映画「現金に手を出すな」は1954年のフランス映画(日本では1955年公開)
戦前「望郷」「大いなる幻影」という名作で主演を張ったジャンギャバンの戦後の代表作である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/10/5ad32d0927540815610d1f86df0d9c67.jpg)
すべてに無駄がない。こういうのを真の傑作というべきだろう。
アクションものではあるが、常にドンパチやっているわけではない。引退して余生を暮らそうとしていたギャングの数日を追う。ジャンギャバンも50過ぎで枯れ切った動きをする。当時のフランスの夜を的確にヴィジュアル化した映像もすばらしい。
オルリ空港で強奪された5000万フランの金塊が1カ月見つかっていないという新聞記事を見ながら、主人公マックス(ジャン・ギャバン)と20年来の相棒のリトン(ルネ・ダリー)2人はレストランで食事をしている。そこにはナイトクラブのダンサーも同席していた。ダンサーと同伴出勤でナイトクラブへと向かう。
ナイトクラブを仕切るピエロの部屋にはアンジェロ(リノ・ヴァンチュラ)がいた。アンジェロはこの店に酒類を納入していた。ショーが終わり、ジョジィ(ジャンヌ・モロー)の控室にマックスが入ると、ジョジィとアンジェロがいちゃいちゃしていた。ジョジィは相棒リトンといい仲になっていたのにどういうことなのかとマックスは問い詰める。
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マックスがナイトクラブから帰ろうとすると、後ろから車が追跡してきた。救急車のようだが、何かおかしいと感じたマックスが銃を持って待機するとアンジェロの手下がやってきた。威嚇をしてマックスはその場を立ち去り、ホテル住まいのリトンの部屋に電話した。そこにはアンジェロがいるようだ。マックスは場所を指定し、アンジェロにばれないように来るように指示した。
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2人はオルリ空港で五千万フランの金塊に目をつけその強奪に成功していたのだ。ところが、リトンがナイトクラブの女ジョジィに金塊のことを口走り、それがアンジェロに漏れているようである。それでアンジェロは二人を捕えて金塊の隠し場所をつき止めようとしていたのだ。マックスが隠れ家として借りていた部屋にリトンを足止めして、翌朝、金塊を持参して故買商の伯父を訪れる。事態が進展し慌てて伯父に現金にかえるよう依頼した。
マックスが留守中、リトンはジョジィに会いに行くと、そこにはアンジェロの一味が来て拉致された。隠れ家に戻ってリトンの不在に気づき、行方を探すが判らない。そこヘアンジェロから、五千万フランと引換えにリトンを渡すという電話がかかって来る。やむなくマックスはピエロを連れて金塊を車に積みこんで指定の場所に向かったが。。
フィルムノワールというジャンルがある。ノワールは文字通り「黒」イコール暗い。
ジャンギャバンの渋さがそれを増長する。最後まで徹底したノワールだ。
1.脚本の巧みさ
ストーリーのキーとなる金塊のことは、映画が始まってから新聞記事以外は語られない。レストラン、ナイトクラブと女性と戯れるシーンばかりが出てくる。ジャンギャバンの車が追跡されるあたりから徐々に状況が語られるが、元々無口なジャンギャバンのセリフは簡潔なセリフが出てくるだけだ。本当に無駄がない。完ぺきな脚本だ。それを「肉体の冠」のジャックベッケル監督が映像として巧みに具現化する。
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2.ジャンギャバンのモテモテぶり
落ち着きはらった振る舞いは貫禄充分だ。同伴出勤しながら懸命にギャバンにすり寄るダンサー、本命と思しき美女、故買商の伯父の秘書などたった1時間半のなかに3人の美女が出てくる。レストランのマダムも20万フランを平気で託すところを見ると、いい仲だったと連想させる何かがある。他にもボリュームたっぷりの美女が次から次へと出てきて目が離せない。でも明らかな素性をそれぞれ語っていない。何かを観客に想像させようとする魂胆だろう。
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3.夜のパリ
映画のイントロでムーランルージュの店構えが映る。ここで映るナイトクラブ「ミスティフィック」も印象的な店だ。中ではレビューショーで、色っぽい若い女性が踊りまくる。中には乳首にだけ隠している姿で踊るダンサーもいる。この時代ではどぎつい方だ。ナイトクラブのオーナー室にバストトップが出ている写真が飾られている。しかもリトンが寝る病室にかかった絵画がヘア入りの全裸である。1955年の日本公開時これってどう処理されたのかが気になってしまう。
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4.オチ
何もかもうまくいくことがない。ある意味同じフランス映画「恐怖の報酬」を連想させる展開だ。重要なものが積まれた車の処理に同じ流れを感じる。ほんのわずかな時間の中に収縮している。しかし、逆にギャバンに疑いがかからないようになるという筋の絶妙さは脚本の巧みさだろう。
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5.リノ・ヴァンチュラ
敵対するアンジェロを演じているのはフランスのレスリングチャンピョンだったリノ・ヴァンチュラだ。この映画を機としてフランス映画でなじみの顔となった。「死刑台のエレベーター」や「シシリアン」にも出ている。そのリノの顔を見て柔道の金メダリストのドゥイエを連想した。篠原の誤審問題で大騒ぎになった時の相手だ。よく似ている。
6.ジャンヌ・モロー
これが撮られた時はまだ26歳だ。顔立ちはまだ幼さが目立つ。この映画のダンサー役もある意味悪女だが、「死刑台のエレベーター」で見せる真の悪女ぶりや「夜」で見せる倦怠感はまだ見せない。それにしても80歳半ばにしてまだまだ現役のその姿はどちらかというと妖怪じみている気もする。
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7.テーマソング
何よりすばらしいのがテーマソングだ。最初のレストランのジュークボックスで流れてから、部屋の中のレコードなどで何度も流れる。誰もがよく知っているメロディだ。だいぶ前、タバコがたちこめる名画座の休憩時間にいつもこの曲流れていたなあと懐かしくなる。フィルムノワールを意識させる名曲だ。
本当にすばらしい!
戦前「望郷」「大いなる幻影」という名作で主演を張ったジャンギャバンの戦後の代表作である。
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すべてに無駄がない。こういうのを真の傑作というべきだろう。
アクションものではあるが、常にドンパチやっているわけではない。引退して余生を暮らそうとしていたギャングの数日を追う。ジャンギャバンも50過ぎで枯れ切った動きをする。当時のフランスの夜を的確にヴィジュアル化した映像もすばらしい。
オルリ空港で強奪された5000万フランの金塊が1カ月見つかっていないという新聞記事を見ながら、主人公マックス(ジャン・ギャバン)と20年来の相棒のリトン(ルネ・ダリー)2人はレストランで食事をしている。そこにはナイトクラブのダンサーも同席していた。ダンサーと同伴出勤でナイトクラブへと向かう。
ナイトクラブを仕切るピエロの部屋にはアンジェロ(リノ・ヴァンチュラ)がいた。アンジェロはこの店に酒類を納入していた。ショーが終わり、ジョジィ(ジャンヌ・モロー)の控室にマックスが入ると、ジョジィとアンジェロがいちゃいちゃしていた。ジョジィは相棒リトンといい仲になっていたのにどういうことなのかとマックスは問い詰める。
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マックスがナイトクラブから帰ろうとすると、後ろから車が追跡してきた。救急車のようだが、何かおかしいと感じたマックスが銃を持って待機するとアンジェロの手下がやってきた。威嚇をしてマックスはその場を立ち去り、ホテル住まいのリトンの部屋に電話した。そこにはアンジェロがいるようだ。マックスは場所を指定し、アンジェロにばれないように来るように指示した。
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2人はオルリ空港で五千万フランの金塊に目をつけその強奪に成功していたのだ。ところが、リトンがナイトクラブの女ジョジィに金塊のことを口走り、それがアンジェロに漏れているようである。それでアンジェロは二人を捕えて金塊の隠し場所をつき止めようとしていたのだ。マックスが隠れ家として借りていた部屋にリトンを足止めして、翌朝、金塊を持参して故買商の伯父を訪れる。事態が進展し慌てて伯父に現金にかえるよう依頼した。
マックスが留守中、リトンはジョジィに会いに行くと、そこにはアンジェロの一味が来て拉致された。隠れ家に戻ってリトンの不在に気づき、行方を探すが判らない。そこヘアンジェロから、五千万フランと引換えにリトンを渡すという電話がかかって来る。やむなくマックスはピエロを連れて金塊を車に積みこんで指定の場所に向かったが。。
フィルムノワールというジャンルがある。ノワールは文字通り「黒」イコール暗い。
ジャンギャバンの渋さがそれを増長する。最後まで徹底したノワールだ。
1.脚本の巧みさ
ストーリーのキーとなる金塊のことは、映画が始まってから新聞記事以外は語られない。レストラン、ナイトクラブと女性と戯れるシーンばかりが出てくる。ジャンギャバンの車が追跡されるあたりから徐々に状況が語られるが、元々無口なジャンギャバンのセリフは簡潔なセリフが出てくるだけだ。本当に無駄がない。完ぺきな脚本だ。それを「肉体の冠」のジャックベッケル監督が映像として巧みに具現化する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/8f/5cc29ce796c4cb902b3293b12ea72936.jpg)
2.ジャンギャバンのモテモテぶり
落ち着きはらった振る舞いは貫禄充分だ。同伴出勤しながら懸命にギャバンにすり寄るダンサー、本命と思しき美女、故買商の伯父の秘書などたった1時間半のなかに3人の美女が出てくる。レストランのマダムも20万フランを平気で託すところを見ると、いい仲だったと連想させる何かがある。他にもボリュームたっぷりの美女が次から次へと出てきて目が離せない。でも明らかな素性をそれぞれ語っていない。何かを観客に想像させようとする魂胆だろう。
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3.夜のパリ
映画のイントロでムーランルージュの店構えが映る。ここで映るナイトクラブ「ミスティフィック」も印象的な店だ。中ではレビューショーで、色っぽい若い女性が踊りまくる。中には乳首にだけ隠している姿で踊るダンサーもいる。この時代ではどぎつい方だ。ナイトクラブのオーナー室にバストトップが出ている写真が飾られている。しかもリトンが寝る病室にかかった絵画がヘア入りの全裸である。1955年の日本公開時これってどう処理されたのかが気になってしまう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/e2/6cf72d9feffb8b98a6839fa48be883f9.jpg)
4.オチ
何もかもうまくいくことがない。ある意味同じフランス映画「恐怖の報酬」を連想させる展開だ。重要なものが積まれた車の処理に同じ流れを感じる。ほんのわずかな時間の中に収縮している。しかし、逆にギャバンに疑いがかからないようになるという筋の絶妙さは脚本の巧みさだろう。
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5.リノ・ヴァンチュラ
敵対するアンジェロを演じているのはフランスのレスリングチャンピョンだったリノ・ヴァンチュラだ。この映画を機としてフランス映画でなじみの顔となった。「死刑台のエレベーター」や「シシリアン」にも出ている。そのリノの顔を見て柔道の金メダリストのドゥイエを連想した。篠原の誤審問題で大騒ぎになった時の相手だ。よく似ている。
6.ジャンヌ・モロー
これが撮られた時はまだ26歳だ。顔立ちはまだ幼さが目立つ。この映画のダンサー役もある意味悪女だが、「死刑台のエレベーター」で見せる真の悪女ぶりや「夜」で見せる倦怠感はまだ見せない。それにしても80歳半ばにしてまだまだ現役のその姿はどちらかというと妖怪じみている気もする。
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7.テーマソング
何よりすばらしいのがテーマソングだ。最初のレストランのジュークボックスで流れてから、部屋の中のレコードなどで何度も流れる。誰もがよく知っているメロディだ。だいぶ前、タバコがたちこめる名画座の休憩時間にいつもこの曲流れていたなあと懐かしくなる。フィルムノワールを意識させる名曲だ。
本当にすばらしい!
![]() | 死刑台のエレベーター |
ジャンヌモローの悪女ぶりを堪能 | |
![]() | 望郷 |
カスバの中で恋に揺れるジャンギャバン | |
![]() | シシリアン |
15年後のジャンギャバンとリノ・ヴァンチュラ。アランドロンも全盛 | |