映画「もうひとりの息子」は2013年公開映画
2013年のキネマ旬報ベスト10の中で、見そこなっていた作品だったが、予想以上に良質な映画だった。
テーマは「取り違え子」である。
昨年日本でも「そして父になる」が公開されヒットした。東京のタワーマンションに住むエリートサラリーマンの息子とと群馬の電気屋のオヤジの息子が年月を経て、取り違えだったことがわかる話だ。胸にしみる映画であったが、ここではもっと凄い設定になっている。
イスラエルの中でパレスチナ人とユダヤ人の子が間違って取り違えっれていることが18歳になってわかるというわけだ。まさに2000年以上にわたって敵対していた両者のもとに生まれた息子である。その設定自体に驚く。
案の定、「そして父になる」をはるかに上回るすごい映画である。
テルアビブに暮らすフランス系イスラエル人の家族。ある日、18歳になった息子が兵役検査を受ける。そして残酷にも、その結果が証明したのは、息子が実の子ではないという信じ難い事実。18年前、湾岸戦争の混乱の中、出生時の病院で別の赤ん坊と取り違えられていたのだ。
やがてその事実が相手側の家族に伝えられ、2つの家族は、それが“壁”で隔てられたイスラエルとパレスチナの子の取り違えだったと知る。アイデンティティを揺さぶられ、家族とは何か、愛情とは何か、という問いに直面する2つの家族。はたして、彼らは最後にどんな選択をするのだろう。(作品情報より)
1.パレスチナとユダヤ
中学生の時、社会科の教師が両者の確執について語ってくれた。
もし君の家に「あなたの住んでいる場所は、私の祖先が2000年前に住んでいた場所です。返してください。」そう言ってきたとき、君は素直に従うかい?
ユダヤ人が豊かな生活をしているのに、パレスチナ人は難民キャンプのテントで暮らしているんだよ。
何それ??その時から両者の確執に強い関心を持った。自分が中学生のときにオイルショックが起きて、中東に関する関心が一気に高まった時だった。
高校になり、地理の自由研究でもイスラエルとユダヤについて調べる機会をもった。バルフォア宣言や戦後のどさくさ、中東戦争のいきさつについて知ったのもその時だ。
この両者の確執や住んでいる場所の違いについて映画で見るのは初めてだ。両者の居住区の間には、大きな分離壁がある。身分証明書を出さないと自由に出入りができない。パレスチナ側は海に行けない。強いボーダーがある。
しかも、取り違え子なんてすごいテーマが上乗せされている。胸にジーンとくる。
2.父親同士の口げんか
両者の家族が医師の前で説明を受け、テルアビブのユダヤ人将校の家をパレスチナの家族が訪問する。父親同士が長年の争いの中で、最初であったときに交わすことばが激しい。お互いまったく聞く耳を持たない。当然だろう。
イスラエル軍というのは、圧倒的な強さを誇る。強力な軍備で長年迫害を受けてきたユダヤ人の住処を守ろうとするのだ。ユダヤ人の父はその将校である。邸宅に住んでいる。イスラエルでは特権階級なのであろう。
あとはパレスチナ側家族の兄が見せるユダヤへの敵対意識が印象に残る。
3.母親のあたたかいまなざし
父親同士が敵対しあうが、母親たちは若干違う。取り違えになった相手側にいる実の息子にあたたかいまなざしを見せる。フランスの女性監督ロレーヌ・レヴィは女性としての視点をうまく映画で表現する。本当に複雑な立場であるが、見ている我々に母性の温かさを感じさせる。
こういった複雑な背景があるのに当人同士は仲良くなる。これが印象的だ。
パレスチナ側の息子は医者の卵、ユダヤ側の息子はミュージシャンをめざす。ユダヤ側の方が豊かなのは明らかなのに、むしろ子供の向かう先が好対照だ。ここでは親の遺伝ということも言いたかったのであろうか。
強い政治的、民族的背景を持った中でのこの作品はなかなか見応えがある作品だ。
2013年のキネマ旬報ベスト10の中で、見そこなっていた作品だったが、予想以上に良質な映画だった。
テーマは「取り違え子」である。
昨年日本でも「そして父になる」が公開されヒットした。東京のタワーマンションに住むエリートサラリーマンの息子とと群馬の電気屋のオヤジの息子が年月を経て、取り違えだったことがわかる話だ。胸にしみる映画であったが、ここではもっと凄い設定になっている。
イスラエルの中でパレスチナ人とユダヤ人の子が間違って取り違えっれていることが18歳になってわかるというわけだ。まさに2000年以上にわたって敵対していた両者のもとに生まれた息子である。その設定自体に驚く。
案の定、「そして父になる」をはるかに上回るすごい映画である。
テルアビブに暮らすフランス系イスラエル人の家族。ある日、18歳になった息子が兵役検査を受ける。そして残酷にも、その結果が証明したのは、息子が実の子ではないという信じ難い事実。18年前、湾岸戦争の混乱の中、出生時の病院で別の赤ん坊と取り違えられていたのだ。
やがてその事実が相手側の家族に伝えられ、2つの家族は、それが“壁”で隔てられたイスラエルとパレスチナの子の取り違えだったと知る。アイデンティティを揺さぶられ、家族とは何か、愛情とは何か、という問いに直面する2つの家族。はたして、彼らは最後にどんな選択をするのだろう。(作品情報より)
1.パレスチナとユダヤ
中学生の時、社会科の教師が両者の確執について語ってくれた。
もし君の家に「あなたの住んでいる場所は、私の祖先が2000年前に住んでいた場所です。返してください。」そう言ってきたとき、君は素直に従うかい?
ユダヤ人が豊かな生活をしているのに、パレスチナ人は難民キャンプのテントで暮らしているんだよ。
何それ??その時から両者の確執に強い関心を持った。自分が中学生のときにオイルショックが起きて、中東に関する関心が一気に高まった時だった。
高校になり、地理の自由研究でもイスラエルとユダヤについて調べる機会をもった。バルフォア宣言や戦後のどさくさ、中東戦争のいきさつについて知ったのもその時だ。
この両者の確執や住んでいる場所の違いについて映画で見るのは初めてだ。両者の居住区の間には、大きな分離壁がある。身分証明書を出さないと自由に出入りができない。パレスチナ側は海に行けない。強いボーダーがある。
しかも、取り違え子なんてすごいテーマが上乗せされている。胸にジーンとくる。
2.父親同士の口げんか
両者の家族が医師の前で説明を受け、テルアビブのユダヤ人将校の家をパレスチナの家族が訪問する。父親同士が長年の争いの中で、最初であったときに交わすことばが激しい。お互いまったく聞く耳を持たない。当然だろう。
イスラエル軍というのは、圧倒的な強さを誇る。強力な軍備で長年迫害を受けてきたユダヤ人の住処を守ろうとするのだ。ユダヤ人の父はその将校である。邸宅に住んでいる。イスラエルでは特権階級なのであろう。
あとはパレスチナ側家族の兄が見せるユダヤへの敵対意識が印象に残る。
3.母親のあたたかいまなざし
父親同士が敵対しあうが、母親たちは若干違う。取り違えになった相手側にいる実の息子にあたたかいまなざしを見せる。フランスの女性監督ロレーヌ・レヴィは女性としての視点をうまく映画で表現する。本当に複雑な立場であるが、見ている我々に母性の温かさを感じさせる。
こういった複雑な背景があるのに当人同士は仲良くなる。これが印象的だ。
パレスチナ側の息子は医者の卵、ユダヤ側の息子はミュージシャンをめざす。ユダヤ側の方が豊かなのは明らかなのに、むしろ子供の向かう先が好対照だ。ここでは親の遺伝ということも言いたかったのであろうか。
強い政治的、民族的背景を持った中でのこの作品はなかなか見応えがある作品だ。