第一章「篤姫が住んだ大奥とはどんな世界だったのか」第二章「失業した三万余の幕臣はどうなったのか」第三章「将軍家典医・桂川家の娘が歩んだ数奇な運命」第四章「日本最初の帰国子女、津田梅子の奮戦」第五章「東京に転居した大名とその妻はどうなったのか」第六章「東京の街は、牧場と桑畑だらけになった」第七章「江戸を支えた商人や町人はどうなったのか」という七章から構成される。これまで安藤優一郎氏の著作は何冊か読んでいる。たとえば第六章で紹介される、ウサギのエピソードは「幕臣たちの明治維新」(講談社現代新書)でも触れられており、ややマンネリ感が漂う。
もっとも興味を引いたのは、第三章の桂川甫周の次女今泉みねである。将軍御殿医の家に生まれたみねは、維新後佐賀藩出身の今泉利春と結婚する。今泉利春は佐賀の乱に連座して投獄され、出獄した時には西南戦争も終結していた。利春は自分が死んだら南洲墓地に葬ってほしいという遺志を抱いており、それに従って、生前交友のあった河野主一郎に頼み、みねは夫を南洲墓地に葬ることができた。今も西南戦争の戦死者ではない唯一の例外として、南洲墓地の一角に今泉利春は眠っているという。
本書では明治に入って名を成した旧幕臣や商人を数多く紹介しているが、実際には成功者よりも新しい世に適応できなかった失敗者の方がはるかに多かったに違いない。本書でも一家で餓死した旧幕臣や大奥の歴史が終わったことで実家に戻った奥女中の苦難などが描かれている。明治維新という変革は、数え切れない悲劇を生んだのである。
もっとも興味を引いたのは、第三章の桂川甫周の次女今泉みねである。将軍御殿医の家に生まれたみねは、維新後佐賀藩出身の今泉利春と結婚する。今泉利春は佐賀の乱に連座して投獄され、出獄した時には西南戦争も終結していた。利春は自分が死んだら南洲墓地に葬ってほしいという遺志を抱いており、それに従って、生前交友のあった河野主一郎に頼み、みねは夫を南洲墓地に葬ることができた。今も西南戦争の戦死者ではない唯一の例外として、南洲墓地の一角に今泉利春は眠っているという。
本書では明治に入って名を成した旧幕臣や商人を数多く紹介しているが、実際には成功者よりも新しい世に適応できなかった失敗者の方がはるかに多かったに違いない。本書でも一家で餓死した旧幕臣や大奥の歴史が終わったことで実家に戻った奥女中の苦難などが描かれている。明治維新という変革は、数え切れない悲劇を生んだのである。