半藤一利、磯田道史、吉田直哉(故人)、関川夏央ら、司馬遼太郎を語らせれば右に出る者がないというメンバーが集う座談会。さすがに発言の一つ一つが本質を突いている。
半藤一利らが、冒頭の座談会で注目すべき発言をしている。
――― 坂本竜馬という人は、司馬さんが書くまでは主役になったことはほとんどない(中略)当時は竜馬より、むしろ桂小五郎などの方が主役だった…(半藤)
――― 日露戦争の最中に、竜馬が昭憲皇太后の夢枕に立ち、海軍の勝利を告げたという逸話はありましたが、長い間、歴史の陰に埋もれていた人物(関川)
――― 実像から離れている部分というのは、『竜馬がゆく』では彼だけが明治維新の大きな流れをつくり、国家を動かしていたように描かれている(中略)あまりにあの作品が多くの人に愛されたので、今日、多くの日本人がそう信じている…(磯田)
竜馬は、現在でこそスーパーヒーローになったが、同時代にあってはほとんど無名の存在であった。竜馬がスーパーヒーローになったのは、『竜馬がゆく』以降のことである。竜馬暗殺の黒幕は薩摩藩だなどという説があるが、等身大の竜馬と向き合えばあり得ない話だということが分かるだろう。武力討幕を阻もうという勢力を牽制したいのであれば、暗殺の矛先は竜馬ではなくて、後藤象二郎でなければおかしい。まして、土佐藩において武力討幕を唱える中岡慎太郎までもともに殺してしまったのでは、暗殺としてはあまりに拙劣である。そもそも、薩摩藩が幕府の組織である見廻組を使って暗殺を実行するはずがない。
――― 司馬本の愛読者が政治家に、無欲さとか無私といった資質だけを要求しはじめたら危険な面もあります。政治家は悪いものだと思っておいたほうがいい。(中略)実際の政治の場面で司馬作品に現れるようなリーダー像が期待されはじめると、やや危険かもしれない。(磯田)
――― あまりに清潔すぎる(吉田)
確かに磯田氏のいうとおりかもしれないが、よく議員先生のアンケートなどで、「好きな作家」に必ずといって良いほど、「司馬遼太郎」の名前が挙がっている。議員先生たちが本当に司馬作品を理解しているのであれば、もうちょっと志の高い人たちが顔を揃えてもいいのではないかと残念に思う。
この本では、秋山兄弟、東郷平八郎、児玉源太郎の子孫が対談している。NHKで「坂の上の雲」の放映が始まり、これを契機に書店でも関連本が所狭しと並べられている。まさに坂の上の雲」ブームである。あまり世の中の風潮に乗せられるのは本意ではないが、それでも「坂の上の雲」は欠かさず視ている。目の前で小説の世界が視覚化されているというそれだけで感激しており、感動のシーンでも何でもないのに涙が止まらない。最近は司馬先生の作品を読むことが少なくなってしまったが、やっぱり私は根っからの司馬信者なのである。
半藤一利らが、冒頭の座談会で注目すべき発言をしている。
――― 坂本竜馬という人は、司馬さんが書くまでは主役になったことはほとんどない(中略)当時は竜馬より、むしろ桂小五郎などの方が主役だった…(半藤)
――― 日露戦争の最中に、竜馬が昭憲皇太后の夢枕に立ち、海軍の勝利を告げたという逸話はありましたが、長い間、歴史の陰に埋もれていた人物(関川)
――― 実像から離れている部分というのは、『竜馬がゆく』では彼だけが明治維新の大きな流れをつくり、国家を動かしていたように描かれている(中略)あまりにあの作品が多くの人に愛されたので、今日、多くの日本人がそう信じている…(磯田)
竜馬は、現在でこそスーパーヒーローになったが、同時代にあってはほとんど無名の存在であった。竜馬がスーパーヒーローになったのは、『竜馬がゆく』以降のことである。竜馬暗殺の黒幕は薩摩藩だなどという説があるが、等身大の竜馬と向き合えばあり得ない話だということが分かるだろう。武力討幕を阻もうという勢力を牽制したいのであれば、暗殺の矛先は竜馬ではなくて、後藤象二郎でなければおかしい。まして、土佐藩において武力討幕を唱える中岡慎太郎までもともに殺してしまったのでは、暗殺としてはあまりに拙劣である。そもそも、薩摩藩が幕府の組織である見廻組を使って暗殺を実行するはずがない。
――― 司馬本の愛読者が政治家に、無欲さとか無私といった資質だけを要求しはじめたら危険な面もあります。政治家は悪いものだと思っておいたほうがいい。(中略)実際の政治の場面で司馬作品に現れるようなリーダー像が期待されはじめると、やや危険かもしれない。(磯田)
――― あまりに清潔すぎる(吉田)
確かに磯田氏のいうとおりかもしれないが、よく議員先生のアンケートなどで、「好きな作家」に必ずといって良いほど、「司馬遼太郎」の名前が挙がっている。議員先生たちが本当に司馬作品を理解しているのであれば、もうちょっと志の高い人たちが顔を揃えてもいいのではないかと残念に思う。
この本では、秋山兄弟、東郷平八郎、児玉源太郎の子孫が対談している。NHKで「坂の上の雲」の放映が始まり、これを契機に書店でも関連本が所狭しと並べられている。まさに坂の上の雲」ブームである。あまり世の中の風潮に乗せられるのは本意ではないが、それでも「坂の上の雲」は欠かさず視ている。目の前で小説の世界が視覚化されているというそれだけで感激しており、感動のシーンでも何でもないのに涙が止まらない。最近は司馬先生の作品を読むことが少なくなってしまったが、やっぱり私は根っからの司馬信者なのである。