映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない

2010-09-29 21:08:14 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
「ブラック会社に勤めているが、もう俺は限界かもしれない。」は深夜残業の連続の人使いの荒い大手の下請けIT会社に勤めた主人公の苦労話が中心である。傑作だとか、感動したという映画ではないが、すんなりと映画にとけこめ、飽きずに最後まで観れた。考えさせられるところもある。いやな奴を演じた品川祐がうまい。



高校中退、26歳ニートの小池徹平が森本レオが経営するIT会社に入社した。母の死をきっかけに情報処理の資格を取得し、必死に就職活動をする。中卒のハンデは大きく、不採用を繰り返した後、ようやく採用にこぎつけたのであった。
しかし、入社初日からサービス残業は当たり前、後輩いじめに終始するリーダーこと品川祐にぐうたらな同僚、精神状態不安定の先輩、無関心な社長…。何度もくじけそうになりながらも、ついに限界が訪れるが。。。。。



ブラック会社と言っているが、この程度であれば現実にも多々あるかもしれない。中国やインドの人たちは普通にこなすであろう。今や日本社会がこの程度をブラックと言ってしまうところに今後の新興国の成長に対する日本の凋落が見えてきて複雑な気持ちを感じる。
そもそも今までの日本経済を支えてきたのは、大企業の下請けの中小企業である。大企業であれば、労働基準局の査察を恐れて、多少は気を遣うようになってきたが、中小ではそんなのは無理であろう。下請けの下請けであれば納期に間に合わせないと仕事が一気になくなる。

日本経済の凋落の主原因の一つに、労働時間が諸外国の圧力によって以前より大幅に短くなったことがあるとする一橋大の林教授のような学説もある。しかし、時間管理がしやすいブルーカラーの労働時間が減り、管理しづらい知的蟹工船とも言われるIT産業の従業員の労働時間は増えているともいわれる。そう考えると、資本主義の創成期から高度成長時代にかけての様相とは大きく違っている。複雑だ。

自分も以前は休みも少なく、夜も遅かった。今は相当楽になった。
それ自体は非常にいいことだと思う。企業の成長もいいが、体がもたない。
社員のタレこみを恐れる人事の姿勢がびくびくもので助けられている。

厚生労働省の長妻大臣が替えられた。次の大臣は官僚たちを土日休ませると言っているようだ。長妻大臣は土日も部下をこき使っていたようだ。下馬評の高かった彼も管理者失格のレッテルをはられた。いつも思うことだが、労基署は霞が関の役人をどう管理しているのかと?一般会社の残業には異様に目を光らせているくせに身内はどうしているのかな?と思っていた。
どうも自分のところには違っていたようだ。
これで言うこととやることとのギャップが少なくなって役人さんもほっとしているだろう。

映画自体はそんな日常のことを考え直すいいきっかけにもなった。
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小室直樹  死す

2010-09-28 20:03:31 | 偉人、私の履歴書
小室直樹博士が亡くなった。というニュースが入った。
すでに4日に亡くなっていたようだ。

ここ最近の訃報では一番不思議な気持ちになった。
なぜなら、彼のことを学生時代より約30年追いかけていたからである。

何気なく書店でピックアップしたのが、「ソビエト帝国の崩壊」であった。
この本を読んで感銘を受けた。当時はまだ東西冷戦が残る時、ソビエトの存在が脅威に感じられていた。東欧諸国へにらみを利かせると同時に、アフガニスタン侵攻で世界を恐れさせた時代のソビエトの崩壊を予告する本の著述にはどきどきさせられた。

その後も「新戦争論」における本質的国連論、「中国」の特殊性と資本主義に向かう中国の矛盾、「超常識の方法」での数学の論理の話や山本七平との共著、田中角栄弁護論など彼の本が出ると真っ先に読んだ。いずれも感銘を受けた。
「危機の構造」における急性アノミーの話は今も影響を受ける。

彼の本を読むと、彼が学んだ大勢の碩学の話が出てくる。
マックスウェーバー研究の大塚久雄、戦後日本の政治学の重鎮丸山真男、経済学のサミュエルソンなど大勢の碩学の存在を知ったのも彼のおかげだ。小室直樹がいなかったら彼らの本を読もうとはしなかったと思う。

小室直樹に教えを受けたことはたくさんある。
その中で一番印象に残る話はヒトラーに関することだ。

ヒトラーが経済政策の天才であることを教えてくれたのは、小室直樹が初めてである。マッカーサー率いる進駐軍が道筋をつくった戦後教育では、ナチスが全否定されていたのは言うまでもない。実際ナチスの迫害についてはどうにもかばうところはない。
でも子供ながらに、あの賢いドイツ人が何でヒトラーを支持していたのかがわからなかった。第一次世界大戦後有名なハイパーインフレに悩まされ、経済的に疲弊していたドイツに対して、ヒトラーはシャハト博士とともに経済の処方箋を与えた。そしてなんと600万人以上いた失業者を一気にゼロにしてしまうのである。日本の社会科の教科書で、アメリカの大恐慌を救ったルーズベルト大統領の話が出るが、実際にはそれほど景気回復が達成されたわけではない。制限速度のない高速道路「アウトバーン」の建設や、国民車「ワーゲン」の振興、1936年のベルリンオリンピックでの巨大競技場の建設など次々に政策を実施して失業者をなくしたからヒトラーが国民に支持されたということを小室博士の本で知った。

小室直樹のことを語ろうとするとつきない。

小室がゼミを主宰すると、昼飯を食べずに一気に勉強したそうだ。理由は単純
その方が頭がきれるということだった。確かに昼飯食うと眠くなるもんね。
そこではハードに勉強していたみたい。
彼の本は初期の一部の本を除いては、やさしく読者にわかるように難しい学問を噛み砕いている。本当に頭のいい人っていうのは、難しいことを難しく語るだけでなく、難しいことを誰でもわかるように説明できるものだと思った。

おそらくは印税がかなり入ったはずだが、貧乏暮らしをあえてしていたそうだ。テレビに出ると、あの独特の奇声でしゃべるから誰もが奇人だと思う。彼こそ本当の意味での勉強好きだと思う。テレビもない部屋にいたのに講談調の話題にもたけていた。

ああいう本音でもの語る人がいなくなるのは本当にさみしいと思う。
品川の家の書斎に彼の本が大量に置いてあり、今の家には「昭和天皇の悲劇」しかない。
そこでは「天皇戦犯論」に立ち向かう著述がされており、戦争に負けた後も君臨した天皇を奇跡としている。家からピックアップしてもう一度読み返していただけに今回は驚いた。

ご冥福を祈りたい
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座頭市  ビートたけし

2010-09-26 17:31:35 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
ビートたけしのつくった座頭市だ。個人的には彼の作品はあまり良いと思ったことがない。でもこれだけは別だ。オーソドックスな座頭市のストーリーの流れに乗って、たけし軍団を使ったコミカルな面やインド映画のような全員ダンスなど非常に楽しめる作品になっている。私は大好きだ。



盲目のあんま市ことビートたけしがある宿場町に到着した。その町はやくざの銀蔵一家に支配され町民たちは搾取されていた。脱藩した浪人こと浅野忠信も同じころこの町にたどりついた。自ら剣の実力を売り込み岸辺一徳率いる銀蔵一家の用心棒を勤めることになる。
市は賭場で遊び人ガダルカナル・タカと出会い、それが縁でその叔母こと大楠道代の家にやっかいになる。さいころの音を見抜く市と遊び人は賭場の博打で勝ち、誘いに来た芸者姉妹と遊びに出るが、彼女たちは彼らから金を巻き上げようとしていた。それを察した市は二人を問い詰めると、幼少時に両親を何者かに殺害され親の仇を探して旅をしていると言う。そして一緒に行動を共にすることに。。。。

時代劇の構図は、主人公と最も強い相手との剣劇をメインにして、対決に至る前に主人公と相手役の活躍をそれぞれ見せてから最終場面に持ち込むというパターンである。勝新太郎主演の第一回では、その対決相手が天地茂であった。今回は浅野忠信である。ちょうどこのあたりから浅野の演技が少しづつうまくなってきたところで、相手としては十分だったと思われる。前哨戦のビートたけしの剣劇も冴えまくる。

黒沢明監督の時代劇でも、シリアスな剣劇にとどめないで、コメディ的な要素をかなり付け加えていたと思う。さすがに冗談が言える役ではないので、たけしは沈黙。その分ガダルカナル・タカにかなりお笑いの場面をやらせた。この柔らかみがよかったのだと思う。
石倉三郎はいつもながら滑稽な動きを見せる。岸辺一徳も悪くはないが、最近の方が冷徹な表情がうまくなっている印象だ。柄本明、樋浦勉など日本映画を代表する脇役が映画にスパイスをきかせる。



最後のダンスはこの後の作品であるが「スラムドックミリオネア」を思わせる。「スラムドック」も最終にインド映画特有のダンスを持ってきた。このタイミングが一緒である。この時代にあんな踊りなんて踊るわけないと思いながらも、お祭りで興がのったらおおらかにこんなことあるかもしれないなあと思った。
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サベイランス  ジェニファー リンチ

2010-09-23 13:26:56 | 映画(洋画 2006年以降主演男性)
「サベイランス」直訳すると「監視」である。鬼才デイヴィッド・リンチ監督の娘であるジェニファー・リンチ監督がつくったサスペンス・スリラーということで目にとまった。個人的にリンチ監督作品は必ず観るようにしている。でも期待以上の作品だった。
最近観た映画では実によくできた低予算映画である。傑作というと語弊があるかもしれない。むごい映像の中に計算された凄味を感じる作品だ。



いきなり殺人事件のシーンが映し出される。覆面をかぶった犯人が残虐にモーテルで殺人を犯す映像である。その直後地元の警察に場面が移る。FBIの捜査官の男女が、殺人事件の現場に居合わせた少女、若い女性、警官の3人の目撃者から事情聴取を開始する。その事実を画像で追っていく。少女は自分の母が新たに結婚する夫とともにドライブに出ていた。若い女性はボーイフレンドとともに麻薬浸りのまま事件に出くわした。警官は自分の地位を利用して、一般人から金を巻き上げようとしていた。そんな3人が路上で出くわす時をそれぞれ回想させ、捜査官が地元警察の人間と聞き出そうとしていたが。。。。



「連続猟奇殺人事件を追う二人のFBI捜査官が、目撃者の証言に翻弄されながら真相に迫る姿を描く。」という内容とジャケットその他に書いてある。黒沢明の映画「羅生門」の展開を思わせるとも書いてある。でも観てみるとその解説はちょっと違うなあと感じた。だってあの映画には結論はあってないようなもの。意外な形でも真実があるこの映画とはまったく意味合いが違う訳だから。。。
映画を追うごとにくりかえしドキッとさせられる。観ている人間の予想を外させる。若干デイヴィッドリンチ監督の匂いもあるが、私はむしろコーエン兄弟の作品を連想した。簡潔ながら、脚本の巧みさに意表を突かれ、なかなか見応えがあった。デイヴィッドリンチのファンよりも、コーエン兄弟のファンの方がこの作品をいいと思うかもしれない。両方好きな自分は度肝を抜かれた。



この作品ばかりはこれ以上書かない方がいいかもしれない。
途中までの画像はいかにもアメリカの恥部を映し出すような映像だ。悪徳警官のふるまいや麻薬中毒の連中のふるまいは、アメリカの田舎には行きたくないと思わせる映像だ。いつも思うが、なんでアメリカ映画ではこんなに警察が悪者にされるのであろうか?

それにしても途中から見せるどんでん返しは脚本の巧みさを感じる。
やはり傑作と言いなおすべきであろう。
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重力ピエロ  加瀬亮

2010-09-23 11:27:22 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
「重力ピエロ」は伊坂孝太郎の原作に基づくミステリー映画である。加瀬亮と岡田将生の主演二人の穏やかなムードに、落ち着いた仙台の街をうまく組み合わせて作り上げた傑作である。主演の二人が持つ独特のムードもよいが、彼らの両親を演じる小日向と鈴木京香の夫婦もいい味を出していて、ミステリーというよりも、上質の人間ドラマとなっている。



仙台市内に住む遺伝子を研究する大学院生・泉水こと加瀬亮と芸術的な才能を持つ2つ年下の弟・春こと岡田将生は、仲の良い普通の兄弟だ。二人が住む仙台市内で不審な連続放火事件が発生する。その現場には謎めいたグラフィックアートが残されていた。それを見て加瀬と岡田は犯人像を推理しようとしていた。
放火とグラフィックアートにどんな関係があるのか? 頭を悩ます加瀬は、大学院の友人から24年前の連続レイプ事件の鍵を握る男がこの地に戻ってきたことを聞く。この男は兄弟の家族と関係の深い男であったが。。。。

バランスのいい映画である。バックの音楽を静かに流しながら、セリフに重みを持たせる。ミステリーでありながらその匂いが強く出ていない。それぞれの性格描写に時間をかける。それでもミステリーの伏線をいくつか持たせながら、観ているものに犯人像の確信をもたせない。うまいと思う。
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パリより愛をこめて  ジョン・トラボルタ

2010-09-22 20:33:24 | 映画(洋画 2010年以降主演男性)
「パリより愛をこめて」はジョン・トラボルタとジョナサン・リス・マイヤーズの二人がフランス・パリを舞台に激しい銃撃戦やカー・アクションを繰り広げるリュックベッソン作品である。序盤よりテンポがよく、途中で緩急をつけながら90分を一気に駆け抜ける。アクションも完ぺきで非常にスリリングでよかった。

パリのアメリカ大使館員ジョナサン・リス・マイヤーズは、CIAの見習い捜査官として諜報活動に従事していた。在仏大使よりパリサミットのための警護を任され、一人の相棒と組むことになる。それがジョン・トラボルタだ。スキンヘッドの堅気でないいでたちで、口よりも先に銃を撃つ危険な男だ。いきなりパリの中国系マフィアのアジトに入って麻薬の裏組織を退治しにいく。銃も撃ったことのないジョナサンはとまどうが、相棒としてトラボルタにつき危険地域に入っていくが。。。。



原案リュック・ベッソン、監督ピエール・モレルというのは『TAXi』『96時間』の名コンビである。リュックベッソンは前作に引き続きアメリカ映画のスタージョントラボルタを花の都・パリで思いっきり走らせる。
ベテランと新米のコンビはポリス映画の定石だ。古くは黒沢映画「野良犬」の三船と志村、最近の洋画では「トレーニングデイ」のデンゼルワシントンとイーサンホンクのコンビなど、熟達者と未熟者に対比を見せるのが一つのパターンである。今回はスパイものともいえるが、過激で行動派なトラボルタにジョナサンをうまくからませる。どこまでも対称的でありながら息の合った二人の掛け合いは軽妙である。トラボルタはサブウェイ123での悪役がよくあってたが、ここでもその流れは変わらない。

いつもながらリュックベッソンは90分で映画をまとめる。この簡潔さは見事だ。贅肉をかなり取っているにもかかわらず、ストーリーにはかなりの起伏がある。脚本とアクションのからませ方はさすがである。しかも、パリの街を縦横無尽に使う。観光でメインの場所だけでなく、アジア人や中東の人たちがたむろう猥雑なエリアもとり混ぜるので今のパリの様子がよくわかる。それ自体でも楽しませてくれる。



映画を華かにさせる女優陣もなかなかよかった。ジョナサンの相手役の女性カシア・スムトゥニアクはなかなかよい。中東系の美女もトラボルタに絡んでくるがエキゾティックな美人だ。男性映画なのにそれだけに終わらせない色鮮やかな仕掛けも数多くあり、それもよかった。

リュックベッソン作品には外れがないことを再認識した。
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NINE

2010-09-21 05:47:05 | 映画(洋画:2006年以降主演女性)
超豪華の出演者なのに、なぜかロードショーは遠慮した。監督の前作「シカゴ」も正直合わない方なので、どうなのかと思っていた。それでもこの女優陣がどう活躍するのかは観てみたかった。でもやはりあわなかった。それに尽きる。演技力では現在トップクラスと個人的に評価するダニエルデイルイスは悪くないが、もうちょっとシリアスな作品の方が合う気がする。でもこれだけの美女に囲まれるっていうのは一度でいいから経験してみたいなあ!



イタリアが世界に誇る映画監督ことダニエル・デイ・ルイスが主人公だ。豊かなはずの想像力が突如として消え果てた彼は、新作の脚本を一行も書けずにいた。決まっているのは主演女優だけなのに、刻々と迫る撮影開始日。追い詰められた彼は、ついに新作の記者会見から逃げ出し、海辺のホテルに身を隠す。そこで人生に影響を与えた美しき女性たちの幻想に逃避し、現実世界では呼び出した浮気相手と妻に救いを求める主人公。しかし、プロデューサーに居場所を突き止められた彼は、映画撮影所に連れ戻されてしまうが。。。。

いずれの女性も素晴らしい。オスカー男優賞2度とった主人公にぶつけるオスカー女優たちはいずれも貫禄のある美しい女性たちだ。二コール、パネロぺともゴージャスで、地元イタリアで貫禄を見せるソフィアローレンには敬服する。ケイトハドソンが激しい曲で踊りまくるのがいい。「あのころペニーレイン」のキュートさから大人に脱却したのを映画ファンに印象付ける意味があるかもしれない。

でも全般は凡長かな?
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ウディアレンの夢と犯罪  カサンドラズ・ドリーム

2010-09-20 16:37:33 | 映画(洋画 2006年以降主演男性)
ウディアレン監督の日本での最新作。「マッチポイント」、「タロットカード殺人事件」に続くロンドンロケミステリーの三作目である。「それでも恋するバルセロナ」よりは前に出来た作品だ。ユアン・マクレガーとコリンファレルの人気男優を主演にしてウディタッチのミステリーを楽しんでみた。可もなく不可もなくといった感じだ。



ロンドンに暮らす長男ユアン・マクレガーは、父親が営むレストランで働きながら、カリフォルニアのホテル事業に投資する夢を描いていた。自動車修理工の弟コリン・ファレルは、カードやドックレースにのめりこむギャンブル好きだ。
この兄弟が、格安の6000ポンドで売りに出されていた小型クルーザーをローンで共同購入する。コリンがドッグレースで大穴を当てた犬の名にちなんで"カサンドラズ・ドリーム号"と名付けた。
ところがコリンがギャンブル好きが行き過ぎ、危険なポーカー勝負に手を出し、ヤミ金相手に9万ポンドもの借金をこしらえてしまったのだ。途方に暮れるコリンと話を聞いたユアンだった。そんな時、カリフォルニアや中国で事業を行っている伯父のトム・ウィルキンソンが、家族と会うためにやってきた。一族きっての成功者である伯父ならば、多額の借金もホテル投資話もたやすく肩代わりしてくれると兄弟は喜んだ。しかし、伯父と話すと、自分の事業に不利な証言をしようとする男がいて、その男を処理してほしいという依頼を受けるが。。。。



「マッチポイント」が意外な結末で終わったので、どういう展開になるのかは最後の10分前まで予想がつかなかった。おしゃべりなウディだけに、主演の二人にもたくさんのセリフを与えて、会話のキャッチボールをさせる。それがウディ映画の持ち味である。クールなコリンがこんなに話すのはめずらしいのではないか?
ウディが出ていない時に、その影を出演者にのり移させるのはいつものパターンだ。

老年の域に達して、ウディは美術、撮影、音楽といった映画の舞台装置にずいぶんとこだわっている気がする。「それでも恋するバルセロナ」でもスペインらしさを全面に出した美術がよかった。海に浮かぶクルーザーの鮮やかな映像に加えて、陸の上でも古いジャガーを快調に走らせる映像がいい。ニューヨークでのウディ作品に比べると、残り少なくなった映画人生をヨーロッパで色鮮やかに楽しんでいる印象だ。
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さらば愛しき大地  根津甚八

2010-09-19 18:14:56 | 映画(日本 昭和49~63年)
82年東京近郊の工業地帯として変貌をとげつつあった時期の鹿島、潮来地区を舞台にして一人のあばずれ男にスポットをあてる。根津甚八が自堕落な男を演じて、愛人役を秋吉久美子が演じる。



茨城県鹿島の一角に小さな農家がある。その一家に不幸が突然襲ってきた。最愛の息子二人が溺死してしまったのだ。妻山口美也子にあたる夫根津甚八は背中に観音像と子供の戒名を刺青し供養する。そんな折、根津は昼間は工場で働き、夜は母の飲み屋を手伝っていた秋吉久美子と親密になる。失意からなおらない根津と秋吉の同棲生活が始まった。数年たち、二人の間には娘も生まれ、依然として根津の二重生活は続く。しかし、日ごろの不安をまぎらわすために、覚せい剤を常用するようになる。一方、家では母の強い希望で東京から戻ってきた弟もダンプの運転手を始めていたが。。。。

現在の都市近郊の風景と比較すると、一時代前の田舎の匂いを残す。根津、秋吉の主演二人をバックアップする俳優には、にっかつポルノで見かける顔が多い。根津の妻役の山口美也子だけでなく、中島葵や白川和子、岡本麗などの往年のにっかつ女優に加えて、人気男優港雄一が登場する。それ自体でノスタルジックな匂いを醸し出す。
いいなあと感じたのはそののち「はぐれ刑事純情派」の藤田まことの同僚の婦人警官役などで堅気の女優に変身した岡本麗が「夜来香」を歌うシーンだ。台湾やフィリピンから稼ぎに出てきた女性が増えつつあった時期の光景を映し出し、岡本には台湾人を演じさせる。

支離滅裂な映画だと私は感じた。でもなつかしのにっかつポルノメンバーの登場で同窓会的な気分も感じさせてくれた。秋吉久美子は年齢を重ねた今の方がより妖艶に感じる気がする。

(参考作品)
さらば愛しき大地
ワイルド根津と美の絶頂秋吉久美子
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陽のあたる場所  エリザベス・テーラー

2010-09-16 05:59:15 | 映画(洋画 69年以前)
「陽のあたる場所」は、ジョージスチーヴンスが1951年のオスカー監督賞を受賞した作品である。当代きっての大スターだったモンゴメリー・クリフトとエリザベステイラーの共演。婚約している女性がいるのに、美しい上流のお嬢様と付き合ってしまい、あたふたしてしまう男性の物語だ。華やかな二人のジャケットとは裏腹にせつない思いを感じてしまう映画だ。



主人公モンゴメリー・クリフトは貧しい家に育ち、シカゴのホテルでボーイをしていた。水着製造工場を経営している伯父に会い、幸い彼の工場に職を得た。伯父の家で上流家庭の娘エリザベス・テイラーに会い、心を惹かれたが、彼には身分違いの遠い存在に思えた。モンゴメリーは同じ工場で働くシェリー・ウィンタースとある夜映画館でふと隣合わせになったことをきっかけに付き合い始めた。会社では男女社員の交際が御法度になっていたので、2人は人目を忍んで逢っていた。
モンゴメリーは社長である伯父のパーティに招かれ昇進を告げられた。そしてエリザベスと再会した。エリザベスも強く彼にに惹かれた。その日はちょうどジョージの誕生日だった。シェリーはアパートでささやかなお祝いの準備をして待ちかねていた。彼女は妊娠していたのである。ところが、エリザベスもかなり彼に熱を上げるようになり、モンゴメリーは彼女の別荘に招待され両親に会うことになるが。。。。

石川達三原作の「青春の蹉跌」を思わず連想する。映画ではショーケンと桃井かおりが主演で、檀ふみが御令嬢を演じた作品であった。話の構図は似ている。同じようなパターンはテレビドラマでもこれまで何度もつくられてきたかもしれない。最近ではウディアレン監督スカーレットヨハンソン主演「マッチポイント」も同じようなパターンだ。でもこの映画の方がせつなくなる。
「ミリオンダラーベイビー」もそうだが、観た後にどうにもやるせない映画ってある。この映画はその一つであろう。脚本のやるせなさは強く自分にインパクトを与える。主人公の彼女のことをいとおしく感じてしまうのは自分だけであろうか?

50年前の作品なだけに映像処理はどうしても一時代前の感覚である。アップを強調している。当時アップの強い作品が撮影賞をもらったパターンがあるのかな?「波止場」も同じような感覚だ。それにしても全盛時のエリザベステーラーの美貌はただものではない。
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マイレフトフット ダニエル・デイ・ルイス

2010-09-15 09:55:26 | 映画(洋画 89年以前)
生まれたときから重度の小児麻痺に侵された画家の半生を描く実話に基づく89年の作品である。ダニエル・デイ・ルイスはこの作品で最初のオスカー主演賞を受賞する。助演賞をもらった母親役ブレンダ・フリッカーも非常によく、演技者全般のレベルが高い。何より難度の高い役をこなしたダニエルと子供のころを演じた子役の演技に敬服する。



アイルランドの煉瓦職人夫妻の10番目の子供として生まれたクリスティは、生まれながらに脳性小児麻痺に冒されていた。幼い頃のクリスティは、ある日母が階段から落ちたことで、かろうじて動く左足で必死に玄関扉を叩き、近所の人を呼ぶが、誰もクリスティのおかげと気づく者はいなかった。また、父と兄弟が勉強をしている時、0.25の4分の一は何かという質問に主人公は左足の指を使って懸命に16分の一と書く。でも答えがわからない家族はその文字を意味のあるものと思わない。彼は無能力者とみなされていたのである。しかし、主人公が懸命に左足で文字を書いたのがmotherでこれを見て家族は驚くが。。。。

子沢山の母親の強い母性、身障者の恋愛感情、才能の発掘などこの映画で訴えたいことはたくさんあったろう。いずれもよく表現されている。
しかし、それを演ずる主人公の演技が稚拙だったら何も生きない。ここにおける主人公の演技は幼児期の子役の演技を含めて極めて素晴らしいものであった。「ゼア・ウィル・ビーブラッド」で究極の演技を見せたダニエル・デイ・ルイスは当代きっての俳優だと改めて認識する。
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空気人形  ぺ・ドゥナ

2010-09-14 22:38:14 | 映画(日本 2000年以降主演女性)
「空気人形」は「誰も知らない」の是枝監督のメガホンによる作品だ。韓国女優ペ・ドゥナを主演にして、ダッチワイフが人間として蘇生する姿を描く。映画はしっとりと流れていき、独特のムードを醸し出す。抜群!感動!といった作品ではないが、流れているやさしいムードで気持ちが穏やかになる。



古びたアパートで持ち主と暮らすダッチワイフことペ・ドゥナが、ある朝、本来は持ってはいけない「心」を持ってしまう。彼女は主人が仕事に出かけるといそいそと身支度を整え、一人で街へと歩き出す。アキバメイド喫茶風の服を着て街に出た彼女は、いろいろな人に出会っていく。ある日、レンタルビデオ店で働く純一と知り合い、その店でアルバイトをすることになる。昼間は仕事をするようになった彼女も夜は主人のダッチワイフのままであるが……。



韓国女優を主演に持ってきたのは正解だと思う。「リンダリンダリンダ」でも好演だったが、こちらの方がいい。役柄裸になるシーンも多々ある。小ぶりなバストが美しい。言葉のハンデを超えて、懸命に演技をした形跡がみられて好感が持てた。レンタルビデオ屋でバイトを始めて、古今東西の映画に関するうんちくを徐々に覚えていくシーンが個人的に好きだ。ビデオ店の店長が「仁義なき戦い」が大好きで、有名なテーマ音楽を彼女がまねて口ずさむのもなかなかいい。

あとは、いわゆる脇役の常連ともいうべき人たちが多々出てくる。みんな巧妙に演技をまとめていくので安心感があった。オダギリ・ジョーが発するセリフにはほっとさせられた。
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仙台へ旅する

2010-09-08 20:46:40 | 散歩
火曜から水曜日にかけて仙台へ旅行へ行った。
関連業者の人たちと一緒の旅行だった。

まずは新幹線で白石蔵王へ降りて蔵王のお釜を観に行った。天候が悪く、お釜へは近づけなかった。そして青葉城へ。
何度も行っているが、ガイドさんが説明してくれたのは初めて



夕方に秋保温泉へ行った。佐勘というなかなかいい旅館だった。
川沿いの風呂がいい。肌がつるつるになった。いい温泉だ。
夜の宴会では飲み過ぎて、翌朝はしんどかった。

翌日は松島観光
松島にも何度も来ているが、船で遊覧するのは久しぶり。
船着き場を見るとウミネコがいる。そして船についてきた。いつものように餌づけ
これは楽しい。これをやると運が向いてくる。
金崋山に行くときには付き物だが、松島でできるとは思わなかった。



松島巡りは楽しい。
いろんな形をした島がたくさんあって、写真を撮りまくった。
この島はその一つで妙な穴ぼこが空いている。
個性のある島が多い。



船では一人ではしゃいでいたのかもしれない。
岸辺から松島を見ても感動はないが、海上を遊覧すると「日本三景」という評価はなるほどと思わせる。そのあとは陸上で瑞巌寺と五大堂めぐりの定番だ。



父が北海道から祖父と祖母と一緒に昭和14年に上京した時の写真がある。
上京の途中で家族で松島に寄っている。松島の写真は五大堂をバックに写している。
父が小学校一年でまだ小さい時だ。
五大堂をみると父を思い出す。あの時どういう気持ちで小樽の街を離れたのであろうか?
幼い父の顔が目に浮かぶ




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ウエディング  ロバートアルトマン

2010-09-06 04:53:28 | 映画(洋画 89年以前)
登場人物が多い映画を撮ることで有名なアルトマン監督の作品だ。イタリア系とアイルランド系のある大富豪同士の結婚式会場で繰り広げられる人間模様を描く。小さなドラマをいくつもつくる。混乱しそうであるが、この映画の場合はそうでもない。

イタリア系の富豪の息子とアイルランド系の富豪の娘による教会での結婚式からスタートする。それぞれのファミリーが一堂にそろい、大豪邸の中でパーティーが開かれようとするが、祖母が家の中で突然息を引き取ってしまうあたりからドタバタが始まっていくが。。。

ロバートアルトマン監督は今回も50人近くの登場人物にセリフを与えて、小さなストーリーをいくつもつくる。あちらこちらの会話の場面を刻んでいく。でもこの映画の場合はそんなに複雑にはなっていない。ほとんどが色恋沙汰ばかりで面倒な話が少ないからだ。
しかし、本来キーになるのは二人の結婚なのであるが、それが柱という訳でない。両方の親族を入り乱せていく。柱が柱でない分、何かに重点が置かれず中途半端な印象を持った。私自身はティムロビンス主演の「ザ・プレイヤー」がアルトマン作品では一番だと思っている。あの映画の中では、いつも通り登場人物は多いが、ティムロビンスの殺人劇を主軸に置いていたので、彼の心の動きという柱が出来ていたからうまくいったのだと思う。

たぶんイタリア、アイルランドそれぞれの人種の背景がもう少し理解できるなら、面白いと思える映画なのかもしれない。
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あなたには言える秘密のこと  サラ・ポーリー

2010-09-04 05:55:10 | 映画(洋画:2000年以降主演女性)
「あなたには言える秘密のこと」はいかにもミニシアターぽい作品である。しかもスペイン映画だ。ジャケットを見るとティム・ロビンスの顔がある。彼の映画は非常に相性がいいので観た。主演のサラ・ポーリーの孤独なキャラが印象に残る。海上油田掘削所という特殊なロケ地で、さまざまなキャラの男を登場させ映画に変化球をつけ、手持ちカメラ中心の撮影でリアル感を出す。全体的に流れるムードがやさしい映画だ。

工場で働くハンナことサラポーリーは、働き者ではあるが孤独な毎日を送っていた。彼女の過去は誰も知らない。全く休まないハンナを見た上司は、彼女に無理にでも休暇を取るように勧め、ハンナはある港町にやって来る。そんな時に入った中華料理屋で、至急看護婦が欲しいと携帯で話す男を見かけ、ハンナは自分は看護婦だと告げる。ある海上油田掘削所で火事が起こり、重傷を負った男性を看護する人が必要だという。ハンナはすぐにヘリコプターで採掘所に向かう。
患者のティム・ロビンスは重度の火傷を負っており、ハンナは黙々とロビンスを看護する。ロビンスは時には強引に何とかハンナ自身のことを聞き出そうとする。何も語らなかった彼女も徐々に心を開いていくが。。。。



サラポーリーが魅力的だ。美しいブロンドの髪をした美しい女性だが、心を閉じていて人と交わらない。この孤独な雰囲気が実にいい。ジーパンにラフな格好の彼女からでてくるムードに異様にひかれる。我々のまわりにいそうな普通の子だ。改めてプロフィルを見てあっと驚いた。「アウェイフロムハー」の監督ではないか。このブログでも監督としての彼女の才能を絶賛した。なんだ彼女だったのか!



ティムロビンスといえば「ショーシャンクの空」だろう。でもコーエン兄弟の「未来は今」やロバートアルトマンの「ザ・プレイヤー」も好きだ。非常に相性がいい。彼も監督をやる。
そんな才能のある二人が組んで悪い映画ができるはずがない。妙に心にしみわたる映画だ。

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