映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「クリード」 シルベスター・スタローン

2015-12-29 16:22:48 | 映画(自分好みベスト100)
映画「クリード」を映画館で見てきました。


シルベスター・スタローン演じるロッキーが宿命のライバルであるアポロの息子のトレーナーをやるなんて話と聞くだけで興奮してしまう。見てみると実にすばらしい!!今から40年近く前、初めてロッキーを見た時の興奮をよみがえらせてくれる。気がつくと自分も目に涙をためていた。

少年鑑別所でケンカする黒人少年アドリスを映しだす。大暴れして独房に入れられていた。父母ともに死に別れて里子のままぐれていたのだ。そこを一人の女性クリード(フィリシア・ラシャド)が訪ねる。彼女は少年の父親である元プロボクサーアポロの妻であった。

クリードに引き取られたアドリス(マイケル・ジョーダン)は、学校で学んだあと一流企業に勤めていたが、夜はメキシコのボクシングで腕を磨いていた。そこで無敗のアドリスは父親の雄姿を動画で見て、世界に通用する一流選手になろうとしていた。父親がいたボクシングジムにいき、プロボクシング選手に対決を挑む。しかし、実力の差は明らかだった。育ての母の反対を振り切り、ロッキー(シルベスタースタローン)のいるフィラデルフィアへ向かい、ロッキーがいたボクシングジムへ入門する。


ロッキーは妻エイドリアンと死別して、1人でイタリアンレストランを経営しており、すでにボクシング界から離れていた。店が閉店になっているのにアドリスが押し掛け、ボクシングを教えてくれと懇願する。ライバルの息子の不意の訪問にロッキーは戸惑う。それでも、熱意にほだされて、教えはじめてトレーニングをはじめ力量をあげる。ところが、ボクシングジムのオーナーが息子の対戦相手にアドリスを指名してくる。これまで負け知らずのジムオーナーの息子とは実力の差があったが、ロッキーのトレーニングで強くなったアドリスは試合に臨むのであるが。。。

1.ロッキーの意義
映画史における「ロッキー」の存在意義は非常に高いと思う。これまであの物語をベースにしたような映画はどれだけつくられたんだろうか?ドツボな低迷、そして反撃途中からの高い高揚感と感動をしのぐ作品はあまり見つからない。
ただ、あの作品はアメリカ下層社会を描いたものだ。副業に高利貸しの用心棒をしているボクサーなんて存在もそうだし、生肉工場やスラム街、さびれた酒場など暗いムードの場面が続く。それだけにいったん展開が変わると、とてつもない高温の蒸気を噴出させる。あまりにも有名な各種テーマ音楽からの興奮も含め、そこからの感動は誰しも経験したことだろう。


今回も同じように少年鑑別所やフィラデルフィアのスラム街も映しだすが、前作ほどのドツボムードではない。たまたま階下に住んでいた歌手ビアンカ(テッサ・トンプソン)と知り合い、恋仲になっていく。エイドリアンが内気で地味な女の子であったのとは対照的な女性だ。エイドリアンとロッキーが抱き合う場面に自分は同化した。今回はさすがにその感動はない。でもその現代的変化がいいところなんだろう。

2.カメラワークの巧みさ
この映画でのカメラワークが序盤戦から最後まで実にお見事だ。接近して対象を映しだす構図が計算されていて、ボクシングの試合で対戦する2人の表情とバックにいるセコンドの姿を的確に映す。どこまで本気で撃っているのかわからないが、パンチの動きにリアル感がある。


3.音楽
主人公がアフリカ系なだけに、ヒップホップ系の音楽が流れる。恋人ビアンカはソウル歌手であり、基調はそうだが、それだけではない。まさに「ロッキー」と同じようにブラス系サウンドが流れ、スポーツ映画的な高揚感をもたらす。一連の「ロッキー」の音楽のサビを少しづつだしながら、同じものにしないのは好感が持てた。

4.主演の2人
主演のマイケルジョーダンは好演である。この映画に出るためには、かなりのトレーニングを積んだと思う。それをこなしつつ、試合でのファイティング場面では鋭くパンチをくりだす。それなりの本気度を感じる。年齢は違うけど、風貌はデンゼルワシントンに似ている気がした。

シルベスタースタローンは枯れ切ったトレーナーといった役柄になりきる。最初のロッキーの時、30歳という設定だったから今は70歳ということだ。ロバート・デニーロ主演の名作「レイジングブル」におけるジョーぺシラッセルクロウ主演「シンデレラマン」におけるポールジアマッティのような甲高く常にテンションが高いトレーナーではなく、ヒラリースワンク主演「ミリオンダラーベイビー」におけるクリントイーストウッドの老練さに似ているかもしれない。この映画撮った時のイーストウッドが73歳だ。シルベスター・スタローンもムキムキなイメージともそろそろお別れか。


いいところばかり述べたが、もともと里子に出されて、少年鑑別所に入っていたような少年がいくら金持ちの家に入ったとはいえ、一流企業に勤めるように育っていくのかどうかだけはちょっと疑問かな。刑務所帰りというとマイク・タイソンだけど、あんな感じの暴走男になってもおかしくない気がするけど、どうだろう。
実はボクシングを見るのってあまり好きじゃなけど、なぜかボクシング映画ってどれもこれも好きなんだなあ。今年でいえば「百円の恋」の安藤サクラの精悍な姿も記憶に新しい。

いずれにせよ終盤にかけての興奮は、いったん途中で勝負ついたかなと思っただけに今年一番だったし、なぜか泣けてしかたなかった。この気持ちはそこらへんのBBAどもにはわかるまい。

(参考作品)
ロッキー 
不朽の名作
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映画「007 スぺクター」 ダニエル・クレイグ

2015-12-21 20:28:07 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「007 スぺクター」を映画館で見てきました。


最近、映画は割とみているのであるが、連日の飲み会で脳細胞がいかれてしまいコメントがかけない。昼間もスケジュール多忙で疲れきっている。土曜日の飲みは控えめにして早めに自宅へ帰ったので、日曜日映画館に向かう。ダニエル・クレイグはもう終わりなんていう人も多く、賛否両論のようだが、50年近くの007ファンである自分には十分楽しめた。


最初のメキシコのアクション場面はかなり粋だ。がい骨の仮面をつけた人たちが祭りをしている場面で、美女とたわむれようとホテルに入ったダニエル・クレイグがさっと抜け出し、自分の標的を狙う場面の連続性にはしびれる。ヘリコプターをくるくる回転させてのアクションも、ちょっと間違えれば大惨事だけにドッキリだ。


説明はかなり省かれているので、わかりづらい場面もあるが、娯楽を意識したアクションを体感するだけで楽しい。ボンドガールの使い方よりも、Qやアシスタント役のナオミハリスの使い方に妙を感じる映画であった。

殉職したM(ジュディ・デンチ)の遺言を受け、ジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)はメキシコで1人の男を始末し指輪を奪う。少年時代を過ごした ”スカイフォール” で焼け残った写真を受け取ったボンド はその写真に隠された謎に迫るべく、M (レイフ・ファインズ) の制止を振り切り単独でローマへと赴く。そこでボンドは殺害された悪名高い犯罪者の元妻であるルチア・スキアラ (モニカ・ベルッチ) と出逢い、悪の組織スペクターの存在をつきとめる。

その頃、ロンドンでは国家安全保障局の新しいトップ、マックス・デンビ (アンドリュー・スコット) がボンドの行動に疑問を抱き、Mが率いるMI6の存在意義を問い始めていた。ボンドは秘かにマネーペニー (ナオミ・ハリス) やQ(ベン・ウィショー)の協力を得つつ、スペクター解明のてがかりとなるかもしれないボンドの旧敵、Mr. ホワイト (イェスパー・クリステンセン) の娘マドレーヌ・スワン (レア・セドゥ) を追う。


死闘を繰り広げながらスペクターの核心部分へと迫る中、ボンドは追い求めてきた敵と自分自身の恐るべき関係を知ることになる-。
(作品情報引用)



この映画を面白くないという人は若き日あるいは少年時代に007を見てときめいたりしたことがない人であろう。
最初のメキシコでの強烈なアクションは昔を知らなくても楽しめるが、小道具がたくさん装着されている新型アストンマーティンを見るだけでかなり満足してしまうものだ。細かいディテールをQから聞いていないのに、小技をひねり出すスウィッチボタンを押しながらダニエルクレイグが運転する姿は楽しめる。ましてやアストンマーティンとジャガーのそれぞれ新型同士の対決だ。伝統の英国車対決にはうなってしまう。


今回のボンドガールは2人だ。

1.モニカベルッチ
もうすでに50歳を超えるというのにフェロモンむき出しだ。
比較的最近のルイガレル主演作品「灼熱の肌」で、ヌードを見せる。いかにも熟女らしい熟れきった身体を見て、20代の少年たちは何も思わないかもしれない。今回のようにムチムチの肌で言い寄られる姿を見ると「マレーナ」あたりで感化された40代以上の野郎は股ぐらがドッキリしてしまうであろう。

ただ、いかにも出番が少なすぎだ。最後に向けてもう一回くらい出番があってもいいのでは?

2.レア・セドゥ
ミッションインポッシブルの前作「ゴーストプロトコル」で女同士格闘技対決する謎の女性を演じた。これが実に良かった。その後もレズ映画「アデル、ブルーは熱い色」のヌードできっちり存在感を示した。ここでの最初の登場はオーストリアの雪山で診療する医師だ。まったく普通だが、タンジールに行くあたりから豹変する。列車でのディナーでムチムチの身体にピッタリしたドレスを着て、見ている我々を挑発する。歩きながら見る目がいい感じだ。

そしてすぐ直後の体当たりアクションだ。なかなかやるね。

3.サムメンデス
サムメンデス監督作品ではポールニューマンとトムハンクス、ジュードロウ出演ロード・トゥ・パーディションが大好きだ。晩年のニューマンの老練な演技が抜群で、萬屋錦之介ばりの子連れ狼の様なトムハンクスを追うジュードロウの冷たい表情が真に怖い殺人鬼のようだ。その暗黒なムードを作り上げたサムメンデスに脱帽した。その映画にも007でブレイク前のダニエルクレイグ出ているんだよね。
この映画でも監督の技は冴えわたり、当初のメキシコでのアクション、オーストリアの雪山での飛行機を使った派手なアクション、北アフリカの砂漠を走る列車内における格闘劇、あまり見れないローマでのカーチェイスなど見どころは盛りだくさん。

いずれも007の文法の域を意識しながら我々を楽しませてくれる。
Qという存在を出すことで、初期の007よりもテクノロジーが著しく進化させている部分をだしている。そこがニクイ。

(参考作品)
007/スカイフォール
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映画「FOUJITA」 オダギリジョー

2015-12-02 19:52:28 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「FOUJITA」を映画館で見てきました。


「泥の河」小栗康平監督の久々の新作である。オダギリジョー演じる主人公である藤田嗣治の絵も国立近代美術館で見てからずっと気になっていたこともあり、映画館に向かう。


若干暗めのトーンの映像なので少し見にくい。あえてそうしたと思う。そんな中1920年代のパリにおける藤田と1940年代戦時中の日本において戦争高揚の絵を描いていた藤田の両方を映しだす。暗めのトーンで見にくいとは言え、映像表現は美しい。特にパリの1920年代の場面がいい。同時にバックに流れる音楽がすばらしい。見にくい画面なので、少し眠くなってしまう時もあったが、まあまあという感じかな。

画家藤田嗣治、通称フジタ(オダギリジョー)はパリにわたったあと、1920年代パリで裸婦を描き、評判を高め、絵も売れてきた。画家仲間たちやモデルのキキ(アンジェル・ユモー)とともに、パリのカフェで連日遊びまくる。そうしていくうちに新しい恋人、ユキ(アナ・ジラルド)が現れる。


フジタの絵「五人の裸婦」が完成すると、乳白色をした裸婦の肌色が大評判となる。フジタはモンパルナスで、仮装パーティを開き、フジタは女装して、ユキといっしょにゲストを迎える。吉原の花魁まがいのキキが会場を下駄で歩き、大はしゃぎである。

第二次世界大戦のパリ陥落の前に日本に戻ったあと、いわゆる「戦争協力画」を描く。戦意高揚のための「国民総力決戦美術展」が、全国を巡回している。フジタの描いた「アッツ島玉砕」の絵のそばで、観客は絵に手を合わせ拝む。フジタは、絵が人の心を動かしたことに驚く。

東京の空襲が激しさを増し、フジタは五番目の妻君代(中谷美紀)と田舎に疎開する。農家の離れが、フジタの住居とアトリエになる。母屋には、小学校の教師の寛治郎(加瀬亮)とその母(りりィ)が住んでいる。フジタは、なおも「戦争協力画」を描いていた。そんなとき、寛治郎に赤紙が来る。出征の前の夜、寛治郎は、みんなに村のキツネの話をする。母は寛治郎に「帰って来い!」と言うのであるが。。。




1.1920年代のモンパルナス
1920年代のパリの映像を見ると、ウディアレンの「ミッドナイトインパリ」を連想する。気がつくと20年代の文化人たちと交流を深めている大人のおとぎ話に魅せられた。あの映画ではエロティックな雰囲気はなかったが、ここでは満載だ。連日のようにカフェで遊びまくる。フェリーニの「8・1/2」も連想させるハチャメチャ騒ぎだけど、女の子も気前よくどんどん脱いでいくだけに、この映画の方が凄くみえてしまう。あえてうす暗いトーンにしているのもその過激性のせいなんだろうか。
それにしても向こうで3人と結婚したくらいだから、かなり遊んだんだろうなあ。


2.出征前夜の場面
あえて暗いトーンにしている理由の一つには、戦争時の暗さもあるかもしれない。フジタの描いた「戦争協力画」は映し出されるが、トーンが暗いのでよくわからない。あえてよく映し出さないのであろう。
しかも、出征前夜の加瀬亮の話が超暗い。久々にりりィを見たが、加瀬に向かって「帰って来い」というシーンが実に印象的だ。同時に軍部がフジタに崖から飛び降りて自殺する女性たちの映像を見せるシーンも映す。でもこれって、サイパン戦線で日本人女性が自害するのをアメリカ人たちが映しだした映像ではないかと思う。あれちょっと違うな?とそれは感じた。


3.佐藤聰明の音楽
音楽が鳴り響くとメロディラインがただものでないのがわかる。バックの音楽が鳴り響くわけでなく、淡々と映画は進んでいくが途中でハッとさせられる音楽が鳴る。佐藤聰明という作曲家なかなかやるなと思ったら、音楽界では割と有名な方のようだ。ちょっと勉強してみよう。

映像は美しかったことだけは確かだけどね。
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