今日は電気回路の修理を2台。
設計するときに、最終的にどんなものを作るのか?
それを具体的に書いたものが『設計仕様書』です。
それがあれば、どんな意図で設計されているのかが回路図から読み取れる。
ところが、今日の修理品はその『設計仕様書』が無い。
そのうえ、電気回路図も実際の物に改造が入っていて、その部分の記載がない。
得てして、不具合や故障が起きるのは、そういった改造がらみの場所。
だから、初めて見た時に故障個所を検証するのが至難の業だった。
プリント基板という配線ボードのパターンを追いかけて、
改造箇所を図面に書き込むことから始まった。
それで、回路の動きは何とか解ったのだけれど、どんな意図で作られたのか?
が判らないから、今度は動作させてみて判断する。
その動きだって、最初は正しいのかどうかも判らなかった。
製品に問題が出ると『設計ミス』を『誤動作』と言っている事を良く目にする。
でも、電気回路って言うのは誤動作なんか絶対にしないのですよ。
コンピュータが間違う事も絶対にない。
これは電気だけじゃない、機械部品にも言えることです。
誤動作や誤作動って言うのは、要するに人間のミス。
コンピュータの誤動作も、実は設計ミスかプログラムのミス。
いわゆる余裕度(マージン)をどれくらい取るかって話で、
そのギリギリ加減が、コストに響く。
コストダウンしたら、誤動作が多くなった・・・・
なんていうのはそのマージンの見込みミスっていう事です。
だから、誤動作しない、壊れない装置や機器を作るのは、
設計者の実力や経験値がものを言う。
料理でも同じで、レシピ通りに作ってもプロの味にはならない。
プロは火加減や、タイミング等を経験で判断する。
冬に作る場合と、夏に作る場合ではそういった加減で変わるはず。
実際、僕が昔修行していた珈琲の焙煎だってそうだった。
その日の気温や湿度で火の通り具合が変わるから、
タイマーをセットして時間通りやっても、同じにはならない。
電気工学の面白さは、そう言った事に共通している事かな?
アナログの部分が凄く大事だと言う事。
前の会社で僕の後釜のグループ長が
『これからはデジタルの時代ですよ』なんて言って
僕の事を『古い設計者』みたいに馬鹿にしていたけれど、
アナログの事が全然判らないで、言っているので相手にしませんでした。
そもそも、デジタル回路なんてアナログを理解していないと、
高速化や遅延対策なんてできませんからね。
要は、学校で習った電気工学の基礎『オームの法則』が理解できて、
自分の作った回路が、それで簡略化して説明できなければ、
その判らない部分で『誤動作』の原因を作るのですよ。
電気工学はそう言う部分で設計者の力量が判って面白いのですけれどね。
話を戻して、今扱っている修理品はなかなか良い設計しているのだけれど、
僕が見る限り、教科書通りというかカタログに書いてある推奨回路の積み上げ。
個々の回路は良くても、つなぎ部分で不具合が出る。
まるで9秒台の選手を4人集めたけれど、バトンパスが下手で、、
10秒台の選手でバトンタッチの上手い日本チームに負けてしまう
アメリカのリレーチームを見ているような感じですかね?
電気工学、設計の本当の面白さは経験値が無い人には判らないでしょうね。