映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「もうひとりの息子」 

2014-08-31 10:43:00 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「もうひとりの息子」は2013年公開映画
2013年のキネマ旬報ベスト10の中で、見そこなっていた作品だったが、予想以上に良質な映画だった。
テーマは「取り違え子」である。


昨年日本でも「そして父になる」が公開されヒットした。東京のタワーマンションに住むエリートサラリーマンの息子とと群馬の電気屋のオヤジの息子が年月を経て、取り違えだったことがわかる話だ。胸にしみる映画であったが、ここではもっと凄い設定になっている。
イスラエルの中でパレスチナ人とユダヤ人の子が間違って取り違えっれていることが18歳になってわかるというわけだ。まさに2000年以上にわたって敵対していた両者のもとに生まれた息子である。その設定自体に驚く。

案の定、「そして父になる」をはるかに上回るすごい映画である。

テルアビブに暮らすフランス系イスラエル人の家族。ある日、18歳になった息子が兵役検査を受ける。そして残酷にも、その結果が証明したのは、息子が実の子ではないという信じ難い事実。18年前、湾岸戦争の混乱の中、出生時の病院で別の赤ん坊と取り違えられていたのだ。


やがてその事実が相手側の家族に伝えられ、2つの家族は、それが“壁”で隔てられたイスラエルとパレスチナの子の取り違えだったと知る。アイデンティティを揺さぶられ、家族とは何か、愛情とは何か、という問いに直面する2つの家族。はたして、彼らは最後にどんな選択をするのだろう。(作品情報より)

1.パレスチナとユダヤ
中学生の時、社会科の教師が両者の確執について語ってくれた。
もし君の家に「あなたの住んでいる場所は、私の祖先が2000年前に住んでいた場所です。返してください。」そう言ってきたとき、君は素直に従うかい?
ユダヤ人が豊かな生活をしているのに、パレスチナ人は難民キャンプのテントで暮らしているんだよ。
何それ??その時から両者の確執に強い関心を持った。自分が中学生のときにオイルショックが起きて、中東に関する関心が一気に高まった時だった。

高校になり、地理の自由研究でもイスラエルとユダヤについて調べる機会をもった。バルフォア宣言や戦後のどさくさ、中東戦争のいきさつについて知ったのもその時だ。
この両者の確執や住んでいる場所の違いについて映画で見るのは初めてだ。両者の居住区の間には、大きな分離壁がある。身分証明書を出さないと自由に出入りができない。パレスチナ側は海に行けない。強いボーダーがある。
しかも、取り違え子なんてすごいテーマが上乗せされている。胸にジーンとくる。

2.父親同士の口げんか
両者の家族が医師の前で説明を受け、テルアビブのユダヤ人将校の家をパレスチナの家族が訪問する。父親同士が長年の争いの中で、最初であったときに交わすことばが激しい。お互いまったく聞く耳を持たない。当然だろう。
イスラエル軍というのは、圧倒的な強さを誇る。強力な軍備で長年迫害を受けてきたユダヤ人の住処を守ろうとするのだ。ユダヤ人の父はその将校である。邸宅に住んでいる。イスラエルでは特権階級なのであろう。
あとはパレスチナ側家族の兄が見せるユダヤへの敵対意識が印象に残る。


3.母親のあたたかいまなざし
父親同士が敵対しあうが、母親たちは若干違う。取り違えになった相手側にいる実の息子にあたたかいまなざしを見せる。フランスの女性監督ロレーヌ・レヴィは女性としての視点をうまく映画で表現する。本当に複雑な立場であるが、見ている我々に母性の温かさを感じさせる。


こういった複雑な背景があるのに当人同士は仲良くなる。これが印象的だ。
パレスチナ側の息子は医者の卵、ユダヤ側の息子はミュージシャンをめざす。ユダヤ側の方が豊かなのは明らかなのに、むしろ子供の向かう先が好対照だ。ここでは親の遺伝ということも言いたかったのであろうか。


強い政治的、民族的背景を持った中でのこの作品はなかなか見応えがある作品だ。

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人生最高のマンゴープリン(中華料理 四川)

2014-08-28 21:22:13 | 食べもの
白金のシェラトン都ホテルは我が家のお墓のすぐそば
墓参りで立ち寄ることが多い。


そこに四川という四川料理の中華レストランがある。
ホテルにしては、ほどよい金額で東京でも指折りの中華を食べさせてくれる。

早いもので父母の7回忌
終了して家族と行き、ランチを食べた。
2400円也

少し前は1800円くらいだったが、高くなっている。
都心部の景気はいいのであろうか?
有閑マダムが目立つ。一人で食べに来ているおばあさんもいるけど、すごいなあ。

スープ前菜のあとで
メイン料理は四川風の辛めの肉料理
おいしい


定番のマーボー豆腐
四川風で辛いけれど、辛すぎない程よい味
四川花椒で仕上げた抜群の味、これは東京でベスト3に入るうまさである。

これらはいつも食べているのでビックリしない。

今回ショックを受けたのはマンゴープリンだ。
1500円也と安くはない。
でもこれは凄い!!
「福臨門酒家」や昔の「ハイアットリージェンシー」など香港でかなりおいしいマンゴープリンを食べてきたが、それを超える。


「なめらかなマンゴープリンの中に、とろりとしたマンゴーソース。
さらに角切りのマンゴーが乗った、贅沢な夏限定デザートです。」
これがホテルの説明

プリンの中に入っているマンゴーソースにビックリだ。
この意外性に参った。角切りのマンゴーもおいしい

あまりにおいしいので記録しておく。


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映画「アナと雪の女王」

2014-08-28 19:55:58 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「アナと雪の女王」は大ヒットアニメ作品
現題はFROZENだ。


何を今さらという感じだが、日本で250億円の興行収入を得た映画を見ないわけにはいかないだろう。
ちょっと小休止の気分で見てみる。

普通であれば、洋画の日本語吹き替えは見ない。
実際に演じている人の肉声が、一番リアルと感じられるからだ。でも、アニメの場合は少し違う。もともとリアルな映像ではないのだから、オリジナルの声である必要性はないと自分は感じる。これまでディズニー系のアニメは何度となく見てきたが、日本語でも全然不自然さを感じなかった。しかも、今回は2人の主役が予想以上の活躍である。

運命に引き裂かれた王家の美しい姉妹、エルサとアナ──触れるものを凍らせる“禁断の力”を持つ姉エルサは、妹アナを傷つけることを恐れ、幼い頃から自分の世界に閉じこもって暮らしていた。
美しく成長したエルサは新女王として戴冠式に臨むが、力を制御できずに真夏の王国を冬に変えてしまう。
城から逃亡した彼女は、生まれて初めて禁断の力を思うがまま解き放ち、雪と氷を自由自在に操り、冬の王国を作り出す。
愛する者を守るため本当の自分を隠して生きてきたエルサは、“雪の女王”となることで生きる喜びと自由を手に入れたのだ。一方、妹を守るために姉が払ってきた犠牲と愛の深さを知ったアナは、エルサと王国を救うため、山男のクリストフとその相棒のトナカイのスヴェン、“夏に憧れる雪だるま”のオラフと共に雪山の奥深くへと旅に出る。アナの思いは凍った心をとかし、凍った世界を救うことができるのか?そして、すべての鍵を握る“真実の愛”とは…?(作品情報より)

ここでは松たか子と神田沙也加が予想以上に活躍する。2人とも人並み以上の歌唱力を持っているので、安心して見ていられる。特に神田さやかが母親譲りの美声を披露している。ディズニー映画らしい声だ。世間ではエルサの歌がクローズアップされすぎているけど、一歩皮がむけた印象だ。



松たか子の歌では、背筋がぞくっとくる。妙な快感だ。
それを感じただけでも見たかいがあった。

著作権にうるさいディズニーなので、松たか子の出番がなかなか見られないというが、紅白くらいは神田さやかとともに歌ってもらいたいものだ。
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韓国映画「新しき世界」 イ・ジョンジェ&チェ・ミンシク

2014-08-27 05:21:27 | 映画(韓国映画)
映画「新しき世界」は2014年日本公開の韓国サスペンスアクション映画だ。
いつもながら韓国のアクション映画のレベルは高い。
この映画の出来も出演者の顔ぶれから十分推測できたが、凄まじかった。傑作である!


結末ばかりでなく、途中結果も観客の予想を裏切る方向にストーリーを進める。
何度も「うーん」とうなった。
そして結末に持ち込むが、予測を何度も裏切られたので最後まで息がつけない。
実にお見事である。

韓国最大の犯罪組織ゴールドムーンの理事であるイ・ジャソン(イ・ジョンジェ)はゴールドムーンの幹部である華僑の兄貴分、チョン・チョン(ファン・ジョンミン)の右腕として働いている。しかし、ジャソンの正体は、カン課長(チェ・ミンシク)に潜入捜査を命じられた警察官だった。彼の正体を知るのは、カン課長、連絡役のシヌ、コ局長の三人だけだ。


ジャソンの心は次第に、警官の職務遂行と同じ中国系韓国人である兄弟分チョン・チョンとの絆の間で揺れ動き、苦悩するようになっていた。そんなある日、ゴールドムーンの会長であるソクが交通事故で急死し、後継者争いが勃発する。争いはソクの右腕だったジェボム組出身のイ・ジュング(パク・ソンウン)と、元北大門組組長のチョン・チョンとの一騎打ちと目される。カン課長はジャソンの情報を元に、組織解体作戦に動き出すが。。。。

ともかく残虐だ。
韓国アクション映画の基本を離れない。いきなりリンチを受けている男が出てくる。結局殺され、ドラム缶に入れ込まれ、海の中に捨てられるわけだが、こういう人間が何人も出てくる。
しかも、一瞬でピストルで殺されれば死人も楽なのに、徹底的なリンチで自白させられての仕業である。
いやー韓国の奴らはどぎつい。

1.ライバルの争い
先代のボスが亡くなったあと、跡目争いが繰り広げられる。日本でも田岡三代目山○組組長が亡き後、派手な争いがあったのは記憶に新しい。
№2はいるが、最近は勢いがない。№3のチョンチョンと№4のイ・ジュングの争いだ。


チョンチョンに近い筋に潜入警官ジャソンがいる。2人の争いに絡んでくるのがカン課長率いる警察部隊だ。
ここに登場する人物は多すぎず、少なすぎない。それぞれに独自の役割を演じ競るので、ストーリーが変幻自在に顧客の予想を裏切っていく。

2.潜入警官
香港映画「インファナルアフェア」があまりにも有名だ。麻薬捜査で潜入する話はいくつも転がっている。この作品ではジャソンが10年潜入していることになっている。№3のチョンチョンと兄弟分という設定だ。それでも、密かに警察のカン課長と人影のない釣堀で会ったりしている。情報は美人情報員から伝わる。長い間ヤクザな世界に入り込んで、もうどっぷりはまっている。


その彼の苦悩が映画全体に流れるテーマだ。
「ハウスメイド」で主人公を手篭めにするご主人様を演じたイ・ジョンジェだ。

3.中国系韓国人チョンチョン
見た感じはチンピラ上がりのヤクザだ。ヤクザのトップともなると、礼儀正しい人間が多いが、真逆だ。東映のやくざ映画で言うと「仁義なき戦い」第2作にでてきた千葉真一演じる狂犬のように激しいテキヤ大友を連想させる。中国語を自由に操る。中国にいる乞食のような連中を連れてきて、殺しの仕事をさせる。
そのチョンチョンが側近にしか教えていない自分の居場所情報を警察そして指揮するカン課長が知っていたことに気づく。何で知っているのか?そこでカン課長を徹底的に調べろと顧問弁護士に指示する。そこで初めてある事実が判明する。腕利きの中国人ハッカーに警察のネットに侵入させるなんて調べ方が本当にありえそう。

4.警察のカン課長
「悪魔を見た」の凶悪犯人「悪いやつら」の元悪徳税関職員のワルでのチェ・ミンシクの活躍は記憶に新しい。今や韓国アクション映画には欠かせない存在となっている。


ここでは、ベテラン刑事を演じている。警察トップとつるんで、潜入警官の存在を知っているごく少ない存在だ。ヤクザ組織を撹乱させ、崩壊に持ち込むのが目的である。はっきりと言われていないが、たたき上げ刑事で臭い仕事に手を染める存在ということだろう。ここでも次期ボスの候補である№2、3,4それぞれに絡んでいく。懲らしめたり、味方にしたりで縦横無尽に捜査をあやつる。

5.話の展開(少しネタばれ)
この映画の面白さは脚本と展開の絶妙なうまさだろう。
潜入捜査がこの映画のテーマなので、ヤクザ組織にどっぷり入り込む潜入警官ジャソンを中心に展開する。そして、ジャソンには何度もあやうい場面が出てくる。それこそ、「もはやこれまで」というような場面が何度も。。。そのたびごとにひやひやする。予想する結果にならないので、緊張感が高まる。未知のものに対する不安な気分が自分を興奮させる。


そして最終形に向う。
「物語の定石」でいえば、途中幾度となく苦難の道を歩んでいても、元の世界に戻って幸せな人生を歩むというのが基本だ。ところが、そうならない。韓国映画で出来のいい映画はみんなここで一歩踏みはずす。途中予測できないわけではないが、一筋ではいかないので、そうならないと勝手に思ってしまう。
うまいなあ
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映画「男はつらいよ 寅次郎と殿様」 渥美清&真野響子

2014-08-26 21:53:56 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「男はつらいよ 寅次郎と殿様」は1977年公開のシリーズ第19作目
マドンナは真野響子で、その義父である殿様役を嵐寛寿郎が演じる。


端午の節句に戻った寅次郎(渥美清)は、ささいなことで柴又のとらやの面々とケンカをして四国愛媛の大洲の町へ旅に出る。戦国武将藤堂氏がつくった大洲城のもとで栄えていた城下町だ。
そこの定宿で一人の若い女性(真野響子)が隣室で泊っていることを知り、寅次郎は夕食時に鮎料理をおごってあげる。彼女の住まいは堀切菖蒲園の近くということでウマが合い、柴又の団子屋を知っているらしい。気前が良くなりお土産も持たせた。
ところが、翌日勘定を確認すると、高くついたことに気づく。大洲城のそばで財布をいじくると、なけなしのお札が風で飛ばされる。あわてて城壁をくだると、1人の老人が寅次郎のお札をもっていた。

これは自分のお金と老人からお札をもらい、拾ってくれたお礼にラムネをおごってあげる。すると老人(嵐寛寿郎)の家に招待される。二人連れ立って歩いていると町の人々が老人に丁寧に挨拶してきた。老人の正体は大洲の殿様の子孫・藤堂久宗だった。藤堂家の執事(三木のり平)は寅次郎を怪訝そうに思うも、殿様はすっかり寅のことを気に入ってしまったのだ。

そして寅次郎が東京出身と知った殿様は、東京で亡くなったという末っ子の話をする。末っ子には嫁の「まりこ」がいたが、その結婚を「身分違い」として認めず勘当同然の扱いをしたと言う。今はすっかり反省した殿様は、せめて息子の嫁に会って謝りたいと、寅次郎に探してくれるように依頼する。


酒の勢いで安請け合いした寅次郎を殿様は完全に信用しきっており、寅を追いかけて上京してしまった。寅次郎は柴又の面々も巻き込み東京にいる鞠子という情報だけで、自分の足で鞠子を探そうとするが当然上手くいかない。とらやにかつて寅が大洲の宿で会った女性が突然現れる。彼女の名前は鞠子で、愛媛出身の夫と死に別れたというのだが。。。

昭和の匂いが立ち込める映画だ。昭和52年ともなれば、学園紛争も収まり、ディスコブームにさしかかり時代が変化しているはずなのに葛飾柴又とらやの周りには変化がない。いつものように寅さんはちょっとした口げんかで家出してしまうが、そこでとらやの家族や寅さんが怒る理由がよくわからない。最初はちょっと気分がもやもやする。

なんか変だな?と思っていたところに、ボケギャクのアラカンが登場し、その執事として三木のり平が登場してくる。
ここからは圧倒的に笑えてくる。渥美とあわせて3人とも一世一代の名優だよね。
それにしても渥美清のテキヤ口上が冴え渡る。ノリが抜群だ。



1.嵐寛寿郎
藤堂氏は本当に大洲の町を取り仕切っている。架空の名前ではない。しかも、その殿様を演じる。
鞍馬天狗とはちょっとちがう雰囲気だが、年老いた殿様を巧みに演じている。ついこの間「網走番外地」で稀代の殺人鬼の服役囚を演じていたのを見たばかりだ。実に貫禄たっぷりであった。「明治天皇」を演じた後、円熟味が感じられるようになっていた。ここでは本当にすっとぼけたじいさんだ。三木のり平とのコンビが絶妙だ。

2.三木のり平
松竹作品出演とは珍しい。森繁久弥とともに東宝の「駅前」「社長」シリーズの常連で、当時は「桃屋」の宣伝がコミカルでよかった。加東大介が75年に亡くなってしまうので、東宝の喜劇シリーズも終わってしまったのであろうか?


小林信彦が名著「日本の喜劇人」の中で三木のり平をこう評する。
「主役を張れないタイプで、映画、舞台、ともに主役の場合は成功していない。あくまで脇の、しかも、完全な<ぼけ>でないとうまくいかない。」
山田洋次の脚本は脇役としての三木のり平を活かす絶妙な<ぼけ>ぶりを前面に出す。いかにも天性の喜劇役者だ。

3.愛媛大洲と下灘駅
愛媛県の八幡浜にこの8月行って来たばかりなのも、このdvdを手に取って見ようと思った理由だ。
大洲5万石というが、藤堂氏はいろんな場所に城を作っている。映画の最初に「しもなだ」という駅が出てくる。寅さんが居眠りをしてしまってふと目覚める駅だ。まさに海に面している駅で、海ぎわを列車が走る。


海に面してすばらしい光景だ。


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映画「日本列島」 宇野重吉&芦川いずみ

2014-08-25 05:40:45 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「日本列島」は1965年の日活映画
実話に基づき、ノンフィクションタッチが得意な熊井啓監督がメガホンをとり真実に迫る。


米軍占領下から抜け切れていない日本で、アメリカ人が殺されるが、日本警察の頭ごなしに処理される。
それに対して、調査に入ったが、知れば知るほど危ない目に会うという話だ。
内容自体は怖い

昭和三十四年秋SキャンプCID(犯罪調査課)のポラック中尉は、通訳主任秋山(宇野重吉)に、リミット曹長事件の解明を命令した。一年前、リミットが水死体となって発見されるや、米軍は、日本の警察を無視して事故死と発表、死体を本国に送還した。秋山はかつて最愛の妻が米兵に暴行を受け、事故死として死体が引渡されたことがあった。

この事件を執拗に追う昭和新報記者の原島(二谷英明)と共に、秋山は、警視庁捜査三課黒崎(鈴木瑞穂)から、リミットが死の直前日本に出たニセドルを追っていたこと、精巧なドイツ製印刷機とその技術者伊集院元少佐が消えた事実を知らされた。伊集院の一人娘和子(芦川いずみ)を訪れた秋山は、伊集院が数年前正体不明の男に連れ去られ、涸沢と名乗る男が他言せぬよう家族を脅迫すると立ち去ったことを聞いた。


涸沢(大滝秀治)は米軍占領時代謀略機関で活躍した謎の男であった。昭和二十九年、贋ドルにまつわる信交会事件に、当時検事として立ち会った弁護士日高(内藤武敏)は、涸沢の部下佐々木(佐野浅夫)の口から、サン・ピエール教会を根城として、不良外国人がたむろすることを調べていた。佐々木を訪れた秋山、原島は、佐々木が涸沢にリミットが贋ドルを追及していると知らせた事実を知り驚愕とした。やはりリミットは涸沢に消されたのか!数日後、佐々木は水死体となってあがった。佐々木の妻(北林谷栄)は秋山と原島にどうしてそうなったのかと詰め寄る。

突然秋山にポラック中尉から調査中止命令が出た。秋山はキャンプをやめて調査を続行した。昭和三十五年外国航空スチュワーデス椎名加代子が水死体となってあがった。容疑者として出頭したサンピエール教会サミエル神父は、取り調べの終らぬまま突然帰国した。多くの疑問を残したまま三年が過ぎた。


昭和三十八年、スペンサー大尉から沖縄に伊集院らしい男が陳陽成と名乗っていると聞き、秋山は和子に了解を得ると沖縄に飛んだが。。。(作品情報より)

熊井啓らしい事実をつなぎ合わせながら、真実に迫るやり方だ。
熊井のドキュメンタリータッチの映画は「帝銀事件」にしろ「下山事件」にしろモノクロ映画だが、それが似合う。警察の捜査陣やとりまく報道陣を映しだす映像が、現在の映画よりも妙に迫力があるように感じる。その臨場感がいかにも熊井作品らしい。自分は相性がいい。
ネット社会になり、以前であればもみ消されたようなことでも公になってしまう今ではありえないことなのかもしれない。「戦後は終わった」という論調がされていた時代でも、米軍の秘密に近寄ろうとする面々が始末されたという事実が残っていたことが示される。
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映画「網走番外地」 高倉健

2014-08-24 05:45:17 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「網走番外地」は1965年の高倉健主演の東映映画、シリーズ第一作である。
網走と言えば刑務所といまや観光地化しているが、そのようになったのもこの映画があったからだろう。
当時35歳の高倉健が若く、深い雪の中の撮影はさぞかし大変だったと思うが、動きもきびきびしている。「青大将」こと田中邦衛待田京介、「悪魔くん」の潮健児の動きが滑稽で嵐寛寿郎が渋い。
いかにも音痴の主題歌も健さんが歌うと味がある。耳について離れない。


網走刑務所に新入りの囚人たちのなかに橘真一(高倉健)がいた。母が再婚することになり、幼い頃から義父・国造のもとで妹とともに暮らすことになった。しかし、義父との折り合いがうまくいかず家をとびだし、やくざの世界に足を踏みいれた。他の組に殴りこみに行った際に、傷害事件を起こし、懲役三年を言い渡されたのだった。

二人が入れられた雑居房には依田(安倍徹)の古株の囚人に混り初老の阿久田(嵐寛寿郎)がいた。依田は殺人鬼・鬼寅の弟分と称して房内を牛耳っていた。こんな依田に権田(南原宏治)は共鳴し、橘はことごとく反抗した。そんなある夜、依田と権田がしめしあわせて橘に襲いかかり、乱闘騒ぎが看守に発見されてそれぞれ懲役房に入れられた。

妹の手紙で、橘は母が病床に倒れたことを知った。橘は森林伐採の斧にたくして懸命に働いた。保護司・妻木(丹波哲郎)は橘に親身の世話をしてくれ、仮釈放の手続きも進めてくれた。そのころ雑居房では依田を中心に脱獄計画が進められていた。だが決行寸前、阿久田の裏切りで脱獄計画は崩れ去った。殺気だつ房内で阿久田は自分の正体をあかした。8人殺しの殺人鬼として恐れられた鬼寅だったのだ。


雪の山奥へ山奥に作業に出た囚人たちは、護送トラックから飛び降り脱走を計った。橘も権田に引きずられて路上に叩きつけられた。二人は手錠でつながれたまま雪の中をひた走った。権田は前科五犯のしたたかものだ。

刑務所に入るとき、高倉健がスーツを着てのネクタイ姿だ。バシッと決めている。
でもこれってありえないよね。
単調な話だけど、見せ場はいくつも用意されている。





1.トロッコでの逃走
これが豪快だ。
実写だとこちらまでトロッコに乗ったような気分にさせられる。
このまま止まらなかったらどうするんだろう?何て考えてしまう。

2.手錠をはめたままの2人の囚人
トニーカーチスとシドニーポワチエのコンビで名作「手錠のままの脱獄」がある。基本的発想は同じだ。
仲の決して良くない2人の逃走だけに、手錠はじゃまだ。なんとかカットしたい。
別々に行動と考えるわけである。
線路の上に2人寝そべって、レールにくさりをのせてカットさせようとするわけだ。
おいおい危ないなあ。でも見ている方はどうなるのか気になってしまう。妙な緊張感だ。


3.嵐寛寿郎の貫禄
物静かな立ち振る舞いである。
同室の囚人たちが、脱走をたくらもうとする。1人が仮病を使って、苦しそうにもだいているのを、刑務官に助けてもらおうとするのがおとり。鍵を開けようとしたすきに、逃げだすというわけだ。横にいるアラカンが大したことないですよと言い。結局鍵を開けず、脱走は未遂に終わる。当然まわりは怒って反撥するが、彼はたじろがない。そして正体を明かす。


8人殺しの殺人鬼なのだ。
水戸黄門が印籠を示すがごとく、まわりは驚き何も言えなくなる。なかなかのシーンだ。

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映画「ネブラスカ」 アレクサンダーペイン

2014-08-19 19:32:22 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「ネブラスカ」は2013年公開のロードムービー
「サイドウェイズ」というロードムービーの傑作を撮っているアレクサンダーペイン監督が、老人と息子の旅を描く。モノクロで作られた小さな逸話をいくつも重ねていく映像はやさしさに包まれている。終盤に向けて親子の情がよりクローズアップされ、後味はいい。


“モンタナ州のウディ・グラント様 我々は貴殿に100万ドルをお支払いいたします”。誰が見ても古典的でインチキな手紙をすっかり信じてしまったウディ(ブルース・ダーン)は、遠く離れたネブラスカまで歩いてでも賞金を取りに行くと言ってきかない。大酒飲みで頑固なウディとは距離を置いてきた息子のデイビッド(ウィル・フォーテ)だったが、父の様子を見兼ねて、無駄だと分かりながらも一緒に車に乗って4州に渡る旅に出る。


途中、立ち寄ったウディの故郷で、デイビッドは想像もしなかった両親の過去に直面する。最初は温かく迎えてくれた故郷の親戚や友人も、ウディが大金を手にすると知って欲が出て、次第にその醜い本性を露わにしていく。こんな中、欲の皮の突っ張った親戚たちへ妻のケイトが啖呵を切る。 回り道ばかりの旅の途中で、父と息子は“本当の賞金”に気づき始める……。(作品情報より)

老人のロードムービーといえば、「ストレイトストーリー」というデイヴィッドリンチ監督の傑作がある。いつもは、悪夢と現実の境目がないような話が多いリンチ監督が胸にしみるロードムービーをつくった。しばらく疎遠になっていた兄に会いにトラクターに乗って1人で出向く話だ。
その作品を連想したが、今回は息子が同行する。

1.父親ブルースダーン
ブルースダーンといえば、すぐさま思い立つのはロバートレッドフォード版「華麗なるギャツビーでのトムブギャナン役だ。ミアファロー演じるデイジーの夫役で、あの映画では嫌な奴モード全開だった。年齢を重ねて、いやみっぽさが消えた。


寡黙でせりふは少ない。頑固で意地っ張りだ。賞金が当たったというネブラスカからのインチキくさい通知をみて、絶対だまされていると言われても1人で歩いていこうとするのである。
認知症気味の父に息子は見かねて、同行する。そして、故郷に向う。旧知の人間にあったときでも、賞金の話をするなと息子が言っているのにしゃべってしまう。小さな故郷の町はその話で持ちきりになる。


2.息子ウィル・フォーテ
中年なのに独身である。付き合っていた女に未練たらしい場面が出てくる。
彼女はデブでちっとも魅力的ではないが、他に誰も女がいないとこうなる心理はわからなくはない。
着いた先でデブの2人に時間がかかりすぎだと言われる。実生活ではどこか抜けているイメージをかもし出す。やさしそうなんだけど。。。一発殴るシーンがある。これはすっきりした。
それでも最後に向っては抜群の働きをする。

3.故郷の人々
久しぶりに会った旧知の人たちに賞金の話がばれてしまう。息子が当選しているわけではないではないと懸命に主張するが、信用されない。故郷の人たちのまなざしが徐々に変わってくる。ここでは「田舎のいやらしさ」をアレクサンダーペインは見せつけたかったんだろう。会話の中から息子が知らない事実があらわになる。同時に少しぼけてきた主人公を見て、以前金を貸したはずだと昔の仕事仲間が言う。この手の話が死んだあとは万国共通だろう。
こういう話ってあるよな。自分が死んだとき、こういう人が出てこないようにしなきゃと思う。


4.主人公の妻ジューン・スキッブ
この映画では、飛びぬけてうまかった。1929年生まれとはすごいなあ。
本当に100万ドルが入るんだったら、夫を老人ホームに入れる資金にすると言い切る。夫婦でいる時間が長くなり、夫を煙たがるおばあさんの典型である。


途中で長男と一緒に追いかけてくる。好き勝手にベラベラしゃべるし、いい年して下ネタの連発だ。誰も彼も自分のパンツの下をみることばかり考えていたと昔を回想。すでに死んでしまった知人の墓の前で「昔見せられなかったから見せてあげる」とばかりに下半身を見せてしまうのには笑えた。金をむしりとろうとする旧知の連中に啖呵を切るあたりもしびれる。
80過ぎてのこの演技はお見事!一番親しみが持てた。

最後に向けては、息子の優しさがにじみ出て素敵なエンディングに結びつける。
無表情な父親だけど、内心はとてもハイになっているだろう。
これはいい感じだ。
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映画「ドラッグウォー」 ジョニートー

2014-08-17 22:47:34 | 映画(アジア)
映画「ドラッグウォー」は2014年日本公開の中国映画だ。


香港のジョニートー監督が、初めて中国資本でつくった作品だ。舞台は中国本土で激しいアクションが繰り広げられる。個人的には大ファンであるジョニートー監督は、ここ数年香港でスタイリッシュなアクション映画をつくってきた。大陸でどういう作品をつくるのか気になっていたが、予算もあるせいか、車は次から次へと大破、銃の打ちあいも香港映画よりも相当激しい印象を受ける。それでも当局の検閲が厳しいらしい。
なかなか見どころがある映画だ。

中国の(架空の都市)津海。爆発事故があった工場から車で逃亡した男が、事故を起こし病院に担ぎ込まれた。男の名はテンミン(ルイス・クー)。その病院には中国公安警察の麻薬捜査官・ジャン警部(スン・ホンレイ)の姿があった。ジャンは監視カメラや押収した携帯電話から、香港出身の彼が先の工場で覚醒剤を密造し、密売取引に大きく関わる容疑者であるとみる。

意識を戻したテンミンは病院から逃亡しようしたが、拘束される。ジャンと女刑事・ベイ(クリスタル・ホアン)から中国国内での覚醒剤大量密造の罪は、死刑判決が下ると聞かされる。恐怖に怯えるテンミンは減刑と引き換えに、捜査協力することになる。

「粵江を仕切る黒社会の大物・チェンビャオ(リー・ズェンチ)から原材料をテンミンが受け取り、自身の工場で精製。そして、完成したブツを津海の魚港を牛耳るハハ(ハオ・ピン)に受け渡す」とテンミンはいう。かくして、ジャンを隊長に津海警察、原材料を積んだチェンビャオのトラックを追跡中の粵江警察の合同捜査隊が結成される。

その晩、チェンビャオの甥・チャン(ケビン・タン)をハハに紹介しようとしていたテンミンとともに、商談場所のホテルへと向かう捜査隊。チャンとハハは互いの顔を知らないこともあり、テンミン仲介の下、ジャン警部がチャンを装い、ハハに接触。ハハは東北部の大物を知るだけでなく、韓国マフィア、日本のヤクザとも密接な関係があり、アジア麻薬シンジケートを形成しようとしていた。彼との商談をまとめたジャン警部は、続いてハハを装いチャンに接触。チェンビャオ逮捕へと、一歩一歩近づいていく。


一方、チェンビャオが怪しまないよう、テンミンは鄂州にいる自分の弟子、ろうあの兄弟(グオ・タオ、リー・チン)が営む工場に原材料を積んだトラックで向かい、ハハとの取引のための出荷作業を進めた。その翌日、ハハの漁港でテンミンとの密売取引が行われるなか、武装警官が介入し、ハハを逮捕。時同じくして、武装警官は鄂州の工場にも介入するが、ろうあ兄弟の予想外の襲撃に遭い、多くの死傷者を出すことに。


それにより、ジャン警部に疑いをかけられたテンミンは意外な言葉を発する
「チェンビャオはダミーにすぎない。真の黒幕は7人の香港人だ」
翌日、ハハを装ったジャン警部が待ち受けるなか、チェンビャオとチャンがハハの漁港を訪れる。彼らの周辺には、ファット(ラム・シュー)をはじめ、ドン(ラム・ガートン)と妻のサー(ミシェル・イエ)、テンミンの兄・スー(エディ・チョン)や彼の名付け親・チュエ(ロー・ホイパン)など、7人の香港人の姿があった。。。。(作品情報より)

いきなり主人公の車が街のショーウィンドウに突入する。観客をドッキリさせ、最初から飛ばしてくる。
ポスターの主人公がぶっ倒れてどうなるの?と思った隙から病院を脱出すると、ジャン警部の登場だ。顔つきがいかにも大陸の官憲らしい陰気臭さがある。主人公を締めあげ、味方に引き入れる。
潜入捜査というのではない。
ほんの少し前まで麻薬取引の仲間に対して接するだけだ。ただ、警部も同行し、情報は全部警察に筒抜けさせるのだ。




こういう麻薬捜査の映画にありがちなパターンだけど、どっちが味方か一瞬分からなくなる展開だ。
何より踏ん張っていたのが、ジャン警部を演じるスン・ホンレイだ。


表情を七変化で見せる。津海を牛耳るハハにあうときの無表情が怖い。マカオのカジノにいる男性ディーラーでこういう鉄火面のような顔をして、目つきが悪い男をよく見る。不気味な感じだ。
逆にハハのキャラクターがおもしろい。常に何がおかしいか、笑いまくる。ジャン警部と対照的だ。
ところが、ジャン警部がハハのふりをして人に会うときに、一気に笑い上戸のようになる。
その変化が楽しい。

その後、本気で麻薬取引をする証拠として、ジャン警部自ら吸う。この直後の場面が強烈だ。
虫がついていると、いきなりのたうち回り、思いっきり吐き出そうとするのと同時に、氷水の風呂に飛び込む。
このシーンが激しい。こういうオーバーな反応を見せるのは、麻薬に染まらないようにとの中国人へのけん制かもしれない。

途中でジョニートー映画の常連であるラムシューやラムカートンが出てくると、妙にホッとした気分になる。


大陸の俳優も使っているが、7人衆ばかりでなく香港人の出演は思ったよりも多かった。

終わりに向けては完全にドタバタ劇である。


でもちょっと予想と違う展開になだれ込む。
ハリウッド映画のように警察をおちょくった態度はとれない。中国においては公安は絶対的な存在である。他の映画でも警察に汚職的な要素をみせない。そこが香港映画との違いである。でもジョニートー監督はちょっといじる。脚本も迷彩が効いている印象を持った。


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映画「眠れる美女」 マルコ・ベロッキオ

2014-08-16 20:44:00 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「眠れる美女」は2013年日本公開のイタリア映画だ。
2011年日本公開の愛の勝利を ムッソリーニを愛した女は素晴らしい作品だった。ムッソリーニと愛人とのラブストーリーに実際のムッソリーニが映るドキュメンタリー映像を挿入してリアル感を増す。撮影、美術も完璧で、映像コンテがすばらしい。バックに流れる音楽も場面に合わせて情感にあふれ、ドキドキしながら映画を見た。傑作だと思う。監督はマルコ・ベロッキオである。
あのレベルの作品をつくる監督なら外れはないだろう。そう考えてdvdを手に取った。ロードショーはいつの間にされていて、機を逃した感じだ。


イタリア全土を揺るがした尊厳死事件を基に、マルコ・ベロッキオ監督がオリジナルストーリーを完成させた。妻を看取った政治家とそんな父に不信感を持つ娘、昏睡する娘の目覚めを願う元女優、自殺願望のある女を救おうとする医師、この三組の物語を同時展開させる。命が生と死の狭間を彷徨っているとき、周りがどういうまなざしで反応するのかをベロッキオは丹念に追う。
個人的にはアバズレ女の自殺を止めようとする医師の話が感慨深かった。



2009年、イタリア全土を揺るがすある女性の尊厳死事件が起こる。17年前、21歳で交通事故に遭い、植物状態となってしまったエルアーナ・エングラーロ。両親は延命措置の停止を求め、カソリックの影響が強いイタリアで、長い間裁判闘争を行なってきた。2008年10月に最高裁判所がようやくその訴えを認めたが、彼女の延命措置の停止を行う病院はなかなか見つからなかった。
翌年2009年1月、イタリア北東部の町ウディネの病院が受け入れを表明し、2月にエルアーナはミラノからウディネへ搬送された。しかし、カトリック信者や尊厳死反対の保守層からの支持を集めるベルルスコーニ首相は、エルアーナの延命措置を続行させるべく、法案の強行採決を画策していた。
こうした尊厳死をめぐる賛否の激しい対立の最中に、三つの物語が同時進行で展開されてゆく。

【第一の物語】
議員のウリアーノ・ベッファルディ(トニ・セルビッロ)はエルアーナ・エングラーロの延命措置を続行させる暫定法案に賛成票を投じるかで頭を悩ませていた。それは、彼自身が逡巡の末、妻の延命装置を停止させた過去があるからだった。


母を死なせた父に、娘マリアはずっと不信感を抱いていた。マリアはウディネの病院へ移送されたエルアーナの延命措置が続行されるよう、ウディネでのデモに参加する。現地の食堂でマリアはある兄弟と衝撃的な出会いを果たす。兄弟はマリアとは反対のデモ団体に属していたが、マリアは兄ロベルトに恋をしてしまう。


一方、ベッファルディは自分の信念を曲げて、賛成票を投じるくらいなら、議員を辞して娘と向き合うことを考えていた。

【第二の物語】
医師パッリド(ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ)は勤務先の病院である女(マヤ・サンサ)と最悪の出会いを果たす。女の名はロッサ。彼女は出勤してきたパッリドの金をかすめとろうとしたのだ。そんな幸先の悪い朝から、いつもの日常が始まる。同僚の医師は仕事もそっちのけで、エルアーナの死の時期を賭けごとにしている。患者の家族たちは医者への不信感むき出しで、治療への不満をぶつけてくる。いささか疲れを感じながら廊下を歩いていると、薬を盗もうとしたロッサが看護師たちにかかえられてきた。


万事休すの状態で、ロッサはパッリドたちの目の前で手首を切るのだった。幸い一命を取り留めるが、眠った彼女は一向に目を覚ます気配がない。パッリドはそんな彼女の傍らに寄り添うのだった。

【第三の物語】
伝説的な女優(イザベル・ユペール)は輝かしいキャリアを捨てて植物状態の娘ローザの看病に専念していた。


娘のために毎日のように祈りを捧げ、エルアーナと娘を重ねて、報道を目にしては涙を流すのだった。俳優志望の息子フェデリコは、母を盲信的に愛し、女優として尊敬のまなざしを注いでいるのだが、その愛が彼に返ってくることはなく、愛に飢えていた。彼女の夫も妻のかたくなな態度に心を傷め、夫婦仲は冷め切っていた。息子は母に振り向いてもらいたいがために、ある行動に出るのだった。
(作品情報より)

尊厳死問題は、脳死問題とあわせてよく議論される。公になると何かと問題が多い話だけど、実務上は各病院で密かに行われているのではなかろうか?末期がんの患者については、病院から「医師の処置に任せる」という一筆を保護者が書かされる。 それは死に至っても文句は言わないという意味だと思う。延命の機器を外すなんて単純なことではない。患者に処方するモルヒネの量の加減を強めにするだけで、明らかに血圧が下がり痛みはなくても死に近づいていく。
医師の判断でそういう処置はされていると推測されるが、公にはならない。

「終の信託」は主治医が患者から万一の時の処理を依頼されていた。強い痛みを和らげようと尊厳死にいたったが、大沢たかお演じる検察官に草刈民代演じる医師が徹底的に追及されイジメ抜かれた。なかなかきつい映画だった。

今回は植物状態の2人を支えた家族物語と、ならず者で生きている価値もないような女が自殺しようとしているのに医師が助けるという対照的な話が語られる。上記でいうと、自ら死のうとする人間を助け得る第2の物語がむしろ心に残った。
マヤ・サンサ演じるイタリア女性が、感情をあらわにする演技がすばらしい。

マルコ・ベロッキオ監督の映像構成力には今回も唸った。
それぞれのショットのカメラ配置が美的に練られてされている。我々の目に映る映像コンテが完ぺきだ。前作でも感じたが、不安を感じさせるような暗い場所でのショットがうまい。照明の加減が巧みにされているからだ。 それを引きたてるバックの音楽がすばらしい。映画全般に流れ続けるわけではないが、場面を選んで効果的に不安要素を高めている。音響効果がイメージの強化を巧みに操る。そして、編集もすばらしい。今回も現代イタリアのニュース系データをうまく物語に組み合わせている。

テーマの暗さにはまいったが、さすがに映像のレベルは極めて高い。
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映画「ママはレスリングクイーン」

2014-08-15 21:07:33 | 映画(フランス映画 )
フランス映画「ママはレスリングクイーン」を映画館で見てきました。
これは面白かった!


女子プロレスといえば、ロバート・アルドリッチ監督の遺作で、「刑事コロンボ」のピーターフォークと2人の女子プロレスラー主演のカリフォルニアドールズという圧倒的に面白い映画がある。その連想もあり、絶対にこの映画見に行こうと思っていた。


少ない観客を想像していたら、最前列まで超満員でビックリした。右も左も自分より年上のおばさんで、年齢層が高い。まったくの予想外であった。基本的には現代フランス映画らしいコメディで、ひたすら笑える映画だ。まわりから絶えず笑い声が聞こえる快適な時間だった。

刑務所に服役していたローズ(マリルー・ベリ)は出所してすぐに息子のミカエルに会いにいくが、長いこと代理母に育てられた息子はローズのことを受け入れようとしなかった。


ローズはワンマン社長が牛耳る地元の大型スーパーマーケット、ハッピーマーケットに採用される。そんな中ミカエルがプロレスのファンであることを知り、プロレス選手になれば彼は心を開いてくれるのではないかと思ったローズは、昔地元で名を馳せたプロレスラーだったリシャール(アンドレ・デュソリエ)のいるジムへ足を運ぶ。リシャールは仲間を連れてくるように言うが、ローズは同じスーパーで働く女性たちにプロレスはいい気晴らしになると説得して引き連れてくる。


浮気を繰り返す夫に愛想をつかせたコレット(ナタリー・バイ)、男に飢えているジェシカ(オドレイ・フルーロ)、自分の外見にコンプレックスを持つヴィヴィアン(コリンヌ・マシエロ)は、レスラーが派手な演出の中思い思いの衣装をまといリングに現れ大暴れする様子を初めて目にし、やる気をみなぎらせる。
彼女たちの熱意に動かされ、リシャールは彼女たちを特訓。スーパーのレジ係たちがプロレスに挑戦するという噂が伝わっていっていた。メキシコの巨漢軍団との対戦が決まり、4人は猛特訓するが。。。。

女子プロレスといってもまったくの素人からのスタートだ。
しかもみんな若くはない。
でも勢いづいて本気になって、練習に取り組む。指導する元プロレスラーが連れてきたのが、彼女たちよりもっと年上のおばあさんレスラーだ。これには笑える。4人はおばあさんたちを見てなめてかかるが、素人と玄人の差があり、しっかり技をかけられる。


レスラーそれぞれに入場曲がある。ベテランのナタリー・バイは66歳にして女子プロレスラー役だ。頑張るねえ。
テーマ曲は「ワンダーウーマン」でカッコよく空中遊泳だ。


メキシコのタコス姉ちゃんには負けないよとばかり、威勢のいい4人だが、覆面の相手を見て少しはビビる。
しかも会場の広さにビックリだ。
当然相手の方が力上位だが、善戦する。


年をとっているだけにプロレス技に切れはない。そこが「カリフォルニアドールズ」に及ばないところかな?
あの映画のラスト20分は活劇のような楽しさで観客中が興奮のるつぼに入っていた。
ここでは最後に向けての高揚感も落ちる。でも女優たちの年齢を考えればよく頑張っている方だ。

勝敗はどうなるんだろう?そう思った瞬間。。。。。
いいんじゃないこれで。

ジョークも効いていて楽しい時間だった。
ハリウッドリメイクが決定しているらしい。どう料理するのか?楽しみだ。

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映画「ブリングリング」 ソフィアコッポラ

2014-08-14 21:42:36 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「ブリングリング」はソフィアコッポラ監督の2013年の作品

ソフィア・コッポラ監督が、ハリウッド・セレブの豪邸を襲ったティーン窃盗団という題材に取り組む。第66回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」でオープニング上映された。


舞台はハリウッドスターや人気モデルが数多く暮らす、ロサンゼルス郊外の高級住宅地カラバサス。セレブリティの生活に憧れるニッキーたち5人の少年少女は、セレブの豪邸をインターネットで調べ、次々に侵入し、きらびやかなブランド服やジュエリーの数々を盗み出す。悪ふざけのつもりが次第にエスカレートしていくという話だ。


カリフォルニア州カラバサス。ニッキー(エマ・ワトソン)は学校へ行かず、養女である妹サム(タイッサ・ファーミガ)、末の妹エミリーと共に、母ローリー(レスリー・マン)の自宅授業を受けている。ローリーが教えるのは「ザ・シークレット」に書かれた“引き寄せの法則”について。
一方、マーク(イズラエル・ブルサール)は前の学校を退学した後、1年間自主学習を続けてきた。新しい学校への登校初日、周囲から「キモい」とバカにされる中、唯一優しい声を掛けてくれたのがレベッカ(ケイティ・チャン)だった。放課後、語り合ううち、ふたりは意気投合していく。
レベッカやクロエ(クレア・ジュリアン)と一緒にナイトクラビングに出掛けたマークは、そこでニッキーとサムに出会う。写真を撮り、フェイスブックにアップする彼ら。


パリス・ヒルトンがベガスでパーティーをするとインターネットを見て知ったマークとレベッカは、パリスの自宅周辺を地図検索サービスなどで調べ上げ、彼女の家に侵入する。豪奢な家の様子に圧倒されたふたりがそれを吹聴すると、ニッキーは言った。
「泥棒したい」


やがて、パリスがマイアミでパーティーと知り、今度はニッキーやサム、クロエを加えた5人で留守宅に押し入る。広いクローゼットを埋め尽くす服、靴、ジュエリー、サングラスの数々に目を輝かせ、邸宅に完備したクラブ・ルームではしゃぐ彼女たち。夢中になった5人はパリスの家にとどまらず、オードリナ・パトリッジやミーガン・フォックス、オーランド・ブルームとミランダ・カー夫妻などセレブの予定を次々に調べ、留守宅への侵入と窃盗をくり返していく。


しかし、彼女たちの悪ふざけがそう長く続くはずもなかった――。 (作品情報より)

主人公の男の子が、よくこんな三流学校に来たねと言われるシーンが出てくる。遊び人ぞろいの男女がそろっている。こういう犯罪をやったことを他の第三者に自慢げにペラペラしゃべっている。この馬鹿さ加減は信じられない。

でもちゃんとした家にみんな住んでいるから、下層階級というわけではない。
実際のセレブの家を使って撮影しているようだけど、どれもこれもすごい家だなあ!!
夜に車で徘徊するシーンはデイヴィッドリンチ監督「マルホランドドライブ」を連想させる。
こんなすごい家ばかり建ち並ぶ住宅街は日本にはない。


まず感じたのが、ロスのセレブ達が家のセキュリティーにここまで無防備なのかということだ。
昔はともかく、今の日本ではセコムやアルソックのホームセキュリティで周辺のカメラを装備するだけでなく、関係ない第三者が入ってきたらただちに感知して、周辺で待機している警備員がやってくる。

そう考えると、日本ではほとんどありえない犯罪と言える。
こんなすごい家なのに、玄関前のマットの中に合い鍵が置いてある。
ましてや高価な宝飾品が豪邸の中に無防備に置いてあるのをみると、あきれてしまうしかない。

盗まれる方が無防備すぎるよ。そう思っているうちに終わってしまう。
バカな奴らいるんだなあ。という印象をもつだけだった。

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映画「上京ものがたり」 西原理恵子&北乃きい

2014-08-14 05:13:37 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「上京ものがたり」は漫画家西原理恵子自身の体験に基づく作品の映画化
高知から上京してきて美大生のなったのもかかわらず、劣等生でしかも金がない。そこでキャバクラで働きながら絵で稼いでいこうと向上心を持って生きていく姿を描いている。


西原理恵子「怨ミシュラン」という本を読んだ後から、注目していた。女だてらに麻雀ギャンブル大好きな無頼派漫画家で、普通の少女漫画家と若干生き方のテイストがちがう。その彼女の上京したときの物語ということで、気になっていたが、ようやくDVDを手に取った。
映画自体はいかにもB級映画の色彩で、出来がいいと絶賛する作品ではない。でも主人公の北乃きいが、ういういしく素朴で好感が持てる。瀬戸朝香や岸部一徳、黒澤あすかの脇役陣も悪くない。


美大に通うため、田舎から上京した菜都美(北乃きい)は、憧れていた東京での暮らしをスタートさせるが、家賃を払うのに精一杯の毎日を過ごしていた。
そんな中、大学の友達から時給のいいバイトとしてキャバクラを紹介され、ホステスとして働きに出ることになる。やがて、菜都美は店で出会った良介(池松壮亮)と一緒に暮らし始めるが、良介は定職につかずごろごろしているプー太郎。拾ってきた猫の病院代に8万ものお金を平気で使い「命のほうが大事じゃないか」と言うようなヤツだった。菜都美は、働かない良介に徐々に苛立たしさが募ってくる。しかも毎晩バイト先でセクハラにさらされる菜都美は顔面神経麻痺になってしまう。子どもの頃から大好きだった絵も美大での成績は最下位。
それでも、キャバクラの先輩ホステス、吹雪(瀬戸朝香)と娘の沙希(谷花音)が、菜都美の絵を気に入ってくれる。吹雪の「最下位には最下位の戦い方があると思う」という言葉に勇気づけられた菜都美は、毎日のように出版社へ自分の絵を売り込み始める。やがて、念願の本が出版されることになった菜都美は、東京に出てきた頃、何も言わずにずっと東京の愚痴を聞いてくれていたのは良介だったと気付く。。。。(作品情報より)

映画を見ていて、主人公を応援したくなる気分になる映画である。岸部一徳が娘には優しいギャンブラー好きの義父を演じる。瀬戸朝香は子持ちの先輩キャバ嬢で、死に至る病にかかった設定。その親族を黒澤あすかが演じる。いずれも脇役の仕事をきっちり果たす。


1.西原理恵子
彼女の生きてきた道はまさに波乱万丈だ。早くして実父に死なれて、養父と母に育てられるが、父は極めつけのギャンブラーだ。この映画で養父を岸部一徳が演じている。そんな家庭環境の中彼女は頑張ったんだなあと感じる。
彼女が学生だった頃はまだキャバクラはない。スナックかキャバレーだったのか?生きていくためには必死である。自分の経験からすると、キャバ系には片親の女の子が多い。まさにそんな1人だったのであろう。


西原自身ここでカメオ出演している。主人公がエロ雑誌社に売り込みにいくときの掃除のおばさん、セリフはまさにエロだ。

2.北乃きい
東京に上京して、1人暮らしをする美大生の偶像をうまく演じている。イメージにぴったりだ。
貧乏学生なので、暮らし向きを良くするためにキャバクラにつとめる。そこでは全然ちがう世界があった。そういう探究心の強い女の子を上手に演じる。気がつくと、下宿にキャバクラ黒服がもぐりこんでくる。同棲生活を送るが、離れて暮らす母親が心配するわけではない。自立した人生を歩むのだ。

連載がスタートしたけど、読者の評判がいまいちで連載が途中で終了してしまう。全部書いたのにと編集者に泣きつく場面が印象的。ここであらわれたサディスト役得意な小沢真珠演じる売れっ子漫画家に、同情されながらも一喝されるところが心に残る。


3.名刺をもっての売り込み
働いているキャバクラでなんか心配事あったら相談してくれという顧客が名刺をだす。それを見ていいアイディアが浮かぶ。
名刺大の紙にイラストを書き、自らのイラストレーターとしての名刺にする。それを持って仕事をくださいと売り込む。健気である。雑誌社にいくけど、うまくいかない。絵を見てもまったく評価されない。こういう場面すきだなあ。向上心を持って生きていこうとする姿を見ると、こっちも頑張らなくてはという気持ちを感じてしまう。



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映画「人情紙風船」 山中貞雄

2014-08-12 20:18:09 | 映画(日本 昭和34年以前)
映画「人情紙風船」は昭和12年の山中貞雄監督による作品
戦前の映画では名作とされているが、見るのははじめてである。
27歳だった山中貞雄監督はこの作品を撮り、中国戦線で亡くなってしまう。気の毒としかいいようにない。


江戸深川の貧乏長屋で老浪人が首つり自殺した。長屋に住む髪結いの新三(中村翫右衛門)は、強欲な大家・長兵衛をそそのかして、故人へのはなむけと称して大宴会を開く。新三の壁隣には、紙風船の内職を営む、浪人海野又十郎(河原崎長十郎)とその妻おたきが住んでいた。


新三は自分で賭場を開き、地元を取り仕切る大親分弥太五郎源七の怒りを買っていた。源七の子分(市川莚司)が新三を連れ出しに来たが、新三は隣の又十郎の部屋に逃げ込み難を逃れる。又十郎は亡き父の知人毛利三左兵衛に士官の途を求めるが、毛利は色よい返事はしない。毛利は質屋白子屋を訪ねる。店主の娘お駒を家老の子息が見初めたためその縁を取り繕うとしていたのである。彼女は店の番頭忠七と出来ていたが、忠七は何も出来ないでいた。

白子屋の店先で毛利を待っていた又十郎だが、毛利の依頼で白子屋が差し向けた源七の子分らに叩きのめされる。それを救おうとした新三だが逆に子分らに捕まり、源七の元に連れて行かれる。散々絞られた新三だが、気に入らない源七の鼻をあかそうと再び賭場を開く。しかし源七の子分らに踏み込まれ一文無しとなる。

その夜、金のない新三は元手を作るべく髪結いの商売道具を質に入れるため白子屋を訪ねるが、忠七にコケにされ憤慨する。翌日おたきは向島の姉に会いに出かける。
その夜は縁日だったが大雨となる。そこでお駒を見かけた新三は昨夜の仕返しに彼女を誘拐する。


雨の中毛利に懇願する又十郎だったが毛利は拒絶、二度と姿を見せるなと言い放し父の手紙を雨中に放り棄てる。帰宅した又十郎は新三がお駒を誘拐してきたことを知る。翌朝白子屋の命を受け源七らが新三を訪ね、お駒を帰すよう説得する。金を渡し穏便に済ませようとする源七に対して新三は、源七が頭を丸めて土下座すればお駒を帰すと言う。憤慨しながら源七らは長屋を去る。


実はお駒は隣の又十郎の部屋に匿われていたのだった。
この騒ぎを聞き大家の長兵衛がやってくる。強欲な長兵衛は身代金をせしめようと提案、交渉は自分に任せろと白子屋に乗り込む。50両の金をせしめた長兵衛がお駒を連れ戻しに帰ってくる。長兵衛は半分の25両を自分の手間賃と言い、呆れた新三はそれを飲む。まとまった金が入った新三は長屋の連中に酒を奢ると宣言。又十郎にも分け前を渡し、居酒屋に連れ出す。
帰宅したおたきは長屋の女房達の立ち話から、又十郎が悪事に荷担したことを知る。

1.下町人情
昭和12年といえば、明治維新からちょうど69年だ。今年が敗戦から69年なので年数的には同じである。
その感覚で言えば、江戸の生活はまだ伝承されていたに違いない。江戸時代の話し言葉もこんな感じだっただろうか。その貧乏長屋に住む遊び人の髪結いと任官されない浪人の武士の2人が中心で話が進む。
長屋の中にはメクラの市をはじめ、多種多様な人間が背中合わせに住んでいる。金に目ざとい大家も絡んでくる。最初に映し出される通夜ぶるまいのドンチャン騒ぎが江戸の大衆宴会なのか?まあはしゃぐこと。貧乏長屋は映画でよく見るが、奥行きを浮かび上がらせる構図は妙にしっくりくる。山中貞雄は27歳なのに、映像の構図を巧みにつくる。

2.町の顔役
質屋の白子屋では、ややこしいお客が来ると、番頭は使用人に「薬屋に行っておくれ」と頼みごとをする。
これ自体は暗号みたいなもので、本当は地元を取り仕切る親分のところへ行き、腕っ節の強い子分たちを呼んでくるのである。
浪人武士も髪結いの遊び人も刺青をした子分たちにお仕置きを受ける。面倒な処理は全部地元の親分に頼むのがその町の決まりだったかのようだ。みかじめ料を質屋が親分に届けるシーンもある。

日本という国が、江戸時代からやくざと切っても切れない関係にあったことを示す話だ。
戦前社会でこれ自体がすんなり受け入れられていたのであろうか?
最近は暴力団撲滅で、関係を持つだけで罰を受ける。こういう関係は戦後すぎてしばらくは続いていた。
政治家だってうまく利用したし、特に芸能界やスポーツ興業とやくざの関係は顕著なものであろう。

3.加東大介のチンピラぶり
クレジットには昔の芸名になっているが、加東大介が地元の顔役の子分として出てくる。
ここでの彼を見て、黒澤明「用心棒」のチンピラ役とそっくりだということに気づく。眉毛が異常に濃い男で、仲代達矢と山田五十鈴らの子分だった。


「人情紙風船」の頃は20代、戦後は「大番」のギューちゃん役がはまり役だ。
東宝のホームドラマ系でいい人役が増えるが、ワルの役柄も少なからずある。「女が階段を上るとき」のように結婚詐欺師みたいな役も印象的だ。

4.浪人武士
貧乏長屋に浪人武士が妻と2人でひっそり住んでいる。主人公の1人だ。任官してもらおうと、上役に陳情するが、面倒がられるつらい立場だ。妻も内職で紙風船を作っている。まさに題名の紙風船だ。長屋仲間の悪事に加担したと聞いて、最後に道連れで旦那を殺してしまう。このあたりの心理だけはまったく理解不能。武士とその家族はプライドだけで生きているみじめな人種だ。

うーん。
悪くはないが、名作と評価するのはちょっと大げさじゃないかなあ


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映画「甘い鞭」 檀蜜

2014-08-10 19:24:52 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「甘い蜜」は2013年公開の檀蜜主演映画だ。


石井隆監督フィギュアなあなたを製作すると同時にこの映画を撮っていた。檀蜜は連続出演だ。前作の出来からこの作品が楽しみだったが、こいつはかなりきわどい。いわゆるSM映画だ。にっかつポルノの谷ナオミ作品をこえるバイオレンスタッチである。
檀蜜もかなり頑張っているが、SMクラブの経営者役の屋敷紘子の苦痛に満ちた顔がなかなかいける。

不妊治療専門の女医奈緒子(檀蜜)には17歳の時の痛ましい思い出があった。彼女(間宮夕貴)は近所の男性に拉致監禁され、1カ月にわたって弄ばれ続けたのだ。心配する両親のもとに血だらけで帰ってきた。男を殺害して生き延びたのだ。
トラウマを抱えたまま成長した彼女は、医師である昼間の顔とは別に夜はSMクラブの売れっ子M嬢というふたつの顔を持つようになる。そこには変態のお客が次から次へと来ていたのだ。


17歳のときに監禁されたシーンと現在のSMクラブとのプレイが交互に映される。
少女が監禁した男に弄ばれるシーンはどうもしっくりこない。熱演だが、好きではない。

逆に檀蜜のエロティックシーン4つが強く印象に残る。

1.お風呂で自慰シーン
シャワーを浴びながら、15年前の監禁の時にもてあそばれたことを思い出す。そして悶えまくる。これはかなり大胆な自慰シーンだ。そしてそそる。檀蜜もテレビでチヤホヤされているだけで十分だと思うが、よくもまあ挑戦したと思う。
フィギュアなあなたではポールダンサーでエロティックな姿を見せたがエロ度は比べ物にならない。


2.エロ会社員から遊ばれるシーン
マゾヒストなので、一方的に鞭を打たれるばかりである。実際には痛いわけではない。それなりの痛さの鞭を使っているからだ。高級接待で来ている変態男たちは打たれると痛い鞭に変えさせる。苦痛でうごめく檀蜜だ。それだけで物足りないのではりつけにする。股を大ピらに開く。男たちがパイパンだよという。アソコの毛を剃っているのではなく、抜いている。そしてかわるがわる檀蜜といたす。
おいおい、これって本当だったらいくらするんだよ。10万円程度だったら実入り少ないよなあ。

3.SM逆転のシーン
SMクラブの経営者(屋敷紘子)は強烈なサディスト女性だ。私生活でも相当なサディストという設定、最初のシーンではひたすら檀蜜を痛みつけるだけだ。そこに登場するのが顧客の竹中直人だ。石井隆作品には欠かせない常連だ。彼は経営者に立場を逆転するように指示する。これはルールだからダメだと言っても、竹中はそれだったら帰ると言ってきかない。
ついに経営者が檀蜜に鞭で打たれる。このシーンがいい。屋敷紘子があまり豊かでないバストをあらわにしながら、苦痛にうごめくところがいい。竹中直人も楽しそうだ。


4.真正サディストに対する檀蜜
前に来た時は女性を半殺しにしたというお客だ。痛い鞭を使ってきつくいためつける。
前日コテンパンにやられた経営者は見て見ないふりをしているから客はやり放題だ。
ここで檀蜜はよからぬことを妄想する。。。。

さっきも言ったけど、一体いくら払えばこんなことできるんだろう??

なかなか残虐な展開だ。
石井隆はまだまだ健在
檀蜜の再出演もいいけど、屋敷紘子に暴れさせてみたいなあ

甘い鞭 ディレクターズ・ロングバージョン
エロの極致
コメント
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