映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「宮本から君へ」池松壮亮&蒼井優

2019-09-29 22:37:02 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「宮本から君へ」を映画館で観てきました。

「宮本から君へ」新井英樹の漫画を映画化した作品。もちろん原作は未読。宮本という営業マンが年上の彼女に対して不器用だけど一途な恋を貫く物語である。監督は「ディストラクション・ベイビーズ」真利子哲也、ケンカを趣味にしたような主人公が思いっきり暴れる前作に引き続き今回の演出も暴力描写がかなり多い。

主演の2人池松壮亮蒼井優も今までと違うワイルドさを持つ。特に池松壮亮はさめた現代の若者を演じることが多いのに対して、ここでは恋のために熱く立ち向かう男になろうとする。いずれも年末の演技賞にノミネートされてもおかしくないレベルである。

ピエール瀧が出演している。昨年秋に撮影されたようなので逮捕に合わせて公開が遅れたんだろう。見てみると、一旦撮影されたものから彼を抜いてやり直すのはどう考えてもムリな構造である。彼もいったんシャバに出たので、ほとぼり冷めて公開といったところであろう。

チケット購入にも珍しくR15 の画面が出てきて強調される。別に蒼井優のバストトップが出るわけでもない。暴力描写の激しさからであろう。時間軸を前後に振りながら、2人の恋の軌跡を描いていく。見ようによっては一途な恋だが、ここまでこじれる前に警察に傷害で訴えたりしてもいい感じもする。映画としてのレベルは高いが、後味はキモイの一言かも。

文具メーカー「マルキタ」で働く営業マン宮本浩(池松壮亮)は、笑顔がうまくつくれない、気の利いたお世辞も言えない、なのに、人一倍正義感が強い超不器用な人間である。
宮本は会社の先輩・神保(松山ケンイチ)の仕事仲間である、自立した女・中野靖子(蒼井優)を紹介された。そして靖子と恋に落ちた。靖子の自宅で夕食を楽しんでいるとき、そこに靖子の元彼・裕二(井浦新)が現れる。裕二を拒むため、宮本と寝たことを伝える靖子。怒りで靖子に手を出した裕二に対して、宮本は「この女は俺が守る」と言い放つ。
この事件をきっかけに、心から結ばれた宮本と靖子に、ひとときの幸福の時間が訪れる。

ある日、営業先で気に入られた真淵部長(ピエール瀧)と大野部長(佐藤二朗)に誘われ、靖子を連れて飲み会に参加した宮本は、気合いを入れて日本酒の一升瓶を飲み干し、泥酔してしまう。見かねた大野が、真淵の息子・拓馬(一ノ瀬ワタル)の車で送らせようと拓馬を呼びつけた。そこに現れたのは、ラグビーで鍛えあげられた巨漢の怪物だった!泥酔する宮本と、宴会を楽しむ靖子、二人の間に、人生最大の試練が立ちはだかる。(作品情報引用)


映画が始まってすぐ主人公宮本が殴られて顔が晴れ上がってボコボコにされた状態の映像が出て来る。前歯がない。どうもケンカしたようだ。上司から注意をされるけど、相手側からは大ごとにするなと言われているという。どんなもめごとなんだろう?そう思い映像を追う。

続いて、文具販売の営業マン宮本(池松壮亮)が彼女(蒼井優)を引き連れて宮本の実家で父母に紹介するシーンが出てくる。どうも彼女は妊娠しているらしい。宮本の母親は気がつく。大ケガをさせたこともみんなわかっているようだ。そのあとで出てくるのが、彼女の家で食事しているときに泥酔した元彼氏(井浦新)が現れるシーンだ。ここで一発触発ケンカして大ケガしたのかと思ってしまう。でも、ドタバタするが、そこではいったん落ち着く。


時間軸が前後に振れるが、大きくは動かない。むしろハッピーなシーンが多い。そう思った時にピエール瀧が登場する。飛び込みで入った建設会社の部長の役だ。部長はラグビー仲間と飲んでいる。靖子と一緒に加わる。営業だから注がれた酒には応えざるを得ない。そこで一升瓶イッキをして泥酔した宮本を部長は息子(一ノ瀬ワタル)に送らせようとする。そして、3人で靖子の自宅に帰って宮本はぶっ倒れて寝る。その時だ。性欲あり余っている息子はついつい靖子に乱暴してしまう。大声をあげても泥酔している宮本は起きる気配もない。息子はやりたい放題だ。この映画のキーになる事件はそれだ。

最初は気づかないが、わかって宮本は動揺する。
あとは、ひたすら復讐である。ここでいいところを見せるのかと思ったらそうはいかない。逆に返り討ちにあう。

途中までこのケガって何?と観客に連想させる。よくわからない。こうやって観客の判断をじらすのが大事なのだろう。じらした後でこういうことかとわかるが、それでも復讐が沈滞する。しまいには元彼氏まででてくる。いったいどうなるの?とやきもきさせる部分はある。ストーリーの先を予測させないのは脚本の巧さであろう。
「ディストラクション・ベイビーズ」同様、腕っぷしで見せる映画である。マンションの階段での格闘シーンはよくやるな!といった感じである。日本の団地ではこういう撮影はなかなかさせてくれないだろう。ここでのキーワードは「金的」

まあ見てみないとこのキモさはわからないだろう。
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映画「ある船頭の話」柄本明&オダギリ・ジョー

2019-09-19 05:44:52 | 映画(自分好みベスト100)
映画「ある船頭の話」を映画館で観てきました。


オダギリジョーの初監督作品である。山間を流れる渡し船をめぐって船頭と乗客との逸話を語っていく。主人公の船頭を柄本明が演じる。初監督となるオダギリジョーを応援してか、橋爪功、草笛光子、蒼井優、細野晴臣、永瀬正敏といった主演級が渡し船に乗る乗客として脇を固める。時代をくっきり浮き上がせるワダエミの衣装がよく、ワイドスクリーンをいっぱいに使ってのクリスファードイルのカメラは緑あふれる山間部を流れる川に浮かぶ渡し船を美しく映す。この映像のレベルは高い。

メリルストリームの「激流」ブラッド・ピットの「リバー・ランズ・スルー・イット」と川にかかわる映画とは相性がいい。徐々に情感が高まってくるこの映画もいい感じだ。



時代設定は明治から大正にかけて、映画がはじまってしばらくは、山間を流れる川に浮かぶ渡し船での船頭トイチ(柄本明)とお客さんとの何気ない会話を映し出す。船頭トイチは船着き場横の小屋に一人で住んでいる。村の少年源三(村上虹郎)は何とかとトイチにちょっかいを出して仲がいい。

ただ、主人公の心には1つの葛藤がある。町と村を結ぶ大きな橋が作られているのである。開通すれば、渡し船は乗らなくてもすむ。乗船客には建設に携わる横柄な土木建設会社の男もいて、トイチはおとなしく相手にしているが、内心は穏やかでない。

そんな渡し船に何かぶつかるものがある。人が流されてきたのだ。少女である。かすかな息をしておりまだ生きている。ずっと眠ったままだったが、薬草を使って介抱するとやがて目覚めた。名前は名乗らない。

そんな時乗船客から、上流の町でむごい殺人事件が起き女の子が一人行方不明といううわさを聞いた。トイチは心の中でつながりを感じたが、乗船客には知り合いから一時的に預かっていると少女(川島鈴遥)を紹介した。やがて、少女もトイチに心を許して、川辺の小さな小屋でお互い信頼しつつ暮らしていた。橋は徐々に完成に近づいてきたのであるが。。。


都会の喧騒とはちがう川辺の美しい風景を観ながら、人の好いトイチの対応をみていると、心が洗われる感じがする。次から次へといろんな人たちと会うのは、逆に固定した風景にもかかわらず、ロードムービー的な要素もある。バックもディグラン・ハマシアンのジャズのソロピアノで、しっとりしたムードにうっとりしてしまう。


ロケ地はどこなんだろう?とずっと考えていた。すがすがしい夏の風景から南の匂いも感じたが、どうやら新潟の阿賀のようだ。むかし、10月~11月にかけてか?社内旅行でバスに乗り、会津経由で新潟に向かった時がある。その時会津を抜けると雪が降ってきた。え!こんな時期にと思ったが、このロケ地あたりだったかもしれない。

小さな事件はいくつも起きるが、平穏無事に進んでいく映画かとラストの寸前まで思っていた。しかし、根底に流れるストーリーにはたくさんの伏線をつくっていた。それが、ある方向に暴走する。雪景色の中予想しなかった展開に驚いてしまう。


数々の名画に出演してきたオダギリ・ジョーの底力を感じた。自分の好きな映画に加えたい。

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映画「エロ事師より人類学入門」今村昌平&小沢昭一

2019-09-18 05:28:50 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「エロ事師より人類学入門」は野坂昭如の小説を映画化した作品である。

この小説で三島由紀夫の激奨を受けた。今村昌平監督作品で昭和41年のキネマ旬報ベスト10の第2位となっている。以前今村昌平監督の日本経済新聞「私の履歴書」でエロ事師の制作過程の話を読んだことがあり、気になっていた。8ミリ映写機を4つ重ねて撮る姿が滑稽、神保町名画座の小沢昭一特集で見れてラッキーである。


大阪ドブ川横に建つ長屋の一角に未亡人松田春(坂本スミ子)が経営する理髪店がある。そこに居候する緒方(小沢昭一)はアパート隣家の性行為を盗聴したテープや即席俳優でつくったブルーフィルムを裏でつくってまわしているエロ事師である。相棒のカメラマン伴的(田中春男)とつくって割烹など安心できるところへ回す。裏商売にはヤクザと関わらずに身を隠して商売している。


未亡人春には高校を卒業して浪人生活をしている長男幸一(近藤正臣)と15才の長女がいる。緒方はたまに長女のセーラー服をこっそり拝借して撮影に使っている。 春は長男を可愛がっているが、勉学に身が入らずぶらぶらしている。ところが、肺の疾患にかかっていることがわかり、入院してしまう。次第に娘は不良の友人と遊んでグレてくるし、長男は裏口で大学を行こうと金の無心をしてきて訳わからなくなる。

時代が違うのであろう。エロ事師の題材とはいえ、強烈な絡みはない。
90年代で言えば村西とおるのような人物だと思うが、もっと根が暗い。それでも、大阪弁が妙に軽快で悪いことも悪く聞こえない。
個別の俳優の起用に巧さを感じる。

1.中村鴈治郎、ミヤコ蝶々、内田高雄
処女相手にこだわる会社役員を演じる中村鴈治郎、一度でいいからウブな子としたいと言う関西のエロ重役は鴈治郎しかできない。その女を調達するにはミヤコ蝶々だ。子どもを産んだばかりの女を調達して、そんなわからしませんと平然とセーラー服を着させて中村鴈治郎のもとへ行かせる。こういうやり手ババアやらせると実に上手い。


あとは、内田高雄だ。時代劇の悪代官や現代劇では政財界のワルな黒幕など長い間活躍してくれた。ここでは緒方がダッチワイフ研究のため、理髪店裏のドブ川に着けているボロな小船で閉じこもっているところに乗り込もうとしてドブ川に転落するシーンがある。思わず笑ってしまう。ただ、こんな汚いドブ川落ちて大丈夫だったのかな?

2.近藤正臣
近藤正臣柔道一直線でブレイクするのはこの3年先、入学するのには30万円かかると金をせびる。義父的な存在の緒方と仲がいいのかどうかよくわからない。妹のけいこは夜の酒場に出入りしたりして、不良と付き合っている。その仲間が良からぬ筋を連れてきて緒方と仲間の金を盗む。そんなことをされても緒方は憎まない。

3.坂本スミ子

ここで凄みを見せるのは坂本スミ子であろう。自分は紅白歌合戦で彼女を見た記憶がある。小沢昭一が35才で坂本スミ子が38才の設定だ。情の厚い大阪女を地で演じられるところがすごい。性欲たっぷりの未亡人の色気をプンプンさせて、小沢昭一にベッタリする。でも、肺病で体の調子を崩したので弱気になる。この土地と建物今売るんだったら250万円だと言いはじめる。加えて今中学生の娘を高校卒業したらもらってくれなんていう。この辺りのセリフが現代的でない。そして、一つのクライマックスである。病室から外へ向かって叫ぶシーンとなる。この時代には珍しく、オッパイがポロリ



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映画「帰れない二人」ジャ・ジャンク―

2019-09-17 05:44:09 | 映画(中国映画)
映画「帰れない二人」を映画館で観てきました。


ジャ・ジャンクー監督の新作である。いつものようにチャオ・タオが主演、長回しで映し出す主演2人のやりとりが素晴らしく「罪の手ざわり」、「山河ノスタルジアよりも自分にはよく見える。薄氷の殺人で元刑事にもかかわらず事件の真犯人を追う役で好演だったリャオファオはジャンクー作品常連のチャオ・タオとの息もあっている。傑作だと思う。

2001年山西省大同、裏社会を取り仕切るビン(リャオファオ)とチャオ(チャオタオ)は麻雀屋などの娯楽場を経営している。周囲では抗争が絶えず、ビンも襲撃されることもあった。チャオは炭鉱の集落で育った。チャオの父親はそのまま住み続けていたが、石炭価格の暴落で炭鉱は閉鎖して働く人たちは遠く新疆に移らざるを得なかった。チャオは父親のために住処を用意しようとしていた。

そんな時、ビンとチャオが乗る車をバイクに乗った大勢のチンピラが取り囲んだ。運転手とビンが車を降りてチンピラに対抗したが、相手の人数は多くコテンパンにやられていた。そこで、車の中にいたチャオは以前にビンから預かっていた銃を取り出し、威嚇発砲してその場は収束した。しかし、拳銃を正規でないルートで手に入れることは違法である。チャオは本当の持ち主であるビンをかばいそのまま収監された。収容所では雪の降る寒い施設で冷や飯を食わざるを得なかった。


5年後刑務所を出所したチャオは長江の客船に乗り、途中置き引きにあったりたいへんな目にあいながらビンのもとへ向かった。ビンは携帯電話に出なかった。三峡ダム建設予定地である奉節にいるビンがお世話になっているはずの元友人リンを訪ねた。ビンの行方は教えてもらえなかった。ビンは事件から1年で出所していた。そこで、以前会ったことのあるリンの妹に会うと、実は自分が付き合っているので別れてくれと言われる。チャオは実際に会って話を聞かないと言い再度ビンを探す。そして、やっとの思いでビンと会うのであるが。。。


先日映画「ドッグ・マンを観た。主人公はいつもいじめられている暴れん坊をかばって収監される。出所してもかばった男は何もしてくれない。それどころかひどい目にあい、復讐する。そういったストーリーだ。やっとの思いで刑務所生活を終え、かばった男に会いに行くが、すでに別の女とできているという。しかも、別れてくれと。そうか「ドッグ・マン」と同じような裏切りが主題なのかと映画を観ながら思う。

しかし、そうはならない。列車に乗ったとき別の男と知り合い、その男とくっつくのかと思ったらそうはならない。それどころか、もう一度再会の場面が出てくるのだ。この長期間にわたる腐れ縁というべき恋人関係は成瀬巳喜男監督の「浮雲」ピーターチャン監督「ラブソングと近い匂いを持つ。双曲線のように近づき離れる紆余屈折がある恋である。

チャオの威嚇射撃のシーンも迫力があるし、奉節での二人の別れの長まわしシーンも味がある。これほど見どころ満載なのも珍しい。
それに加えて小さい逸話がいくつもある映画である。それぞれに味がある。


1. 渡世の酒
裏社会の顔であるビンが友人たちと酒を飲みかわすシーンがある。これって白酒であろうか?ボトルをかき集めて洗面器のような容器に入れる。それを一緒になってそれを飲み干すのだ。山西省も寒いエリアである。中国では北に行くほど、強い酒を飲む。自分の親友も上海から北に500キロ行った場所へ単身で行き、みんなで白酒を飲み干し急性アルコール中毒になり亡くなった。とっさにそんなことを思い出した。

2.YMCA
ビンとチャオが町の顔役が経営するダンスホールまがいのディスコにいく。そこでかかっているのがなんとヴィレッジ・ピープルの「YMCA」だ。日本流に言うと「ヤングマン」だ。みんな乗りに乗りまくって踊っているが、この時代設定は2001年だ。日本では1980年代に流行ったこの曲も、中国ではようやく近代化された2000年代になって流行ったのであろうか。しかも、ここでチャチャチャを踊る正統派ソシアルダンスの服装を着た男女が出てくる。さっそうと踊るこの曲も1980年代の曲だ。町の顔役は結局殺される。その時、ダンスホールでペアで踊った男女が葬式の場面で追悼で踊りまくるシーンがでてくるのがご愛嬌だ。



3.あなたが妊娠させた女の姉だ。

チャオが出所したあと、置き引きにあって無一文になる。その時、レストランで家族そろって楽しく会食をしている席を見つけて主人らしい男に言う。私は「あなたが妊娠させた女の姉だ」、最初は何を言っているのかと思う。でもそれをもう一回同じように別の男にやるのだ。そうすると、別の男は申し訳そうもない顔をして、周りに家族がいるので、さくっと大金を出す。これで元気になるものを食わせてあげよと。


これって面白い。中国は一人っ子政策だとは言え、例外もあるのであろう。


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映画「経営学入門より ネオン太平記」小沢昭一

2019-09-16 17:36:37 | 映画(日本 昭和35年~49年)
経営学入門より ネオン太平記 [DVD]
小沢昭一


「経営学入門 ネオン太平記」は昭和43年の日活映画だ。

まだ日活はロマンポルノ路線にはなっていない。大阪のアルサロのマネジャーを小沢昭一が演じる。大阪万博開催2年前の猥雑な大阪の夜を映し出す。脚本は今村昌平だ。たぶんアルサロに実際に行ってしっかり取材してきたんだろう。大勢の女性をアルサロで稼がせる小沢昭一のセリフに取材の跡が見える。監督は今村昌平の下にいた磯見忠彦である。ゲストが超豪華で、渥美清三國連太郎野坂昭如黛敏郎だ。今村昌平人脈で北村和夫小沢昭一人脈で加藤武も出演している。かしまし娘も歌いだす。

アルサロすなわちアルバイトサロンである。プロのホステスではなくアルバイトの素人が男性陣のお相手をする。ボックスに入ってぶちゅっと激しいサービスだ。グランドキャバレーよりサービスは過剰である。東京近郊で以前は見た気もするが、キャバクラの繁栄のあと熟女パブの登場で首都圏では死語に近いものがある。この映画大勢のアルサロの女性が出ているけど、松尾嘉代、吉村実子という一部女優陣以外はホンモノのアルサロの女の人かもしれない。


ストーリーはあるようでないようなものだ。大阪郊外の街にあるアルサロはライバルのクラブとの競争が激しい。素人さが受けるんだよと過激なサービスをマネジャー(小沢昭一)が要求している。アルサロの経営者は市議会議員を自分の店で過剰接待して、キャバレーにトルコ風呂が加わったような飲み屋ビルを計画している。その計画を聞きつけたヒステリーばばあたちが店に怒鳴り込んできているが、マネジャーは軽くあしらっている。

マネジャーには妻(園佳也子)と娘がいるが、妻とは内縁状態だ。籍を入れていない。夜を妻に求められても逃げるばかり。それもそのはず、キレイどころはしっかりと自分のものにしている。双子の美人姉妹(古川潤子、由子)が入店してきて姉の方に手をつける。そんな関係も次第にわかって大騒ぎなんてよくある話だ。


いきなり2人の顧客をアルサロの女性が取り囲んでボックスで激しいサービス、おや、この2人見たことあるぞ。かたや落語家桂米朝でもう1人メガネをかけているのは小松左京だ。まだ日本沈没は書いていない。小沢昭一が演じるマネジャーが夕礼でホステスたちに客からしっかりと金をふんだるよう激励している。指名が入ればチップが出るぞとばかりに指導する。これ以上ふんだくられたらヤバイと客は飛び出そうとする。そうはいかないオンナたち、いきなりその攻防だ。


大阪郊外の街を映し出す。これは京阪電車であろうか?最初は守口という看板が見える。飲食店の看板にある価格が安い。ボーリングは朝が100円、昼は150円、6時過ぎが200円となっている。ボーリングブームはこの2年後だ。万博も始まっていないし、狂乱物価の時代でもない。

一流のホステスは日給1000円は稼ぐぞ!とマネジャーがせっつく。収入も少ないかもしれないが、いい時代である。最後に大阪の中心部中之島あたりをアルサロの店員がマラソンで行進するシーンが印象的だ。首から下げているゼッケンに仁丹とかパイオニアとかバヤリースなんて会社名が書いてあるのは笑える。

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映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」レオナルド・ディカプリオ&ブラッド・ピット

2019-09-02 20:24:06 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「ワンスアポンアタイム・インハリウッド」を映画館で観てきました。


待ちに待ったクエンティン・タランティーノ監督の新作である。しかも、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが夢の共演をする。ロマンポランスキー監督の元夫人シャロンテート殺人事件を題材にしているという触れ込みである。TVから映画に主力を移して、人気が落ち込んでいる俳優とそのスタントマンのハリウッドでの日常を映す。

タランティーノの構想にあったハリウッドネタを詰め込んだ感じ、プレイボーイ・ハウスでハリウッドの遊び人が入り乱れる派手なパーティのシーンもある。各出演者にダラダラとしたセリフをしゃべらせ話を展開させるのは、いかにもタランティーノ映画らしい。


60年代後半のポップスがふんだんに流れる。どの曲もきっとタランティーノ好みなんだろう。知らない曲も多い。短いけど、S&Gのミセスロビンソンが印象的で、「カリフォルニアドリーミング」や「キープ・ミー・ハンギング・オン」はオリジナルとは別バージョンが流れ、ジョニミッチェル作詞作曲で映画「いちご白書」挿入曲であるサークルゲームも印象的に使われる。そんなポップスが流れる中、ブラッドピットが軽快にオープンカーを走らせる姿がかっこいい。優雅な感じがする。全体を通じて、人気俳優の裏方として汚れ役を買って出るブラッド・ピットの方が自分にはよく見える。

スパーン映画牧場でのブラッド・ピットのパフォーマンスはこの映画では極めて重要な場面である。ここで出会うブルースダーン演じる牧場主は盲目、教祖的なその感じはO真理教のAを想像してしまう。


1969年、ハリウッド。俳優のリック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)は、テレビから映画へのキャリアチェンジがうまくいかず悪役への転向を言い渡されさえない気分だった。彼のスタントマン兼付き人のクリフ・ブース(ブラッド・ピット)は、変わらぬ忠誠心をリックに捧げ続けており、2人は固い友情で結ばれていた。


リックは隣に越してきた、ロマン・ポランスキー監督と妻で女優のシャロン・テート(マーゴット・ロビー)に刺激を受ける。その後オーダーがあり、イタリアで4本の作品に出演したあとにイタリア女を娶って8月9日帰国する。リックが自宅で過ごしていると、ヒッピー風の若者たちが運転する車が私有エリアに入り込んできたのであるが。。。

⒈ブルースリーとのトラブル
今度のスタントはグリーンホーネットのスタントがいるんで出られないよとディカプリオがブラピに語るシーンがある。小学生の頃テレビで「グリーンホーネット」を見ていた。グリーンホーネットの助手で空手の達人であるカトーという役があった。日本人名で親しみがあった。ブルースリーであることを知ったのは「燃えよドラゴン」で大人気だった頃である。

ここではカトーことブルースリーが小柄のイキがった奴として登場する。その姿に嘲笑を浴びせるのがブラッドピット演じるクリフだ。そこで一戦交えるのには思わずうなってしまう。


2.架空の俳優
レオナルドディカプリオ演じるリックダルトンは架空の俳優である。TVシリーズで人気がでたあとで、悪役に転向させられてしまう。元気がなく子役の女の子にグチって涙してしまう。割と強気な役が多いレオナルドディカプリオには珍しいシーンだ。それでもイタリアで一瞬にしてまた人気俳優になってしまう。イタリア女を妻にめとってアメリカに帰国する。セルジオ◯×監督の作品に出演というセリフからして、モデルは明らかにクリント・イーストウッドでしょう。架空だけにキャリアの時期は合うわけもない。「夕陽のガンマン」を撮ったのはもっと前だしね。



3.最後に向けて

マーゴット・ロビー演じるシャロンテートの出番は多い。白いロングブーツにミニスカートなんていで立ちは、日本ではデビューまもない黛ジュンの十八番でもあった。それと丸善石油のCM「Oh!モーレツ」小川ローザを連想する。一世を風靡したこのCMも1969年だ。元ビデオ店の店員で驚異的な量のビデオを観ているタランティーノがひょっとして小川ローザを知っていたりして。

有名な事件が起きた日のシャロンテートをメキシコ料理屋から自宅まで徹底して追いかける。4人で遊んでいたようだ。へんな奴がビバリーヒルズの邸宅にやってきて、ついに来たと感じるが、ここからが予想外の展開だ。さすがに強烈な見せ場を作る。でも、もう一発来るかと思ったら、終わりに近づいたようだ。この意図は??


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映画「青春の蹉跌」 萩原健一&桃井かおり&檀ふみ

2019-09-01 18:05:08 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「青春の蹉跌」を映画館で観てきました。


昭和49年の神代辰巳監督の作品、石川達三の本は高校、大学時代にかなり読んでいる。当然「青春の蹉跌」の内容は鮮明に覚えている。石川達三得意の色恋沙汰だ。ただ、映画館にいっていない。しかも、最近はDVDが発売されたようだが、レンタルにもなかったので初めて見る。

萩原健一、桃井かおり、檀ふみ3人の若き日の姿が懐かしい。司法試験受験生の青年が家庭教師をしていた娘とねんごろになる。お世話になっている富豪のご令嬢に路線変更しようとするが、娘が妊娠してしまってあたふたするという話。途中ここまで長回しでなくてもという緩慢な流れも続き、若干だれるが、人気キャストの腕力で映画をもたせる。

昭和49年の歩行者天国でにぎわう新宿が映る。年初から小坂明子の「あなた」が大ヒットした。その曲もかかるし、全米ヒットチャート1位で日本でも流行ったバリーホワイトの「愛のテーマ」をパクったようなバックミュージックが繰り返し流れる。いずれも時代を感じさせる。メイデーのシーンで社会党の成田委員長がデモをやっている広場で演説するシーンが映る。さすがに今であればありえない映像だ。映画では森本レオが過激な左翼用語を連発しており、ゲバ棒学生の夜襲を受けるシーンがある。まだ大学紛争の色合いが残っている。

1.萩原健一
萩原健一は「傷だらけの天使」同様にメンズビギのジャケットをさっそうと着こなす。実にかっこいい。「約束」岸恵子と共演した時と比較すると、顔もあか抜けている。公開は昭和49年6月なので、「傷だらけの天使」は始まっていない。神代辰巳監督のコンビはこれが初めてだ。高校紛争にのめりこみ、司法試験受験するってインテリのイメージとは違うが、いいキャスティングだと思う。


2.桃井かおり
桃井かおりが独特のけだるい感じをにじませる。最初は萩原健一が家庭教師をやるという設定だ。当時23歳で高校生というとずうすうしい気もするが、まあいっか。中島葵演じる継母が別の男とつきあっていて少しひねている役柄。日活ポルノで名をなす神代辰巳の強烈演出はここでも活かされる。当然バストトップはあらわになり、からみのシーンも多い。かなり大胆だ。雪の中で交わるのは寒いだろう。この映画の後、「前略おふくろ様」などで萩原健一とは名コンビとなる。


3.檀ふみ
檀ふみは当時の教育大付属高から一浪して慶応経済に入学したばかり、映画にも出られるようになったのであろう。かなり清楚な感じである。この役には適任だ。


ヨットに乗船しながら、赤いセパレートの水着で泳ぐシーンがある。色づいたボリューム感はない。檀ふみは大学には6年いたので、年下の自分も学校で何回か見たことがある。同時に六本木の居酒屋で深夜まじめそうな男性とツーショットの場面に偶然出くわしたこともある。結局独身、これだけは運がなかったのかもしれない。
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