映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ボーン・トゥ・フライ」ワンイーボー

2024-06-28 21:10:07 | 映画(アジア)
映画「ボーントゥフライ」を映画館で観てきました。


映画「ボーントゥフライ」(長空之王)中国空軍のテストパイロットたちの偶像を描いた中国映画だ。ポスターには「トップガン」のような戦闘機が見えるが、これまで中国映画で空軍が前面にクローズアップされる映画は見たことがないことに気づく。アメリカ空軍を題材にした作品と似たような映画が技術力の向上で中国でも作れるようになった。つい先日トニーレオン「無名」でダブル主演を張ったワンイーボーの主演である。あの時のアクションはすごかった。

空軍のパイロットであるレイ・ユー(ワン・イーボー)は、操縦に長けているが訓練中にトラブルを起こしていた。ある時、戦闘機のテストパイロットチーム隊長のチャン・ティン(フー・ジュン)が彼の才能に気付き、チームへと誘う。レイは厳正な選考を経て、ドン・ファン(ユー・シー)を始めとする優秀な飛行士6人と共に、テストパイロットに選ばれる。彼らは、新世代ステルス戦闘機のテスト飛行任務に就くが、高度1万メートル以上の世界で、繰り返される厳しいテストは過酷だった。レイは思うように成果を出せずにいらだつ。(作品情報 引用)


中国空軍のレベル向上を確認できるので隣国の人間としては少しビビってしまう。
映画に映る実際の戦闘機自体は本物だ。全面的に中国空軍の協力を仰いでいるのは間違いない。中国の軍事レベルが上がっているのを内外に見せつける宣伝映画にも見えてしまう。戦前の日本が士気高揚のためにゼロ戦映画をつくったのと似たようなものだろう。観客動員が多いのもわかるような気がする。

ただ、この映画はあくまでステルス戦闘機の能力向上のためのテストパイロットの話だ。高い位置から何周もぐるぐる回ったり、普通のパイロットよりも難易度の高い飛行をする。それをこなせて初めて使える戦闘機になるのだ。「トップガンマーベリック」を思わせるシーンも多い。当然訓練中に犠牲者もでてくる。その飛行をこなすためにテストパイロットは体力の限界を超えるぐらいの訓練をする。クイズタイムショックで失敗したときのトルネードスピンのようなものに繰り返し乗ったりする。現代の日本では絶対につくれない映画だ。


中国の戦闘機は防衛先進国に比べると能力的に遅れていた。映画ではその技術の遅れを素直に認めてエンジン能力を改善しようとする意欲を強調する。同時に、過去100年の中国近代化の遅れを憂うセリフがパイロットからある。ここでの中国人がいつもと違い極めて謙虚なだけに逆に中国に畏怖の気持ちを持つ。そこが北朝鮮の空虚なツッパリと違うところだ。

いきなり、領空を侵害してくる敵国機(アメリカを想定しているだろう)と空中戦をするシーンが出てくる。中国は自分の領域をいいように解釈する国だから、台湾統一問題で危険領域でレベルの高い戦闘能力を発揮されるとあっという間に制空権を奪われそうで怖い。そんなビビる話の中で、医療チームの女性と主人公の軽い恋が語られる。この女の子どこかで観たと思ったら「少年の君」チョウドンユイだった。
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映画「オールド・フォックス 11歳の選択」

2024-06-15 06:06:27 | 映画(アジア)
映画「オールド・フォックス 11歳の選択」を映画館で観てきました。


映画「オールド・フォックス 11歳の選択」は台湾の巨匠ホウ・シャオシエン監督のもとで助監督をつとめたシャオ・ヤーチュエン監督の作品である。1989年の台北で父と2人で暮らす11歳の少年が出くわす大人の世界との関わりを描く。台湾映画に共通するおっとりしている感じがして観てみたいと思う。大好きな門脇麦が台湾人役として出ている。

第60回台北金馬映画祭(金馬獎)で監督賞をはじめ4冠に輝いている。この映画祭は歴史があり、過去の受賞作は「ラブソング」「インファナルアフェア」「グリーンデスティニー」など香港台湾の名作が多い。近年では日本でもリメイクした台湾映画「1秒先の彼女」も受賞している。主人公の父親役リウ・グァンティンに見覚えがあったが「1秒先の彼女」に出ていた。


1989年秋、台北郊外の町中華の2階に住む11歳のリャオジエ(バイ・ルンイン)は、高級中華レストランの接客担当の父タイライ(リウ・グァンティン)と2人暮らしだ。3年後を見据えて家を買って亡くなった母親が望んでいた理髪店を開業しようとコツコツとお金を貯めている。台湾の戒厳令が解けて、株も不動産も高騰しているので、購入は容易ではない。

ある雨の日、雨宿りしているリャオジエに黒塗り高級車に乗る男が乗りなさいと声をかける。男はアパートの家主で付近の不動産を所有するシャ(アキオ・チェン)だった。地元の顔役で周囲から腹⿊いキツネと呼ばれている。シャは昔の自分に似てるリャオジエを気に入る。時おり会うごとにシャは勝ち組になるための哲学を吹き込んでいく。人を思いやるな。負け組になるよと説く。


快適に観れる台湾映画らしいムードをもった映画だ。
下町の人情的モノ的な要素もあり、全般的なムードは明るめだ。それなのにそれを抑えるように雨が降り続ける雨が多い映画だ。いくつかの対人関係が描かれている。ここでは親子関係よりも11歳の少年と家主との関係がいちばんのキーポイントだ。

題名がオールドフォックスで、主人公が住むアパートの家主シャのことを指す。あくまで11歳の主人公目線であってもシャを演じるアキオ・チェンとの関わりが重要だ。リャオ・ジエは学校の帰りに同じ年頃の悪ガキにいじめられる。それにもシャは気づいていて適切なアドバイスをする。効果バッチリだ。

車に乗せてシャが語ると勝ち組と負け組にこだわる。
「強者と組んではいあげれ、弱者と組むと下に落ちていく。」
同情心を断つには、「①氷水を飲む②目を閉じる③知ったこっちゃねえと思う。」負け組にしかなれない人とは、実はリャオジエの父親だ。ネタバレなので言えないが、これを象徴するシーンが出てくる。まさに老獪なオヤジだ。

そんなオヤジも日本統治下の子ども時代に苦労したらしい。日本語のセリフもある。オヤジの息子は彼のもとを離れて行った上に悲劇が生まれる。何もかもうまくいかないということなのだろう。金馬獎ではシャ役のアキオチェン助演男優賞を受賞する。これは当然の受賞だろう。


⒈女性の使い方の巧みさ
父タイライの高校時代の彼女として門脇麦が出演する。久々に会ったタイライはレストランのフロア係にすぎない。逆に彼女は金がありそうだ。食いきれないほどの料理を頼んで残して、タイライにチップをあげる。元の恋人との再会は心のときめきを呼び起こす。でも、どうやら金満家の人妻のようだ。「あの子は貴族」の存在が目に留まったのか?台湾人としての登場だから中国語を話す。


アパートの家賃を一軒一軒集金にくるキレイなお姉さんリン(ユージェニー・リウ)がいる。オールドフォックスのシャの従業員兼情婦だろう。ただ、彼女はこっそりよからぬことを考える。それを聞きつけたのは、父のいる中華レストランで賄いを食べるリャオジエだ。それをシャに話す。子どもだから見たこと聞いたことなんでもしゃべる。おあとは顔面にケガをしたリンが映る。。
この2人の人生模様もある意味見どころかもしれない。


⒉台湾の戒厳令明けバブル
共産党との内戦に敗れて蒋介石率いる国民党は大陸から台湾へと移った。日本占領下の台湾でも地元民はいい思いができなかったが、大陸から移ってきた連中はろくでもない奴らが多く苦労したらしい。

日本から戦後帰国しようとした台湾人が戻るとまずいとなって、新宿に踏みとどまって歌舞伎町で勢力を伸ばしたのを読んだことがある。戒厳令が1987年まで長期にわたって発令されて自由に生活できなかった。そんな後に、自由を取り戻した台湾では経済が復興する。株価は数倍にもなり、不動産価格も高騰する。


主人公が住む一階の町中華の親父が株が上がったと奥さんと大騒ぎするシーンがある。微笑ましいと思ったら、逆方向にバブル崩壊で首を吊ってしまうのは当時の世相を反映しているのであろう。
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映画「無名」 トニーレオン

2024-05-08 07:42:38 | 映画(アジア)
映画「無名」を映画館で観てきました。


映画「無名」は香港の人気俳優トニーレオンが主演で、1940年代前半の汪兆銘の日帝傀儡政権に絡んだ中国人スパイの探り合いを描いた作品である。この時代、日中戦争の裏側で二重三重で侵入するスパイたちを取り上げる映画はこれまでも数多くあった。自分のブログの歴史で再三とりあげてトニーレオンとともに歩んできた気持ちがある。。

「ラストコーション」は同じくトニーレオン主演で今回と同じように傀儡政権側の幹部であった。アンリー監督がメガホンを持ち、エロチックな描写も多い傑作である。2019年に制作され本年公開された「サタデーフィクション」オダギリジョーとコンリー主演で、1941年の魔都上海を描いている。

1940年代前半の中国、日本の傀儡政権である汪兆銘政権の政治保衛部のフー(トニーレオン)、フーの部下であるイエ(ワンイーボー)は日本軍の渡部(森博之)とともに諜報活動をしている。周辺には国民党と共産党の女性スパイも入り乱れている。誰が味方か敵かを常に疑っている。


カラーの大画面で見る1940年代の中国の映像は見応えある。
1938年の広州陥落から、1941年の日本軍上海占領、1945年の戦争集結を経て、戦後まもない時期まで映す。それぞれのシーンの顛末を途中で止めて、後からデートバックして真相を映すなど時間は軽く行ったりきたりする。

「蒋介石はあくまで軍閥で、中国の3大都市を見放した」とか,「石原中将と東條英機が仲悪い」とか,「すべてに悪いのは東條英機でなく近衛文麿だ」などのセリフがあったり,悪口が飛び交う。結局中国映画なら当局の検閲も受けているわけで、最終的には中国共産党は悪者にはならない。そこだけは面白みに欠ける。

上海外灘の建物など現存するものはある。大部分は基本的にはセットであろう。芸妓を呼ぶお座敷は中国製作にしては上出来だし、障子の部屋もある。夜の上海のバーや香港の料理屋など美術のレベルが高くなっている。衣装もいい。セットにリアル感があるので美形のスパイなどの人物もはえてくる。


トニーレオンは,オールド香港を描いた名作「花様年華」マギーチャンとペアで撮った時から23年経つ。早いものだ。容姿の雰囲気は少しも変わらない。メイクもあるだろうが老けていない。レトロな中国風の雰囲気がなおのことそう感じさせる。それにしても60を過ぎているトニーレオンがスタントマンなしのアクションを繰り広げているのには驚く。割とマジな格闘シーンも目立つ。ここまでやるとケガは大丈夫かと心配してしまうくらいだ。


格上でトニーレオンがクレジットトップであるが,ワンイーボーもこの映画の中では強いインパクトを与えている。韓国のイケメン俳優のような端正な顔立ちをしている。整髪料で固めた髪にバシッと決めたスーツが似合う。目を細めると怪しい雰囲気もでてくる。今回はアクションも踏ん張り、トニーレオンにも手加減しない。日本語のセリフにも挑戦している。

日本軍の悪さを糾弾するシーンもあるが、矛先は国内の国民党や汪兆銘の傀儡政権に向けられている。いずれにせよ、中国共産党の正統を主張する主旨である。
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映画「再会長江」 竹内亮

2024-04-17 20:02:15 | 映画(アジア)
映画「再会長江」を映画館で観てきました。


映画「再会長江」中国在住の日本人監督竹内亮が、中国を流れる6300キロの長江沿いの町に暮らす人たちとの交流を描くドキュメンタリーだ。2011年にNHKで放映された「長江 天と地の大紀行」を撮った時に出会った人たちとの再会場面も多い。竹内亮監督は前回ドキュメンタリーを撮った時は、中国語はまだ話せなかった。その後中国人女性と結婚して、現在南京に住んでいる。今回は主人公的存在だ。


上海からスタートして武漢、重慶という内陸の大都市を過ぎてからは、色んな少数民族と出会っていく。長江沿いに完成したダムのために以前あった建物がなくなっている場所もある。そして、長江の最初のしずくを映し出すためにチベット高原に向かうのだ。


期待を裏切らないすばらしいドキュメンタリーであった。
長江沿いの町に4億人が住んでいるという。大都市部を過ぎると、少数民族だらけである。女性中心の村もあるし、民族衣装は華やかだ。観光案内的要素も若干あるが、以前出会った人たちとの再会を感動的に描く。ウブな少女が10年の月日を隔てて美しい女性に成長している姿を映し出すシーンはいい感じだ。

大きなダムが完成して、以前は急流だったところが、穏やかな流れになっている。10年で大きく変わっている。ダムができているところは大きな観光船をエレベーターで位置を上昇させる。3000tの船まで大丈夫と聞くと驚く。

2011年の放送時にまだウブだった女の子と母親を上海まで連れていった。それはそれで感動的だったと思う。以前、上海に行った時、地下鉄から降りようとしたら、いかにも田舎から出てきた人たちがこちらの真正面に押し寄せてきて驚いたのを思い出した。17歳で親のススメで隣の村の男と結婚した。結婚するまで一度も会っていなかったという。戦前の日本でよく聞くような話が、ほんの10年前の中国の田舎でもあったようだ。その少女が民宿経営者になって、美しく成長している。これも感動的だ。


他にも女の国とも言われる女性中心の村も再度訪れる。男性は女性の家に「通い婚」で生活するらしい。近くに湖があり,エンジンを積んだ船は禁止だ。透き通った湖を船で優雅に乗っている姿はいい感じだ。

最後に向けては、4000mを超える高地を進む。空気は薄い
竹内亮監督も高山病にかかってしまう。数々の困難にもぶち当たる。それでも向かっていく。
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映画「ミレニアムマンボ」 ホウ・シャオシェン

2024-02-17 08:57:08 | 映画(アジア)
映画「ミレニアムマンボ」を映画館で観てきました。


映画「ミレニアムマンボ」は台湾の巨匠ホウ・シャオシェン監督の2001年の作品。リストア版を映画館で観てきました。監督と他の作品でもコンビを組むスーチーの主演。しかも、カメラはリーピンピン「夏至」「ノルウェイの森」など2000年前後から数多くの作品で力量を発揮している。夜のムードが強い予告編を見て,猥雑なアジアの夜を描いた映画が好きな自分は思わず観てみたくなる。

新世紀を迎えたばかりの2001年の台北。
恋人のハオと一緒に暮らしているヴィッキー(スーチー)は、仕事もせずに毎夜、酒とゲーム、クラブ通いと荒れた生活を続けるハオにうんざりしていた。仕方なく始めたホステスのバイトで出会ったガオのもとへ逃げこんだヴィッキーだったが、ガオのもめ事に巻き込まれ、日本へ旅立ってしまう・・・。(作品情報 引用)

思ったよりも退屈な作品だった
一瞬ブログアップしようか迷った位だ。備忘録として残しておく。逆に,映像のいいとこ取りをした予告編の編集が抜群だったといえよう。いいとこ取りができる位だから,素材は良い。主人公がたむろうナイトクラブの猥雑な感じが自分の好みだ。若き日のスーチーは非常に魅力的である。16歳で家を出て腐れ縁の恋人と同棲している女を映す。付き合っている男がダメ男なんだけれども母親の元へは帰れない。そして嫌気がさしてヤクザのもとに甘えようとしている。


素敵なショットが多い宣伝のスチール写真と比較すると,照明の照度が強くない。薄明かりの中で人物をとっているので,あまり鮮明に顔が映っていない。それはそれで監督の狙いなのかもしれないが,意味もない会話だけが続くので退屈だ。単調すぎる。しかも,主人公の彼氏は嫉妬ぶかく,仕事もしない奴だ。そんな奴との戯れを見ているだけではだんだん嫌になってくる。

ただ、映画の街と言う触れ込みで雪の夕張が映される。昭和40年代前後の日本映画の映画看板が並ぶ。雪が降り続く中を車が移動するショットは雪国にいる雰囲気がある。スーチーが積もっている雪の中で戯れるシーンもいい。主人公がおでん屋でおでんを食べるシーンも味がある。中国人は雪の北海道が好きである。そのせいもあってか,夕張の場面はよく見える。


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映画「白日青春」 アンソニーウォン

2024-02-02 18:21:01 | 映画(アジア)
映画「白日青春」を映画館で観てきました。


映画「白日青春」は香港に数多く滞在している難民の問題に焦点をあてる物語である。黒社会を舞台にした「インファナル・アフェア」などでおなじみのアンソニー・ウォンが主演だ。

タクシー運転手の陳白日(アンソニーウォン)は70年代に中国から泳いで香港に密境してきた。結婚する息子は警察官となったが、親子関係は疎遠だった。事故がらみでパキスタンからの不法移民の男アフメドと繋がるが、結局アフメドは交通事故で亡くなってしまい妻子が残される。その子どもハッサンとひょんな縁で付き合った主人公は、母親が結局香港から強制退去となるのを知り、ハッサンをカナダに移住させてあげようと動く。


香港舞台だとくいつくが、予想ほどはおもしろくなかった。
以前からインド系の顔をした連中が香港の街中をたむろっていた。フリーポートの香港には貧しいパキスタンなどの国から入って来やすかったのであろう。集団スリのようなひったくりを見たこともある。

不法移民の息子でも小学校には通えている。それ自体は香港政府もゆるやかな方と感じるけど、子どもが仲間たちと泥棒を繰り返している。観ていて気分の良いモノではない。子どもの親はパキスタンでは弁護士だったらしく、人のものを盗むのをとがめる。中近東映画で恵まれない子がウソつきで流浪の生活を送るような映画も観たけど、似たようなものだ。貧しい国だと弁護士レベルでも出国しなければならないのであろうか?


成瀬巳喜男の最後の作品乱れ雲では、夫を交通事故で亡くした未亡人(司葉子)と、事故の加害者の男(加山雄三)が惹かれ合うという構図があった。この映画のStoryも似ている。主人公のタクシー運転手は自らの営業権を売って、子どもの密航の費用を捻出しようとする。映画「カサブランカ」を彷彿するようなラストに持っていこうとする制作者の意図は感じても、最後まで美化できるとは思えなかった。
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映画「海街奇譚」

2024-01-26 18:43:58 | 映画(アジア)
映画「海街奇譚」を映画館で観てきました。


映画「海街奇譚」は2019年の中国映画で、その年のモスクワ映画祭に出品して審査員賞を受賞している。その時の審査員長は韓国の故キムギドク監督というのが気になる。予告編に流れるムードがなんか怪しい雰囲気だ。先日観た「緑の夜」で韓国のあやしい夜を味わったばかりで、今回も同じような期待をもつ。

妻を探しに離島へ行った俳優の男(チュー・ホンギャン)は、現地のホテルの女やダンスホールの女(シューアンリン)などと出会って奇妙な感触を覚える。加えて現地の町民たちは海難事故で次々と行方不明になるのに戸惑い落ち着かない生活をおくる。


映像表現は巧みだが、訳がわからない映画だ。
大画面に映る海辺のさみしい町のホテルやこの町で唯一ネオンが輝くダンスホールの映像は趣きあるし、撮影も巧みだ。原題にあるカブトガニやタコなどの「海洋動物」とそれぞれのパフォーマンスを繋げようとしている。

ダンスホールの美人マスターと似たような女が次々と出てくる。それぞれの顔が似ているので、アタマが混乱する。すると、主人公が元妻とやりとりする映像に似たような女が出てくる。美形のシューアンリンが一人で色んな役をやっていることに途中で気づく。


映画祭に出品している中国映画を見るとあえてセリフで語らず、映像で見せる映画が多い。映像理論の基本としてそれで良いかもしれない。ただ,あまりに説明がなさすぎて訳が分からなくなることも多い。この映画も同様だ。

幻想的と言えば「マルホランドドライブ」などのデイヴィッドリンチ作品もある。ただ、まぼろしと回想と真実の交差が中途半端で、リンチのレベルはほど遠い。よくわからないまま進む尻切れトンボの印象を受けた。「緑の夜」ほどにはあやしいアジアの夜の雰囲気は感じない。コロナを挟んだのはわかるけど、5年もたって劇場公開なのは新作不足ということ?


現代中国映画を観ると、日本の1980年代前後のディスコを彷彿させるダンスフロアの映像が出てくることが多い。曲のタッチも昭和のディスコを思わせる曲だ。離島のディスコといえば、ひと昔前の夏の伊豆七島には即席ディスコがたくさんあった。その頃を思い出す。
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映画「緑の夜」 ファン・ビンビン&イ・ジュヨン

2024-01-22 19:38:02 | 映画(アジア)
映画「緑の夜」を映画館で観てきました。


映画「緑の夜」は韓国を舞台にした香港映画。脱税で摘発された中国の美人女優ファンビンビンの復帰作だ。「ベイビーブローカー」では刑事役で、「野球少女」では主役を張った韓国女優イ・ジュヨンの共演だ。予告編を観て、緑の髪のイジュヨンの雰囲気があやしいのが気になる。中国の女性監督ハン・シュアイの脚本監督作品だ。

中国から韓国に渡り仁川空港の保安検査員をやっているジン(ファン・ビンビン)が緑色の髪の女(イ・ジュヨン)を検査している。靴に探知器反応があり、摘発しようとするが、女は渡航をやめる。ところが、空港の外で緑の髪の女が再度接近してくる。ジンは配偶者ビザで韓国にきたが、今のままだと居られない。緑の髪の女は運び屋だ。気がつくと、2人は夜を一緒に彷徨うことになる。


怪しいムードがずっとただよう。
アジアの妖しい夜を体感した経験のある人にとっては、このムードに浸ると一種の快感を覚えるのではないか。

ストーリーはあるにはあるが、尋常じゃない2人と裏稼業の連中とが関わる妙な話が続く。ファンビンビン演じる中国人女性も、訳ありで韓国に来ている。韓国人の夫は強烈なDVだ。その男に暴力を振るわれながら仕方なく暮らす。永住権ビザを得るには3500万ウォン必要だ。イジュヨン演じる韓国人運び屋もまともじゃない。彼氏が元締めのようだ。そんな2人が彷徨う夜の韓国はあやしいムード満載だ。ボーリング場まであやしく見える。絶対こんなところ行きたくないと思うようなエリアを映し出す。

保安検査員の上司が、運び屋と通じていたり、警察沙汰の事件が何もなかったように処理されるシーンがある。この辺りは韓国の裏社会の世界に通じるのであろう。


映画を観ているときに,連想した作品は「薄氷の殺人」「鵞鳥湖の夜」やジャジャンクー監督の「罪の手ざわり」などの中国の怪しい夜の雰囲気である。映画が終わって解説を見て中国人女性監督の監督脚本と知り、しかも香港製作だという。なるほどと思った。中国に行くと、街を軽く外れると真っ暗な夜に遭遇する時がある。そんな雰囲気をこの映画で体感した。この感覚は映画館でないと得られない。手持ちカメラと普通のカメラを巧みに使い分けたカメラワークも良かった。

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映画「燈火(ネオン)は消えず」 シルビアチャン&サイモンヤム

2024-01-14 18:24:30 | 映画(アジア)
映画「燈火(ネオン)は消えず」を映画館で観てきました。


映画「燈火は消えず」は香港映画。シルヴィアチャンとサイモンヤムという香港のメジャー級の共演である。

民主化デモがあってから香港にはなかなか行けていない。残念だ。香港大好きの自分にとっては信じられないことだけど、香港のギラギラしたネオン付き大看板が消えつつあるという。建築の規制が強化されたという。予告編でなんとなく消えゆく香港のネオンについて触れた作品だとわかったけど、まだピンと来ない。たしかに、2011年ごろ香港に行った時も、ネイザンロードの看板群が変わっていたことに気づいていた。ともかく駆けつけてみる。

香港で娘と住むメイヒョン(シルヴィア・チャン)には今は亡き夫のビル(サイモン・ヤム)がいた。ビルはネオン職人で、2003年のSARS流行でも街のネオンを消さないように儲けのない商売をしていた。

ある時ビルのズボンを整理するとネオン製作の工房の鍵が出てきた。工房に行くと、死んだはずのビルが仕事をしている形跡がある。ある夜胸騒ぎがして工房に行ってみると、青年レオ(へニック・チャウ)に出くわす。ビルの弟子だという。そこで、師匠にはやりのこしたネオンがある、と聞かされ作業を始める。でも、夫には返済していない借金があり、レオも家賃滞納で追われる身であった。


映画としては普通、香港好きでなければ感慨もないだろう。
ただ、自分は90年代の香港の良き日を思い哀愁漂う気分となる。


黒社会を描いた映画に数多く出演するサイモンヤムもここでは普通の職人さんだ。奥さんのシルヴィアチャンにもやさしい。以前はカナダ移住が多かったけど、娘がオーストラリアに移住するなんて設定になっているのも、香港脱出を図ろうとする人が多い現状を示しているのかもしれない。


最後のエンディングロールで熟練ネオン職人がつくった看板が数多く映像で出てくる。そこには日本のブランドのネオン看板も多い。90年代には九龍側から香港島をヴィクトリア湾を隔てて見ると、日本企業の看板ばかりだった。昔を偲ぶように、メイン通りであるネイザンロードの往年のきらびやかな映像も出てくる。そこにも日本企業の名前がある。

初めて香港に行ったのは90年代になってすぐであった。親友が香港駐在員となったのがきっかけだ。啓徳空港に着陸する際は、欧米人の乗客から思わず拍手が出たものだ。タクシーで繁華街のチムサーチョイに行くと、派手なネオンサインの大看板がある猥雑な街の雰囲気に圧倒された。しかも、食べ物のおいしさに驚く。まだこの当時は買い物をしても、何を食べても安かった。まだ、中国返還前で、大陸から来ている人はいかにも貧しそうであった。今考えると信じられないことだ。そのあと何度も繰り返し香港を訪れる香港ファンとなる。


先週あたりは、観たい公開作もなく、おとなしくしていた。実は初めて香港に行った時訪ねて行った親友の命日だった。日本にある彼の墓に先日行った。香港で名を売り、現地でヘッドハンティングとなり上海に移った。でも、9年前上海から北に500キロ離れた日本人が一桁しかいない街で亡くなった。彼を偲ぶ気持ちもあったせいか、吸い寄せられるように映画館に向かった。そのあと、香港料理の店で食べた。なんかさみしい。
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映画「サタデーフィクション」コンリー&オダギリジョー

2023-11-05 15:36:47 | 映画(アジア)
映画「サタデーフィクション」を映画館で観てきました。


映画「サタデーフィクション」は中国映画, ロウ・イエ監督が1941年太平洋戦争開戦前の各国のスパイが入り乱れる国際都市上海を描いた映画である。中国の大女優コン・リーと日本のオダギリジョーが共演している。1941年の日本軍上海英仏租界侵攻を描いた映画は多い。クリスチャンベールがまだ子役だったスピルバーグの「太陽の帝国」も開戦時のドタバタとその後を描いていた。西洋文化が交わり魅力的な国際都市だった戦前の上海を描いた映画が好きだ。。

ロウイエ監督の作品には、現代中国の暗部に注目した題材が多い。2017年の「シャドウプレイ」は広州の開発エリアでのトラブルを描いていて中国では上映まで2年かかったらしい。日本公開は2023年だ。でも、強烈に電圧の高い激しい作品だった。実は「サタデーフィクション」はコロナ禍前の2019年につくられている。今回は戦前までタイムスリップするが、おもしろそうだ。


1941年、人気女優ユージン(コンリー)が「蘭心大劇場」で舞台「サタデーフィクション」を演じるために上海を訪れる。国際都市上海には日本海軍の古谷少佐(オダギリジョー)や特務機関の梶原(中島歩)だけでなく、フランスの諜報部員ヒューバート(パスカル・グレゴリー)をはじめとした各国の諜報部員が集まっていて、各国の動きを探りあっていた。


映像のセンスは認めるが、訳がわからない展開だ。

この映画のストーリーを書くのはむずかしい。解説はほぼない。この当時、中華民国自体も日本の傀儡政権的な汪兆銘(精衛)の南京政府が分裂して蒋介石の重慶政府と分かれている。それぞれの諜報部員が登場する。ユージンが以前労働組合に関わっていたなんてセリフがあると、共産党側の人物だと連想してしまう。それに加えてフランス人スパイや日本の特務機関が加わり何がなんだかよくわからないままストーリーが進む。途中から急展開して、誰もがスパイになっている。現代中国史がわかっていても混乱する。

どっちが味方か敵だかわからなくなるのは、東映の実録物ヤクザ映画を観ている時の感覚だ。深作欣二監督手持ちカメラを多用するのと似たように、ブレまくりのカメラで登場人物を背後から追う。ロウイエ監督の前作「シャドウプレイ」はカット割りも多く、すごいスピード感だったけど、この作品では後半戦になって展開が早くなる。最後に向けて入り乱れている中で、ようやくスパイの目的が日本が開戦する場所を掴むことだとわかる。ただ、オダギリジョークラスの将校へ開戦に関する極秘内容が伝わるのはあり得ないのではと思う。

日本映画で、1940年代を撮るとなるとほとんどセットになる。どこか不自然で稚拙にみえることが多い。ところが、上海黄浦江に面した外灘エリアに今もレトロな建物が並んで建っている。ここを舞台にすることでリアル感が増長する。モノクロの手持ちカメラで撮ったレトロな建物で繰り広げられる映像に魅せられる。ただ、自分が知っている上海のフランス租界ってもう少し住宅街ぽいエリアだったけど違うかな。あと、パリ陥落以降なのでフランス人スパイという存在自体が微妙。ドゴール将軍側ということだと解するけど。

国際派女優コン・リーは健在だった。いかにも中国人女性らしいキツさを備えた表情は変わらない。50代後半になってもアクション場面に通用するのはさすがだ。モノクロ映像ではそんなに老けて見えない。雨の中の対決がスタイリッシュに見える。


オダギリジョー怪しい雰囲気を持った日本人将校役が上手い。中島歩は日本ではもう少しヘラヘラした役も演じるけど、特務機関の男という雰囲気を残す。加えて日本語を話す日本軍の下っ端が酔っ払いなども含めてずいぶんと登場する。


ロウイエ監督のこれまでの作品と比較すると、この映画は中国当局に承認された映画を撮っている雰囲気が強い。最終に向けての展開はそうなるだろうなあと予測した通りだった。
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映画「草原に抱かれて」

2023-09-29 05:10:37 | 映画(アジア)
映画「草原に抱かれて」を映画館で観てきました。


映画「草原に抱かれて」は中国のモンゴル自治区に住む認知症の母親とミュージシャンの息子の親子の交情を描く作品である。中国語原題は臍の緒(へその緒)である。親子のつながりを意味するということだろう。モンゴル国に面して、モンゴル人が約500万人居住する中国のモンゴル自治区がある。いったん都市部を離れると大草原地帯にはいる。文化大革命の頃から大量の漢人が入ってきて、今では自治区の80%は漢人でモンゴルの方が少ない。しかも、モンゴル人がひどい迫害を受けた歴史があるという。まったく縁のない世界に関心があり、この映画を選択する。

電子楽器のミュージシャンアルス(イデル)が久しく会っていない母親(バドマ)を訪ねて兄の家へ行くと、母は認知症が悪化して息子が誰だかわからなくなっていた。近隣にも迷惑をかけて兄夫婦は嫌気がさしている。そこで母親を連れて大草原地帯にある昔住んだ家に向かう。当然電気も水道もないところだ。そんなところでも、目を離すと外へ出て行方不明になってしまう。自分と母親に腰にひもをつけて行動する。近くに住む女性にも助けてもらいながら、ミュージシャンとしての創作活動の拠点を移す。


大草原の映像を観ると心がなごむ。
自宅の近所でも年寄りが行方不明になっているとの尋ね人の放送がよく流れている。息子の存在すらわからない母親はわがままで周囲に迷惑をかけている。お漏らしもしてしまうこともある。放っておくと外に出て行ったきり行方知れずになってしまう。かなり面倒な話である。でも、まるで幼児に戻ったような動きを見せる時がある。母息子をむすぶひもは見ようによってはへその緒だ。認知症なだけで裏のあるような人間ではなく、嫌気がするような映画ではない。


映画が始まる前に中国の映倫が承認しているという画面がでる。反体制的な動きはないと予想される。その通りだった。政治に関わる話、黒社会的要素が一切ない。面倒な姑を抱えた時の女の愚痴くらいでこれは万国共通だ。せいぜい葛藤が誰が認知症の母親の面倒を見るかでの兄弟の争いもかわいいもんだ。

緯度的には北海道と同じくらいか?場所によってはもう少し北か?地名は出てこない。冬場の撮影でないので、寒そうだけどは降っていない。気がつくと最後まで雨も降らない。果てしなく草原が続いていて、たまに牛や羊がでてくる。遙か遠くに地平線がみえる。監督は若手の女性監督チャオスーシュエだ。主役がベテラン女優なのでやりやすかったのでは?こんなのどかなところに行ったらどうなるんだろう。飽きちゃうだろうなあ。


最後に向けての結末は、本当だったらどうなっちゃうんだろう?
怪獣映画のような終わり方だった。
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映画「兎たちの暴走」

2023-09-01 18:16:13 | 映画(アジア)
中国映画「兎たちの暴走」を観てきました。


映画「兎たちの暴走」は中国映画、内陸部の工業都市で起きた殺人事件を描くクライムドラマだ。実際の事件にもとづく。中国映画でも裏びれた町の一角での泥くさい犯罪モノは好きだし、ピックアップして観ている。今年はじめに日本公開された「シャドウプレイ」も中国の裏事情にスポットをあてた自分が好きなタイプの映画だった。同じスタッフが今回参加しているという。2020年に映画祭に出品された映画が今さら公開というのもずいぶんと遅い気もするが、興味深い。でも、公開館は少ない。

中国四川省の工業都市の女子高校生シュイチン(リーゲンシー)は、父と継母と弟と暮らしている。しかし、継母とは折り合いが悪い。その街に一歳の時に別れ大都市に移った実母チューイン(ワンチェン)が帰ってくる。ダンサーの母親は感傷的にならず冷静だが、シュイチンは実母に接近する。ところが、実母は200万元の多額の借金があり、黒社会筋のヤミ金の取立てに追われていて、しかも期限が迫っていた。


女性監督らしくきめが細かい。あらゆる映像に目が行き届いた感触をもつ良作である。
女の子の微妙な心理状態がよく描かれている。エンディングなどに欠点もあるけど、掘り出し物の一つだろう。

ポイントは、継母といい関係が築けない女の子のもとに、幼い頃に別れた母親が身近なところに戻ってくる時に女の子が感じる心の動きだ。その母親は美しく、スポーティーな黄色のクルマを乗りまわし、学校で仲間にもダンスを教えてくれる自慢の母親だ。再会できて誰よりもうれしい。その実母が怪しい奴らに追われている。しかも、多額の借金をしていて、遠方から取り立てが来ている。何とか実母を助けなければという健気な気持ちだ。そこでインチキ誘拐事件を装って友人の実家からカネを引き出そうと企むのだ。


実質主役とも言える高校生を演じるリーゲンシーは、「初恋のきた道」の頃のチャンツィーを彷彿させる純真な少女だ。一歳の時に自分を捨てた母親だけど、実母には違いない。母親を慕う気持ちで犯罪に加担した主人公が実に切ない。珍しく実際の犯人に同情心を持ってしまう。

ここでは、主人公シュイチンの友人として2人女の子を登場させる。1人は家は裕福なんだけど、意地の悪い子でいわゆる女のいやらしさを兼ね備えている。もう1人はモデルになるくらいの美貌をもち金持ちから自分の養女にしたいと言われている子で、心配性の実父から虐待を受けている。この2人の使い方は女性監督ならではかもしれない。ストーリーのネタバレになるので言わないが、事件にも関わってくる。


つい最近も韓国映画「あしたの少女」で女性監督が巧みに脚本監督をこなしたが、ここでもシェン・ユー監督が巧い。四川省といっても広い。今回の舞台となる工業都市は中核都市成都とは700km以上離れている。東京から青森の距離だ。金沙江と言う川に沿った工業都市で,煙突から煙がもうもうと出ている。実際には別の都市で起きた事件のようだが,ロケハンがうまく良い撮影地を見つけて,現地の高校生たちにも協力してもらったようだ。その辺の配慮が映画を見ているとよくわかる。
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映画「君は行く先を知らない」

2023-08-31 20:22:52 | 映画(アジア)
映画「君は行く先を知らない」を映画館で観てきました。


映画「君は行く先を知らない」はイラン映画のロードムービーである。父親が反体制の映画監督ジャファル・パナヒの長男であるパナー・パナヒが本作のメガホンをもつ。シーア派のイスラム国で常にアメリカと対立しているイランの映画も、別の中東の国で撮影してイランのことを描く作品に見るべきものがある作品もある。でも、昨年の「白い牛のバラッド」などを除いては相性は良い方ではない。それでも、映画ポスターに映る子どもの表情が無邪気な感じで好感を持ったのと、自分のロードムービー好きもあり映画館に向かう。


夫婦と成年に達したばかりの長男とまだ幼い次男の4人と一匹の犬を乗せた車で、イランの国土を縦断している。そのまま高原地帯に入っていき、不穏な人物と出会う映像が続く。


よくわからない映画だった。
宗教的な背景やイラン国に住む人たちに関する潜在的知識がないと、映画の内容を理解するのは難しいのではないか?自分はさっぱり意味不明だった。解説を読んでも、書いてある言葉に対応するシーンで、ハッキリと言葉で示されていないのでよくわからない。何かしら登場人物をバックストーリーの映像で示すと背景がわかったかもしれないが、それもない。

長男の目的が隣のトルコへ移り住むということなのに、それを幼い弟に示さないで最後の旅をするということなので、言葉にされないのでよりわかりづらい。ここまで観客の能力を要求されると自分にはきつい。

もともとイランというと、自分は乾いた国土というイメージを持っていた。実際に砂漠のようなエリアやまさに乾いた荒野のような場所も走る。その一方で、緑あふれる山を映し出し、涼しげに流れる川で水際にいるシーンや温泉のようなところに皆が浸かっているシーンなどを観ると、まず人生でイランに足を踏むことはないだろう自分にとっては興味深い。


反体制派の監督がメガホンを持つのに,イランイスラム共和国大使館イラン文化センターが後援となっているのは,国家批判の言葉が少なく見ようによっては観光映画のように描かれているせいかもしれない。

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香港映画「私のプリンスエドワード」ステフィー・タン

2023-06-03 17:42:17 | 映画(アジア)
映画「私のプリンスエドワード」を映画館で観てきました。


映画「私のプリンスエドワード」は武蔵野館の新世代香港映画特集で「縁路はるばる」に引き続き観た。香港好きの自分としては、現代香港を撮ったこの映画を観ないわけにはいかない。「縁路はるばる」は自分の好みの作品であった。ここでは新鋭女性監督ノリス・ウォンによる偽装結婚も題材に加えた現代香港の結婚事情を覗き込む。

香港のプリンス・エドワード地区(太子)にある金都商場は、結婚式に必要なものすべてが格安で揃えられるショッピングモールだ。ウェディングショップで働くフォン(ステフィー・タン)は、ウェディングフォト専門店のオーナーであるエドワード(ジュー・パクホン)と同棲中。ある日、エドワードからプロポーズを受けたフォンだったが、実は10年前に中国大陸の男性と偽装結婚しており、その婚姻がまだ継続中であることが判明する。それでフォンは偽装結婚の離婚手続きと結婚式の準備を同時に進めるという話だ。


結婚式グッズが揃うショッピングモールで働く男女が、結婚に向かって準備している。でも、女性には大陸の男との偽装結婚の履歴があってそれを打ち消さねばならないという課題を解決せねばならないというわけだ。

現代香港の若者のウェディング事情がよくわかる。
主演のステフィータンを東京の街に放っても誰も中国人だとはわからないだろう。素敵な女性だ。広東語でまくしたてるといかにも気の強い香港人女性ぽくなる。相手役のジュー・パクホンはラブコメデイ的要素を意識させるお笑い系のキャラを持っている。その一方で、クールな主役女性のキャラクターがシリアスに見えてしまう。いかにも香港人女性監督による作品というのがよくわかる。香港人の気質を知っている自分からすると、全く不自然ではない。でも、コメディになりきれないのでのれない日本人もいるのでは?


⒈偽装結婚
主人公が何で偽装結婚しなければならなかったのか?という理由はよくわからない。実家を飛び出して1人暮らしをするためにお金がいるという。たしかに家賃が高い香港に住むのは大変だ。日本から移り住んだ日本人も大手企業の香港駐在員以外はほとんどルームシェアだ。

でも、ほんの少しのお金を得るために戸籍を汚すという心理がよくわからない。逆に大陸の中国人からすると香港の居住権が欲しい。実際にカネで偽装結婚した人がいるから映画の題材になったのであろう。自分には香港人の心理の方が意味不明といった感じがする。

結婚解消するために、偽装結婚した大陸に住む男性と交渉する過程や偽装結婚をそうでないと示す写真を撮ったりする場面に奇異な印象を持つ。相手が住む大陸の福州にまさに遠路はるばるバスで向かう。中国の知らない町を映し出すそれ自体はありがたい。


⒉マザコンの婚約者
女性監督がつくったというのが顕著に出るのは、男性側のマザコンぶりである。母親が結婚式の段取りを一気に仕切る。披露宴をやるつもりはなかったのに、母親が自分の友人を中心に招待客をかき集める。見栄っ張りだ。フィアンセ側があきれた顔をしても、母親が一気に突き進む.。母親の暴走を極端に強調する。いかにも姑を嫌う女性監督がつくったと思わせる構図だ。


実は香港のプリンスエドワード(太子)には行ったことがない。旺角(モンコック)の次の駅だ。今回の舞台の金都商場は典型的な香港の商店モールである。親しみをもつ。「縁路はるばる」の主演のお兄ちゃんがこの映画でも、エドワードのアシスタント役で出演していた。自分には「縁路はるばる」の方がよくできている映画だと感じる。
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香港映画「縁路はるばる」

2023-05-22 04:28:33 | 映画(アジア)
映画「縁路はるばる」を映画館で観てきました。


映画「縁路はるばる」は香港映画、IT系企業に勤める若き男性が、香港の中でも僻地に住む5人の女性と付き合うラブコメディである。新世代香港映画特集として観た。アモス・ウィー監督の作品だ。民主化デモ以来なかなか香港に行けていないので、こういったミニシアターの特集は現代香港を知る上でもありがたい作品だ。香港島や九龍の中心部が描かれることの多い香港映画では異色の存在で行ったことがないエリアだ。しかも、黒社会系ドンパチの類ではないし、民主化デモにも触れていない。変わりつつある辺境部を中心に現代香港の若者の偶像が見れてうれしい。


香港のIT系の企業につとめるハウ(カーキサム)は大学で情報工学を学んだ28才のいわゆるオタク系の社員だ。これまで2人の女性と付き合ったが、結局フラれてしまった。恋愛には自信がない。そんなハウにもモテ期が訪れて、美女5人と次々とデートをするチャンスに恵まれるという話だ。

香港好きの自分としては、心地よく観れた映画だった。
あえて、香港の中心部でなく、中心から約40km以上離れた中国本土との境や離島方面に女性たちが住んでいるという設定にする。沙頭角、下白泥、大澳、船灣荔枝窩、長洲、茶菓嶺という地名だ。香港には方々行った自分でもなじみは薄い。


その昔からすると、なくなりつつある村部エリアを舞台にする。緑あふれる山間部や海を見渡すなかなか貴重な映像だ。目の保養になる。ハイキングもできてしまう場所もある。島部といえば自分も南Y島には中環からフェリーで向かったことがある。海辺のオープンエアで食べる海鮮料理がおいしかった。最後に空港のあるランタオ島に近い長州島で締めくくるのはうれしい。


ハウはもともと女性と面と向かって会話するのも苦手な男性だ。ただ、香港ではエリートとされる香港中文大学を卒業して、IT系企業でそれなりの仕事はしている。同じような婚活をしている女性たちから見て、結婚相手としては悪くはない存在だろう。そんなハウが奥手ながら5人の女性とデートするようになる。会社の同僚、親友の結婚式の介添の女性、婚活アプリで知り合った女性、大学時代のマドンナや一緒にチームを組んだ仲間などである。以前から知っている女性からすると、空気みたいな存在だったのが一気に近づく。森山未來「モテキ」のような要素をもつ。


もしかして、日本の30前後の女性よりも香港の女の子の方が結婚願望が強いのではないかと思わせるセリフが目立つ。30までに子供が欲しいという女性もいる。積極的な女性が多い。女性には疎いハウも少しづつ修練を重ねていく。

日本でいうと、酒井法子のようなかわいいタイプの顔を香港人は好む。5人の女性はまさにそのタイプでいずれも美人揃いだ。性格的には気の強い女性が多い香港人そのものである。現代のIT気質を象徴するようなタッチで描く新しいタイプの香港映画が観れたのはうれしい。
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