映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

東京ジョー  ハンフリー・ボガート

2009-09-30 17:55:00 | 映画(洋画 69年以前)
池袋の「新文芸座」の上映予定表はときどき見ている。あれ!と思わせる作品をやっているからだ。レンタルでは絶対置いていないものは見逃せない。「東京ジョー」はまさしくそういう一本。全盛時代のハンフリーボガートが日本を舞台にした作品に出演しているという話は聞いていたが、見るチャンスがなかった。これは仕事サボっていくしかない。2時近くで仕事を切り上げ、池袋へ向かった。5時すぎ何もなかったように仕事に戻った。映画館内はほとんど男性、しかも定年過ぎていると思しき男たちがたくさんいた。

1949年の作品。まだ日本が米軍の占領下にあった時代である。二次大戦前銀座2丁目で「東京ジョー」というカジノバーを開いていたハンフリーボガートが空路東京羽田にやってきた。戻ってきてすぐに元の場所に向かったが、お店は閉じられていた。しかし、イトウという昔の友人がいた。柔道仲間の彼とボガートは旧交を深めた。そして、ボガートはイトウに元の妻であった女の行方を聞き、中野の家に訪ねた。彼女はいたが、すでに在日米軍将校の人妻になっていた。ボガートは美しいロシア人元妻とよりを戻そうとするが、無理だと彼女は言う。この後、早川雪舟扮する日本の黒幕「キムラ男爵」が登場する。彼に職を紹介してもらおうと頼み、空輸会社を設立する。しかし、許可は下りず、元妻の今の夫に頼み込み会社ができる。しかし、韓国との輸送には何かきな臭いことがあるようだ。。。

昔の女が別の男と暮らすという話で「カサブランカ」の二番煎じを思わせるストーリー展開だ。戦後まだ間もない東京の街が出てくる。皇居前から銀座にかけてあたりだ。室内の撮影はほとんどがセットだと思うが、最初のころは明らかな東京ロケのシーンもある。ボガートが人力車に乗ったり、新橋?あたりの闇市を歩くシーンもある。黒澤明の「酔いどれ天使」と同時期でダブるシーンだ。日本人の顔がまだ苦しさから抜けきっていない顔つきである。日本語はちょっと不自然にも聞こえるが、日系人が話す日本語ってこんな感じなのかもしれない。ボガートもやたらと日本語を連発する。これはご愛嬌だ。

悪役で登場する早川雪舟はデイヴィッドリーン監督「戦場にかける橋」の日本人将校が一番印象的。無声映画時代に相当活躍していたというが、残念ながら見たことはない。ここでは日本の裏社会に通じている「元男爵」という役。戦犯すれすれで逃れた黒幕はきっといたのであろう。面構えが昔の正統派日本人の男らしくていい。昭和天皇の口癖「あ、そう」を何度か使う。タイミング的には不自然だが、アメリカ人にはあの口癖が頭に残るのであろう。
ボガートにとっては、「三つ数えろ」「黄金」のあとで「アフリカの女王」の前だからまさに彼の全盛時代である。よくもまあ日本を舞台にした映画に出てくれたものだ。ハードボイルドを貫いてはいるが、かっこ悪いところを見せる。考えてみれば、「黄金」も「アフリカの女王」もけっこう汚れ役的な要素がある。
ボガートの店はバクチもかたわらでできる「カサブランカ」のカジノバーを意識した設定だ。西洋的あか抜けさはない。キャバレーといっても良いかもしれない。それこそ黒澤明「酔いどれ天使」で三船敏郎が木暮実千代と遊ぶキャバレーで、笠置シズ子が「ジャングルブギ」を歌うシーンがある。その店を思い出した。
映画にあわせて、音楽が高らかに鳴り響く40年代から50年代のスタイルで、劇場内はボガートの振る舞いにずっと目を奪われている印象だった。寝ている人など誰もいず、映画を楽しんでいた。
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ブレス キム・ギドク

2009-09-26 06:23:45 | 映画(韓国映画)
キムギドクの偏愛物語。死刑囚の男チャンチェンに同情したある女パク・チアが、刑務所内の男のところへ慰問?におとづれる話。いつもながら異常な世界だ。

死刑囚チャンチェンは妻と二人の子供を殺した罪で刑務所に入れられている。刑務所内ではその彼に思いを寄せる若い男他と4人で生活している。あるとき、チャンは同室の一人が持っているキリを喉に突き刺し自殺を図る。死刑囚が自殺を図ったニュースはテレビでも報道された。それをみていた女には夫と娘がいる。どうやら夫には浮気相手がいるらしい。女は報道をみていてもたってもいられずに昔の女だといって刑務所に面会に行く。そして男のところへ慰問に行き、刑務所内のある部屋で壁に春の季節の風景の壁紙を貼って、春の歌を歌う。。。。。

主な登場人物は、主人公、刑務所同室の3人、刑務所内の監視係、元恋人?とその夫、娘である。それぞれが映画の中で重要な役割を持つ。
主人公には同質のホモダチが、女には夫がいる。主人公と女との強い情念が慰問するごとに徐々に盛り上げっていくところがすごい。主人公と女が思いを寄せるのを見て、それぞれの相手が強烈な嫉妬を示す。そこの強い情念もこの映画の強いテーマだ。
キム・ギドクの映画には刑務所がよく出てくる。刑務所内における囚人たちの動きには比較的共通点がある。彼は入ったことがあるのかなあ?
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彼岸と浜離宮

2009-09-22 21:08:01 | 散歩
秋彼岸になり、高輪の寺に妹と墓参りに行った。
さすがに彼岸は寺に人が多かった。
父と母は今頃どうしているのであろうか?

近くの中華で一緒に昼飯たべた。鶏そば、半チャーハン食べた。
最近は鶏そばを食べることが多い。ヘルシーな感じがして良い。
妹と泉岳寺の駅で別れ、一人で新橋に行った。
浜離宮に行ってみようとずっと思っていたのが念願かなった。

浜離宮は小学校のときに遠足で行った。高学年になってからだと思う。
そのときは庭園にはまったく関心がなかった。それはそうであろう。
その後も汐留には何度も行っている。でも汐留のビルの上から浜離宮を眺めただけである。

庭園を歩いた。借景となる電通本社やコンラッドホテルなどのビル群が美しい。
この日本の伝統美と近代的高層ビルのコントラストが良い。
為替のプラザ合意で有名なホテルプラザなどのビルをバックにしたニューヨークのセントラルパークと違うのは、この日本庭園の池の美しさだ。
もしかしたら今の東京で一番美しい風景かもしれないと思う。

このあと水上バスに乗った。
浅草まで向かった。ここ数年屋形船に乗っていないので隅田川の船旅は久々だ。
ここでも高層マンションと隅田川と古くからの橋の取り合わせが良い。
成瀬巳喜男監督の映画に出てくる隅田川の光景とは若干異なるが非常に美しい。
いつも屋形船で酔っているので気がつかなかったが、それぞれの橋に色がついている。清洲橋の色が特に良い感じだ。勝鬨橋、永代橋、新大橋なじみある響きがいい。
浅草で電気ブラン飲もうと思ったら、席は混雑していた。
シルバーウィークは遠出せずに近場で皆お茶を濁しているのかもしれない。
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フェイクシティ キアヌ・リーブス

2009-09-22 16:56:24 | 映画(洋画 2006年以降主演男性)
キアヌ・リーブスがロス市警の特捜刑事を演じる。「LAコンフィデンシャル」「ブラックダリア」同様ロス市警の暗部に触れていく。

キアヌリーブスはロス市警の特捜刑事。強引な捜査手法だが、極悪犯人の検挙では実績がある。彼の上司の黒人警部フォレスト・ウィテカーはキアヌの実績によって、警視に昇進していた。しかし、キアヌにはネタミも出ていて、元コンビを組んだ黒人刑事がキアヌ刑事を警察の内部監督部署に垂れ込んでいて強引な捜査であることをちくっていた。その話を聞いたキアヌは怒り、黒人刑事を痛みつけてやろうとして、彼の後を追って、スーパーに入る。ところがその時、2人の武装強盗がスーパーに押し入り、黒人刑事は強盗に撃たれてしまう。キアヌはそばにいたことで、周りから疑いの目で見られるようになるが。。。

この後のストーリー展開は、素直に進まず意外な方向へと進んでいく。どちらが味方なのかわからない展開で脚本にうまみを感じる。監督は「トレーニングデイ」の脚本を書いたデヴィッドエアーだ。あの映画でもロス市警の暗部に立ち入っていた。デンゼルワシントンが珍しく悪役刑事を好演した。この映画でも「トレーニングデイ」でみたことのあるラテン系のエリアが出てきた。 夜のロスはかっこいい反面、本当に怖いところだ。

それにしても、何でこうもロス市警の恥部が繰り返し映画化されるのであろう。「LAコンフィデンシャル」にしても「ブラックダリア」にしても二次大戦前の話である。過去にそうだったというなら話は別だが、この映画にしても「トレーニングデイ」にしても現代が舞台だ。おとり捜査による麻薬組織への侵入というものの存在は恐ろしい。ひやひやする話だ。裏の恐ろしさが怖くてロスには行けない気がしてくる。
キアヌリーブスはものすごく怒りっぽい刑事を演じる。刑事仲間ともケンカの繰り返し。ロス市警の中はこんなにぴりぴりしたムードなのであろうか?日本の仲良し軍団とは違うムードを感じる。キアヌの恋人役を演じるマーサ・ヒガレダはメキシコ美人。ちょっぴり「スピード」のときの相棒サンドラブロックに似ている気がする。
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レボリューショナリーロード  レオナルド・ディカプリオ

2009-09-21 07:26:34 | 映画(洋画 2006年以降主演男性)

「タイタニック」から10年たって成長したレオナルドディカプリオとケイトウィンスレットの主人公二人が再度共演する夫婦の物語である。50年代のよきアメリカのホームドラマ風から、徐々にストーリーに起伏を与えていく。

あるパーティで知り合って結ばれたレオナルド・ディカプリオケイト・ウィンスレット夫妻。キャシーベイツ扮する不動産屋の案内で、レヴォリューショナリーロードという住宅街にホワイトサイディングの外壁の家を購入して暮らしていた。レオナルドは普通のサラリーマン、ケイトは女優である。それぞれが仕事の悩みを抱えている中、以前パリにいたことのあるレオナルドの写真を見て、精神的安らぎを求めてパリに移住しないかとケイトは提案する。レオナルドは熟慮の上それを受け入れる。ところが、パリ行きの船の切符も手に入れて、準備も進んでいるときに、ケイトは妊娠してしまったことに気づく。。。。

レオナルドとケイトの夫婦としての愛情の交し合いが、この映画のテーマ。大喧嘩をしたり、暖かく旦那さんのバースデイを祝ってあげたりいろんな場面が出てくる。こういう夫婦間の感情は万国変わらないものであろう。似たような世界が身近にあるように感じられた。しかし、最終に向かっての展開はちょっとせつない。

ケイトウィンスレットが女優として一番のっている時なのか、非常によくなっている気がする。この映画ではヘビースモーカーで片時もタバコを離さない姿が印象的。感情の激しい女性を巧みに演じていた。オスカー女優キャシーベイツの存在も貴重で、彼の息子役の精神的に問題ある男性とレオナルドとのやり取りもこの映画のポイントだ。

「アメリカン・ビューティ」「ロード・トゥ・パーディション」などサムメンデス監督の作品って独特のどんよりしたムードがある。いずれも一時代前のアメリカを描く。「ペイトンプレイス物語」や「アラバマ物語」のようなオーソドックスなアメリカホームドラマスタイルで始めながらも、途中から強い変化を与えていく手法はすごい。サムメンデスの他の作品でも、美術がよかったが、ここでもアメリカらしい家のインテリアがすごくいい。またディカプリオのオフィスの様子もリアルで、ビーバップからロック創生にいたるころの音楽が鳴り響くクラブの様子もすごく素敵だ。

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絶対の愛  キムギドク

2009-09-20 17:11:27 | 映画(韓国映画)
美容整形の話を基調にしたキムギドクの偏愛作品。恋人に飽きられたと感じている女性が、整形手術をして別の顔になって相手の前に現れる話である。どちらかというと昼メロの粋内に属する。

恋人の関係を2年続けている二人。喫茶店で男がかわいい女性に目を奪われているのに女の方が気づき嫉妬する。その後、女は「別の女性を思い浮かべて私を抱いて」という。男はその通りにして、彼女からの問いかけに「別の女性を思い浮かべながらしたよ」というと彼女は心はなれていく。複雑な女心だ。そして、彼女は家を引き払い失踪する。彼女は整形手術をして別の顔に生まれ変わった。男は懸命に彼女を探したが、彼女の行方はわからなかった。しばらくたって、いつもの喫茶店に男が行ったとき、美しい女性がいるのに気づく。そして彼女を誘い出していくのだが。。。。。

以前「韓国美人事情」という新書を読んだ。おもしろかった。その本を読んで韓国人の整形に対する認識を初めて知った。その整形大国韓国を象徴する話である。テレビ13:30すぎの昼メロ的話である。日本には整形に対する罪悪感がまだ残っているので韓国と同じような話にはならない。整形をして男の前に現れるのであるが、昔の自分今の自分との間の葛藤で、彼女が苦しんでいく。 セリフのないキムギドク作品が続いた中、逆に異色に思ってしまうのは錯覚かな?最初の場面がもう一度繰り返して最後に登場する手法は、「岸和田少年愚連隊」と同じ。それがあって、ストーリーの本質がいまだに理解できずにいる
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岸和田少年愚連隊 岡村&矢部

2009-09-17 21:19:44 | 映画(日本 1989年以降)

大阪の南部岸和田のだんじりまつりの季節となった。荒々しい岸和田の男たちの偶像を描いた作品に岸和田少年愚連隊がある。井筒監督得意の不良少年物である。昭和の匂いがぷんぷんする岸和田の町をロケして、全編ケンカに明け暮れる少年たちを描く。「パッチギ」のような変な思想性がなく楽しく見れる。

時は昭和49年の岸和田。中学3年の岡村隆史と矢部浩之はケンカに明け暮れていた。学校内の勢力争い。他校との仕返しの繰り返しである。一言で言うとそれに尽きるストーリーだ。韓国映画とはまた違う暴力描写だ。中学からケンカに明け暮れ、高校もまともに通わず中退していく。そして裁判所に何度も何度も親と一緒に言い訳しに行く。そういうアウトローの世界を描く。

平成のはじめに大阪に転勤した。何もわからないところへの異動は不安だった。しかも、最初の担当エリアが堺より南の大阪南部であった。南海電車沿線の高石、泉大津、貝塚、岸和田、泉佐野といった地名はどれもこれもはじめて聞く地名であった。岸和田は大阪難波と和歌山のだいたい中間くらいのところだ。野球の清原の出身地でもある。そこでいろんな人と知り合った。この映画に出てくる人たちと同じ匂いを持った人たちだ。どちらかというとサラリーマン社会でなく、勉強一生懸命やって、それで偉くなってという人たちよりも、難しいことは言わず、だんじり祭りに命を描け、この町が大好きで、楽しく生きている人たちが多かった。その方が人間幸せなのかもしれない。映画の登場人物をみると、いかにも大阪南部と思われる人たちが多くうれしくなった。

1975年と最初画面に出てくるので、途中もしかして時代考証が間違っているのでは?と思ってしまった。キャロルのコンサートのチケットの話が出てくるからだ。キャロルは75年の春に解散したはずなのに、だんじりが終わった75年秋が舞台設定のこの映画ではおかしいな?と思った。でも最後の最後になって74年の秋からスタートする話だというのがわかった。繰り返し流れるアンルイスの「グッバイマイラブ」は74年の夏のはずだった。それでも突っ張り男たちのファッションは、あの当時はやったブランドワンポイントを基調にしたそれだし、大河内奈々子もあの当時に一番男に好かれそうな雰囲気を出していた。

井筒監督はやられたらやり返すツッパリ話が得意だ。「パッチギ」は一世を風靡した在日朝鮮学校と日本の高校生との戦いをうまく描いていた。ただ、最初の「パッチギ」はまともだったが、続作ではあまりに思想性が強すぎて非常にいやな感じがした。井筒監督に誤った思想が植えついている気がした。この映画はそういうのがない。もっと思想なんて持たずにシンプルにやってくれればいいのにと思ってしまうのは私だけだろうか??

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インフルエンザ学級閉鎖

2009-09-15 07:24:43 | Weblog
娘の中学校が学級閉鎖になった。
金曜日の日に、インフルエンザ発症の女の子がいて一気に5人ほど具合が悪くなって、週末どうなるかといっていた。日曜日に大規模書店に娘と一緒に行こうといったら、あそこはインフルエンザが蔓延しているからダメだと言われやめた。

昨日帰宅したら、「たいへんなことになった」と言っていた。学校でクラス半分しか登校しなかったようだ。クラスによっては10人来ていないところもあるらしい。結局しばらくシルバーウィーク過ぎるまで休みのようだ。9月中旬まで休みなんて大学みたいだなあ。
テレビでインフルエンザのことあまり言わなくなった。むしろ酒井法子の出所騒ぎだ。大丈夫なのかなあ?

娘といえば元気にしている。遊びに行こうかといったら、学校から出あるかないようにといわれているからダメだと。変なところまじめだ。
娘がインフルエンザなら会社出社に至らずだが、そうでないので今日も元気に仕事に行きます。
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弓 キム・ギドク

2009-09-14 18:54:21 | 映画(韓国映画)
韓国の奇才キム・ギドク監督が描く偏愛物語。海に浮かぶ釣り船で生活する老いた男と16歳の女の子の話である。6歳のとき拾った少女を船上で育て上げ、17歳になったときに彼女と結婚することを夢見る男の気持ちを言葉を語らずに描いていく。

海上に浮かぶ釣り船で生活する老いた男と若い女性。男は弓の名手で、海上でブランコをする彼女の顔すれすれに弓を放っていく。釣り船の客が美しい彼女に手を出そうとすると、弓から矢を放って威嚇する。カレンダーを見ながらあと数ヶ月に迫った彼女の17歳の誕生日に結婚式を挙げようと準備を重ねていた。あるとき20代の若い男性が釣り客としてやってきた。彼女はその若い男に好意を示す。恋の強い吸引力を感じた彼女は夜中に若い男の布団に忍び込むが、老いた男に見つかり突き放される。そうしていくうちに彼女は次第に老いた男との距離を置こうとするが。。。。

絵描きを目指したキム・ギドクだけに映像コンテは非常に美しい。しかし、舞台は海の中の一艘の船に過ぎないので、夕焼けをバックにしてもさすがに美的限界がある。「春夏秋冬そして春」ほどの映像美はない。それを韓国特有の色彩感覚とチョゴリの派手な色で色をつけている。その派手な色と対照的に色白で美しい少女の主人公が、一言も発せず表情だけで感情を表現する。今回はむしろ東洋的な音楽のよさが際立った気がする。

どうもキムギドクは言葉を発せず、映像で気持ちを表現することにこだわっているようだ。でも、毎回毎回この手法はやりすぎかな?といった気がする。女の子は笑えるくらいで、言葉は話せるはずだからセリフはあっても良いような気がした。肉体を駆使する匂いは今回はあまりなく、その代わりに題名の「弓」がいつの肉体的暴力の代わりを演じた感がした。

それでもジーンとさせられたシーンがいくつかあった。二人が10年一緒に暮らしてきて、情がないのは寂しいものだと思っていた。映画の最後にかけて、やさしさに包まれた彼女から母性のような何かが発せられてドキッとした。
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アンダーカヴァー  ホアキン・フェニックス

2009-09-13 06:51:04 | 映画(洋画 2006年以降主演男性)

ニューヨークを舞台にした麻薬潜伏捜査モノの一種。最近でもオスカー作品「ディパーテッド」ほか似たような作品がいくつかある。主演級になりつつあるホアキン・フェニックスとマーク・ウォールバーグが兄弟を演じて、セクシー度ナンバー1のエヴァメンデスが色を添え、大ベテランロバートデュバルが脇を固める。派手なカーアクションも混ぜながら、進んでいく。

1988年父ロバート・デュバルが警察の署長、兄マーク・ウォールバーグがエリート警部という家庭を飛び出した弟ホアキン・フェニックスは、名前を変えて、ブルックリンのクラブのマネジャーをしている。お色気ムンムンのエヴァ・メンデスが彼女だ。あるとき兄の昇進祝いに招かれた弟は警察が近くロシアマフィアの麻薬ルートにメスが入る話を父と兄から聞く。裏社会に生きる弟に注意が与えられる。ロシアマフィアは普段お店の関係者として付き合っている連中だ。ところが、兄マークは弟の店にがさ入れに入る。弟と黒幕の下っ端が捕らえられる。弟はすぐ釈放されるが、警部の兄は自宅に帰る途中マフィアから銃弾を撃ち込まれる。。。

この後立場が二転三転する。定石どおり、どっちがが味方でどっちが敵だかわからないようにしている。マークウォルバーグが死に損ないの重傷を負うだけでなく、弟も大けがをする。ストーリーは比較的わかりやすい。アメリカ映画では、イタリアかロシアのどちらかのマフィアが標的になることが多い。ストーリーがわかりやすい反面「ディパーテッド」に比べるともう一捻りに欠ける。
主人公が任されているブルックリンのクラブはなかなか良い雰囲気だ。ディスコのように踊れる場所もあるが、ショーもやっていてなかなか楽しそう。88年というと日本でいえばバブルの絶頂。アメリカ映画で意外にこの時代の設定の映画って少ない。美術がよくこの時代を表現していていると思う。同時にこういう店があればいってみたい。


ホアキン・フェニックス「ウォークザライン」のジョニーキャッシュ役が非常によかった。オスカー受賞の妻役のリースウィザースプーンよりもはるかに光っていた気がする。ここでも裏社会に身を落としている主役を巧みに演じる。
マーク・ウォールバーグ「ディパーテッド」でも性格の悪い、癇癪もちの刑事を演じた。あの作品での激しさと比較すると、若干おとなしくまとまっていて、物足りない。でも最近はこういうタイプの刑事が実際に多い気がする。

エヴァメンデスはここでも開始早々の色気ムンムンのシーンで男たちをとりこにする。普通に健康的な男であれば、彼女のセクシーさにはまいってしまうはずだろう。自分もその一人である。正直この映画を観ようと思ったのも、彼女が出ているからだ。「トレーニング・デイ」で不良刑事デンゼルワシントンの恋人役を演じた。ラテン系でかっこいいなあと思った後、「タイムリミット」でもう一度デンゼルの相手役を演じた。同じ女性と二度の共演とはデンゼルワシントンには珍しい。「タイムリミット」のラストシーンで二人は唇を交わしている。黒人であるデンゼルワシントンは黒人社会への影響を考え、ジュリアロバーツとのキスシーンを断ったといわれている。(信じられない!)そんな彼もラテン系の彼女ならいいのか?まじめ男デンゼル・ワシントンもエヴァ・メンデスの強烈なセクシーさにまいったというのが本音であろう。

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アライブ キムベイシンガー

2009-09-11 21:17:05 | 映画(洋画:2006年以降主演女性)
キムベイシンガーの新作。日本未公開の作品。殺人事件を目撃した女性が、犯人たちに追われ森の中をさまよう話。何で日本で公開されなかったかは見てみるとよくわかる。ちょっと激しい作品だ。

普通の主婦キムベイシンガーには双子の子供がいる。夫は暴力的な傲慢な男。夫婦ケンカをした後で、外に買い物に出て行く。ショッピングモールはクリスマスの買い物で車が一杯。駐車もままならない。買い物から戻った時、出ようとしたら車が止まって行き先をさえぎる。中にはヤンキーたちが数人。レイプの危険を感じたとき、ショッピングセンターの警備員が助けに来る。警備員が取り巻くヤンキーからキムを助けようとしたとき、ヤンキーの一人が警備員を撃ち殺す。とっさにキムは車で逃げるが、ヤンキーたちが彼女の車を追う。。。。。
キムは逃げていく

そこからのストーリーはお楽しみだが、悪女を演じさせたら天下一品のキムベイシンガーだけに一筋縄では行かない。割と楽しめた。
キムベイシンガーは私の大好きな女優の一人である。彼女はもうすぐ56歳になると思うが、いまだに美しさを保っている。危険な匂いをぷんぷんさせる。キスシーンで出るオーラはそこいらのガキどもにはマネのできない姿だ。クレジットを見ると今回は制作にも加わっているらしい。こういう映画をやってみたいと思ったのかな?
キムと日本で同じような年齢というと、高橋恵子あたりであろうか?秋吉久美子もそれに近い。昔は二人とも美しい裸体を見せてきた。ただ、最近激しいキスシーンを高橋恵子もやらなくなってきた。おばあさん役を演じるようになるともう女の匂いが薄くなるのか?若いころはかなり激しい挙動で有名だった彼女だけど。キムベイシンガーにはまだ性的な匂いを感じさせる。秋吉久美子にはもう少しキムのように頑張ってほしい。

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悪い男  キムギドク

2009-09-10 21:41:09 | 映画(韓国映画)
私にはこれは傑作だ!とはいえない。あまりにエゲツナイのでまいったという感じだ。しかし、画像から目が離せない。次はどうなるのか?と思わせながら、主人公二人を追いかけていた。韓国映画特有の暴力描写がここではきつすぎる。監督はおそらくこういう世界の中で生きてきたのであろう。でも時おり見せる繊細な描写があまりに対照的だ。言葉少なげな主人公はうつせみと同じ。汚いヤクザ言葉の連発とこれも対照的。その対照性がいかにもキム・ギドクなのであろう。

ソウル?の町の中で、恋人を待つ女子学生ソ・ウォンに魅かれたヤクザ男の主人公チョン・ジェヒョンが、待ち合わせの恋人が到着するやいなや、強引に彼女の唇を奪う。恋人が二人を離そうとするが離れない。周りにいた士官たちが強引に割り入って大人数で止めに入る。取り押さえられた男に向かって、周りは謝れというが、男は謝らない。彼女はつばを男に吐いて別れる。その後のあるとき、彼女は書店に入って財布を見つける。そしてその財布を持ってトイレに入って中身を抜きとろうとする。その時、財布の持ち主がトイレへ押しかけ、「スリだ」といいながら女を追う。持ち主だという男は、彼女が見た金額よりも多い金額と小切手が財布に入っていたと言い。強引にその金額を返させるために、金を借りさせる。借金の証文には返せない場合は身体を提供させるよう書いてあった。しかし、これは主人公による罠で、彼女は売春窟の中に入り込むようになる。。。。。

そこから繰り広げられる世界はいかにもエゲツナイ世界だ。日本映画ではここまでドツボに落とす映画はあまりない。日活ポルノでSM世界に知らぬ間にはめられる谷ナオミの世界くらいか?巨匠溝口健二監督が描く戦後の売春婦の姿は、生活のためにやむなく売春の世界に入っていく女たちだ。しかし、ここで描かれるのは罠にはまった女だ。きっとそれに近い実話は日本にもあるかもしれない。でもこんな罠ではないだろう。嫌悪感しか感じなかった男が、徐々にその男がいなければ生きていけないような男になっていく過程を独特の語りでキムは表現する。

日本のソープでは玄関前に女性が立ち並んで呼び込みをする姿はない。昔の遊郭の流れをくむ大阪の飛田、松島は顔見世はあるが、ちょっと違う。独特の色彩感覚で呼び込みの女性と韓国の売春窟を描く。みかじめのヤクザだけでなく、ヤクザまがいの警官も登場させる。ヤクザの前でえばっている警官だ。取り締まり逃れに女を抱かせてもらっている。キムギドクはおそらくはこういう醜い世界も見てきたのであろう。裏社会の話は得意なようだ。

主人公の好演に加えて、ソナが別の意味で良い女になっていくのが不思議な感じがした。女学生姿も悪くないが、売春婦姿で時おり見せる表情はきわめて美しく見えていく。

でもエゲツナイなあ!!
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007慰めの報酬 ダニエルクレイグ

2009-09-09 20:53:25 | 映画(洋画 2006年以降主演男性)
007の新作。強烈なアクションの連続を6カ国にわたって繰り広げる。ストーリーがちょっとわかりづらい。アストンマーチンのカーチェイスがいきなり画面に飛び込んできて、エンジンが最初からかかっていっていく。スリリングである。アクションがワイルドなのでダニエル・クレイグも大けがしなかったのかな?

007にしては106分と時間が短い。簡潔にまとめようとしているのがわかる。世界旅行を楽しんでいる錯覚にさせるほど、いろんな国を回る。
イタリアのシエナ、ハイチの海岸のシーンが印象的だ。特に陶器瓦の家並みが美しいシエナのシーンでは町の草競馬のシーンが映る。これがかなり荒っぽいレースで見ごたえがある。屋根を伝わっての追跡シーンもすごい。
ハイチの海岸では、義経の八艘飛びのようにボンドが船を飛び回った後で、モーターボートをかなり強引に競わせる。ボンドガールは日焼けしてエキゾチックだ。

画像的にはいろんな国を周っているだけあって、非常に美しい。撮影もうまいと思う。パーティのシーンもいかにも外国のハイソな匂いがしていいと思う。

ただ、ストーリーが今一歩わかりづらいかな?解説を読んでそういうことかと思うこともある。Mであるジュディ・ディンチがいつもより登場する気がする。007が人を殺しすぎて、それを止めようとするMの動きがあるからだが、いつもとちょっと違う気がする。前作の方がよかったかも??
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デイズ・オブ・サンダー トムクルーズ

2009-09-07 19:02:58 | 映画(洋画 99年以前)

トムクルーズのレース物。90年のロードショーの時、劇場で見た。二コールキッドマンと結婚するきっかけとも言われる作品。単純なストーリーだが、大画面で見ると迫力のあるシーンもあり面白い

車の草レースで連戦連勝のトムクルーズが、ロバートデュバル率いるレースチームの前で腕前を披露して参加する。ストックカーレースといって同じ性能の車で皆走り、レーサーの腕前で順位が大きく違ってくる。最初は強引な走りで結果が出せなかったトムが、ロバートデュバルのアドバイスでコツをつかみ優勝を勝ち取れるようになる。しかし、ライバルとの競い合いでクラッシュして入院する羽目に。担ぎ込まれたときは目が見えない状態だったが、女医二コールキッドマンの手当てよろしく回復する。そうしていくうちにトムは二コールに魅かれていくが。。。。


記憶が薄れていて、最後はハッピーエンドの気がしたが、レースの詳細はすっかり忘れていた。最初に見たときにそんなに二コールキッドマンがいい女には見えなかった。今回見ても同じように思う。むしろ年をとってからのほうがきれいになったのではなかろうか?
いわゆるノミの夫婦といわれるように、映画の中でも二コールの方がトムよりも背が高いのがよくわかる。二コールはトムと別れた時、これからはヒールが履けると喜んだそうな。

この時代はトムの全盛時であった。トップガン、ハスラー2、レインマン、カクテルと超ヒット作が続いた。ほとんど映画館で見た気がする。いつも映画館は満員だった。これだけヒット作が続いたので、好きな企画ができたのであろう。わがままにレースをライバルと戦う姿がやんちゃだ。そこがトムの魅力だけど。それをうまく引き締めるのはロバートデュバルである。レッドフォードの「ナチュラル」でも書いたけど、こういう俳優は本当に貴重である。 彼がいるだけで映画のレベルが大幅にアップする。

B級映画だけど、たまにはいいのでは

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うつせみ  キムギドク

2009-09-06 20:41:28 | 映画(韓国映画)
「春夏秋冬そして春」に衝撃を受けて見たキムギドク作品である。原題は「空き家」だそうだ。その名の通り、留守宅に入り込み自由にそこで振舞う男の姿を描く。セリフが少なくて、その思いを90分以内に簡潔に画像で表現するキム監督の傑作である。

主人公はビラを玄関に貼り付け、その玄関のビラが取られていないかで留守を確認して、鍵をこじ開け室内に入る男である。室内に入った後は自由に自分で食事を作ったり、風呂に入ったり、中にある写真を見ながら夢想を働かせたりしている。あるとき入った富豪の家で、たまたま夫に家庭内暴力で顔を負傷してしまった女性と出くわした。いつもとは違い中での振る舞いをその女性に見られていて、途中で声をかけられる。女性は主人公に関心を持つ。旦那が帰ってきたときに、主人公はゴルフボールを旦那の身体にアイアンクラブでうち込み、女性を連れ去っていく。その後も二人で同じように他人の家に忍び込むが。。。。。

原作の発想がユニークだ。それを演じる主人公も身のこなしが軽く、題意にあっている。主人公のセリフがまったくない。でも映像でその真意が伝わる。
他の登場人物もその役にあった適切な演技を見せる。富豪の暴力男もいかにも韓国人らしい暴れん坊だ。贈賄シーンも出てくるが、これも歴代の大統領が収賄で次々逮捕される韓国の風土らしい姿だ。住宅に入り込むので、韓国人がどんな家に住んでいるのかがよくわかる。高級住宅街の邸宅、古くからの韓国風の建物、団地、マンションで現代の韓国住宅事情が見えてくる。

映画を見れば見るほどキム・ギドクはすごい男だ。しばらくは彼を追っかけてみたい。
コメント (3)
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