映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ザ・バイクライダーズ」 オースティンバトラー&トムハーディ

2024-11-30 17:23:43 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ザ・バイクライダーズ」を映画館で観てきました。


映画「バイクライダーズ」は1965年から1973年にかけてシカゴを中心にしたバイク集団の物語。主役は「エルヴィス」で興奮させてくれたオースティンバトラーである。その妻役が「最後の決闘裁判」ジョディカマーで、バイク集団のリーダーがトムハーディだ。豪華メンバーだけど、映画はアメリカ土着の匂いが強くかなり泥くさい。監督は「MUD」ジェフニコルズ。バイク集団の写真を撮っていた写真家に妻キャシーが回想を語る形で展開する。

1965年、シカゴのバーでキャシー(ジョディ・カマー)は、イケメンのライダーベニー(オースティン・バトラー)と出会う。キャシーの男がいる自宅に行った後5週間で結婚を決める。ベニーはケンカ早くて無口でジョニー(トム・ハーディ)率いるライダーグループ「ヴァンダルズ」に所属する。グループのメンバーは地元の荒くれ者たちでルールなんて守れない。やがてジョニーの一味は各地に支部ができるほど急速に拡大する。一方でクラブ内の治安は悪化していく。


いかにもアメリカらしい映画
ベニーの妻・キャシーによる回想として語られる。いかにもゴールデンエイジの奥様らしい。音楽は60年代の曲を効果的に挿入して気分はウキウキする。大きな緩急があるわけではないがテンポはいい。何かにつけて取っ組みあいする感覚が現在の日本人感覚とは離れている感じがする。戦争をやる国だからなのかなと思ってしまう。他のライダーチームと大げんかした後で、一緒に酒を酌み交わすシーンもあって不思議な感じを覚える。男の世界の映画であるのは間違いない。

「ヴァンダルズ」のメンバーは、共通の紋章をつけたジャケットを身にまとい、バイクを乗り回す。日本の暴走族とは少し違う。颯爽と走る姿を見てメンバー入りを希望する男たちは多い。メンバー入りを許可するのはジョニーで入れないこともある。それでも組織が拡大するにつれて面倒な奴も入ってくる。ベトナム戦争経験者はドラッグに溺れている。後半はぐちゃぐちゃになった映像が続く。


オースティン・バトラーがかっこいい。無口で余計なことは話さない。クチより手の方が早くケンカ早い。免許がなくなっても平気で走る。絡まれてやられる場面もあるけど、リーダーのジョニー(トムハーディ)が中心となってしっかり仕返しする。仲間を思う気持ちも強く、親分たる貫禄は十分だ。ずっとタバコを吸いまくる。最終局面が近づき、それまでと違うドラマも生まれて、白バイ隊に入ろうとする男への処置などジョニーの行いに疑問に思う場面がでてくる。栄枯盛衰の流れだなと感じる。
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映画「チネチッタで会いましょう」 ナンニ・モレッティ

2024-11-27 16:01:47 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「チネチッタで会いましょう」を映画館で観てきました。


映画「チネチッタで会いましょう」はイタリアのベテラン監督ナンニモレッティの新作である。「映画の中の映画」の手法で自ら映画監督役となって1956年のソ連ハンガリー侵攻に戸惑うイタリア共産党員たちを描く役柄だ。5年に1作程度と製作本数は決して多くない。前作「3つの鍵」は高級アパートメントに暮らす三家族を描く作品でストーリー、美術、音楽すべてにおいてよくできていた。

予告編の音楽でアレサフランクリン「シンク」が流れる。自分の人生ベスト3のひとつ「ブルースブラザーズ」の町のダイナーからブルースブラザーズのメンバーを引っ張る名場面で、妻役のアレサフランクリン自ら演じて歌っているシーンは何度観ても楽しい。そんな雰囲気を期待して映画化に向かう。

ベテラン映画監督のジョヴァンニ(ナンニモレッティ)は1956年のイタリア共産党の苦悩を描く映画を製作中だ。ハンガリーからサーカス団が来ているのにソ連がハンガリーに侵攻してイタリア共産党の支部がソ連を支持するかどうかで大慌て。


そんなストーリーなのに、若いスタッフはイタリア共産党が存在したことすら知らない。チネチッタ撮影所で新作の撮影が始まると、党員役の主演女優が勝手にアドリブで演技するし、ジョヴァンニはイタリア共産党とソ連の確執を描く政治映画のつもりでつくっているが女優はこれって恋愛映画じゃないのと反発。フランス人プロデューサーは詐欺師だったと判明、長年プロデューサーとして支えてくれた妻は若手監督と組んで別の映画に気を取られている。しかも妻に別れを告げられる。にっちもさっちもいかない大ベテラン監督の悩みは尽きない。

イタリア映画らしいお遊びムードに満ちたブラックコメディ
ナンニ・モレッティ演じるベテラン監督は名声があるせいか何をやるにも自分勝手で独りよがりだ。長年連れ添った妻が別れを告げるのもわかる。立ち寄った妻の撮影現場で若手監督の演出に口を出す。撮影を止めてしまい気がつくと朝だ。若手スタッフとはギャップができてピントが狂いっぱなし。そんな自分勝手な老人監督は時代遅れ。でも、イタリア映画らしく色彩設計、美術、音楽の設計は抜群にいい。


結局カネの都合がつかないのだ。フランス人プロデューサーがNetflixの担当者を連れてくるところがおかしい。ネットフリックスは作品が190カ国で見られると強調し、最初の掴みは2分ぐらいでとかターニングポイントにも時間を気にする。指図が多い。大幅な改変を要求するが、ジョヴァンニの流儀とまったくかみ合わない。受け入れ難くても所詮はカネ。現場はストップだ。でも、もうダメかと思った時に救世主が現れる。韓国映画資本だ。

日本映画界にもNetflixが入って「地面師」のようなカネのかかった良作が生まれている。いい傾向だと自分は思っている。でも、この監督のように受け入れられない人もいるだろう。もっと日本映画に資本が入ると、レベルが上がるんだろうといつも思っているけど、マイナー作品で閑古鳥の上映館を見るとむずかしそう。それに対して韓国映画には日本よりカネがかかっている作品が多い。雑誌「映画芸術」で荒井晴彦が久々におもしろかったという意味がわかった。
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映画「海の沈黙」 本木雅弘&小泉今日子

2024-11-25 08:05:57 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「海の沈黙」を映画館で観てきました。


映画「海の沈黙」倉本聰の原作脚本を映画化した本木雅弘の久々の主演作である。映画館で画家を演じる本木雅弘のポスターが気になっていた。共演は小泉今日子、中井貴一に加えて久々に石坂浩二、仲村トオルと清水美沙が脇を固める。監督は若松節朗だ。贋作がテーマだとわかるが、先入観なくストーリーを追う。最後まであきずに観ていける

東京美術館で展覧会が開かれ、美術界の大御所田村修三(石坂浩二)は大臣も挨拶するオープニングセレモニーに妻安奈(小泉今日子)とともに出席する。そこで田村が自らの絵を見て、これは自分が描いたものではない。贋作だといい張って問題となる。


その絵を保管していた地方都市の美術館長(萩原聖人)が自殺する。通夜に向かった安奈は絵を引き取った中央美術館長(仲村トオル)と出会い遺書に秘められた絵への思いを知る。京都に住む田村には謎の男(中井貴一)から贋作の真相について連絡がいく。

一方北海道小樽では、飲み屋の女将(清水美沙)がバーに行き、彫り師から刺青を彫る事になったバーテンダーの女性(菅野恵)に話しかける。しかし、翌日女将は亡くなって死体で発見される。女将の全身には刺青が彫られていた。その刺青にはかつて安奈の父親のもと田村と同門で有望な画家だった津山竜次(本木雅弘)が絡んでいることがわかっていく。ある事件を機に人々の前から姿を消したのだ。

本木雅弘と小泉今日子の俳優としての存在感の強さに惹かれる。2人が久々に出会うシーンには胸を締めつける感動を覚えた。好きな映画である。事前予想より良かった。

テーマのスケールを大きくしてドガ「踊り子」の贋作話などにも触れたり、どうして元々の作品に手を入れたのかといったのが映画の主題だ。でも、長年キャリアを積み重ねてきた中年の域を越えつつある2人が見つめ合って言葉を交わす。

「見つかっちゃいましたね」「何年ぶりですかね」

若き日からTVや映画の画面で知っている2人のこれまでの人生の軌跡が自分の心に重なるように響いた。若い人が観てもそんな思いはないだろう。でもこの映画で観る年輪を重ねた2人が妙によく見える。


北海道を舞台にして軽い紆余屈折を交えたいかにも倉本聰らしいストーリーである。倉本聰作品はあまりにも久々なので、思わずまだ生きているのか確認したくらいだ。TV作品以外の脚本でも高倉健主演の「冬の華」「駅STAITION」という名作がある。映画の脚本は久々だ。

小学校1年までだけど、亡き自分の父が小樽生まれなので、北海の港や風光明媚な岩場が見える海辺、廃校と思しき校舎をアトリエにして繰り広げられるシーン、小樽独特のオールドファッションな建物にあるバーのシーンなど北海道らしい風景にグイッと引きつけられる。小樽近郊は絵になる。

⒈本木雅弘
映画で出会うのは「永い言い訳」以来久々だ。アカデミー賞作品「おくりびと」はブログを始めて2年目に観た作品で、本木雅弘のしなやかな動きに魅せられた。体調を崩している役なので、若干老け顔でやせている。大きなキャンパスで大胆に描くシーンや海に入っていくシーン、そして彫ることになった女性が裸になり温めてもらうシーンもある。

芸術へのこだわりをもつ男で気むずかしい顔をしているのに、昔の恋人だった安奈に会うときにはやさしい表情だ。安奈と別れるときに軽く手を握るのがいいシーンだった。


⒉小泉今日子
映画で観ることが多くなった。世相に対してのリベラル的言論は正直いただけないが、50代の女性がちゃんと演じられるようになったのがうれしい。TVあまちゃんでの「潮騒のメモリー」からはや10年経つ。草なぎ剛主演「碁盤斬り」では遊郭の女将を演じて貫禄がついた姿を見せたけど、恋愛とは無縁の役だった。TVの「不適切にもほどがある」にも本人役で登場してくれた。

この再会は純愛だ。過去に色々あったけど、やさしい顔をして2人は出会う。小じわも目立つ小泉今日子だけど、アイドル時代をすぎてからいちばんよく見えた。それだけでこの映画を見た甲斐がある。


⒊中井貴一と石坂浩二をはじめとした脇役陣
中井貴一は杖をついた謎のフィクサーのような役だ。サングラスを外してはじめてわかる。東京と北海道を往復して贋作や彫り師としての津山竜次を後援する存在だ。こんな役も演じるんだなと感じる。石坂浩二も映画で観るのが久々だ。もう80を過ぎた石坂が美術界の大御所だけど実年齢より若い役柄を演じる。小泉今日子が妻だけど、京都に女も子供もいる設定だ。祇園のクラブのママ役で三船美佳が出てきてこれが女ということ?でもまさに適役だった。

この2人が出会う場面で実年齢のひとまわり以上の石坂浩二に対して中井貴一が罵倒するのには不思議な気分を感じた。


あとは全身に刺青を入れた清水美沙の挑戦に感動する。今村昌平監督「うなぎ」での美しい裸体を見せてからずいぶんと経つが大したものだ。バーテンダーで彫り物をすることになり主人公に寄り添う菅野恵は初めて観た。倉本聰作品にこれまで出てきたようだ。
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映画「オアシス」 清水尋也&伊藤万理華

2024-11-22 19:30:10 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「オアシス」を映画館で観てきました。


映画「オアシス」は裏社会に潜り込んだ若き2人の主人公を追っていく物語。助監督あがりの岩屋拓郎の監督脚本である。主演の清水尋也「さがす」「リボルバーリリー」薄気味悪い役柄を演じてインパクトを残した。その印象が強く、清水尋也の主演作ということで気になる。高杉真宙「前田建設ファンタジー営業部」で観ている。また「サマーフィルムにのって」で主演を張った伊藤万理華も共演だ。清水尋也の怪演をまた期待して映画館に向かう。これがなかなか良かった

いきなりカメラは街中を闊歩する富井(清水尋也)を追う。街頭にたむろう男に「今日ある?」と声をかける。ワゴン車で取引交渉している最中にいきなり富井は相手を殴りつける。富井は暴力団の構成員で街の犯罪グループを締めているのだ。先方のアジトに「目の届くところで商売するな!」と脅す。街の半グレグループには富井の旧友金森(高杉真宙)がいた。青春時代親友だった2人が「ある事件」をきっかけにバラバラとなった。そんなシーンで始める。

いきなりの暴行シーンで一気に自分の目を引きつける。

地元の暴力団菅原組の組長(小木茂光)から街の愚連隊を締めたことで富井は褒められる。そのあと、街中にいる紅花(伊藤万理華)の後をつける富井を映す。喫茶店で隣同士になっても会話を交わさない。関係はどうなっているんだろうと思っているうちに、紅花が記憶を失っていることがわかる。



よくできた現代ならず者映画だ。飽きることなく映像に引きつけられる。
地方都市の当世ヤクザ事情とも言えそう。
岩屋監督のオリジナル脚本のようだが、なかなかうまい。監督の故郷である名古屋ロケで繁華街を中心に映し出す。刃物を振り回し残虐なシーンも多い。カメラワークも俳優の暴れる姿を舐めるように追う。これもいい。緊張感を持ちつつ、意外な展開も見せ観客をそういくか?と驚かせる。直近ではいい感じの部類だ。

清水尋也の前2作「さがす」「リボルバーリリー」の役柄は「人の心というものがあるのか?」という冷徹さを持っていた。これはすごい役者だと感じた。基本線は同じでも、少しは人間の心はあるかな?高杉真宙は首に入れ墨をしているが半グレにせよ、ちょっと弱い。ヤクザ映画系のキャラではない。青柳翔、窪塚俊介、松浦慎一郎、小木茂光といったヤクザを演じる脇役陣の面構えが最近の裏社会の人間ぽくて良い。特にいちばんの問題児組長のセガレ役の青柳翔のイヤな奴ぶりが上手かった。



「サマーフィルムにのって」での時代劇オタクの女子高生を演じた伊藤万理華はよかった。もっと活躍するかな?と思ったら、同じ作品に出ていた河合優実がここに来てグイッと伸びて一気に差をつけられてしまう。河合優実のようにもっと映画に出ればいいのにと感じる。

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映画「対外秘」チョジヌン

2024-11-20 22:12:01 | 映画(韓国映画)
映画「対外秘」を映画館で観てきました。


映画「対外秘」は90年代初頭の韓国釜山を舞台にした国会議員候補選出に伴う裏話がベースとなる映画である。韓国映画界の人気俳優チョ・ジヌン、イ・ソンミンの2人に加えてキム・ムヨルが加わる。監督は「悪人伝」のイ・ウォンテである。韓国の政界の暗闇にメスを入れた作品は、どれもこれも面白い。しかも,日経新聞映画評で時代劇評論家の春日太一が満点をつけている。わりと韓国映画に評価が甘い評価者だが、思わず期待して映画館に向かう。

1992年、釜山。党の公認候補を約束されたヘウン(チョ・ジヌン)は、国会議員選挙への出馬を決意する。ところが、陰で国をも動かす黒幕のスンテ(イ・ソンミン)が、公認候補を自分の言いなりになる男に変える。激怒したヘウンは、スンテが富と権力を意のままにするために作成した〈極秘文書〉を手に入れ、チームを組んだギャングのピルド(キム・ムヨル)から選挙資金を得て無所属で出馬する。地元の人々からの絶大な人気を誇るヘウンは圧倒的有利に見えたが、スンテが戦慄の逆襲を仕掛ける。だが、この選挙は、国を揺るがす壮絶な権力闘争の始まりに過ぎなかったーー。(作品情報 引用)


期待したほどではなかった。
釜山は日本人にとってはソウルと並んでなじみ深い街だ。九州から船でも行き来できる場所で映画にもずいぶんと取り上げられる。直近はタワマンだらけになったようだ。漁業従事者が多かっただけに利権も絡んだだろう。

そんな釜山のマル秘開発計画がこの映画のキーポイントだけど、時代が90年代前半だとそこまで開発が進んでいないかもしれない。映画ではあまり突っ込んだセリフがないので、マル秘文書に関わるプラスマイナスが自分にはよく理解できなかった。開発となれば、その場所の土地を買っておけばものすごく儲かるというよくある話だ。

国会議員になるためにまともに何か動くのでなく、主人公ヘウンが高利貸しのヤクザと組んでムチャクチャをさせる構図だ。最近はどうかわからないが、ひと時代前の韓国政界にはこんな構図があったのだろう。。途中から敵味方逆転させることが多くなっても、それが不自然に感じイマイチのれない作品だった。


主演の2人の作品はこれまで数多く見ている。特にチョ・ジヌンが日本でもリメイクされた「最後まで行く」で演じた悪役は最強で最も怖い悪役刑事だった。それ以来、注目している俳優である。最近チョジヌン主演の名義貸しの韓国映画を見たが,あまり面白くなかった。予告編でチョジヌンの演説姿が出てきて盛り上がるように見えたけど、理解しづらい裏話だらけだった。

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映画「グラディエーターⅡ」 リドリースコット&ポール・メスカル

2024-11-17 16:57:49 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「グラディエーターⅡ」を映画館で観てきました。


映画「グラディエーターⅡ」はアカデミー賞作品「グラディエーター」から24年経ちリドリースコット監督がつくった続編だ。ローマ帝国の全盛時代で今も残るコロセウムを舞台にした闘いをメインにする。予告編での迫力ある映像を観ると随分とお金がかかってそうだ。日本の低予算映画もいいのもあるけど、大画面で堪能できる作品で映画の醍醐味を味わいたい。主演のポールメスカル「アフターサン」「異人たち」で観ている。正反対に近い役柄だ。ローマ帝国時代なのに、アフリカ系のデンゼルワシントンが出演しているのも気になる。早速映画館に向かう。よかった。

いきなり海岸で戦争のシーンでスタートする。すごい迫力だ。解説はなくどっちが味方か敵か全然わからない。途中から海から攻めている軍が優位だとわかっていく。ローマ帝国の軍隊北アフリカを攻めているようだ。主人公とその妻は戦いでやられて妻は死ぬ。運良く生き延びた主人公のハンノ(ルシアス)は捕虜となる。そこからグラディエーターとしての生き様を見せる。


ハンノことルシアス(ポール・メスカル)は、将軍アカシウス(ペドロ・パスカル)率いるローマ帝国軍の北アフリカへの侵攻により愛する妻を殺され、自らも負傷するが捕虜として拘束される。ハンノは捕虜同士が格闘で殺し合うサバイバルゲームに巻き込まれる。

ハンノ(ルシアス)はいくつもの厳しい闘いで生き残り、謎の奴隷商人・マクリヌス(デンゼル・ワシントン)にその強さを見込まれる。そしてローマへ連れられて行かれて、剣闘士「グラディエーター」となる。コロセウムで難敵と次々闘っていく。


見応えのある作品だ。2時間半飽きずに堪能できた。
昨年観たリドリースコット監督の映画「ナポレオン」の戦争シーンでは圧倒された。時代がさかのぼっても、火薬や弓が飛び交ういきなりの海での戦闘に目を奪われる。前作同様お金がかかっているなあと感じる。VFXも多用しているのもわかるが、大画面ではえる。加えて、主人公が次々と難敵と対決するシーンもドキドキするばかりだ。

2時間半にも及ぶ長丁場であっても、最近の日本映画に多い妙な長回しで時間稼ぎする感じではない。簡潔に5分程度でそれぞれのシーンを手際よく集約して、スピード感をもって進めていく。リドリースコット監督さすがの手腕である。

⒈ローマ帝国の皇帝
ローマ時代を語るのが好きな人っている。うんちくを聞いていると疲れるので、ウンウンうなずいて話をそらす。自分は世界史が好きでもローマ時代への関心は薄い。でも、五賢帝の1人マルクス・アウレリウス・アントニヌスなんて皇帝の名前は今でもそらで言える。この賢帝が亡くなって16年経ったという時代設定だ。その賢い皇帝の娘が今はアカシウス将軍の妻(コニーニールセン)で前作の主人公(ラッセルクロウ)と恋仲になっていたことで、今回の設定を創作する。

現存したバカな兄弟カラカラとゲタ2人で共同統治している時代だ。この映画ではこの2人の悪趣味ぶりが強調される。暴言を吐いて周囲を振り回す。この兄弟は仲が悪かったと伝えられるがこの映画ではそうでもない。宮殿でもコロセウムでも命をかけた真剣勝負の闘いを見てヘラヘラ楽しんでいる。志村けんのバカ殿みたいだ。途中までバカ帝ぶりにあきれる場面が続いたあとで、イザコザも起きていく。


⒉コロセウムの水面での闘い
予告編でコロセウムを上空から俯瞰すると、グラウンドがプールのようになっているシーンがある。なんじゃこれと思っていた。水面に船を浮かべて闘わせる。水の中にはサメが泳いでいて、飛び込むと一気に食べられてしまう。

そもそも自動車もない時代に大きなサメを生きたまま運ぶなんてことはありえない。でもそんなことマジで考えずに見応えある映像を楽しむしかない。「ナポレオン」でも凍った湖での戦いで水中カメラを使うシーンがあったが、「グラディエーターⅡ」でも同様に水中で落ちた人が暴れるシーンが目立つ。


⒊15禁の理由とサバイバルゲーム
一瞬エロチックな場面があるのかと思っていたら違う。残虐なシーンがあるからということだろう。奴隷商人のマクリヌス(デンゼルワシントン)が捕虜たち同士で殺し合いと思しき取っ組み合いをさせる。残虐だ。この世の動物と思えない猛犬のような猿(映画ではモンキー)にハンノを闘わせる。ローマに行くとコロセウムでは巨大なサイが襲ってくる。まさにサバイバルゲームである。最終ピンチを脱却するとわかっていてもドッキリだ。

主人公ルシアス(ハンノ)は架空の人物だ。単なる捕虜がアカシウス将軍の妻とつながり常人でないことが徐々にわかっていく。改めてローマ史を確認するとカラカラ帝、ゲタ帝、そしてデンゼルワシントン演じるマクリヌスも事実と異なってはいる。でも、そんなことはどうでもいい。架空のローマ史のストーリーだてを楽しむしかない。
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映画「本心」池松壮亮&田中裕子&三吉彩花

2024-11-14 20:01:55 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「本心」を映画館で観てきました。


映画「本心」平野啓一郎の同名小説を石井裕也監督が脚本映画化した作品だ。原作は未読。近未来の日本を舞台に、仮想空間で人間を作る技術で亡くなった人と触れ合える話が基調である。未来モノは苦手なジャンルだけど、石井裕也監督の新作でもあり母親との交情の映像が気になりのぞいてみることにする。

朔也(池松壮亮)は母(田中裕子)と2人暮らし。ある日、豪雨で氾濫した川に吸い込まれる母を助けようと飛び込む。しかし、目覚めると1年もの時間が過ぎていた。母は自ら命を絶つことが可能「自由死」という選択をしていた。飛び込む寸前に「大事な話があるの」と電話で伝えていた母が死を選んだ本心が知りたかった。

職のない朔也は他人の分身となって要望を遂行する「リアル・アバター」と呼ばれる仕事に就く。生前のパーソナルデータをAIに集約させ、仮想空間上に“人間”を作る技術VF(ヴァーチャル・フィギュア)を開発している野崎(妻夫木聡)と会う。

「本物以上のお母様を作れます」と聞き、VF制作に伴うデータ収集のため母の親友だった三好(三吉彩花)に接触する。朔也はVFゴーグルを装着すればいつでも母親に会えるようになる。三好と同居生活を送るが、「リアルアバター」のバイトでは面倒な依頼を受けるようになっていた。



あまりなじめない作品だった。
近未来という設定だが、ロケ中心で風景は現在とたいして変わらない。走っているクルマも普通の車だし、主人公の家も別に未来仕様でない。池松壮亮も三吉彩花も近未来のVFゴーグルをつけている以外は現代と同じだ。母親との心の触れ合いという点が残念ながら薄すぎて情感を生まない田中裕子を効果的に使っていない。


設定だけは近未来なので、工場がロボットで全自動化されて従業員がリストラされている。職がない人も多い。もともと主人公朔也は過去に傷害事件を起こしていて履歴では採用されない。川の側に与太者がたむろっていて、そのツテで「リアルアバター」となって、依頼者の言う通りに職務を遂行する。殺せなど犯罪や暴力も要求させるのだ。近未来には職がなくこの仕事をするしかないという設定だ。

でも、この近未来設定は意味がよくわからないことだらけだ。それだけに調子が狂う。依頼者が妙に高圧的だ。アバターの向こうから無理難題を言いつける。AI評価のクチコミにバッテンがついたらクビだ。まったく理不尽な話だけど、人手不足の現代からするとどうにも不自然だし、日本の人口が減る近未来に人手不足解消はないでしょう。直近でも「カスハラ」対策が強化されていることからすると、依頼主のコンプライアンスは強く要求されるだろうからこの映画の設定は近未来ではありえないと感じる。ピントがずれている。


話は戸惑うことだらけだ。前半は眠気も襲った。
近未来の映画はもっとそれらしくして欲しい。石井裕也監督も前作「愛にイナズマ」も良かったし、ここ3作続いた自分に合う作品とそうでないのと落差があるけど今回は残念。

ただ、今回良かったのは三吉彩花だ。「先生の白い嘘」ではオッパイをもまれていた。でも、ブラジャーどまり。思い切って乳房を見せてくれればと思っていたら、ここでは大サービスだ。ボリュームたっぷりの乳房横から乳首も見える。段階を経て次は正面になってもらえるとまた観に行く。
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映画「ベルナデット 最強のファーストレディ」 カトリーヌ・ドヌーヴ

2024-11-10 18:04:04 | 映画(フランス映画 )
映画「「ベルナデット 最強のファーストレディ」を映画館で観てきました。


映画「ベルナデット 最強のファーストレディ」カトリーヌ・ドヌーヴが、シラク大統領夫人ベルナデットを演じる女性監督のレア・ドムナックの作品だ。大学の第二外国語がフランス語で、フランス語が堪能な友人もいるので他の欧州の国よりもフランスには親しみがある。パリの街を楽しむのにパリオリンピック中継で街が映ると身を乗り出してみたし、フランス映画も好きだ。

その割にはフランスの現代政治とカルチャーに関しては詳しくない。メジャー俳優を除いては俳優の名前も覚えていないし、大統領以外の政治家は知らない。それなのに、予告編で大統領夫人が「時代遅れ」「気難しい」と側近に酷評されるシーンに興味を持つ。早速観に行ってしまう。

ベルナデット・シラク(カトリーヌドヌーヴ)は、夫ジャック・シラク(ミシェル・ヴュイエルモーズ)を大統領にするため、常に影で働いてきた。ようやく大統領府のエリゼ宮に到着し、自分の働きに見合う場所を得られると思っていたが、夫やその側近、そして夫の広報アシスタントを務める娘(サラ・ジロドー)からも「時代遅れ」「メディアに向いていない」と突き放されてしまう。

だが、このままでは終われない。参謀の“ミッケー”ことベルナール・ニケ(ドゥニ・ポダリデス)と共に、「メディアの最重要人物になる」という、華麗にして唯一無二の“復讐計画”をスタートさせる!(作品情報 引用)


おもしろかった。現代フランス史の裏側も見れて楽しい。
エピソードが盛りだくさんなのもいい。スムーズにエピソードがつながり不自然さがない。しかもコミカルなタッチで軽快だ。女性監督による女性向きに作られている映画に見受けられるが、男性ファンもすんなり受け入れられる。シラク大統領はものすごい親日家であることも映像で示してくれる。日本の陶器を作る工程動画に夢中になっている姿が映り、愛犬も「スモウ」と名付けるのだ。

ジャック・シラク大統領ミッテラン大統領に選挙に敗れて苦杯を舐める時期を経てようやく1995年大統領になる。普通であれば、ベルナデット夫人はファーストレディでもてはやされるのに、周囲の人気がなく娘のクロードが秘書役で前面に出るのだ。

ベルナデットが何かおかしいと思っていた時、夫人の参謀となったベルナールに周囲の評価として「時代遅れ」「冷たい」「気難しくて話しづらい」と面と向かって指摘される。そこからベルナデットの変貌が始まる。参謀ベルナールの「ご自分を解放すれば、道は開けます」との言葉で行動がかわる。服装もシャネルスーツから現代風にイメージチェンジだ。

⒈シラク大統領の浮気
ダイアナ妃がパリで事故死したのはあまりにも有名だ。亡くなった時に方々から問い合わせがあったけれども、シラク大統領が行方不明で連絡がつかない。職員が懸命に探してようやく連絡がつくと、先方には女の声が聞こえる。どうやらイタリアの女優といるようなのだ。ベルナデット夫人は数日部屋に閉じこもってしまう。ひたすら謝るシラクなのだ。思わず吹き出してしまう。

ヒラリークリントンが大統領夫人だった頃に、フランスに来てベルナデット夫人と行動をともにする。それがTVに映し出されて何も知らないシラク大統領は画面を見て驚く。クチの悪い連中が、夫が浮気する同士仲がいいと陰口をきくシーンにも笑ってしまう。


⒉ベルナデット夫人の政治センス
ベルナデット夫人が周囲から酷評を浴びている頃から、政治的センスは抜群だった。大統領就任後に周囲の取り巻きが今のうちに議会を解散して選挙に臨んだほいがいいとシラクに進言すると、ベルナデット夫人大反対。でも取り巻きの言う通りにすると選挙で与党は惨敗。最近の日本と似た話だ。シラク大統領はアタマを抱える。

その後大統領再選の頃、フランス国内で極右政党が勢力を伸ばしていた。ベルナデットが気にしていたのにもかかわらず、取り巻きは楽観視して相手にしていなかった。結局、極右勢力が票を伸ばして決選投票となってしまう。その頃には、ベルナデット夫人への周囲の信頼は厚くなり人気が急上昇したので、シラクの切り札として選挙勝利へと導く。

⒊宿敵サルコジを大統領選で推すか?
後の大統領サルコジはもともとシラクの子分だったのに、大統領選挙で反対側勢力につく。シラク一家はカンカンだ。ベルナデット夫人著書のサイン会にサルコジが現れても、皮肉たっぷりのコメントを本に書いて追い出す

大統領在任末期となった頃シラクは脳卒中で倒れてしまう。もう限界だ。何とか踏ん張っているが、サルコジも勢力を伸ばしている。でも、シラクはサルコジだけは応援したくない。そこで登場するのが、ベルナデット夫人だ。サルコジが当選した後も対立していると、シラク家に意地悪をする可能性がある。シラクもスネに傷がたくさんあるので文句つけられる可能性がある。そこでベルナデット夫人は今後のことも考えてサルコジに急接近するのだ。県議会議員として人気のあるベルナデット夫人が自分の味方になるのはサルコジにとっても都合がいい。


このあたりのベルナデット夫人の気持ちはよくわかる。うまい!新任の責任者は前任者の否定から入ることが多い。あとのことを考えて動くベルナデットのセンスを感じる場面であった。サルコジを応援するメンバーの中に自分の妻がいるのをTVで見てシラクはビックリ。こんなシーンの数々がおもしろい。現代フランス史がわかってタメになる。フェミニスト映画という女性が多いけど、自分はそう思わない。
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映画「ルート29」 綾瀬はるか&大沢一菜

2024-11-09 21:09:56 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「ルート29」を映画館で観てきました。


映画「ルート29」「こちらあみ子」森井勇佑監督の新作ロードムービーだ。綾瀬はるか「こちらあみ子」で強い印象を残した大沢一菜の共演である。「ルート29」とは姫路から鳥取までの国道29号線のことを指す。残念ながら自分はクルマで通ったことがない。大沢一菜は前回はあどけない小学生だった。中学生になった時のブカブカの制服が印象的。あの時より大人になったけれども、今回も小学6年生の役柄で風変わりな子だ。オーソドックスなロードムービーだけれどもどこか違う肌合いを持っている。


鳥取の町で清掃員として働くのり子(綾瀬はるか)は、仕事で派遣された精神病棟の患者の理映子(市川実日子)から姫路在住の娘のハル(大沢一菜)を連れてきてくれと頼まれ姫路に向かう。写真を頼りに現地で見つけたハルは、秘密基地を作って遊ぶちょっと変わった女の子だった。のり子は乗りつけてきたワゴン車にハルを乗せて国道29線を運転して鳥取に向かう。「トンボ」というあだ名をハルはのり子につける。


道中では色んな出来事が起こる。古びたドライブインで2匹の犬を連れた赤い服の女(伊佐山ひろ子)に出会ったあと車を盗まれる。事故でひっくり返った車の中に座っていたおじいさんと行動をともにしたり、小学校教員であるのり子の姉(河井青葉)にあったりしながら母親がいる鳥取の病院を目指す。

好きな映画だ。計算された構図をもつ映像コンテに魅力を感じる。
映画の最初に沈黙が続き、主人公2人が会話を交わすまでセリフがない。表情にも乏しく、フィンランドのアキカウリスマキ監督作品に出てくる朴訥な登場人物を観ているようだ。不思議な肌合いをもつ。音楽が的確で、ルート29で出会うのどかな風景と人物にピッタリあっている。エンディングロールの曲も抜群にいい。

大沢一菜「こちらあみ子」と同様の変わった子を演じる。林の一角にある自らつくった秘密基地のようなところで日常過ごしている。普通じゃない子だ。ムカついてもおかしくないような出来事が起きても、2人は無表情に淡々とルート29を通って目的地に向かっていく。地図で見ると、姫路と鳥取は遠い。途中でクルマを盗まれて歩いていけるような場所ではない。

2人が出会う夢のような出来事を包む映像コンテが絵画を見るようで自分にはよく見える。
いく場所ごとに都度ベストのショットを撮っている。


奇妙な感じがするシーンの1つが、途中で出会った老人と2人の主人公が別々に湖でカヌーを漕ぐ時に、正面から結婚式と思しき服装を着た男女がカヌーを漕いで現れるシーンだ。老人と男女が同じ方向を向かうことで何かを意味しているのだろう。幻想なのか?よくわからない。あとは、古びた商店街で、町の住民がみんな視線を一方向に向けて大きな満月を見ているシーンも奇妙だ。寓話のようなシーンがいくつかあり、印象に残る。


脇役は充実していて、ドライブインで出会う赤い服を着た犬を連れた女(伊佐山ひろ子)や古時計ばかりを売っている時計屋の老婆(渡辺美佐子)などのベテラン女優を起用している。エンディングロールを見るまで往年の主演級2人の女優が誰かはわからなかった。

河井青葉河合優実の母親役だった「あんのこと」で演じた子に売春させる社会の底辺にいる女と比較すると、小学校の教員としてまともな役だ。でも、心に闇をもつ女性だ。姉の家に泊まらせてもらい朝食を食べているとTVニュースにハルが行方不明になっているとニュースが出てきて姉があわてる。精神病院の患者である市川実日子は娘にどうしても会いたいと言って主人公のり子に迎えに行かせた割に、「私はもう死んでいます」とよくわからない反応をする。


評論家の評価は高い一方で映画comの2点台はじめとした一般の評価は低め。でも、ロードムービーの定石も踏みながらロケハンにも成功して、綾瀬はるかと大沢一菜いずれもよく自分は好きな作品だ。綾瀬はるかの走りが脳裏に残る。
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映画「シングル・イン・ソウル」

2024-11-08 21:12:58 | 映画(韓国映画)
映画「シングルインソウル」を映画館で観てきました。


映画「シングルインソウル」ソウル居住の独身男女の物語である。映画「建築学概論」が好きで、そのスタッフが製作に関わったというコメントが気になる。平穏な映画が観たいという欲求とソウルの街中が楽しめそうという観点で選んだ作品だ。監督はキム・ボムス、脚本は『KCIA 南山の部長たち』『密偵』のイ・ジミンだ。

ソロ活好きで気ままなシングルライフを楽しむ、カリスマ塾講師で人気インフルエンサーのヨンホ(イ・ドンウク)。出版社の有能な編集長だけれどひとりでいる事が苦手で恋愛に関しては妄想癖のあるヒョンジン(イム・スジョン)。

シングルライフと観光地がテーマのエッセイ「シングル・イン・ザ・シティ」シリーズの作家と編集者として出会ったふたりは、ライフスタイルも価値観も何もかもが違い、本をめぐって事あるごとに対立するが、企画が進むにつれ一緒に過ごす時間も悪くないと思い始める。(作品情報 引用)


大きな緩急がなく平穏に流れる韓国映画では珍しい展開だ。
韓国映画特有のドロドロした雰囲気は皆無のラブコメで、今まで数多くの韓国映画のどれかで見たことあるなあというソウルの街角風景が映し出される。

カリスマ塾講師を演じるイ・ドンウクは日本で言えば井ノ原快彦になんとなく似ていて、「今でしょ」の林修講師のような感じで塾で小論文を教える。自分の講義をマスターしたらソウル大学でもどこでも入れると自信満々だ。いくつかの恋に失敗して、グルメに洋服に自分のためにカネを使うと決心する都市部のシングルだ。ソウル中心部を流れる漢江を見渡せる夜景がキレイなマンションでシンプルなインテリアの部屋に住む。


小さな出版社の編集長を演じるイム・スジョンは髪にクシも通さずオシャレに気を使わない。乗ってるクルマも洗車すらせずに汚い。仕事一本槍の雰囲気だ。部下の信頼は厚い。編集者としては優秀で、作家にピッタリ寄り添う。自分が編集に携わった本を誰かが立ち読みしているのを見て感激して仕事を頑張っているという。韓国の女性はみんな酒が強い上方漫才のような女子社員たちとみんなで飲みに行った時のパフォーマンスが楽しい。


そもそも合わない2人は徐々に接近する。
塾講師ヨンホのホテルバイトでの初恋話を聞きながら、徐々に盛り上がっていく。そこで出てくる初恋の相手がイ・ソムでビックリする。「愛のタリオ」は割とエロティックな場面が抑え気味の韓国映画の中では珍しく、イソムが乳首丸出しの絡みを披露する。アレ?本当にやっているんじゃないだろうか?と思わせる。それから彼女が出てくるたびにドキッとする。


初恋話に絡むのが村上春樹「ノルウェイの森」だ。自分は昭和の頃に読んだこの作品を韓国映画の登場人物が劇中で読むのに驚く。他の映画でも取り上げられているし、どうやら韓国でも村上春樹は人気があるようだ。
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ブログ誕生から6000日迎えて

2024-11-06 10:47:53 | Weblog
ブログ誕生からちょうど6000日となった。


16年半は速いな。
昨日関内駅降りたらこんなのがあった。
日本一おめでとう!TV見て初めて知った選手ばかりだった


6000日迎えるので、娘と2人で大好きな香港料理屋へ行った。
大好きといっている割にはデモ後の香港へ行っていない。

さくらエビと卵  オムレツみたい


ローストポーク 香港料理の定番


牡蠣のフリッター

ここの牡蠣は割と大きい

車海老のガーリック炒めいかにも香港海鮮

車海老らしいエビ

牛肉のフォー


中華は人数プラス一品というけど5品
娘も自分もよく食べる。
6000日の思いは改めて追記する。10000は無理だろうか?

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映画「アイミタガイ」 黒木華&草笛光子

2024-11-05 20:33:19 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「アイミタガイ」を映画館で観てきました。


映画「アイミタガイ」は三重県在住の作家中條けいの短編の原作を黒木華主演で映画化した作品だ。もともと「半落ち」佐々部清監督が企画したが2020年に亡くなり若手の草野翔吾がメガホンを持つ。脇役には草笛光子、風吹ジュンをはじめとして豪華配役陣が揃えている。アイミタガイ「相身互い」のことで「誰かを想ってしたことは、巡り巡って見知らぬ誰かをも救う。」ということだ。映画で言えば「ペイフォワード」的な要素を持つ。

三重県桑名、ウェディングプランナーの梓(黒木華)は親友でカメラマンの叶海(藤間爽子)と中学時代からの悩みを打ち明けあう仲だった。ところが、叶海が突如交通事故で亡くなり途方に暮れる。交際相手の澄人(中村蒼)との結婚に踏み出せず、亡くなった叶海のスマホにメッセージを送り続ける。叶海の両親の朋子(西田尚美)と優作(田口トモロヲ)は、遺品のスマホに溜まっていた梓のメッセージに気づく。


一方、梓はヘルパーである叔母(安藤光恵)が派遣された先の90を過ぎている老婦人こみち(草笛光子)が以前ピアノをしていたことを知り、金婚式での演奏を頼みに行く。中学時代、その家から流れるピアノの音色を叶海と二人で聴いていたのだ。

最後に向けての人のつながりの収束がお見事である。
最後に関係が1つに収束する「ラブアクチュアリー」のようなオムニバス映画のように、途中経過から最後に向けての転換が上手かった。まったく関係のない人同士が次々とつながるのは観ていて気分がいい。原作は短編集なので脚本の市井昌秀が巧みに映画脚本にまとめたと言える。とはいえ、途中までは女性目線のセリフが多い。好きな俳優だけど、亡くなった親友の母親役である西田尚美が嫌な女だなあと思っていた。地方都市を舞台にして末梢神経を刺激するようなむごい場面もなく平穏な心で観れる。

主人公の恋人、写真家だった友人、恋人が結婚指輪を購入しようと行く宝石屋、恋人が毎日通勤電車で出くわすおじさん、93歳のピアニスト、ヘルパーの主人公の叔母、児童福祉設備のある町のタクシー運転手、いずれもアイミタガイで繋がっていく。


⒈桑名と滋賀
三重でのロケ地MAPが作品情報にもupされている。力が入っている。いきなり上空から近鉄電車が川を渡るシーンを見てワクワクする。自分の母が若き日に三重で仕事をしていたことがあり、その同窓会もあって四日市から津のエリアに小学生の頃はよく行った。今より公害がひどく、四日市の工業地帯を通ると途端に気分悪くなった記憶がある。化学コンビナートの美しい夜景が映画でも出てくるが、あの気持ち悪い匂いが身体中を駆け巡る。でも三重の人はみんな良い人たちばかりだった。

桑名しぐれ蛤茶漬で有名だ。柿安という肉の料理屋があり、名古屋居住の大学の同級生一家に学生時代連れられて行った。その時食べた牛肉の網焼きのおいしさは人生で食べた食べ物のベスト3に入る。

梓(黒木華)が祖母(風吹ジュン)を訪ねて滋賀に向かうシーンがある。趣ある滋賀の日本家屋が連なる。近江八幡のようだ。祖母お手製のお寿司をおいしそうに食べる。地域開発の一方でこういった古い日本家屋を残すのも大事だと思う。


⒉黒木華の主題歌
桑名上空から三重を俯瞰する夜の映像とともに黒木華の歌声が流れる。これが良い感じだ。正直言って、今回の黒木華の演技に特筆すべきところはない。無難にウェディングプランナーの役をこなしたという感じだ。エンディングロールで荒木一郎「夜明けのマイウェイ」だということがわかる。思いのほか胸に沁みる

この主人公梓が中学の時の回想シーンがある。その時の親友叶海(白鳥玉季)の振る舞いが実にカッコいい。大人になってからの藤間爽子も出番は少ないがさすが藤間紫と思わせる。


⒊草笛光子に敬意
91歳の草笛光子が登場する。まだまだ頑張るなあ。安藤光恵がヘルパーとして派遣される家の93歳のご婦人役で家にはクラッシックなピアノが置いてある。上流と思しき振る舞いを見せて、若き日からフランス人にピアノを習っていた役柄だ。草笛光子はまさに貫禄十分である。


「90歳何がめでたい」は迷ったけど観ていない。不義理で良いのかと思いながら上映期間が過ぎた。いずれ確認したい。1960年前後の映画が好きで東宝社長シリーズあたりで新珠三千代や白川由美などとスクリーンに映る姿もいいけど現在も品を失わない。伝説の「光子の窓」は見たことがない。

会社に入って間もない頃、上品なご婦人がアシスタントでいてお世話になっていた。自分の父と同じ歳で草笛光子の一つ上だ。息子がお世話になっているということで、母が三越劇場の草笛光子のミュージカルのチケットを年末にそのご婦人にプレゼントした。すると、草笛光子のファンだと大喜びされた。若かった自分は一瞬なんでと思った。草笛は自分には単なるオバサンにしか思っていなかった。

そのご婦人から達筆で丁重なお手紙をいただき旧蠟のミュージカルが良かったと御礼され母も恐縮していた。旧蠟なんて言葉は初めて見た。草笛光子がミュージカルスターだということがわかった。日本経済新聞私の履歴書草笛光子が書いた時にミュージカルへの思い入れを知り、改めてそのご婦人を思い出した。
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映画「ノーヴィス」イザベルファーマン

2024-11-03 07:33:06 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「ノーヴィス」を映画館で観てきました。


映画「ノーヴィス」大学のボート部に所属する女子学生を描いたアメリカ映画、「セッション」などで音響を担当した女性のローレン・ハダウェイ監督が脚本・編集も手がける。「ノーヴィス」とはスポーツ分野において一定のランクに達していない初心者のことだ。直近は観たい映画がなく、短期間映画をご無沙汰してしまったが、何となく気になる作品である。

映画を観てしばらくして、「アレ?もしかして?似ているなあ?」と思っていたら、見終わった後その通りだとわかる。主人公アレックスを演じるのがあのホラーサスペンス「エスター」の子役イゼベルファーマンだと気がついたのだ。ある意味自分自身にとって最も印象深いホラーの主人公で何かの縁を感じる。

大学に入学したばかりのアレックス・ダル(イザベル・ファーマン)はボート部に入部を決める。物理を専攻するアレックスは学業にも力を入れるだけでなく、1年生としてコーチの指導を受けながら練習にも励んでいた。同期にはスポーツ万能のジェイミーもいたが、1人で黙々と早朝から練習して少しづつ認められていた。上級生の一軍チームとの対決にもアレックスを含む2軍チームが勝つ。そんな時、レギュラー争いでジェイミーと争う中でイザコザが起きてから、アレックスの精神は安定しない状態となっていく。


文武両道を目指す女子学生の奮闘と精神の乱れを描いた見応えのある作品だ。
映画の登場人物とはいえ、こんなにストイックに学業にもスポーツにも真剣な女子学生って今の日本にいるのだろうか?高校生の時は学年の成績上位を争い、結局学年2番だったが、大学は特待扱いで学費タダで通う奨学生だ。ボート部でのレギュラーを目指して過酷なトレーニングで自分を追い込む。専攻する物理の小テストも完璧を目指すため何度も見直して時間をかける。高校時代から努力の鬼だった。たえずメモをとり常に改善の意識を持つ。

日本映画でも上昇志向の強い女性はいても、観たことがないタイプだ。マジメに一心不乱に努力するタイプの女性は魅力的で個人的には好感をもつ。

⒈悪夢
この「ノーヴィス」を観ながら連想する言葉は悪夢だ。映画「ブラックスワン」ナタリーポートマン演じる主人公がバレエのライバルに負けないように奮闘しながら、悪夢のように徐々に精神が破壊する姿に共通するものを感じた。ナタリーポートマンにもミラクニスというライバルの存在があった。ここでも主人公にジェイミーという同期のライバルがいる。

ローレン・ハダウェイ監督ボート競技(ローイング)の経験があるようだ。コーチからの指導で「脚、体、腕」というタイミングでボート漕ぎのトレーニングをするのも自身の経験から出た言葉だろう。同じようにストイックに練習したのかもしれない。ローレン・ハダウェイ監督自らの練習でのつらい体験がこの映画につながった印象を受ける。


⒉主人公に追随するカメラと音楽
「ノーヴィス」で注目するのはカメラワークと音楽だ。いきなり空から捉えたボートの映像が映る。ボートの水上シーンを躍動感をもって捉えて、アップで登場人物の圧倒的な情熱と苦痛の表情を映す。映像に濃淡をつけつつ、現実と虚構らしきものを混ぜている編集も悪くない。できるかぎり大画面の映画館で観たい映画だ。観る映画館を変えたのは正解だった。

ドラマーの成長物語「セッション」の音響デザインを担当したローレン・ハダウェイ監督は割と多めに演技者のバックに音楽を流す。不安を呼び起こす弦楽器の音楽だけでなく60年代のブレンダリーやコニーフランシスの曲を織り交ぜるところにセンスを感じる。でも、音楽の量に賛否はあるかもしれない。

⒊エスターの子役
今回事前にあの「エスター」イザベル・ファーマンが演じていることはまったく知らなかった。自分のブログを読んでくれた女性から「エスター」を勧められて観たら、イヤイヤ凄い恐怖の波状攻撃であっと驚いた。色んな人に勧めて驚いてもらってからもう13年経つ。当初の「エスター」は映画ファンには有名作品のはずなのに、その主役であることを強調しないというのが自分には不思議でならない。


精神が徐々に不安定になっていくシーンは見ものだ。自傷行為には思わず目を背けてしまう。衝撃のラストも印象的だ。今回は大人の世界を垣間見るためにパーティで男といい仲になっての濡れ場女性の恋人とのレズビアンシーンも用意されている。あのエスターも大人になったんだね。ただ、ボート競技が主題のこの映画の主役は楽ではないはず。撮影前の6週間、毎朝4時半に起床し、1日6時間の水上トレーニングを実施したという作品情報を見ると相当な鍛錬を重ねたようだ。イザベル・ファーマンの成長を感じてうれしい。


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