像を知っていますか。上野の西郷さん、皇居外苑の楠木正成像ともう一つは何でしょう。」
と参加客に質問したところ、誰も答えられなかった。正答を知っていた私はちょっとばかり鼻が高々といったところであったが、本書では私の知らない情報満載で、一つの銅像にこれほどの秘話が隠されていたものかと改めて目を見張ることばかりであった。
上野の西郷像については、自分では割と知っているつもりであった。薩摩川内市の藤川天神のツンの像も訪問済みであるし、西郷さんが連れている薩摩犬のモデルは、仁禮景範の犬がモデルだという話も聞いたことがある。それでも本書で初めて知る情報も多かった。たとえば、当初西郷像は陸軍大将の軍服を着て馬に乗った姿が計画されていたこととか、立地についても上野公園ではなく皇居が候補に挙がっていたというのは初耳であった。
今に至るまで西郷像は、本人に似ている、似ていないといった議論が続く。大村益次郎像の作成に当たっても、作成者大熊氏廣はキヨソネの肖像を参考にしただけでなく、未亡人である琴子ら親族に取材して念入りに原型を制作している。楠木正成像については、正成がまたがる馬の前足について、高村光雲と後藤貞行の間に激しい議論が交わされたという。
明治に建てられた銅像は、一つひとつに重い歴史があり、製作者の熱い想いがあった。それに比べて昨今、大河ドラマが放送される都度、観光目的で安易に建てられている銅像はいかにも軽い。筆者がいうように「竜馬や(新島)八重、本人の姿より、近代的で美しい姿が優先されたこれらの像は、まさに「ひこにゃん」「くまもん」同様、完全なるキャラクター化された「観光大使」」と化しているのである。
筆者の指摘に激しく同意しつつ、本書で前橋市に楫取県令の像が建立されたことや高知にも新しい龍馬像が建立されたことを教えてもらった。手術の傷が癒え体調が戻れば、また銅像を訪ねる旅に出なければ…
帰宅してメールを開くと、筆者三澤氏から
――― この度、交通新聞社より「幕末維新 銅像になった人、ならなかった人」という本を上梓致しました。
というメールが届いていた。購入した日に筆者その人からメールをいただくという偶然に驚きと興奮を隠せなかった。
本書は「第一章 靖国神社の大村益次郎像」「第二章 上野公園の西郷隆盛像」「第三章 皇居外苑の楠木正成像」「第四章 二宮金次郎像」「第五章 銅像の悲劇」という章立てになっている。第一章から第三章までは、いわゆる東京の三大銅像を紹介したものである。
先日、大阪から上京してきた義父と姪に付き合ってはとバスツアーに参加した。皇居から浅草、東京タワーを回るありきたりのコースであった。皇居外苑の楠木正成像を見た後、ガイドさんが
「東京の三大銅像を知っていますか。上野の西郷さん、皇居外苑の楠木正成像ともう一つは何でしょう。」
と参加客に質問したところ、誰も答えられなかった。正答を知っていた私はちょっとばかり鼻が高々といったところであったが、本書では私の知らない情報満載で、一つの銅像にこれほどの秘話が隠されていたものかと改めて目を見張ることばかりであった。
上野の西郷像については、自分では割と知っているつもりであった。薩摩川内市の藤川天神のツンの像も訪問済みであるし、西郷さんが連れている薩摩犬のモデルは、仁禮景範の犬がモデルだという話も聞いたことがある。それでも本書で初めて知る情報も多かった。たとえば、当初西郷像は陸軍大将の軍服を着て馬に乗った姿が計画されていたこととか、立地についても上野公園ではなく皇居が候補に挙がっていたというのは初耳であった。
今に至るまで西郷像は、本人に似ている、似ていないといった議論が続く。大村益次郎像の作成に当たっても、作成者大熊氏廣はキヨソネの肖像を参考にしただけでなく、未亡人である琴子ら親族に取材して念入りに原型を制作している。楠木正成像については、正成がまたがる馬の前足について、高村光雲と後藤貞行の間に激しい議論が交わされたという。
明治に建てられた銅像は、一つひとつに重い歴史があり、製作者の熱い想いがあった。それに比べて昨今、大河ドラマが放送される都度、観光目的で安易に建てられている銅像はいかにも軽い。筆者がいうように「竜馬や(新島)八重、本人の姿より、近代的で美しい姿が優先されたこれらの像は、まさに「ひこにゃん」「くまもん」同様、完全なるキャラクター化された「観光大使」」と化しているのである。
筆者の指摘に激しく同意しつつ、本書で前橋市に楫取県令の像が建立されたことや高知にも新しい龍馬像が建立されたことを教えてもらった。手術の傷が癒え体調が戻れば、また銅像を訪ねる旅に出なければ…