映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ペコロスの母に会いに行く」 

2014-07-14 05:41:55 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「ペコロスの母に会いに行く」は昨年2013年キネマ旬報ベストテンの1位に選出された作品だ。

最近、老人映画が多く公開される。特に認知症を扱ったボケ映画が増えている。どちらかというと自分の好みではない。昨年キネマ旬報洋画トップの「愛アムール」も似たような題材でつまらないので、ブログにアップしていない。それで避けていたが、今回dvd化され、とりあえず見るかと見てみたら実に面白い。



もともと松竹で喜劇をつくっていた森崎東監督が、映画で面白おかしさを前面に出しているので笑える場面が多い。赤木春恵のボケっぷりを際だたせて、ただ単にまわりに迷惑をかけているという映画にしない。ハゲのかつらをかぶって登場の名脇役岩松了もよく。若き日の主人公を原田喜和子が演じる。この若き日の想い出が胸にジーンとくる場面もある。一時代前では主演を張ったくらいの俳優たちが老人を演じるのもよい。

キネマ旬報ベストワン作品なのに失礼だが、思わぬ掘り出しものを拾った気分になれた。
いい映画だと思う。

長崎生まれの岡野ゆういち(岩松了)は、漫画を描いたり音楽活動をしたりと趣味にうつつを抜かし、仕事に身が入らないダメサラリーマン。小さいたまねぎ“ペコロス”に似たハゲ頭のゆういちは、今日もライヴハウスでオリジナルソングを歌い上げて悦に入っている。
ゆういちの母・みつえ(赤木春恵)の認知症が始まったのは、夫のさとる(加瀬亮)が亡くなった頃からだった。それから10年、ある時は酒を買いに出たところを孫のまさき(大和田健介)に見つけられて連れ戻され、またある時はゆういちが帰ってくるのを駐車場で待ち続けて危うくひかれそうになった。

タンスの引き出しから汚れた下着が大量に出てきたこともある。
ゆういちは、悩みながらも、みつえを介護施設に預けることにする。個性豊かな面々がみつえを歓迎する。しかし、みつえは部屋にこもり、他の人の目には見えない縫い物をし続けるのだった。そんな中、みつえの記憶は少しずつ過去へ遡っていく

若き日の想い出のほうが浮かんで消えないのであった。

自分の母は、6年前にがんで亡くなったが、死ぬ寸前にモルヒネ投入で意識が亡くなるまで頭の方はぼけていなかった。最後に母と交わした言葉も実家の家業に関することである。頭だけはしっかりしていた。それなので、ボケ老人介護の苦しみは知らない。
主人公の母親が、息子ゆういちを誰なのかわからなくなってしまう場面がある。こんな人知らないといったあとで、ハゲ頭を触って息子ゆういちだと初めて認識する場面が何度も出てくる。でも途中でハゲ頭を触らしてもわからない時もある。息子が非常に落胆するのだ。この気持ちわからないが、つらいんだろうなあと思う。

1.長崎
長崎の街は、坂が多い。この地形は映画との相性がいい。田中裕子主演「いつか読書する日では、坂道を自転車で縦横無尽に上り下りする場面が印象的だった。ここでは、主人公の自宅を坂の上にしている。造船所のある長崎の内海を遥かに見渡せるいい場所の設定だ。市電、夜のお祭りの提灯、めがね橋を映しだし、長崎らしさがにじむ映像である。

2.ダメサラリーマンの漫画家
いきなりアニメが映る。主人公親子のプロフィールを簡潔に語る。息子ゆういちは広告会社のサラリーマンで、広告がとれず、営業成績があがらない。うだつが上がらない男だ。ときおりライブハウスで歌っている。仕事に行くと言いながら、公園でサボってギター片手に曲をつくっている。それでも気のいい男だ。
竹中直人とのハゲ談義が笑える。一部場面では腹を抱えて笑った。


3.痴呆老人の施設
夫が亡くなってから母のボケが一気に進む。しかし、息子は男やもめで孫がいる。稼ぎがあるわけでないから、孫もバイトしている。ボケた母親を留守番させて働かねばならない。おれおれ詐欺の電話にも引っ掛かってしまうくらいのボケぶりだ。
施設に入るのも仕方あるまい。
施設は老人たちが皆で歌を合唱するような明るい雰囲気のグループホームだった。女学生時代に戻って恋をしているらしいまつ(佐々木すみえ)、誰にでもアメをねだるユリ(白川和子)、隙あらば美人介護士の胸を揉む洋次郎(穂積隆信)など、

4.キャスティングのうまさ
施設にいる老人が名優だらけだ。それだけで、昭和のテレビドラマができてしまう。青春ドラマの教頭役に絶妙なうまさを発揮していた「積木くずし」穂積隆信、お笑いの殿堂「かしまし娘」正司照枝、下町の母親役には欠かせない佐々木すみ江、にっかつポルノの団地妻白川和子がそれぞれの個性を浮かびさせる。主人公の妹役を、往年の昼メロの常連である島かおりと長内美那子の2人が演じて、久々に見て懐かしくなった。

5.原田姉妹
原田貴和子と言われてもピンとこない。原田知世の姉と言えばわかる。トレンディ映画の名作私をスキーに連れてってでは高橋ひとみとコンビを組んだカッコいい役なのに、その面影がまったくないのでわからなかった。昔の親友(原田知世)が丸山遊郭の娼婦になっていて、仲良くしようにも昔の親友が避けるシーンが印象的で、最後の涙を誘う。

原田貴和子演じる息子ユウイチが小さい頃の妻役がうまい。夫(加瀬亮)が酒好きで、飲んで給料袋の中身をすっからかんにしてしまうシーンが印象的、ここではいい味を出していた。

最後のランタンフェスティバルのシーンで、ファンタジー的要素が強くなる。そこが自分の涙腺を強烈に湿らす。
最後の一青窈の歌がしみじみと心の響き、DVDでは珍しく、エンディングロールの間聴きいってしまった。よかった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ふがいない僕は空を見た」永山絢斗&田畑智子

2013-07-10 21:39:54 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「ふがいない僕は空を見た」は2012年公開のヒューマンドラマだ。

高校生と年上の主婦の禁断の恋をベースにして、社会の底辺に生きる人たちの姿をつづる。

高校生の斉藤卓巳(永山絢斗)は、助産院を営む母(原田美枝子)に育てられた。友人に誘われて行ったアニメイベントで、あんずと名乗るアニメ好きの年上の女岡本里美(田畑智子)にナンパされる。里美は卓巳を自宅に招き、大好きなアニメキャラクターのコスプレをさせて誘惑する。以降、里美が用意した台本通りにセリフを言いながらコスプレセックスをするようになった。

だがある日、卓巳は同級生の松永七菜(田中美晴)に告白され、里美との関係を断つことを決心する。里美はマザコン夫・慶一郎(山中崇)と二人暮らしだ。姑・マチコ(銀粉蝶)からは会うごとにあんたのせいで孫の顔が見れないと皮肉を言われる。夫にも問題があるのに、不妊治療や体外受精を強要される。ストレスがたまっている里美は卓巳との関係を深める。しかし二人の関係を夫と姑に知られてしまう。泣きじゃくる夫の横で里美は土下座して離婚を懇願する。2人は受け入れない。

卓巳の親友・福田良太(窪田正孝)は、団地での極貧の生活に耐えながらコンビニでバイト中。共に暮らしている痴呆症の父方の祖母は周辺に迷惑をかけている。新しい男と暮らしている母親にはサラ金の督促が後を絶たない。金は全くない状態で日常の食事にも困る状態だ。

バイト先の先輩である田岡良文(三浦貴大)は三流の生活から這い上がれない福田に同情する。父親が医者という家計に生まれた田岡が勉強を教えてくれる。お金はどうにでもなると、田岡は痴呆が進んだ福田の祖母を父親の病院に入院させる。福田と同じ団地に住むあくつ純子(小篠恵奈)は福田の幼馴染で、一緒にコンビニで働く。彼女がいうには田岡のような男がコンビニで働くのは男アサリのためだと。。。
アニメ好きの姉が見つけたという写真のプリントアウトを七菜に見せる。それはコスプレした卓巳の写真だった。卓巳と里美がセックスしている写真と動画がネットでばらまかれていたのだ。

dvdの表紙の写真を見たら、この愛欲に狂う2人の物語だと思ったが、奥は深かった。

ここに出演するメンバーにまともな生活が出来ている人はお産婆の母親を除いてほとんどいない。
社会の底辺を彷徨う人たちを描いていく。

主人公が通う高校は荒れている。「愛と誠」の学校風景よりはまともだが、授業を聞いている生徒はほとんどいない。上位高を目指しているような奴もいない。通っている生徒の家庭環境は平均以下だ。
生徒たちもみんなバイトをして、家計を助けている。しかし、その家庭の生活レベルは最悪だ。
団地で生活する人のレベルの低さを示している。
最悪にもかかわらず、認知症の老人を養わねばならない。そんな福田には同情する。

そこに田岡と言う存在が現れるが、まともそうに見えてまともじゃないようだ。
性的な変態と言ううわさが漂っている。とんでもない話だ。

アニメイベントで知り合ったあんずも出来の悪い夫と強烈な姑にいじめられている。
この姑も強烈だ。映画だから誇張している部分もあるけど、こんないやな女が世間にはいるのかもしれない。

あんずはもっと開き直ってもいいんじゃないかと思うが、そこまでしない。何か弱みでもあるのであろうか?
主人公との愛欲に狂うのは仕方ないと気持ちは察する。逆に主人公も高校生でやりたくて仕方ない時期である。こんな年上の女が出てきたら普通の男だったら狂うだろう。

自分の娘が高校に入って勉強をしなくなり、アニメに狂ってきた。
幕張でやっているアニメイベントに2人で一緒に行ったことがある。
確かにそこにはあんずのようなコスプレガールがたくさんいた。うちの娘のようなアニメ好きもいるが、どちらかというとオタク男のほうが多い。オタク男はコスプレガールを懸命に写真をとっている。もしかして、この映画のようにくっつく場面もあるだろうか?そればかりはわからない。

ここでわからなかったのは、動画に流失した映像の写真を福田と幼馴染の順子がばら撒くシーンだ。
この心情はどうしても理解できない。ヤケクソなこのシーンの気持ちを理解できる人はいるのであろうか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「アウトレイジ・ビヨンド」 ビートたけし

2013-06-10 05:11:13 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「アウトレイジ・ビヨンド」は好評だった北野武監督・主演で悪人同士の壮絶な権力争いを描いたバイオレンス映画「アウトレイジ」の続編だ。

熾烈な下克上抗争から5年。先代亡きあと加藤(三浦友和)が会長となり、関東の頂点を極めた暴力団「山王会」は、ついに政治の世界にまで手を伸ばし始めた。だが巨大ヤクザ組織の壊滅を企てる警察組織は、山王会の過剰な勢力拡大に業を煮やし、関西の雄である「花菱会」に目を付ける。
表向きは友好関係を保っている東西の巨大暴力団の対立を目論み、刑事の片岡(小日向文世)は裏で策略を仕掛けていく。そんな中、獄中で死んだと思われていた元山王会配下大友組の組長・大友(ビートたけし)が出所する。

明らかに何かを企み、彼を出迎える片岡。大友はヤクザに戻る気はなかったが、かつて大友の子分だった山王会若頭・石原(加瀬亮)は大友を消そうとする。さらに、警察が仕掛ける巨大な陰謀と抗争の足音が着々と大友に近づいてくるのだった。。。

計算しつくされた映画という印象だ。
前作の延長でまずは三浦友和と加瀬亮に散々吠えさせる。本来悪役と違うテイストの2人が思いっきり部下を罵倒する。別の映画で善人を演じている人間が、よくもまあここまでやると思わせる凄味だ。
この映画では、イヤというほど「バカ野郎!」の連発だ。出演者の中ではもっとも本物のヤクザらしいビートたけしが関西の組で吠えあうシーンはその迫力に驚く。

関西の雄「花菱組」の幹部を演じる神山繁もベテランの味を出す。少し前までは警察や検察の幹部をやらせると抜群のうまさを見せていて、さすがに80歳過ぎてはそれは無理だろう。「仁義なき戦い」の金子信雄を連想させる親分の風貌だが、さすがに広島の組幹部とはちがう大組織トップの貫禄を見せる。

印象に残るのは
マル暴刑事である片岡(小日向文世)の動きが前作よりも激しいということだ。

そもそも警察がヤクザの中で立ち回るなんてことがおかしい。警察の中では、それぞれの暴力団を争わせてかき回す様な話を上司にしている。出世にも欲がある。しかし、実際には裏で金をもらいながら、強いものに近づいていく。嫌な奴だ。

かつて大友の子分だった山王会若頭・石原(加瀬亮)が出世して、他の山王会の幹部たちを罵倒する。その言い方のいやらしいのなんのって。加瀬亮もうまい。

その昔会社にもいた嫌味な奴と一緒だ。いまや会社幹部は社員からのセクハラ、パワハラのタレこみにびくついてあんまりひどい仕打ちはしないようになったが、ヤクザの世界はちがう。それでもその石原も悪さのツケがまわってくる。ビートたけしが「野球やろうか?」で始めるシーンは驚く。

あと印象残るのは「花菱会」の裏のヒットマンたちの活躍だ。

高橋克典が中心になって、裏の仕事を仕掛けていく。セリフはない。ひたすら無言で「仕事」をこなしていく。本来仕事師たちは無言なんだろう。見ていて気持ちがいいくらいだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「終の信託」 草刈民代

2013-05-06 11:34:16 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「終の信託」は周防監督による2012年公開草刈民代主演のシリアスドラマ

尊厳死をテーマにした映画。
テーマが重い感じがして劇場行きを見送った。主人公の医師が患者と触れ合う部分がちょっと長すぎると思わせたが、見せ場がたくさんあって興味深く見れた。
検事役の大沢たかおを見ていて、こいつ憎たらしいなあと見ていた。
そう思わせること自体うまいのだろう。

まず主人公折井綾乃(草刈民代)が検察庁に出頭し、待合室で待つシーンが写される。検察官・塚原(大沢たかお)は部下にしばらく待たせるように指示し、なかなか取り調べが始まらない。
3年前の回想シーンに移る。
折井綾乃は43歳で天音中央病院の呼吸器内科部長である。同僚医師の高井(浅野忠信)と長い間不倫関係にあった。綾乃は彼が妻以外の若い女性といるのを見てしまう。彼を問い詰める。自分は綾乃と結婚するつもりはないと言われ落胆する。精神が不安定の中、当直時に睡眠薬を飲みすぎ倒れ大騒ぎとなる。

綾乃の担当患者に重度の喘息を患い入退院を繰り返していた江木秦三(役所広司)がいた。綾乃と江木は医師と患者の枠を超え心の内を語りあうようになった。そのことで落胆した綾乃の気は紛れた。
江木の病状は悪化する一方だ。自分の死期が迫っていることを自覚した江木は綾乃に懇願する。「信頼できるのは先生だけだ。最期のときは早く楽にしてほしい」と。

その後、江木は川で散歩している時に倒れる。救急車で病院へ運ばれた時は心肺停止状態であった。担当医の折井が懸命に救命処置をして一命はとりとめた。しかし、意識が戻る見込みはなかった。
江木からは最期の処置について言われていたが、家族と相談する必要があった。意識が戻る可能性が薄いことを家族に話して喉に通っているチューブを取り外すことになったが。。。

大きな見どころは3つあると思う。
1つはぜんそくの発作に苦しむ患者江木(役所広司)の姿を映す場面だ。本当に苦しそうだ。たぶんぜんそく患者が苦しむ姿を何かでみて演じたのであろう。リアルだ。

余談だが、自分は会社の同期がぜんそくで死ぬまでこの病気がこれほどの疾患だと思っていなかった。北野高京都大工出身の秀才だった。一緒に営業をやっていたが、資格をとると同時に技術に移った。ところが、営業時代の顧客が経営する会社に誘われ転職した。起業家を夢見たのであろう。転職先は中小企業で相当苦労したようだ。このころからぜんそく疾患が悪化する。結局辞めてIT系大企業で自分の専門を活かしてクライアントへ提案をする仕事になった。もうその時点では身体はガタガタだった。
死んだあと、彼のご母堂に生きている時の手帳を見せてもらった。会社にも家にもぜんそく疾患がひどくなっていることを言っていなかったのだ。その日の体調を毎日手帳に書いている。徐々に症状が悪くなっているのが書いてあり痛ましい。
最後は自宅で発作を起こした。風呂に長時間入って出てきたとき、彼は母上に何かを訴えた。母親は病気のことは何も知らない。吸引器を求めたのでろう。彼は窒息死した。32歳だった。
その場面が思い出された。

2つ目は意識がなくなった患者江木(役所広司)からのどのチューブを抜き去る場面だ。妻そして2人の子供のいる前で綾乃がチューブを抜く。そうすると、意識のなかった江木が大暴れするのである。息ができないからか、身体を大きく揺らす。チューブを抜いたら死ぬというわけではなかった。懸命に注射をする綾乃と看護師だったが、追加で注射してようやく静まった。そこが最期だった。
この演技も凄い。ここで注射を何回もしたのが、あとで検事に糾弾されることになる。


3つ目は検察官塚原(大沢たかお)が綾乃を取り調べで厳しく追及する場面だ。この場面も十分研究されてつくられたのがよくわかる。意識が亡くなってから綾乃がした行為を取り調べで追っていく。彼女が医学的な話をしても、事実だけを述べてくれというだけだ。大沢の手元にはメモはない。じっと綾乃を見つめて追及していく。誘導尋問というべきか?ジワリジワリ綾乃がした行為を追っていく。
ほとんどの観客は綾乃の味方であろう。検事が憎たらしく見える。被疑者への同情の余地はまったくない。ひたすら綾乃の殺人行為について追及していく。これには参った。凄腕の検事というのがどのように被疑者を追い詰めるのかをじっくりと見せていく。

役所の小さい時の逸話など前半戦は若干凡長な部分もあるが、上記3つの見せどころはうならされた。
他にも見せ場はある。草刈民代が不倫する場面であえて彼女を脱がすシーン。「シャルウィーダンス」の彼女には崇高なイメージがあった。元々お高く見える方である。それをあえて覆さないと周防監督は変化が持てないと思ったのであろうか?夫である監督は妻の草刈民代を何度も地に落とす。

普通であれば、家族と医師とだけの問題がここまで発展する背景に、彼女がエリート医師である故の外野のひがみもあると劇中で語られる場面もある。
検事の調書によると、彼女は東大医学部出身となっている。ふと思ったけど、平成13年当時に43歳とすると、自分より年上だ。今は桜蔭高校あたりのレベルが急激に上がって、理科三類にも女性が割と行くようになったけど、当時は5人もいないのではないか。そうすると、女性の東大医学部卒業生はもっと貴重な存在であり、この主人公と歩むキャリアが違うんじゃないかな?という気はした。

いずれにせよ、いい映画だと思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ライクサムワンインラブ」 高梨臨&加瀬亮

2013-05-04 05:35:51 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「ライクサムワンインラブ」は2012年公開、
監督はアッバス・キアロスタミで、全編日本国内を舞台として撮影された日本語による映画である。
全く予備知識なく見た。

いきなりカメラはバーにいる一人の女性(高梨臨)を映す。
カメラのアングルはずっと一人の女性とその友人を映す。しばらくの間映像が変わらない。彼女の携帯に電話がかかってくる。どうも彼氏のようだ。しつこく来いと言っているが、彼女は嫌がっている。そうしているうちに目の前に一人のオヤジ(でんでん)が席に寄ってくる。今日夜やってもらう仕事を伝えようとしている。なんだろう?

「冷たい熱帯魚」のでんでんが演じる男はまともな仕事ではなさそうだ。自分の祖母が上京しているからと、仕事を拒絶しているが、そうは簡単に許さない。結局はオヤジにタクシーに乗せられて1時間はなれた所へ行ってくれと言われ、いやいや向かう。

留守電を彼女が聞くと、祖母から何度もかかってきた留守電が入っている。そして留守電には祖母の伝言、クレジット会社からの催促の電話が入っている。祖母はずっと駅で待っていたようだ。彼女は留守電に返事をしないで指定された場所へ向かう。

そこにいたのは一人の老人だった。80歳を超え、現役を引退した元大学教授のタカシ(奥野匡)は、亡妻にも似た一人の若い女性明子を、デートクラブを通して家に呼んだのであった。
書棚には大量の本がある。インテリの書斎の様相だ。ダイニングテーブルには、ワインが準備されるが明子は手をつけない。会話をした後さっと寝てしまう。

翌朝、明子が通う大学まで車で送ったタカシの前に、彼女の婚約者だというノリアキ(加瀬亮)という青年が現れる。ノリアキはタカシを明子の祖父と勘違いするが。。。

余計な解説は流れない。長まわし中心で同じカメラアングルでの時間が長い。
出演者の会話と周りの雰囲気で一つの流れを推測させる。まずはバーの場面が映る。
そして手配師と思しきでんでんによりいやいや指示された場所に移る。
その途中の電話で彼女がデリヘル系の女性であることが見当つく。
移動の風景からすると新宿だ。でもそのあと銅像が映るが、あれ?こんな場所あったかな?と思わせる。
祖母からの電話何で出ないんだろう。朝から何度もかかっているのに出ないなんて非常識な女だなと思いながら、画面が移って行く。行った先が強面でなくおじいさんなので「アレ?」と思う。
部屋に入る前思いっきり口紅を真っ赤にする。


移動して着いた場所は翌朝の風景で横浜ということがわかる。
そこに彼女の大学があって、彼氏が勤める自動車工場も横浜だ。しかも、老人に彼女から電話があって、迎えに行く先が風景からすると六本木の麻布警察の横である。新宿ー横浜ー六本木、うまくつながらない。要は架空の場所としたかったのであろう。これはあまり深く考えなくてもいいかな。

テレビを見ると、70歳の加藤茶と25歳の奥さんが映っている。そういうカップルは珍しいが昔からちょくちょくいる。この場合は単に80代のおじいさんが20代の若い娘を呼んでいる。別に恋ではない。こういう少女趣味は何度も題材になっている。
高梨 臨はかわいい。口紅を真っ赤に塗る時だけ娼婦の匂いをだすけど、あとは普通の女の子だ。男性にはかなりもてるタイプ。最初のバーのシーンで、でんでんが出てくるまではこんな展開は全く予想できなかった。
明子は何もしないでそのまま寝てしまったけど、こんなこと許されるのかな?

比較的長まわしが続くので、演技的技量がいるような気がする。何度も稽古して撮り直したのではないか?そこをいかにもドキュメンタリータッチで映す。こういう映画の撮り方もあるのかな?という感じ。84歳かりそめの恋というのは言いすぎ。何かをこれで感じるような映画ではなかった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「夜明けの街で」 岸谷吾朗&深田恭子

2013-05-01 21:50:17 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「夜明けの街で」は2012年公開の岸谷吾朗と深田恭子の恋愛映画だ。
東野圭吾の原作ということで軽いミステリーの要素をもつが、基本は不倫映画だ。

建設会社に勤める40歳過ぎの渡部和也(岸谷五朗)は、バッティングセンターで自分の会社に派遣社員として勤めている秋葉(深田恭子)とばったり遭遇する。親友の新谷(石黒賢)も一緒に3人でカラオケに行く。はしゃいだ後、送る途中で秋葉が渡部の背中に嘔吐した。翌日、彼女からメール連絡あり会うが、素直でない態度に渡部はキレる。でも2人はそれをきっかけに会うようになる。渡部は妻有美子(木村多江)と小さい一人娘に囲まれて、幸せな生活を送っていた。

湘南のデートの後、二人は秋葉の叔母妙子(萬田久子)が経営するバーで一緒に飲む。ただならぬ雰囲気を感じる。渡部は彼女を横浜の実家まで送る。凄い豪邸だった。そこで秋葉の父(中村雅俊)と遭遇する。挨拶をするが、親子の間は冷ややかだった。招かれるまま屋敷に上がり込む渡部に、秋葉はこの屋敷で殺人事件があったことをほのめかす。そして一線を越える2人。不倫と縁がなかった渡部だったが、秋葉との関係は終わることはなかった。疑う様子のない妻と娘に対して罪悪感を覚えつつも、逢引きの日々が続いていくのであったが。。。。

先日の「テイクディスワルツ」では、女性目線の不倫物語という話をした。
この作品は全く真逆である。
一人称ではないが、岸谷吾朗の視線で語られていく。中年にさしかかった男性が若い素敵な女性に誘われ戸惑う姿。わかっていながらも引き込まれていく姿。妻にいい加減ないい訳をする姿。離婚なんてするつもりもないのに、一歩進んだセリフを言ってしまう姿。この映画を見て、自分のやってきた悪事に重ねるオヤジたちは多いだろう。
しかも、深田恭子ちゃんは相変わらず可愛い。

この映画でもかかっていたサザンオールスターズの「LOVE AFFAIR 〜秘密のデート」の歌詞にある横浜のベイブリッジ付近の光景を見て、ちょうど15年くらい前に放送されていた椎名桔平、松嶋奈々子主演のテレビドラマ「SWEET SEASON」を思い出した。中華街で肉まんを一緒に楽しそうに食べているシーンや温泉不倫旅行へいくシーンが印象に残る。アレはアレで実に刺激的な番組だったが、美男美女のスマートな恋よりも不器用そうな岸谷吾朗が入っているだけで、ストーリーにより真実味が出てくる気がする。



いずれにせよ男のいい加減さがにじみ出ている映画である。
女性が見てもたぶんむかつくだけの映画だろう。奥さん役木村多江がいつもながらいい感じで、この映画を見た男たちは多少火遊びはやる気にならなくなるのではないかな??
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ひみつのアッコちゃん」 綾瀬はるか&岡田将生

2013-04-07 05:38:16 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「ひみつのアッコちゃん」は2012年公開の綾瀬はるか主演の作品だ。
時代背景を現代に置き換えたオリジナルストーリーが展開する。
想像以上におもしろい。

現在40代後半から50代前半くらいのオジサン、オバサンにとって、「アッコちゃん」の響きは格別のものがあるだろう。自分もそうだ。当時小学校のクラスでは、男も女もみんな毎週欠かさずテレビを見ていた。我々の同世代はほとんど主題歌のサビを歌えるだろう。最後にエンディングロールのバックにオリジナルで流れてきたときは、背筋がぞくっとして涙が出そうになった。

さすがに綾瀬はるかの映画ポスターをみて、劇場で見る気にまではならなかった。
でも気になるんでdvdでみたけど、あまりの馬鹿さ加減にひたすら笑うしかないといった感じだ。
おバカコメディと思えば良いのだ。

10歳の加賀美あつ子は普通の小学生だ。彼女は誤って鏡を壊してしまう。残念がって家の外で鏡のお墓をつくっていたところ、鏡の精(香川照之)が現れる。彼女に魔法の鏡を渡す。鏡に向かって呪文を唱えると好きなキャラクターに変身できるというのだ。

「魔法の鏡」に「大人の私になーれ」といい、22歳の女子大生(綾瀬はるか)に変身する。元々母親の化粧品をこっそり使って化粧するのが好きなアッコちゃんは、デパートの化粧品コーナーで、化粧品会社「株式会社赤塚」(まさに赤塚不二夫流ギャグだ。)のエリート社員・早瀬尚人(岡田将生)と出会い同じ会社でアルバイトすることになった。身体は大人だが、頭の中まで大人になったわけではない。小学生から進化していない。逆に屈託ないその発言とアイディアに早瀬は感心する。

買収問題に揺れる会社を立て直すため新商品開発に取り組む尚人のため、アッコも奇想天外なアイデアで危機に立ち向かおうとするが。。。。

大人になるばかりでなく、企業の買収劇に巻き込まれるという構図がおもしろい。
「料理の鉄人」の鹿賀丈史演じる会社社長が買収を仕掛け、専務がグルになる。買収されてはならないと筆頭株主のところに綾瀬はるかと岡田将生が押しかけて、買収阻止を図るなんて話はどっかでよくある話だ。ありえない話と思ってしまってはダメ。ここは素直に童心に帰るしかない。

身体は大人でも頭は10歳のアッコちゃんは、大人たちの専門用語だらけの会話にチンプンカンプン、しかも履歴書には「早稲田大学算数学科」に通っていると書いてある。小学校高学年というと女の子の方がませている。むしろ男を引っ張るかもしれない。それっぽい正義感を発揮して諸問題を解決していく姿が単純に楽しめる。大人に変身した後、綾瀬はるかが自分の爆乳を見て「私胸もあるわ!」といっているのには笑えた。天国の赤塚不二夫もにっこりだろう。

当時のNETの「アッコちゃん」の前作が「魔法使いサリー」だった。これも男女問わずみんな見ていた。サリーちゃんの最終回は40年以上たった今も脳裏に残る。あの時サリーちゃんからアッコちゃんへ引き継ぎがきっちりなされていたので、すんなり入れた気がする。懐かしい思い出だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「かぞくのくに」 井浦新&安藤サクラ

2013-04-04 19:57:22 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「かぞくのくに」は昨年2012年公開の作品
数ある日本映画の中でキネマ旬報日本映画部門で一位の評価を得た。
井浦新そして安藤サクラをはじめ俳優の技量が際立つ良い映画であった。


北朝鮮への帰国事業で祖国に戻った人が病気治療のため日本へ一時帰国するという話とは知っていた。しかし、北朝鮮に絡んだ話はこれまで日本を悪く言う映画が多かった。古くは吉永小百合主演「キューポラのある街」(これって北朝鮮の帰国事業を描いた映画なのに単なる小百合の青春映画と思っている人が多いのに笑う)最近では「パッチギ2」なんて良い例だ。生理的に受け付けなかった。若松孝二監督作品で縁が強くなってきた井浦新が主演ということで見てみたら、想像と違いよかった。傑作だと思う。

見ていてムカついた「パッチギ2」みたいに日本をけなすという部分はみじんもない。むしろ日本に住む在日の朝鮮系の人が横暴な北朝鮮政府当局に翻弄されている姿を描いている。北朝鮮本国が好き勝手やるのにもかかわらず、言うとおりにいかねばならない悲しい性が語られる。ついこの間も朝鮮学校の無償化をめぐって、デモをする姿がテレビに映っていた。非常に不愉快なシーンであった。しかし、この映画を見ると、本国からも良い待遇を受けていない朝鮮系在日のつらい立場に若干同情する。

1997年の東京が舞台だ。
1970年代に帰国事業により北朝鮮へと渡った兄は、日本との国交が樹立されていないため、ずっと別れ別れになっていた。そんな兄・ソンホ(井浦新)が病気治療のために、監視役(ヤン・イクチュン)を同行させての3ヶ月間だけの日本帰国が許された。25年ぶりに帰ってきた兄と生まれたときから自由に育ったリエ(安藤サクラ)、兄を送った両親との家族だんらんは、微妙な空気に包まれていた。兄のかつての級友たちは、奇跡的な再会を喜んでいた。その一方、検査結果はあまり芳しいものではなく、医者から3ヶ月という限られた期間では責任を持って治療することはできないと告げられる。なんとか手立てはないかと奔走するリエたち。そんな中、本国から兄に、明日帰還するよう電話がかかってくる……。

井浦新が演じるシーンの中で印象的なシーンが2つある。
1つは昔の仲間が経営する飲み屋で旧交を温める中で、白いブランコを弾き語りで歌う旧友に合わせて井浦がはもっていくシーン。じわっと涙が出てきた。設定で考えると、97年に41歳くらいの設定だから、自分より少し上だ。でもある意味同世代といえる。72年あたりは当然帰国事業も一段落したことと思っていたが、まだ悲劇に遭遇する人がいたと思うと悲しくなる。


もう1つは北朝鮮へもどった在日である主人公がやりたくない仕事をやらされていることへの強い葛藤を表現するシーンであった。兄が妹に依頼する。「ある特定の人にあった時、どういう話をしたか教えてくれないかと。。」妹はすぐさまスパイ的仕事とひらめく。それはできないと断る。横で聞いていた父親があとで兄を問い詰める。その時に兄は今までと違う感情を爆発させる。これは凄い迫力があった。
今回、兄が自分の家族について何も語らない。少しだけ彼の家族との写真が映像に出るがそれだけである。
ここでも余計なことはしゃべらない。ただ、つらい思いを叫ぶだけである。

イヤーつらいなあ。
他にも「クイズの女王」宮崎美子演じる母親が息子に同行する北朝鮮当局の人間に背広を買ってやるシーンや考えさせられるシーンがたくさんあった。
見ていて本当に在日朝鮮人に同情した。北朝鮮嫌いの全く違う主旨で生きている自分でさえ思うくらいなんだから、そう思わせる映画製作者は大したものだ。しんみりと響く音楽もよくジーンとした。
昨年の日本映画のトップにこの作品を推す気にはならないが、確かによくできている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「桐島 部活やめるってよ」

2013-03-15 21:25:45 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「桐島 部活やめるってよ」は先日直木賞を受賞した朝井リョウの同名小説を、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の吉田大八監督が映画化した青春群像劇。
昨年度の映画の賞をとりまくった作品だ。

何でこんなに評価されるんだろう。見てみると正直その思いは強くなる。
起承転結がはっきりしているわけでもない。大きな事件が起きるわけでもない。
でもこの映画にはさまざまな高校生が出てくる。運動部、文化部そして帰宅部の人たち、容姿端麗のスターばかりでなく内に引きこもった面々など。。。
普通に高校生活をすごした人なら、この映画の登場人物の誰かにどことなく感情同化する思いを抱くのかもしれない。それだからこんなに人気が出るのであろう。

ある高校内を舞台にした生徒たちの群像ドラマだ。
校内のバレー部のスター桐島が退部するらしいという噂が金曜日の放課後に流れてから起こる人間模様を描いていく。その日の朝、桐島は県の選抜に選ばれるということが全校朝礼で発表されていた。それなのにという驚きだ。映画は、その金曜日のエピソードを、主要人物の視点を変えて何度も反復するスタイルで描きはじめスタートする。。。。

オムニバス形式のような映画なので、なかなかストーリーを説明するのは難しい。
ユニークで個性豊かな登場人物に注目したい。

主人公はいるようでいない。
あえて言えば、ホラー映画オタクの映画部部長であろうか。映画が一次審査を通過したので、全校朝礼で発表される。でも注目している生徒たちは少ない。クラスメイトの威勢のいい女子にも相手にされない。むしろバカにされている。
彼女たちの注目を集めているのはイケメンの男たちだ。桐島もその1人だ。
(桐島は出てこない。でも親友の男はカッコマン、彼女は今風超美形、だとすると出てこなくても色男と想像できるであろう)

オタク映画部長ははバドミントンの女子部員にほんのりとした思いを持っている。
亡き姉の後を追うように練習に打ち込むバドミントンの女子部員はメジャー組の女の子と普段つきあっている。
映画好きの部長がホラー映画を見に行き、エンディングロールが終わって明るくなった客席に彼女を見つける。同じ中学校から上がった2人は、以前は会話を交わすことがあったが、すっかりご無沙汰になっていた。

映画館をでて椅子に座って、映画の話をする。映画オタクの部長はタランティーノで何が好きか?とかホラー映画の話をしたりする。でもそれ以上ではない。それ以来今までとちがう意識を持つようになるが、彼女にはひっそりと公表せずに付き合っている男が居るのだ。

長身の帰宅部のイケメン男、桐島の親友だ。
元々野球部に所属しているが、練習には出ない。それでも実力があるので試合に出てほしいとキャプテンから誘われる。
授業が終わると、バスケットやりながら帰宅部の仲間と遊ぶ。桐島が部活が終わるのを待って、一緒に学校から帰る。積極的な女の子が彼に近寄るが、席がすぐ後ろの吹奏部の部長が強い恋心を抱く。

そんな彼に恋心を抱く吹奏楽部の優等生部長がいる。
校舎屋上の棟屋部分でいつもサックスを吹く。1人で淡々と吹いている。
そこからは帰宅部の男が見える。彼を常に意識しながら演奏している。
叶うはずもない恋と知りながらあきらめ切れない。
映画部がゾンビ映画を撮ろうとして、場所を換わってもらおうとするが、好きな男が見えなくなるので代わってあげない。
割と意地の悪い女部長である。


そのほかにも夏の大会が終わっても辞めないで練習に精を出す坊主頭の三年生の野球部キャプテン、退部した桐島の穴を埋めるべくシゴキに耐えるリベロのバレー部員、
正統派のモデルのような美形の桐島の彼女などなど。。。



自分は都立高校出身で共学だった。当時46人のクラスに男が32人、女性が14人いた。
当時進学成績を意識して、男子の構成比が高い構図になっていた。
半分づつくらいで仲良く男女が遊ぶようなクラスとは大違いだ。それでも、この映画に映る登場人物にダブる男女がいた。かっこいい奴、悪い奴両方だ。30年以上前の記憶がよみがえってくる。
はかない恋の思いも記憶に浮かび上がってきた。(失敗ばっかりだったなあ)


最近の高校事情を表わす云々という人もいるが、自分から見ると30年以上前の昔も今も変わらない気がする。どんな高校でも自分をメジャーと意識して肩で風きって歩く男女がいるもんだ。自分より10年上の世代でも同じだろう。高校の格差社会を顕著に表しているというが、地味に生きる連中とメジャーな連中とは明らかにわかれていた。
そして同じクラスメートでも親しくなければまったくお互いに眼中にない。
それ自体は昔も今も同じだろう。そんな不思議な高校時代の日常が浮き上がってきた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「海燕ホテル・ブルー」 若松孝二

2013-02-06 20:51:35 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「海燕ホテル・ブルー」は昨年残念ながら亡くなった若松孝二監督の作品だ。

刑務所出所間もない男をめぐる愛憎物語だ。一人の女・梨花をめぐる3人の男の話ともいえ、この女が鍵となる。扮する片山瞳は超美人ではないが魅力的だ。彼女の起用がいかにも若松監督らしい。
映画に流れるムードは、どちらかというと70年代のATGの匂いがする雰囲気だ。
このけだるさがいい。

主人公が日本海に面した冬の刑務所を出所したところから話は始まる。
主人公幸男(地曵豪)は現金輸送車襲撃に失敗し、捕らえられて懲役7年の刑を受けた。現金輸送車襲撃は3人で計画していた。首謀者の1人は女と共に決行前に逃亡した。2人でやろうとしたが、もう一人は現場で逃走した。主人公は他の人物をばらさずに罪をかぶって刑に服した。

出所後、現場を逃走した男のところへ行く。逃走した男は懸命に土下座して謝ろうとする。女房と子供がいるのを見て勘弁したが、もう一人の居場所をはかせて伊豆大島に向かう。
現金強奪計画の立案者なのに当日姿を見せなかった洋次(廣末哲万)に恨みを晴らすべく、主人公は海燕ホテルのバー・ブルーに現れる。そこには一人の女梨花(片山瞳)がいた。主人公を見て洋次もうろたえた。幸男は刑務所生活のむごさを話しながら、洋次を脅迫する。女も自分のものにしようとする。洋次は解決金500万を支払うことで勘弁してくれと言ってきた。しかし、金を用意して支払う時に洋次は幸男に刃物を振るおうとする。抵抗した幸男は逆に洋次を殺してしまい島に埋めた。一部始終、女は黙ったままだった。

結局このバーとその女・梨花を引き継ぐことになる。警官も前の店主の不在を怪しむが問われない。そこに、刑務所で同房にいた正和(井浦新)が出所し、海燕ホテルに現れる。正和はその後の状況を説明し、刑務所で計画した現金輸送車強奪を実行しようと幸男に迫る。でも今の女と暮らす現状を捨てる気はないが。。。。


ピンク映画の巨匠だった若松孝二監督らしい映画だ。
現代の映像なんだけど、70年代あたりの匂いを強く感じさせる。原作が割としっかりつくられているのであろう。主人公や逃亡した2人だけでなく、刑務所内の同房にいた2人にもそれなりのキャラクターを与える。また現地警察の駐在さんも事件に絡んでくる。そして小さな伏線をたくさん話に織り込み軽いサスペンスとしている。

この映画のキーになる女主人公にはセリフを与えない。謎の女ということにしている。最初は普通の女性なんだけど、途中から幻影の女にもとれる存在にしている。「幻想ホラー」と言ってもいい溝口健二監督の「雨月物語」で京マチ子が演じていた魔性の女のような存在だ。彼女は、バーでまわりに関心をもたない顔をしてタバコを吸うか、彼女のボリューム感のある裸体を見せるかどちらかの演技なんだけど存在感がある。長身のファッションモデルというと、胸がぺッタンコの子が多いが片山瞳はなかなか迫力あるバディだ。
「三島由紀夫」の映画の時は男の匂いが強すぎただけにこんな彼女と映画を撮って若松孝二監督も楽しんで作っていたんじゃないかな?監督は亡くなる直前になって急に多作になっている。人知を超えた何かあるのであろうか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「愛と誠」 妻夫木聡&武井咲

2012-11-18 17:25:15 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「愛と誠」は梶原一騎原作のコミックの映画化である。
三池監督が自分流でミュージカル調というより歌謡ショウというべきか独特の映画にまとめる。あまりのお遊びにひたすら笑うしかない。

自分はリアルでこの漫画を読んだくちだ。スポーツ根性一筋だった梶原一騎の恋愛モノ「愛と誠」は、不良からインテリまで誰もが読んでいた。失踪した高原由紀が突如現れるくらいあたりが人気のピークだったかもしれない。そのあとは若干だれる。
映画化が決まり、当時人気絶頂だった西城秀樹が主演するという話には誰もが驚いた。早乙女愛役がオーディションで決まり、まさにその役の名前でデビューした。自分と同世代だったため、彼女の写真を見て凄くときめいた記憶がある。その制服の下に凄まじいナイスバディが隠されていたことをその時は知らなかった。知った後お世話?になった同世代男子は少なくないだろう。

今年映画ポスターの横を通り「愛と誠」のポスターを見てビックリした。何で今さらという感じである。武井咲ちゃんはかわいいけど、映画館まで入ってみるほどでもない。そんな気分だった。
dvdになって初めてみて、はじけそうな能天気ぶりにちょっと仰天しています。

昭和47年の設定である。
名門青葉台学園に通う早乙女愛(武井咲)は名門早乙女財閥の御令嬢で、容姿端麗学力優秀の高校3年生だった。彼女には小さいときに助けてもらった恩人がいた。それをアニメで映す。
別荘のあるスキー場で、一人スキーを楽しんでいた愛が急傾斜を滑っていて止まらなくなる。そこを助けたのが一人の少年である。地元の少年は身体を張って彼女を助けたが、彼女のスキーでおでこに大きな傷を負うのだ。しかし、少年は自分の名前を名乗らず「このことは誰にも言うな」とくぎを刺す。

愛が街を徘徊していると、一人の青年が不良グループとケンカしている場面に会う。よく見ていると彼はおでこに傷を負っている。助けてくれた青年ではないか。その青年は大賀誠(妻夫木聡)という。少年院入りになるところを、愛の父親(市村正親)が裏から手をまわす。愛は父に懇願して青葉台学園に編入させる。

何でと思いながらも誠は青葉台学園に入学する。際立って不良のいで立ちに誰もが驚く。しかもケンカ腕自慢の教員にパンチを見舞い負傷させる。学校側は驚くが、愛は懸命にかばう。その愛を愛している青年がいた。岩清水弘である。「君のためなら死ねる」と愛に告白する岩清水だ。
しかし、誠の暴れぶりは止まらない。ヤクザといざこざを起こし、結局悪の巣と言われる花園実業に転校することになる。学園内は荒れ果てている。授業を聞こうとする奴なんて誰もいない。誠はいきなり不良グループに目をつけられ、つばぜり合いがはじまる。また学園内には裏番がいるという。ガム子(安藤サクラ)という不良番長が誠にヤキを入れようとするが、返り討ちにあう。それを聞き一気に不良たちがざわめく。誠は校内で一人の女性高原由紀(大野いと)と出会う。不良グループの面々と若干イメージの違う高原由紀は誠に近づく。

一方愛は転校した誠が心配で仕方がない。授業を受けても胸騒ぎがする。それまでも、誠の生活費を援助するためいかがわしい喫茶店でバイトを始めていた愛は花園実業へ転校するのであるが。。。


クレージー映画も若大将映画もかなりの歌を映画に織り込む。タイガースをはじめとしたGS映画や舟木一夫の映画も同様だ。タッチはその筋だ。でもここでは登場人物が一曲づつ歌っている。誰もが知っている歌だ。いきなり主人公誠を演じる妻夫木聡が西城秀樹を歌う。その昔の映画化で第一作目の誠役だった。不良グループとの動きがミュージカルの動きを感じさせる。なんじゃこりゃといきなり観客を驚かす。


一番よかったのが、武井咲ちゃんの歌う「あの素晴らしい愛をもう一度」
一回見た後、もう一度見直してみたけどやっぱり背筋がぞくぞくする。抜群にいい!
初期のアグネスチャンを彷彿させるしぐさで歌い始める。うまくはないがやさしさに満ちあふれた感じだ。映画「パッチギ」の時もこの歌いいなあと思ったけど、今回の方がはるかにいい。咲ちゃんは昭和美少女という早乙女愛というキャラにぴったりだ。40代以上オジサン達がときめくんじゃないかな?
子供のころフォーククルセイダース「帰ってきたヨッパライ」が大流行した。そのあとの2作目が注目されたが、朝鮮の歌「イムジン河」はあっさり発売禁止。映画「パッチギ」ではその「イムジン河」とともに「あの素晴らしい愛をもう一度」が流れる。これは北山修と加藤和彦名義で出された曲、フォークギターに合わせたやさしい歌声に魅了された。今さらながら故加藤和彦の才能を惜しむ。


岩清水弘のイメージが若干原作と違う。端正な秀才と言うイメージを当時われわれは思っていた。岩清水に似ていると自慢するようなメガネ野郎が割といた気がする。この映画ではドンくさい。元々の劇画の方がスマートだったんじゃないかな。でもそれはあえて三池監督がそうしたんじゃないかと思う。「空に太陽がある限り」は芸能人運動会の帝王にしきのあきらのヒットソング、かなりバタ臭いのが笑える。


岩清水よりももっとイメージが違うのが高原由紀だ。お嬢さんの早乙女愛と対をなす美女で、もっと精悍なイメージがあった。前の映画で多岐川由美がやったが、原作からするとイメージにぴったりだった。ここでは同じ裏番長であるが、イメージを変えている。そして藤圭子流「夢は夜ひらく」を歌う悲しい女としている。アニメで彼女の生い立ちを描くのはタランチーノの「キルビル」の手法。これはなかなか面白い。


よくやったと思うのが伊原剛志だ。彼は40過ぎて高校生を演じている。これもすごいなあ。
ジョントラボルタ主演の「グリース」という青春映画があった。あの映画でも30歳のオリビアニュートンジョンや34歳のストッカードチャ二ングが高校生を演じていた。それもすごいが、伊原はもう50近いんじゃないかな?この強引なやり方がハマっている感じだ。「狼少年ケン」は子供のころ10チャンネルでやっていた。ストーリーはすっかり忘れたが、あの歌は耳についてはなれない。抜群の選曲だ。


早乙女愛の両親に市村正親と一青窈をもってきた。これも笑える。
2人のコミカルな動きは予測不能な滑稽な動きだ。

ほとんどが素人の歌である。全然うまくない。カラオケ自慢の腕にも達していない。
でも何かしっくりくるのはどうしてなんだろう。
久々の歌謡ショー映画は十分楽しめた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「黄金を抱いて翔べ」 妻夫木聡&チャンミン

2012-11-03 17:19:39 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「黄金を抱いて翔べ」を劇場で見た。
井筒和幸監督の新作はアクションのキレがいいという評判だ。思わず劇場に足を運ぶ。
高村薫の小説を井筒監督が映画化した。銀行泥棒の話だが、日本の暗部を的確に映像化していて面白い。


大阪が舞台だ。
いきなり朝鮮人の2人が会話する場面がでてくる。兄と思しき男を弟が撃つシーンだ。
久しぶりに故郷の地を訪れた幸田弘之(妻夫木聡)は、学生時代からの友人で運送会社のトラック運転手をする北川浩二(浅野忠信)に、しばらく住むための部屋と、仕事先の倉庫会社を用意された。北川は、過激派や犯罪者相手の調達屋などをしてきた幸田に、大手銀行本店地下にある240億円の金塊強奪計画を持ちかけたのだ。


幸田は、妻子と共に住む北川のマンションで、銀行担当システムエンジニアの野田(桐谷健太)を紹介される。野田には3000万を超える借金があった。3人で密かに計画を練るうち、野田の知り合いで、"ジイちゃん"と呼ばれる斉藤順三(西田敏行)に声をかける。西区の公園掃除係だが、元エレベーター技師で、目的の銀行内部にも通じている。かつては労働運動に関わっていた過去もあるという。


そして、爆弾のエキスパートが欲しいという北川の要望に応え、幸田が目をつけたのは、以前、東京で遭遇したこともある青年チョウ・リョファン(チャンミン)豆腐屋でアルバイトをしている自称・大学院留学生の彼は、元・北朝鮮のスパイという裏の顔を持っていた。

今は北朝鮮秘密組織に裏切り者として追われている。しかも祖国の命令で自分を狙ってきた実の兄を殺したばかりだった。それが冒頭のシーンだ。幸田は、チョウのことを"モモ"という名で呼んだ。さらに、北川の弟・春樹(溝端淳平)が計画を知ってしまう。北川はギャンブル依存症で未熟な弟に不安を抱えつつも、仕方なく彼をメンバーに加える。こうして6人の男たちによる大胆不敵な計画が幕を開けたが。。。

猥雑な町大阪と銀行泥棒の話は相性がいい。近代的な部分といかにも大阪らしい裏筋の部分の両方をバックにロケする。大阪って東京と比較するとワルが潜んで暮らしやすい気がする。朝鮮系の人たちが多く住む大阪ならではのストーリーで、チャンミンの使い方がうまい。それぞれの面々が裏街道まっしぐらのプロフィルだ。労働運動の闘士で体制に転向した男や過激派に常に接していた男、北朝鮮のスパイなど常に裏筋に接した男ばかりだ。妻夫木聡もチャンミンもケンカが強い。裏の男たち相手の立ち回りが一筋縄でない。そこがおもしろい。浅野忠信のワルのリーダーぶりもなかなかだ。

井筒監督特有の暴力描写も加減良く表現されている。裏ギャンブルにかかわるヤクザや北朝鮮のインテリジェンス組織の男たちの描き方はうまいし、顔立ちがそれにあった俳優を選んでいる。一般の大阪の住民の描き方もいかにも大阪住民の匂いが出ていてさすが大阪を知り尽くしている井筒という感じもする。パッチギ2みたいに思想が強いと嫌味が出るがここでは抑えられている。
桐谷健太演じるサラリーマンはいかにも大阪のいい加減な男。大阪の遊び人らしくてうまい。「麒麟の翼」に続けてでてきた鶴見辰吾が北朝鮮の秘密組織の男を演じる。性格俳優の道をうまく歩んでいるのがよくわかる。いい感じだ。


ただ、細かい所をピックアップすると、違うんじゃないかな?という部分は多々あった。特に核心の銀行泥棒部分はドキドキさせられたが、捕まってもおかしくないんじゃないかなあという場面がいくつか散見できた。緩慢な感じがする部分もあった。
でも日本のアクションサスペンス映画としては最上級のレベルではないかな?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

麒麟の翼  阿部寛

2012-10-07 09:25:23 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「麒麟の翼」は今年公開された東野圭吾原作のミステリーの映画化だ。
原作は読んでいない。
阿部寛の安定感ある演技がよく、傑作というわけではないが飽きずに見ていられる。

東京・日本橋で男性が殺害される事件が発生。
被害者はカネセキ金属の製造本部長である青柳武明(中井貴一)だった。腹部を刺されたまま歩き続けた後に、日本橋の翼のある麒麟像の下で力尽きていた。

同時に一人の青年を映す。八島冬樹(三浦貴大)は恋人に動揺しながら日本橋付近から電話していた。そんなときに警察から職務質問される。うろたえて現場から逃亡しようとしたところを車に轢かれて意識不明の重体となった。

報せを聞いた八島の恋人、中原香織(新垣結衣)は、彼が殺人事件の容疑者となっていることを知る。そして、無実を訴える。

この難事件の捜査にあたるのは、日本橋署の刑事、加賀恭一郎(阿部寛)だ。
警視庁捜査一課の若手(溝端淳平)の調べで八島は以前殺された青柳の会社で派遣社員として勤めていたことがわかる。しかも、仕事中にけがをしたが労災として処理していないようだ。それ自体が青柳の責任ということになり、殺された青柳に一気に責任が追いかぶさり、事件は労災絡みの殺人ということになりそうだった。しかし、念入りな聞き込みをする加賀刑事は別の線を読んでいたが。。。

当初の30分強で犯人が絞られていく様相となるが、そんな単純にはいかない。伏線を張りながらも被害者、容疑者それぞれの家族関係から話を広げて結論に持っていく。話自体は面白い。
洋画で観客に与える事実を最小限にして途中から誰かの独白で話をあらわにするパターンがある。その場合には途中まで何が何だかよくわからない時もある。ここでは少しづつ事実をあらわにして、丁寧に話を持っていくのでわかりやすい。
阿部寛はいつもながらうまい。昔ただのモデルだったとは誰にも思わせないうまさがある。
阿部の出ている映画にはずれはない。

中井貴一もいい。主役をつとめることもあるが、どちらかというと脇役が多くなった。正統派二枚目だけに逆にその方がいいのかもしれない。だだ単に殺されるだけでない役をうまくこなしたと思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

天地明察  岡田准一

2012-09-29 20:50:07 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「天地明察」を劇場でみた。

予告編をだいぶ前からやっていた。何か魅かれるところがあった。引き寄せられるように映画を見た。非常にさわやかで爽快な印象を持った。映画館を出る時、こんなすがすがしい気分になることも珍しい。


恥ずかしながら渋川春海(安井算哲)という存在を知らなかった。大学受験は私立用で世界史、国立用で加えて政治経済だった。日本史は苦手の古文資料が多くやる気にならなかった。3年生で学んだが記憶にほとんどない。高校生の娘の教科書を広げると、渋川春海(安井算哲)の名前がある。改暦のことも書いてある。日本史を受験科目にした人はよく知っているかもしれない。重要人物である数学者関孝和は日本数学界のルーツのような人なので知っていた。数学史の本によく出てくる。彼が幾何の問題を解いた図面は何度も見たことがある。
実在の歴史上の人物を取り上げながら、それぞれの個性を生かしつつ、誰が見てもすがすがしい映画をつくる滝田監督の手腕に「おくりびと」に引き続き感心した。

江戸時代、4代将軍家綱のころの話だ。
安井算哲(岡田准一)は幕府お抱えの碁打ちの家系であった。星の観測にも興味を持っていた。反抗精神も強く、算哲は形ばかりの勝負となった囲碁に次第に疑問を抱き、別の家元である本因坊道策(横山裕)と真剣勝負を将軍(染谷将太)の前で打とうとして説教を受けた。そんな安井算哲を水戸家の徳川光圀(中井貴一)や将軍・徳川家綱の後見人会津藩主保科正之(松本幸四郎)はかわいがっていた。
また、算哲は算術にも関心を持ち、神社に奉納された絵馬に書いてある算術の問題(算額)を解くのを楽しんでいた。ある時、その絵馬の問題を鋭く解く男がいるのに気付いた。関孝和(市川猿之助)である。彼と知り合うにはどうすればいいと思い、算術の塾を訪れた。そこには塾頭とその妹で算術を解く神社に行儀見習いに通うえん(宮崎あおい)がいた。
そんな数理能力に優れる算哲を、保科正之(松本幸四郎)は暦の誤りを正す任に抜擢する。日本は中国・唐の時代の宣明暦を800年にわたり使ってきた。しかし、2日ほどずれが生じてきたのだ。中国には元の時代および明の時代に作られた暦もあった。安井算哲は元の時代の授時暦が正しいのではないかと推論を立てていた。しかし、暦は京都にいる朝廷の公家が司っていた。そこに幕府が口を出すとなると、朝廷の聖域への越権行為になるという問題をはらんでいた。
まずは新しい暦を作るというこの計画に先立ち、全国で星や太陽を観測するという作業となる。建部伝内(笹野高史)、伊藤重孝(岸部一徳)とともに長い旅に出発するが。。。


ロマンのある話だ。
豊臣一族絶滅からもずいぶんと年数を重ねているので世相も安定している時期だったのであろう。
文化学術にも目が向けられるようになっている時代だ。関孝和、安井算哲と役者がそろった時代なのだ。
朝廷が司どっている聖域に挑戦するために、3つの暦の比較で勝負をするという発想がすごい。

相手を説得するには何はともあれ、自分たちの正統性を示すための証拠を用意するというのはビジネスの世界でも同じだ。
数理的な証拠を見せ付けれると相手はウンといわざるを得ない。

岡田准一は主演の回数も増えて安定した演技。日本を代表する役者たちを相手にもまったく引けをとらない。

印象的なのは関孝和を演じた市川猿之助である。由緒ある名前を張るだけあって、力強い演技である。自分が持つ数学の天才のイメージはどちらかというともう少しボーっとした奴が多い。ここまでアグレッシブかな?という気がするが、このストーリーの流れでは当然関孝和はこのくらいのパワーがあってしかるべきだろう。一般に言われているより新しい暦を作るにあたっての関孝和の貢献度を高くしている。

本作品HPの解説を読むと藤原正彦の話が出ている。
「彼(関孝和)は授時暦も学んでいましたが、算哲と同じように改暦を目指していたかどうかは、謎です。藤原正彦著「天才の栄光と挫折 数学者列伝」の中で、ライバルの算哲が改暦をなしてから、関の業績がまるでないらしいとの話が出ています。」
藤原正彦は「国家の品格」の作者だが、彼の言っていることがいい加減というのは有名だ。
「国家の品格」にある経済学批判に関しても、実際にその本を読まずに感覚で批判しているのは明らかだ。はっきりいって超いい加減な学者の言うことだ。
安井算哲と関孝和が実際に接しているのであれば、この映画のような話が存在したと思うのが自然だろう。

朝廷には面倒な公家がいる。市川染五郎演じる公家が世俗の人たちだけでなく幕府の役人をバカにするような口調を言う。いかにもいやみったらしい。妹である松たか子は、お嬢さんの域を超えて、まさに世間の底辺で生きる女性を演じるのもうまくなったが染五郎はまだまだお坊ちゃんが抜けきれないのか、こういう役しか回らない。オヤジの松本幸四郎は貫禄があっていい感じだ。「天を相手に真剣勝負をしろ」と主人公に命令する場面はかっこいい。宮崎あおいは嫁さんにしたらいいなあと思わせる姿を見せる。

水戸光圀を中井貴一が演じるのも悪くない。テレビで見る黄門様と違い、いわゆる日本史で言われている水戸光圀の姿だ。寛容性のある光圀がワインをたしなんだり、中華料理を堪能する姿を映すのはおもしろい。そういえば日本で最初にラーメンを食べたのは水戸光圀といわれているからね。将軍役の顔を見て、見たことあるんだけど誰だったかな?としばらく考えた。そうだ。「ヒミズ」の主演のお兄ちゃんだと解るまで時間がかかった。染谷将太はこういうキャラがお似合いだ。
脇を固める岸部一徳と笹野高史は実にうまい。この2人が先頭になって、入場行進するかのごとく足を高く上げて歩く姿が滑稽だ。 そういう映画をより崇高なものにしているのは久石譲の音楽だ。予告編のときから心に残るテーマミュージックであった。天体を扱うというスケールの大きさを感じさせる。

娯楽として楽しめた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロボジー ミッキーカーチス

2012-09-09 05:57:35 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「ロボジー」は「スウィングガールズ」「ウォーターボーイズ」の矢口史靖監督による今年初め公開のコメディ作品だ。

映画の宣伝ポスターをみて、ロボットという文字に一瞬近未来物という連想が入った。ポスターにはロボットの顔しかなかったからだ。むしろハイテク映画の印象を持つ。でも実際にはまったく違ったテイストだった。要は着ぐるみのように中に老人が入り込むお笑い物だ。これは面白い。
映画を見ていて、次どうなるんだろうなあと思わせ、飽きさせない。主人公は五十嵐信次郎ということだが、実は往年のロカビリーの帝王で音楽プロデューサーだったミッキーカーチスの本名だ。彼はスットボケた老人を演じさせたら天下一品だ。その演技と木村電器社員3人の取り合わせが実にうまく楽しいコメディになっている。

家電メーカー木村電器の社員小林(濱田岳)、太田(川合正悟)、長井(川島潤哉)は「長太短」のヘッポコ3人組だ。木村社長(小野武彦)から流行の二足歩行ロボット開発を命じられる。近く開催されるロボット博での企業広告が目的だった。しかし、彼らは家電の知識はあってもロボット開発の知識などなかった。ロボット博まであと1週間という時期になって、制作途中のロボット「ニュー潮風」が勝手に動き出し、窓から階下に転落して大破してしまう。
そこで思いついたのはロボットの中に人間を入れてごまかす計画。ロボットの外装にぴったり収まる人間を探すため、チラシで着ぐるみの募集をした。ところが合格採用した男には金属アレルギーがあった。そして独り暮らしの老人73歳の鈴木重光(五十嵐信次郎)が選ばれる。
ロボット博では各社から様々なロボットが出品されていた。そんな中「ニュー潮風」が登場、木村電器の社員の期待とは反対にロボットは様々なパフォーマンスをしてしまう。ロボットオタクの女子学生・葉子(吉高由里子)はローカルテレビのバイトで来ていたが、撮影時の混乱で事故に巻き込まれそうになる。そこを助けたのがロボット「ニュー潮風」だ。マスコミに報道されて一気に有名になるが。。。。

先週ヤザワのコンサートの感想を書いたら、ものすごいアクセスがあった。そのあとに「ロボジー」を見て、アップしようとしたら、ミッキーカーチスと矢沢永吉の関係を思い出し、ヤザワファンに怒られるのでは?と妙に気遅れしてしまった。40年前フジテレビの「リブヤング」を見ていた音楽プロデューサーミッキーカーチスは、キャロルの演奏を一目見て気に入り彼らをデビューさせる。当時ミッキーカーチスの名は知られていたから、メンバーは大喜びであった。しかし、後年その契約内容があまりにもメンバーに不利な内容で問題となる。コンサートでいう40年というのはミッキーカーチスによってはじめられた40年だったのだ。

そんな彼がこの映画に登場するとは全く知らなかった。

反則を犯した主人公がひやひやもので諸事を切り抜けるパターンはたまにある。当然そのドラマはスリルと笑い両方を盛り込むことができる。この反則が「殺人」とかであれば、もっと暗い。いずれどうやってばれるかともっとひやひやするが、これはそんな大それたものではない。それでも結末をどうもってくるのか、意外に予測が立たないものだ。目が離せない。そしてスマートな展開に持っていく。実にうまい。

ここでは吉高由里子の使い方がうまかったと思う。途中から彼女の動きが映画のストーリーのキーポイントになる。ロボット工学の講義の話や本気で木村電器の3人がロボットを作ろうとする姿にはニヤニヤさせられた。
楽しい作品である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする