映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ツユクサ」 小林聡美&松重豊&平山秀幸

2022-04-30 20:56:08 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「ツユクサ」を映画館で観てきました。


映画「ツユクサ」は小林聡美「孤独のグルメ」松重豊の中年の恋という映画設定であるのは予告編で知っていた。江口のりこや泉谷しげるといった個性派俳優が脇を固めている上に、久々の平山秀幸監督作品であり、雰囲気が良さそうなので、映画館に向かう。

海辺の繊維工場で働いている芙美(小林聡美)はある夜運転していて、突然強い光を受けて車を横転させる事故に遭う。その時ダッシュボードに小さな穴を開けた石は隕石だと工場の同僚の息子航平に言われた。その後、独身の芙美の身辺に動きが出て、芙美がジョギング中に見かけていたガードマンの吾郎(松重豊)と行きつけのバーで出会い、お互いにひかれるようになるという話である。


心地良く快適に観られる映画である。
71歳になった平山秀幸監督が自分に肌合いの良い作品をつくるべく、個性的なキャラクターをもつ登場人物を田舎の海辺の街に放つ。大人の恋といっても、80歳から90歳の恋となると、さすがに自分も引いてしまう。老人映画はちょっと疲れる。ほどよい年齢の恋である。

海岸線にある西伊豆町をロケ地に選んだのは正解である。最後に電車は出てきたが、実際には西伊豆には電車は通っていない。同じ伊豆でも辺鄙なエリアだ。町を俯瞰する小高い山からの海の景色もいいし、さびれた工場がある田舎の匂いや泉谷しげるが店主のバーの場末感も、いかにも住みやすくのんびりとした田舎町だと思わせる。そんな設定で、登場人物が気負わない演技をしている。安定感を感じながら、最後まで映画を観れる。


50代から少し上くらいの人に受けるんじゃないかしら?おすすめだ。若い頃より枯れたやさしい作品をつくるようになった晩年の今村昌平監督平山秀幸監督の作風も似てきたのかもしれない。

⒈松重豊
映画の主旨と関係ないが、ご存知「孤独のグルメ」の五郎である。日曜日の6時すぎになると、ついついTVで再放送を見てしまう。わざとらしい寸劇の後、こんなに食えるの?と思わせるくらいの量を松重豊がおいしそうに食べる。周囲の若者にも大ファンが多い。このワンパターンを楽しみ、紹介される店は人気店になってしまう。実際行ってみると、ハズレもあるが、90%は納得の味である。

この映画での役柄の名前が吾郎で思わず吹き出した。シャイでやさしい人柄は両方に通じる。東京から流れてこの町に来た設定で、草笛を吹くガードマンだ。(前職は何だったかはネタバレで言わない)小林聡美は自分は所帯者と一瞬ウソをつくが、次第に接近していく。松重豊は不器用な感じを醸し出し好感がもてる。


⒉泉谷しげる
田舎町にポツリとあるバー「羅針盤」で捕鯨船の船乗りだったという店主役を演じる。行ってみたいと思わせるその店の常連が小林聡美だ。自分が中学の時、フォークが大流行して吉田拓郎や井上陽水とともに人気だった。ただ、攻撃的なムードが強い絶叫型だった。そんな独特なムードに合う役柄を数多く演じて、名作ドラマと名高い吉展ちゃん事件の犯人役など、俳優としての存在感が強い。全盛時に比べて頭もハゲ上がったし、老けた。でも、いい味を出している。



⒊江口のりこと名脇役たち
小林聡美と同僚の繊維工場で働くコミカルな工員だ。気がつくと寺の坊主と付き合っている。「女は男で世界が変わる」と坊主の影響を受けている。バートレイノルズ「女と車の運転は似ている。いずれ衝突する。」なんて言葉を持ち出す。

笑いを誘う展開に江口のりこの存在が欠かせない。何と言っても今泉力哉監督「愛がなんだ」のキャラクターが自分の頭にこびりついている。成田凌があこがれる美術学校で働いていて、タバコぷかぷかのちょっと飛んだ女の人役がうまかった。


他にも妻に逃げられたベンガル演じる太極拳好きの工場長がラジオ体操をする姿に思わず声を出して笑ってしまうし、濱口竜介監督「偶然と想像で珍しく大学教授役を演じた渋川清彦が、平山秀幸監督の前作閉鎖病棟では悪役だったのに一転気のいい釣り好きのオヤジを演じる。映画に出てくる登場人物のキャラクターには感情移入できる。


⒋あなたの心に
松重豊が草笛を吹く時に流れるのが「あなたの心に」である。思わず、背筋がゾクッとした。本当になつかしい中山千夏の名曲である。この曲が大ヒットした1969年には、毎日のように中山千夏がTVでドラマやいろんな番組に映っていた。ジャズピアニストの佐藤允彦と結婚している頃はまだ良かった。でも、その後参議院議員にもなり、矢崎という変な男とくっついて左翼思想に毒されてからは最悪だった。好きだった人もみんな嫌いになったんじゃないかな。

エンディングで「あなたの心に」が流れて、これって誰か別の人が歌っているのかなと思ったら中山千夏だった。古き良き時代を思わず懐かしんだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ベルイマン島にて」ティムロス&ヴィッキークリーブス&ミア・ワシコウスカ

2022-04-27 05:00:19 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「ベルイマン島にて」を映画館で観てきました。


「ベルイマン島にて」は映画監督の夫婦が、構想を得ようとスウェーデンの名匠イングリッドベルイマンが晩年過ごした島に行った日々を描く.。「未来よこんにちは」のミアハンセン-ラブ監督の作品である。名脇役ティムロスが夫で、ファントムスレッドでの好演が光るヴィッキークリーブスが妻役である。「映画の中の映画」の手法での妻が構想するストーリーでは、久々にミア・ワシコウスカが主演となる。予告編で観たとき、島の雰囲気がよく見えて、出演者も自分とあいそうなので、映画館に向かう。

クリス(ヴィッキークリーブス)とトニー(ティムロス)は倦怠期に入ったともに映画監督の夫婦である。新作の構想を得ようとアメリカからはるばるスウェーデンの孤島フォーレ島に向かう。名監督イングマールベルイマンが晩年過ごした静かな島で、クリスは脚本を書いていく。そこでは若き日の自分にダブらせたエイミー(ミアワシコウスカ)が友人の結婚式に参列したときに昔の恋人ヨセフに再会して復活の恋によろめく話である。


実はそれほど期待せずに観に行った映画だった。逆の意味で裏切られた肌合いの良い作品である。
倦怠期に入った映画監督の夫婦の会話は大したことない。普通だ。それが、妻が構想した自分の恋を基調にした脚本が映像になってきて、物語が一つ増える。ストーリーはビックリするような話ではないけど、この島で執り行われる結婚式やその後のパーティーのシーンのもつ雰囲気もいい感じで、恋に揺れるミアワシコウスカが次第に大胆になっていく姿とその後に現実と虚実を交錯させる展開が良いと思った。

一生行くことはないであろうスウェーデンの離島は、湖と思うくらい波の少ない海や海岸べりの風景がきれい。それよりも、ここまで見どころがあるのかと思うくらいポツリと建っている特徴のあるいくつかの建物が魅力的だ。風車もある。暖房効率を気にしてか大屋根の家が多い。自転車で島を走るシーンを観ながら、この独特の空気に身を包むと快感を覚える。


⒈イングマールベルイマン
ベルイマンの映画を難解と思って好きでない人でもこの映画はすっと入っていけるはずである。50年も前の話だが、1961年処女の泉、1962年野いちごで2年連続キネマ旬報ベストテンの1位である。その翌年に死神とチェスをする名場面がある「第七の封印」がノミネートされているが、「アラビアのロレンス」という超名作がトップなので6位にとどまる。日本でも当時の知識人たちに圧倒的に支持されている。

ベルイマン島と言われるだけに、イングマールベルイマンの住んでいた家が残っていたり、記念館と思しき場所でベルイマン作品が上映される。本棚が壁を埋め尽くしている海を見渡す書斎にはあっと驚く。処女の泉」や「第七の封印」には強い宗教的な要素を感じるが、野いちご悪夢のような夢と現実が交錯する物語である。今回、「映画の中の映画」の手法を用いているので、若干通じる要素がある。


⒉ミアワシコウスカとヴィッキークリーブス
ダニエルデイルイスの引退作ファントムスレッドでダニエルと対等に渡りあいヴィッキークリーブスはすごいなあと思った。映画を観ながら、気づくのに時間がかかった。最初は淡々とティムロスと倦怠期に入った夫婦を演じているだけと思ったら、後半戦で本領を発揮する。いい感じだ。

ミアワシコウスカはある意味一世を風靡したといっても良いかもしれない。イノセントガーデン」「永遠のぼくたち」など10年近く前にずいぶんと彼女の映画観たなあ。でも、最近見ない。どうしたんだろう。昔の恋人に出会い、心が揺れる恋のときめきをうまく演じている。ボリューム感のないスレンダーなかわいいバストトップも見せてくれて大サービスだ。


⒊ティナチャールズ
予告編の時に、往年のディスコ系で聞いたことのある曲がバックで使われているのに気づく。とっさに題名が浮かばない。映画館に入って場内でその曲が流れる。アレ?と思う。映画では結婚式の二次会的なパーティーで流れてミアワシコウスカが元カレと踊り出す。しばらくして曲のバックのリズムで思い出す。そうだ、歌っているのはティナチャールズだ。

ずっと流行っていた歌手でない。日本では「恋のレディダンス」という曲が1977年のディスコティックで流れていた。再上映された「サタデーナイトフィーバー」の前年である。そのあと、化粧品のCMソングティナチャールズが歌っている。東京女学館の夏目雅子がスターダムに駆け上がる「クッキーフェイス」を歌っていたのだ。まあ、こんなことみんな忘れてるだろう。


そのティナチャールズの英国におけるヒット曲が流れているわけだ。ウキウキするのは当然だ。でも、この映画の選曲は絶妙だね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「狂熱の季節」川地民夫

2022-04-25 19:52:15 | 映画(日本 昭和35年~49年)
日活映画「狂熱の季節」は昭和35年(1960年)の蔵原監督川地民夫主演作品。何気なくAmazon prime で見てみる。いわゆる60年安保で世はデモで騒乱の世界だったのに反して、自由奔放にその日暮らしをする不良少年を描いている。

見ていてワクワクするのは、昭和35年当時の渋谷が鮮明に映し出されていることで、西銀座付近や江ノ島あたりの映像もでてくる。今の時代から見ると、稚拙に見える映像も川地民夫のパワーで押し切る。本屋で昭和30年代の東京の写真集を見て喜ぶ方には一見の価値はある。


渋谷のジャズ喫茶をたまり場にしている主人公は、店で外人の財布をすろうとして現行犯逮捕され少年鑑別所に留置される。出所後も懲りずに外車を盗んで好き放題に遊び回る。江ノ島をドライブしているときに自分を警察にチクった新聞記者とその恋人を偶然見つける。女を無理やり車で連れ去り砂浜で手籠にする。しばらくして、女が目の前に現れて妊娠を告白して、右往左往するという話だ。

この時代には、ありがちなストーリーだ。いくら与太者を映し出す映画といってもコンプライアンス社会の今では考えられない悪さを繰り返す。音楽は黛敏郎、でもモダンジャズが基調だ。今では不良音楽というよりインテリが聴くものなので、ストーリーにマッチングというように感じない。

⒈川地民夫
まあ、ハチャメチャな役柄だ。ドライバーでドアをこじ開けて外車を盗んだり、女性を強姦したりする。何度刑務所に入ってもおかしくはない奴だ。それでも、若くて血気あふれているという感じがにじみ出ている。この映画を見て、同じ年に公開された大島渚監督川津祐介主演青春残酷物語を連想する。川津祐介は学生役なので、むしろ川地民夫の方がアウトローだ。

日活には石原裕次郎、小林旭というスターがいて、この映画が放映される時は赤木圭一郎も生きていた。ただ、映画量産時代にはまだまだ主役は足りない。大映の川口浩、松竹の川津祐介、日活の川地民夫の3人は各映画会社における立ち位置がほぼ同じで、似たような役柄を演じている。川地民夫強姦した後に、その女から付きまとわれるのは処刑の部屋川口浩が若尾文子に眠り薬入りの酒を飲ませて犯して、直後に私のこと好きなの?と追われるのに似ている。そういうのが多数派なわけではないと思うが?

いかにも、現代に生きる女性陣からすると不愉快きわまりない映画ばかりの昭和30年代である。女性の地位は明らかに低かった。田園調布にある強姦した女性の洋館に行ってアトリエをメチャクチャにする。今は格差社会と左翼人はのたまうが、当時のギャップは比較にならない


⒉昭和35年の渋谷
渋谷駅のハチ公前の雰囲気が少し違う。駐車ができる。今よりも街を走る車の台数がはるかに少ないから、できるのであろう。交差点あたりの映像では西村のフルーツパーラーの看板が見える。高速道路が通っていないので、雰囲気が違うけど、今は歩道橋のある渋谷警察署側の東口から、246あたりも道路に車がスカスカだ。銀座線車庫がマークシティの中になって久しい。ただ、自分が見慣れているのがこの映画のシーンにある急な坂の横にオープンエアで車両がある姿だ。

川地民夫がたむろうのが、渋谷のジャズ喫茶だ。これはどこなんだろう?今の西武百貨店が建つ場所に映画館があったことを知っているのは、自分と同年代が最後だろう。小学校低学年で父に連れて行ってもらって渋谷にいくと、センター街あたりの大衆酒場でシラスを食べたものだ。109ができる前のくじら屋にもよく行った。ロシア料理のサモワールに行くのは小学校高学年以降だ。

昭和40年代前半、渋谷駅の外には傷痍軍人が大勢いたし、夜でもサングラスをしている怖いお兄さんセンター街を歩いていた。昭和35年当時は横井英樹襲撃事件で渋谷を縄張りにした安藤昇が逮捕され、留置されている頃だ。とはいうものの怖い男たちが街に多くいたのは子どもの自分でもわかる。


⒊郷鍈治
郷鍈治演じる川地民夫の連れは、どこかに帰属した方が良いと暴力団の仲間入りしようとしている役。彼女は外人相手の街娼だ。結局、抗争に巻き込まれて半殺しを喰らう。クレジットでは郷鍈治は新人となっている。宍戸錠の弟で、ちあきなおみの夫だ。早死にしてしまい、落胆したちあきなおみは再三の芸能界復帰懇願にも一度も首をふらないのは有名な話だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「カモン カモン」ホアキン・フェニックス

2022-04-24 16:54:53 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「カモン カモン」を映画館で観てきました。


カモンカモンはジョーカーホアキンフェニックスの新作である。ジョーカーで世界中をアッと言わせたホアキンフェニックスがやさしいおじさんを演じる。「20センチュリーウーマン」マイクミルズ監督の脚本監督作品である。ここしばらく観に行きたい映画がないのと、会社の社内飲み会再開で会合が連続して続き、飲み過ぎで映画もブログもご無沙汰だった。

ジャーナリストのジョニー(ホアキンフェニックス)は、妹ヴィヴから偏執症で心の病を患っている夫の面倒をみなければならないので、9歳の息子ジェシー(ウッディノーマン)をしばらく預かってくれと頼まれる。取材で全米をまわるジョニーは、ロスで引きとった後にニューヨークからニューオリンズとジェシーを帯同する。旅する2人が行き先々で心のつながりを深める話だ。


ジョニーは行く先々で、取材する子どもたちに、自分の未来について語ってもらうように、インタビューする。いきなり映し出されるデトロイトでは街が沈滞する不安を持ちつつ未来を語る子どもが出てくる。結局、最後のエンディングロールまで現代の子供たちが未来を語る言葉が出てくるという映画だ。

米国メジャーレベルでは普通。圧倒的におすすめという映画ではない。
ジョーカーで世界中を震撼させたホアキンフェニックスが次のワイルド路線に向けて中継ぎのようにやさしくまとめた感じである。ただし、全米の各所で撮られた風景を含めた2人を映す映像コンテは完璧といっても良い。ニューヨークのプラザホテルを借景にして雪のセントラルパークで2人がたたずむきれいなショットやおなじみブルックリン橋などでのショットのセンスの良さはピカイチである。


モノクロ映画であるが、高い撮影技術に支えられると映画ってこんなにレベルが高くなるのかという良い見本である。バックを流れる音楽の選曲も抜群だ。

⒈ホアキンフェニックスとウッディノーマン
満を持して登場したホアキンフェニックスが悪いわけがない。伯父とおいの優しい関係を見せつけるこれまでとちがう役柄である。派手な動きは皆無だがこれはこれでいい。9歳のおいであるウッディノーマンは、よくこんなセリフ話せるなあという難しい会話をこなす。

兄と妹は弱っていた母親の介護で、意見を対立させながら面倒をみていた経緯がある。音楽が専門であるインテリで理屈っぽい妹は夫ともども精神が不安定である。ロスアンゼルスでなく、夫はオークランドに住んでいるので、回復するように付きっきりになる必要がある。妹も兄を頼りにするしかなかった。結局、ジョニーにおいの面倒をみる事情があったのだ。

⒉ませた子ども
先日観たベルファストの主人公の少年とおいのジェシーは同じ年代だ。でも、全然違う。「ベルファスト」はアイルランドの地方都市で、暴動事件こそ起きるが本人は「サンダーバード」のTVキャラクターに魅せられた純情な少年である。同年代時の自分と同じ目線で好感がもてる。

このジェシーは親の影響で、オペラまで聴くませた少年周囲に友人はいないし、大人としか話さないという。正直、脚本がやりすぎでは?と思うくらいのませたセリフだ。人混みで姿を消してジョニーを何度も戸惑わせたり、行きたくもないのにタクシーに乗っている最中に排便したいと言って困らせるのは恋の駆け引きをする面倒な女性を連想する。


映画にいまいち乗り切れなかったのは、年齢のわりにジェシーがませすぎなのと、観念的とまでいかないけど、インタビューに答える子どもたちのセリフが難しすぎて肌に合わないからだと思う。自分が9歳の時、すなわち小学校4年の頃は、こんなむずかしい言葉は話せなかった。叔父という身内に対して、こんな駆け引きもできるわけがなかった。ただ、ウッディノーマンが名子役だというのは確かだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Netflix映画「夜叉」 ソル・ギョング&パク・ヘス

2022-04-12 20:34:49 | 映画(自分好みベスト100)
Netflix映画「夜叉 容赦ない工作戦」はソルギョング主演の韓国映画


Netflix映画「夜叉 容赦ない工作戦」は、韓国得意のスリリングなクライムアクション映画だ。ソル・ギョング主演で、「イカゲーム」のパクヘスが共演する設定が気になり見てみる。高倉健主演作品に「夜叉」という傑作があり、すぐさま連想するが、まったく関係ない。

財閥の腐敗を捜査しているジフン検事(パクヘス)が、行き過ぎ捜査で左遷されて閑職になってしまう。汚名挽回で中国瀋陽でスパイ活動を行なっている秘密工作員グループの特別監察をする仕事に手をあげる。現地に行くと、夜叉と呼ばれるリーダーのガンイン(ソルギョング)が脱法行為の工作活動をしていて、日本や北朝鮮の工作員も混じった敵味方入り乱れた諜報戦に巻き込まれてしまうという話である。

バカ真面目な検事が札つきのスパイ集団と一緒に行動するなんて発想が独創的だ。

これは抜群におもしろい!
韓国映画であるが、香港と瀋陽を舞台にしている。瀋陽北朝鮮がからんだ諜報戦が繰り広げられていて、スパイが各国から送り込まれている都市だという。満州国時代の奉天だ。高層ビルが立ち並び、夜景がものすごくきれいな大都市なんだけど、繁華街に行くと猥雑なところである。

そんな街に脱法行為の韓国人工作員と若いその仲間を放つ。瀋陽の街がもつ裏表のキャラクターがきっちり描かれているので、登場人物にもリアリティーがでる。とにかく多様な人物のハチャメチャな動きで画面に集中できてしまう。

⒈ソルギョング
映画がはじまり、いきなり道路にはみ出した看板が並ぶ香港の雑踏ソルギョングが大立ち回りをする。そのシーンだけで、ぐいっと身を乗り出してしまう法を逸脱した行動をとるけれども、当局も見て見ぬふりをしてきた必ず成果は出す工作員だ。もちろん腕っ節も強いし、ピンチになっても怯えず度胸がある。しかも不死身だ。強い男というだけで魅力的なヒーローだ。

以前映画「力道山」力道山役をやったことがある。日本語がうまいので、観た後改めて配役の名前を確認した。「ペパーミントキャンディ」のソルギョングと同一人物と気づき驚く。今回も日本語のセリフがいくつかある。ここで日本語のセリフが多いのも以前の「力道山」役の印象が強いからだと思う。日本人が登場する韓国映画では、インチキくさい日本語を耳にすることが多い。その中では別格だ。


⒉パクヘス
サムソンを連想させる巨大財閥の会長を取り調べて告発しようと躍起になっている検事だ。ところが、違法捜査の疑いで、途中で捜査は中断して会長は釈放される。しかも、毎日仕事らしい仕事のない閑職に追いやられるバカ真面目で上昇志向の強い見ようによっては嫌な奴だ。そんな時、スパイの工作員を監察せよという指令が来て、勇んで瀋陽に行く。

取り締まってやろうと意気込んで乗り込んでも、いきなり北朝鮮スパイとの銃撃戦に巻き込まれる。ふと気づくとタトゥだらけの売春婦と寝ていて、側には麻薬が転がっていて、警察が乱入してくる寸前という修羅場だ。まさにはめられた検察官という感じだ。


それでもパクヘスの動きに映画に軽いコメディ的要素を残す。何があっても慌てないソルギョング対照的な存在でおもしろい。

「イカゲーム」での印象が残る。(おもしろかったのに、うまくまとめられずに感想をアップしていない。)ソウル大学出身のエリートだったのが、金融取引で穴をあけて「イカゲーム」に参加する役だった。エリートという意味では変わらない。嫌な奴なのにコミカルな感じが強い分、憎めない存在で映画を面白くする。

⒊韓国の世相
今回の韓国大統領選挙で当選した尹大統領が不正を摘発した検事だったらしい。この映画、本当はもう少し前に作られていたけど、公開が遅れてNetflix映画になったみたい。時流に乗ったかな?ここでは、池内博之が演じる日本人のスパイ兼裏社会の親玉みたいな存在が対抗勢力として出てくる。日本語でのセリフも多い。池内はいわゆるヤクザ言葉のような乱暴な言葉を話さず、丁寧語が多い。これはこれでいいんじゃないかな。最近の本当のワルはこの手のタイプが多いかもしれない。


ただ、検事による財閥グループの告発や日本人を悪者にしてしまうのはいかにも韓国の世論の支持を目論んだ映画のように見えてしまうのも確か。日本が悪者にされて腹立って嫌う人も多いかもしれない。

でも、不思議だなあ!自分はそこまでは感じない。それは、映画としてのキレの良さが嫌な部分を揉み消しているのかもしれない。カネもかかっている映画だとも思う。最近のNetflix映画ではピカイチだし、娯楽作品では飛び抜けて楽しめる
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「やがて海へと届く」岸井ゆきの&浜辺美波

2022-04-11 18:20:14 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「やがて海へと届く」を映画館で観てきました。


映画「やがて海へと届く」は彩瀬まるの小説の映画化である。彩瀬まるという作家自体初めて知った。岸井ゆきのと浜辺美波の女性2人がくっついている映画ポスターにレズビアン系の匂いを感じる。メジャー俳優は出演していないが、岸井ゆきの「空に住む」やいくつかの作品で観ている。美人じゃないけど、親しみやすい雰囲気でここのところ起用が目立つ女優である。

ホテルのバーに勤める真奈(岸井ゆきの)は、旅に出たきり行方不明になった親友のすみれ(浜辺美波)がいなくなった喪失感が心に残っている。すみれの元カレが訪ねてきて、片見分けをするという言葉に嫌悪感をもって接しながら、大学の入学式で初めてすみれと出会ってからの想い出をたどる話>である。

映画自体は普通だった。期待したほどではなかった。
エピソードの数は少ないし、内容が薄い。明らかにネタ不足なのに140分は長すぎる。不自然な長回しも多く、簡潔さがない。映画の途中で、登場人物の1人が死んでしまう。普通だったら、そこで話が広がっていくけれど、何もない。

題名にもある海のショットは多い。ドローンを使いながら、海岸を俯瞰する。ダイナミックに感じても、観光案内ではないから、風景だけが印象的でも困る。いかにも映画の中身のなさを露わにしないようにしているだけだ。東北の震災の体験談が途中で入る。それも監督の自己満足にしか見えない。ただ、監督のレベルは低くても、主演の2人は好演、映画に内容があればもっと活躍できる余地があった。

⒈岸井ゆきの
もう30にもなるのに、大学入学式の真奈から社会人になった現在の姿までを演じる。相手役の浜辺美波とは年齢差がかなりある。「空に住む」では、いかがわしい妊婦を演じてうまかった。「前田建設」でもファンタジー事業部に所属するトリッキーな女子社員だ。会社でちょっと左右を見回すと、いそうな女の子だ。その普通さがいい。

今回初めて知った原作者の彩瀬まるの顔を写真で見たら、岸井ゆきのによく似ている。彩瀬まるのプロフィールを見ていると、東北旅行の途中で震災に遭遇したようだ。なるほど、そういう経験をしたことがあるから、こういう作品が書けたのね。危機一髪の脱出だったかもしれない。


⒉新入生の勧誘
真奈が回想する大学に入学した時にサークルの勧誘を受けるシーンがある。これってコロナ前に撮ったのかな?強烈なワイガヤの中で、あるサークルに真奈が誘われる。1人で歩いていて、男性陣に強引に勧誘されている。おいおい大丈夫かい。その時にさっと横に来る女の子がいた。すみれだ。記名をして、新入生歓迎コンパに参加するのだ。周囲に男しかいなかった自分のことを思い出す。


美形のすみれは男にちやほやされる。真奈はそうでもない。そんな真奈に突如すみれがキスをする。女が女にキスするのだ。この時の浜辺美波に謎めいた巧さを感じる。印象的な回想シーンで始まり、その先を期待させるが、そんなにすごいシーンはなかった。ネタ不足なんだなあ。レズビアンを想像させる映画ポスターは誇大広告という印象を持つ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「英雄の証明」アスガー・ファルハディ

2022-04-04 21:36:26 | 映画(アジア)
映画「英雄の証明」を映画館で観てきました。


イラン映画「英雄の証明」アカデミー賞国際映画賞を2度受賞したアスガー・ファルハディ監督の作品である。ハイレベルの2021年カンヌ映画祭で2位にあたるグランプリを受賞している。善意の出来事で称賛を浴びた主人公が、SNSにアップした悪い情報で転落するという映画という情報だけで観に行く。

イランといえばイスラムシーア派の国で、イラン革命以来アメリカと政治的な争いを続けている。映画とは無縁に見えるが、レベルは高く、日本でも次々と公開されている。アスガルハーディー監督の「別離」は傑作の誉れが高いものの、自分には合わなかった。民族としての考え方にギャップを感じた。それでも、先日公開されたイラン映画白い牛のバラッド刺激的で重厚感のある傑作だと感じた。これで3作連続で2021年カンヌ映画祭の上位作品を観ることになる。

借金未払いの罪で収監されている男が、一時的出所の際に金貨をひろう。それを換金せずに、届け出た持ち主に返すのがネット上で美談とされマスコミの取材を受ける。ところが、これはでっち上げというのがSNSに投稿され拡散して立場を失うという話だ。


傑作とされるが、自分にはよくわからない映画だった。
これから観に行く人には、事前情報で予習することを勧めたい。おそらく2回目を観ると、もう少し情報があってディテールまで馴染むのであろう。でも、情報が少ないままに映画がスタートして、登場人物、特にヴェールをかぶっている女性の見分けがつかず、主人公が徐々に転落していくのはわかっても、理解度が弱く内容がつかめないままに最終場面を迎える始末だ。

普通は事前情報が少ない方が楽しめる。サスペンス仕立ては特にそうだ。この映画はイランの国に行ったことのある人などの現地生活や建物、宗教、風習などいろんなことに精通している方がたやすく理解できる映画だと思う。「別離」同様自分には理解しづらい映画だった。


ただ、驚いたのは、イランでネット文化が進んでいるということ。独裁国で言論統制されている国はもっといろんな情報が遮断されているかと思った。イスラムというだけで団結して国家の支持率も高く、反逆も少ないのであろう。もしかして、ネットにプアな高齢者が多い日本の方が遅れていたりして?

⒈主人公の転落を招く行動
借金のことが会話に出てくるが、そもそも主人公は何か刑事罰でも起こしたのかと思った。この男の罪は借金にまつわる話らしい。イランで借金未返済での刑務所暮らしの罰があると知らないと、映画に馴染めない。でも、何でそんなに多額の借金をしてしまったのかは映画では語られていない。

主人公は元妻と離婚している。吃ってうまく話せない息子がいて、姉家族に同居してもらっている。その元妻の兄貴に多額の借金がある。一部返済できそうになっても、満額返済でないとダメだと言われている。そんなやりとりの後で、SNSに悪い噂がupされる。てっきりこの兄貴のせいだと思い、小突いてしまうのだ。


あくまで一時的な出所なのに、暴力を振るってしまうなんて理性のあるふつうの人間だったら、耐えるところだ。それが難しいのだ。多額の借金といい、この暴力といい、我慢することができない主人公のダメさを見せる映画である。なので、感情移入する要素は少ない。自業自得という言葉しか浮かばない。

⒉ウソに包まれた言い訳
この金貨は自分がひろったわけではない。いまの恋人がひろったものなのだ。そこから始まって、嘘で固めているわけで、これも同情の余地がない。この映画で大きな対立軸は、カネを借金している元妻の兄との葛藤と仕事に就こうとして申請した管理官との葛藤だ。何をどう言っても、職を斡旋する管理官は納得しない。ふつうだったら、こういう妨害で主人公に同情がいきそうだけど、ウソに包まれた主人公には嫌悪感しか感じない。


イラン版ダメ男物語といったところかもしれない。もう少しマシな映画かと思ったけど、そうでもなかった。2021年カンヌ映画祭ではドライブマイカーが脚本賞を受賞している。パルムドールのチタンは激しすぎ、監督賞のアネットはストーリーが中途半端、そしてこの「英雄の証明」だ。自分にとってのパルムドールは「ドライブマイカーだな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「アネット」アダム・ドライバー&マリオン・コティヤール&レオスカラックス

2022-04-03 18:21:51 | 映画(フランス映画 )
映画「アネット」を映画館で観てきました。


アネットはフランスの鬼才レオス・カラックス監督の新作である。ホーリーモーターズ以来久々にメガホンを持ち、当代きっての人気俳優アダムドライバーとマリオンコティヤールが主演で共演する。前作「ホーリーモーターズ」では独創的奇怪な映像を堪能でき、公開を楽しみにしていた。レオスカラックス監督は大激戦だった2021年カンヌ映画祭「アネット」を出品して監督賞を受賞している。

ヘンリーは一人芝居のコメディアンで人気者である。オペラ歌手のアンと恋仲になり結ばれ結婚する。2人には女の子の赤ちゃんができアネットと名付ける。その頃からヘンリーはスランプに陥り、ステージで観客に悪態をついたり、むかし恋仲だった女性6人から訴えられる。アンは今まで通り人気を保ち、何とか夫婦仲を維持しようとして船旅に出て嵐にのまれるという話の展開である。


ホーリーモーターズ」に続く奇想天外な映画づくりを予想していた。今回はミュージカル仕立てである。主演2人も歌う。でも、前作ほど現実と悪夢が交錯するイメージは少ない。いつもと違う違和感を感じながらも、何が起こるかわからないと最後まで目を離せなかった。

製作費については、前作よりはいいスポンサーが付いたのでは?という印象をもつ。全世界のツアーをするという設定で、世界各所の映像が映ったり、エキストラと思しき人たちを大勢雇ったり、これまでのレオスカラックスの作品よりもカネがかかっている。毎回出演している道化師のようなドニ・ラヴァンが出るのかなと最後まで待ったけど、出演していない。常連が出ないのは若干寂しい。逆に日本人が3人登場するのがご愛嬌だ。

⒈アダムドライバー
アダムドライバーは歌の本職ではない。レオスカラックス監督はあえて歌わせようとしたわけである。きっちりこなしている。

パターソン内気でナイーブなキャラクターアダムドライバーのイメージだ。沈黙の神父役も似た感じで良かった。近作はプレイボーイのイメージに転換しつつある印象をもつ。最後の決闘裁判「グッチ」と続いて、この映画ではマリオンと結婚するだけでなく、6人の女性から訴えられる遊び人だ。その中の1人が水原希子だ。


映画のスタートで、スパークスの歌に合わせて出演者が揃って歩くシーンがあり、アダムドライバーって背が高いんだなあと感じる。189cmだ。この映画ではバイクに乗るシーンが多い。マリオンコティヤールと2人乗りでバイクを走らせるシーンを大画面で観ると、疾走感を実感でき気分が良くなる。とはいうものの、悪役だ。


⒉マリオンコティヤール
悲劇のスパイ役を演じるマリアンヌ以来5年ぶりにマリオンに出会う。人気女優とはいえ、さすがに40代半ばになると出番は少ない。久々のマリオンはベリーショートのヘアで軽いイメージチェンジをしている。前作でカイリーミノーグがショートヘアで印象深い歌を歌った。レオスカラックスの好みだろう。自分はミッドナイトインパリのマリオンコティヤールが好きだ。


エディットピアフを演じてアカデミー賞主演女優賞を受賞しているが、オペラ歌手役の時に歌う歌声は本人とは思えない。まだ20代の若き日に美しい妹できれいなバストトップを見せてくれたことがある。今回、ベッドシーンでも乳首は両手で隠していたが、トップを一部見せてくれる。大サービスだ。

自宅の庭のプールで歌いながら泳ぐ姿が優雅である。日本の個性派男優古舘寛治演じる医師のもとで出産するシーンもある。


⒊アネット
映画を観る前にアネットって何のことなんだろう?と思っていた。アンが産む子どもはアネットだ。出産してすぐさま取り上げられた赤ちゃんは人形だ。その後も少しづつ育っていき、よちよち歩きになっても人形の姿であることは変わらない。

やがて、アネットはとんでもない才能を発揮する。そして、ラストシーンになり、これまでの状況を覆しあっと驚く。幼児がアダムドライバーと対等に渡り合うシーンが見ものだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「TITANE チタン」ジュリア・デュクルノー

2022-04-02 23:08:18 | 映画(フランス映画 )
映画「TITAN チタン」を映画館で観てきました。


映画「チタン」は2021年のカンヌ映画祭のパルムドール作品である。ちょっと変わった怪作という評価もあり関心を持つ。映画ポスターだけを見ると、普段好みとする作品とはちがう。先入観を持たずに映画館に向かう。

車に執着する少女アレクシア(アガト・ルセル)が交通事故に遭い、瀕死の重傷で頭にチタンを埋め込まれる。その後、大人になり、モーターショーでエロチックなダンスを踊っていた。ところが、熱狂的なファンを殺してしまい指名手配で逃走する途中で、自分に似た行方不明の少年がいることを知り、自ら名乗り出て消防隊長の父親ヴァンサン(ヴァンサン・ランドン)のもとで、消防士になって身を隠すという話である。


評価のとおり確かにこんな映画は観たことがない。
しかも、監督脚本が女性監督ジュリア・デュクルノーと映画を見終わってから知り、おったまげた。しかも美人だ。少なくとも日本の女流監督にはこういう作品をつくれる人はいないし、クライムサスペンスに優れる韓国でもここまでのエグい作品は作れない。ジュリア・デュクルノーの両親は2人とも医師だという。映画を観れば、その素養が十分生かされていると感じる。

主人公アレクシアはいかにも変態異常というべき人物だ。あとの主要な登場人物は自分の息子と思って引き取る消防隊長ヴァンサンくらいのものだ。マッチョのヴァンサンのディテールにとことんこだわる。それでストーリーをらしくしているのは上手い。


⒈殺しと偏愛
フランスじゃこんなエロチックなモーターショーやっているの?と思わせるきわどいショーに通う熱狂的なファンを殺してしまう。シャロンストーンの「氷の微笑」でのアイスピック殺人を連想する殺し方でスタートして、殺しの場面が続くと連続殺人事件の話かと思ってしまう。これだけじゃ単なる三流セクシーバイオレンス映画でパルムドール作品にはならないだろう。15禁といっても、ファックシーンが続くわけではない。カンヌの表彰式のプレゼンターがなんとシャロンストーンという写真を見て思わず笑った。

ここで、アレクシアは変装する。髪の毛を切るだけでなく、顔をわざとぶつけて形を変えるなんて芸当で姿を変える。胸はサラシを巻いたようにテープでぺったんこにする。TVに映る行方不明だった少年が今こんなに大きくなったと名乗り出る。すると、目通しで運良く父親ヴァンサンが引き取るのだ。消防隊の隊長だ。何を聞かれてもアレクシアは一言も話さない。でも気がつくと、消防隊員にさせられている。こういう展開は予想外だ。

この映画のうまさのひとつにこの父親の存在がある。しかも、この後偏愛物語のように展開する。グッと面白くなってくる。目が離せないシーンが続く。

⒉妊娠
アレクシアが変装する段階で、裸になるとお腹がポコンと出ている。そこで妊娠しているんだなあと観客に感じさせる。当然、若い男性のふりをしているし、体にはテープを巻いている。ずっと、隠していくのかと思うと、だんだんお腹が大きくなっていく。ここからがポイントだ。アガト・ルセルは初めて知った女優だが、全裸になっての大胆なシーンと懐妊後の異常パフォーマンスにはすげえと感じる。


でも、映画を観終わって、これって「車と交わってできた子ども」といういくつかの解説をみて意外に思えた。SF的世界ということなのか。でもそこまでは感じなかった。終わってみれば、確かに黒い液体がアレクシアの身体の至る所から出ているシーンがあった。当然露骨にクルマの子だというセリフもないけど、その解釈はうーんという感じである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする