映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

お遊さま  田中絹代

2009-04-30 06:34:13 | 映画(日本 昭和34年以前)
溝口健二、田中絹代の名コンビである。谷崎潤一郎の原作だけに耽美的な微妙な作品
京都の美しい風景、建物のたたずまいを宮川一夫のカメラが素晴らしいアングルでとらえる傑作

京都のお嬢さん乙羽信子の見合いに、姉のお遊さま田中絹代が同席する。田中はお金持ちに嫁いだが、子供が生まれた後に夫を亡くした後家さんである。見合いのお相手は京都の老舗の若旦那さん。若旦那は若い乙羽でなく、お遊さまを見初めてしまう。お遊さまは相手を気に入らず、見合いをつぶしてしまうことが多かった。しかし、若旦那が気に入り妹の縁談を進めようとする。結局二人は結婚することになるが、田中と若旦那の気持ちの通じていることを知り、乙羽は夫に偽装結婚の申し出をして、微妙な三角関係がはじまる。。。。

ここのところ昭和20年代から30年代にかけての京都舞台の映画を見ることが多くなってきた。
映画はストーリーや俳優だけで見るものでなく、風景や建物からにじみ出るものを感じたいというのが自分の姿勢。
この映画でも、格子が多い昔からの日本家屋の特徴がくっきりでており伝統的な美しさを感じる。
こういう格子は経師屋の職人技の仕事である。現代では職人がかなり減っている。
この当時の映画を見ると、どの建物も美しい木の格子がこれでもかというように出てくる。すばらしい。

京都の風流のある女性を演じる田中絹代、宝塚女役の匂いがまだ残る若き日の乙羽信子の優雅さに加えて、乙羽の相手役堀雄二の振る舞いがいかにも京都の旦那衆の振る舞いで言葉づかい、着物の着こなしを含め実に見事。戦災を受けていない京都は、戦後間もないこの時期、明治やそれ以前の優雅さがそのまま残っていて格調高雅なる映画になっている。
また、旦那さんと使用人の区別が実にはっきりしている。同じ溝口監督の「祇園囃子」同様、その他大勢の使用人がいかにも江戸、明治から流れている特有の表情と仕える人への尊敬のまなざしを見せる。
今の俳優では絶対に演じられない表情である。

一部セットが稚拙になるのは、この時代だけに仕方ないと思う。全部ロケでやってもらったほうが良かったのかもしれない。いずれにしても宮川一夫のカメラの美しさはとてつもない美的センスを感じる。溝口と選び出す映像コンテを見ると、きっと彼は画家であっても成功したであろうと思う。
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雁の寺  若尾文子

2009-04-28 05:50:57 | 映画(日本 昭和35年~49年)
水上勉の直木賞作品を若くして亡くなった川島雄三監督が演出、美貌の若尾文子をめぐる雁が飛び回る寺での魔のような世界を画像化する。若尾文子の着物に僧侶が手を入れているDVDのジャケットが実にわいせつな雰囲気

昭和8年京都の寺で中村雁治郎ふんする襖画家が、雁の絵を描いていた。彼には妾の若尾文子がいたが、ある日病に倒れる。雁治郎は寺の住職三島雅夫に自分の死後は若尾を頼むと言い残してこの世を去る。初七日がきて、妾の若尾は雁治郎の供養に三島の寺にやってくる。三島は雁治郎の遺言をたてに若尾に迫り、若尾はあっさり受け入れ一緒に住むようになる。三島は美しい若尾との愛欲におぼれる。
三島の寺には修行僧が一人いた。彼は貧しい家の出で寺に預けられ、仏教系の中学に通いながら厳しい修行に励んでいた。しかし、学校での軍教練がいやで休みがちであることを教員木村功の知らせでわかる。住職三島は強く彼を叱責する。そんな時若尾は寺を訪れた僧から修行僧の貧しい身の上を聞き、彼に強く同情するようになるが。。。。

水上勉作品では「飢餓海峡」が名作とされるし、確かにスケールも大きく良い。しかし、比較的早い時期に犯人が判明するところに面白みが少ない気がする。この作品はヤマをどうもってくるのか展開を読ませない。
昭和30年代半ばの映画なりの造りの稚拙さにもかかわらず、味のあるおぞましい部分をおりまぜているのが良い。本当はこの10年後くらいに日活ポルノあたりでつくってもらったら良かったかもしれない。その場合の主演は五月みどりかな?現代でいうと杉本彩あたりが適役か?

川島雄三監督はいい作品を残している。フランキー堺主演「幕末太陽傳」はフランキーの軽快な動きとあいまってものすごい傑作である。このブログの最初で取り上げた「洲崎パラダイス」も抜群だ。
両作品と比較すると、俳優の動きにテンポがない。突然現代に戻るシーンが出てくる。川島一流のお遊びだが、そこで軽くペースアップをしてちょっと驚く。
俳優では三島のエロさがいい。雁治郎は出番が少ない。このころの若尾文子は芸者とか妾とかその10年後の彼女が演じない自由奔放な下層の役を演じている。彼女の美しさのピークは個人的には小津安二郎「浮草」と私は思っている。同じ川島監督「女は二度生まれる」も良い。この作品同様おじさんと若い男と両方の男たちをもてあそんでいる。今よりも女性の地位が低かったころに、男性に頼らねば生きていけないふりをしながら実は男を色気で自由自在に操る役が、その美貌のために実にうまい。
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とんかつ「ぼんち」 落胆と安堵

2009-04-26 20:23:24 | 食べもの
先週日曜家族で本屋に行った。その帰り一緒に食事をしようということになったが、めずらしく家人がとんかつを食べたいといった。
ショッピングセンターのフードコートには大概どこかのチェーン店が入っている。
それでいいかというと反対のことを言う。困ったものだ。どうしようかと車を走らせていた。そうしたら与野本町駅近くの「ぼんち」というとんかつ屋が建替え後のオープンをしているではないか!勇んで行った。

この店は元々古い建物だったが、昨年から建替を始めた。解体時には一瞬店がなくなるかと思いがっかりしたが、建替とわかりほっとした。さいたま市でおいしいとんかつ屋はそうそうない。ピカ一のカツとかきフライを食べさせる店であった。もちろんカツもおいしいが、かきフライは絶品!こんなおいしいかきフライは食べたことなく、生涯1位のかきフライである。
何せ大きいかきだ。しかもおいしい。だから昨年から少しさびしかった。
店はおばあさんが一人で店番、二人変わりばんこにいるが、片方は特に愛想がない。どちらが客かわからない店だし、トイレは小さい。でも肉の質とおいしさだけは素晴らしかった。

そこへ家の二人を堂々と連れて行った。おばあさんが見当たらない。30くらいの女性が対応して来た。とりあえず950円也のとんかつ定食を頼んだ。
安心していたら出てきたものを見てびっくり、あ!ちがう。
小さくなっていた。キャベツの量は少なく、マカロニサラダはついていない。肉は脂身が多い。どうしたの?これじゃ750円から850円くらいの町のランチとんかつと一緒だよ。家人は「いったいどういうことなの?」と絞られる。娘はでかいしょうが焼きを食べこれはこれでよし。。。
メニューを見直す。1050円ロースカツ梅というのがあった。その上は1750円の2枚もののよう、あれ!もしかして?と一週間悩んでいた。

今日一人で昼食べに行き、1050円のロースカツ梅を頼んだ。
そうしたら前のとんかつ定食1000円也と同じカツが出てきた。カツは大きく、揚げ方も卵の入った衣を肉との間に混ぜらせるおいしいやつ。キャベツの量が少ないのが残念だったが、安心した。
でも前と違うならわかるようにしてほしかったな。950円と1050円の100円違いだけどぼくには300円以上の違いの味に思えた。
おばあさんは厨房に入っていた。別に若いおねえさんの店員なんて要らないからまた前のようにやってほしいな。また行こう!

東京のとんかつ話でもまたするか!「ぽんた」「とんき」とかのね
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ダークナイト  5つ星

2009-04-26 10:16:57 | 映画(自分好みベスト100)
断言できる。昨年日本公開の作品では間違いなくナンバー1だと!
歴代映画でもこれほどの完成度を持った作品はそうはない。クリストファーノーラン監督があの若さにしてこれほどの才能を発揮できる凄みに感動する。
最初から緊張感があり145分すき間がない。いい映画というのは最初から見ている人の目を離させないものだ。しかも脚本はまったく先を読ませない。二転三転して途中で目を離させない。

いつものように悪の棲家ゴッサムシティでの銀行強盗からスタート。さっそくヒースレジャー扮するジョーカーがそっくりいただく。クリスチャンベール扮するバットマンが夜警で犯罪に立ち向かってもなくならない。そこでゲイリーオールドマン扮する警部は銀行でのマネーロンダリングをなくしてマフィアの資金源を止めようと銀行の徹底チェックをする。そんな時新任検事アーロンエッカートも悪に徹底的に立ち向かう。
ジョーカーは資金源を絶たれたマフィアの前に現れ、バットマンと徹底対決をしようとする。新任検事や警部補と組んでいったんはジョーカーを捕らえることになるが、ジョーカーはタダではすまない。。。。。。

まずは撮影のリアル感である。日本映画の特撮では、CGがいかにもCGだとわかってしまう技術しかない。この映画ではほとんどすべての場面が実写に見える素晴らしい撮影と編集である。それを盛り上げる音楽、ジャックニコルソンのジョーカーのときの「バットマン」では、ダニエルエルフマンがマーラーの交響曲のように盛り上げた。ここでは重くじわっと盛り上げる。映画音楽はこういう作品の場合には重要な要素だ。まとめるクリストファーノーランを讃えたい。

クリスチャンベールは二枚目役を落ち着いて演じる。人間ぽさがでている。彼が「太陽の帝国」の少年役だったと聞くと自分の年齢を感じる。
ジャックニコルソンのジョーカーはまさに怪演ですばらしかった。ヒースレジャーはあの歴代に残る怪演との自分との比較で多少精神的負担はあったかもしれない。ヒースのほうがむしろジャックよりメイクは薄い。リアル感があるのかもしれない。笑いすぎない「あの笑い」もまったく同じにならないような工夫である。
アーロンエッカートはキャサリンゼタジョーンズとの「幸せのレシピ」でのシェフ役とは一転する。精悍な検事を演じかっこいい役と思いきや、途中からドキッとする場面もある。好演といえよう。
マギーギレンホールは途中までキルスティンダンストかと思っていた。かなり似ている。同じアメコミ映画の「スパーダーマン」のヒーローが出るわけがないだろうと思い、違いを見つけにいったくらいだ。
その他もモーガンフリーマン、ゲイリーオールドマンはじめ超豪華スターである。

それから私の大好きな香港の街が出てくる。ゴッサムシティと似ている雰囲気だ。今回ゴッサムシティはニューヨークかと途中まで思っていた。しかし、途中でシカゴとわかった。12年前に泊まった所のすぐそばの中心部風景が出てきて確信した。
両方の街とも私の大好きな街だ。

まさにこれこそ☆☆☆☆☆ 最高の映画である。
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飲みすぎに注意

2009-04-25 05:48:37 | Weblog
この一ヶ月ブログも映画のことばかり書いていた。
年度が替わると飲み会が多い。今週の火曜日までずっと続いていた。金も相当使った。交際費だけでなく、定年からみの送別など自腹もあったので昨日の給料日で助かった。
酒というのは脳細胞を破壊する。思考回路に支障が出ているかもしれない。

水木金と酒を飲まず少しだけ頭が戻りつつある。本も読みながら、書くことも復活しながら普通の体勢に戻りたい。

草なぎ君もほんとうにかわいそうだ。鳩山大臣のやつ、彼のこと悪く言ったら抗議の電話が殺到したらしい。麻薬やったり、暴力ざただったら仕方ないけれど、あの程度の話で余計なこと言うもんじゃない。大臣もやんちゃをまったくしていないわけではなかろう。会社でも脱ぐのが好きな連中っていっぱいいる。この心理ってわからない。自分のものに自信があるのかどうか?という連中まで結構脱ぐ。何人かにはアウトドアでは自粛してよと言った。
自分も彼と同じくらいのときに酒で大きな失敗をした。しばらくはおとなしくしていないとダメだと思うが、あの程度の話なので早く回復してほしいと思う。

スマップの連中、結婚していないのが多すぎる。やっぱり結婚していないと妻のおこごとがないので行動がエスカレートするものだ。その結果だと思う。みんな早く結婚してよ。そうしていくうちに本木くんのようないいこともあるかもしれない。
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隠し砦の三悪人  長澤まさみ

2009-04-24 06:45:57 | 映画(日本 2000年以降主演女性)
黒澤映画のリメイク。テンポ良く展開する前作のいいとこ取りをしようとしたが、アイドル映画のようにもなってしまったのはどうかな?

時は戦国時代早川、山名、秋月の3つの国が国境を接して勢力を争っていた。財宝に富んでいる秋月を狙って、金はないが兵の力がある山名が攻め入り、城を占拠する。しかし、秋月の財宝は寸前に持ち去られていた。同時に秋月の姫長澤まさみは家来とともに去っていた。山名の百姓あがりの2人松本潤と宮川大輔は攻めた秋月の川沿いで金を発見する。するとすぐそばに長澤を見つける。長澤には阿部寛という強い秋月の侍がついており捕らえられる。阿部寛は問う。「どうやったら早川まで逃げられるか?」、二人は答える。山名経由で早川に逃げたらどうかと
敵地を通って逃げればわかりづらいという言葉を信じて、阿部侍と長澤姫は二人を従えて山名へ入ろうとする。そしていたるところに山名の兵士がいることに気づき、普通に関所を通って山名の領土に入ろうとするが。。。。。。

基本的なストーリーの流れはここあとまで前作と同じである。山名の百姓二人が前作は藤原釜足と千秋実であった。いかにも普通の百姓、コミカルに演じた。今回も二人は楽しく演じようとするが、アイドルが出てくるのでちょっと二の線が残り、展開が弱くなる。そこが残念。。
長澤まさみはいつものように美しく姫を演じる。この作品での色っぽい逃亡姫は及第点程度。中途半端だったかもしれない。
阿部寛のセリフの言い方はかなり三船敏郎を意識している。しかし本家に比べると迫力に欠けるのは仕方ない。わりと良かったとは思うが。。
むしろ敵将の椎名桔平がいい味出していたと思う。二の線じゃない役がうまい。ここ数年、七変化ができるいい感じの役者になったと思う。
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祇園囃子  若尾文子

2009-04-22 21:08:10 | 映画(日本 昭和34年以前)
溝口健二監督の傑作、宮川一夫のカメラワークも素晴らしく京都の芸者たちの人間模様を鮮やかに描く。女を売って生きている姿を社会派的に捉えている部分もある。京都の町の町屋の映像もすばらしい

京都の芸者木暮実千代のもとに昔の知り合いの娘若尾文子が芸者になりたいと訪れる。
芸者になるための支度金も要るが木暮は茶屋の女将浪花千栄子に30万円を借りる。
芸者になるための踊りや囃子の稽古に精を出し若尾は木暮とともに座敷に出るようになる。
しかし、浪花の30万は祇園の上得意の専務さんが用立てたもの
上得意の専務はあるプロジェクトの受注をとるために懸命に役所の課長を接待している。
接待相手の課長は木暮の色気に参ってしまい、専務たちは木暮に課長の相手をするように説得するが。。。。。

若尾文子はまだ若い、舞妓の匂いをさせている。これから5年後には手馴れた芸者役も演じるが
ここでは幼さを残している。木暮実千代の色気はなかなかのもの、いわゆる旦那を作らず身の硬い
芸者役である。この2年後に同じ溝口監督「赤線地帯」で2人とも娼婦を演じる。その雰囲気とはちがう。
宮川一夫のカメラワークが魔の窟のような京都の街の景色と二人の美しさをうまくマッチさせる。
浪花千栄子も抜群だ。茶屋の上得意の男たちと芸者たちの微妙な関係を取り仕切る役
ここまでのやり手女将を演じられる人はそうはいない。浪花千栄子というと大塚製薬「オロナイン軟膏」のCMイメージが強い。テレビ「巨人の星」の提供が大塚製薬でボンカレーの松山容子やオロナミンの大村昆と一緒に出ていて、やさしい関西のおばあちゃんという記憶がある。

「サユリ」でチャンツィイーとミッシェルヨー、コンリーが京都の芸者を演じた。桃井かおりが芸者置屋のママ役。それ自体悪くはないのであるが、この映画のリアル感には到底及ばない。
「祇園囃子」にリアル感があるのは、脇役の巧みさである。
芸者置屋にいる下働きのおじさん、おばさんの身のこなしはいずれも明治生まれの人がもつ職人的な身動きを感じさせる。これは現代の俳優では演じられないし、いかにも日本らしいものだ。
そういった意味でも明治の女浪花千栄子のように祇園の女将を演じるのも現代では不可能

キャスティング、映像とも溝口健二の最高作といっていい傑作だ
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シークレットサンシャイン  チョンドヨン

2009-04-19 19:23:36 | 映画(韓国映画)
チョンドヨンはこの作品でカンヌ音楽祭の主演女優賞を獲得した。確かにその価値はある演技だと思う。家族を失った後の心の動きを実に見事に演じている。今回はソンガンホもいつもよりはカゲにまわっている。
しかし、映画としてはちょっとどんよりしすぎて個人的な評価は落ちる。

チョンドヨンは夫を交通事故で亡くし幼い息子と二人暮らしになる。思うところがあり、夫の故郷の「密陽」という町に息子と二人でソウルから移る。町に入る際に車を故障させ、呼んだのが車修理工場のソンガンホである。ソンはチョンに好意を持ち、町のなかを親切に案内する。親子はピアノ教室が経営できる店舗併用住宅を購入し「密陽」に住む。
その後町の人の中に溶け込もうとするチョンが静かに描かれるが、映画始まって約40分後突然ストーリーは動く。チョンが女友人たちと遊びに出ている間に息子が誘拐されてしまうのだ。身代金の要求があったが、息子を返してもらいたい一心で警察に知らせずに指定された現場に身代金を持参するが息子は戻らない。。。。。

このあと揺れ動く女心を見事に演じる。宗教にはまっていくところ、宗教に裏切られた気持ちになって狂いだすところの描写はすごい。
一瞬これはミステリーなのかとも思ったがすぐに真相がばれて焦点は事故後の家族を失った女性の心理描写に絞られる。しかし、ちょっと暗い。気持ちが晴れやかに最後までなれない。主人公はひたすら落ち続ける。ここまで落ち続けると見ていてやるせない。
個人的にはちょっと。。。。。かな
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世界の中心で愛を叫ぶ  長澤まさみ

2009-04-18 05:56:00 | 映画(日本 2000年以降主演女性)
今の日本の若手女優でこの子は将来大女優になると思わせるのは、長澤まさみをおいて他にいないと私は思う。その彼女が信じられないほどのオーラをぷんぷんさせるのが「世界の中心で愛を叫ぶ」の亜紀役であろう。

柴咲コウと山崎努の出演作を記述してなぜかこの作品気になった。序盤のテンポが悪くだらだらしている部分も長いが、長澤まさみのオーラが強くなるにしたがってじんわりと盛り上げていく。

大沢たかおは故郷四国?の海岸沿いの町で青春時代をすごす。しかし、いまだ青春時代の恋から逃れられない。その幻想にとらわれ故郷にもどり彼女との思い出の場所を歩く、柴咲コウも大沢と同郷、彼女はその昔ある女性から渡されたテープを発見して聴き驚き故郷へ戻る。
大沢は中学時代ひょんなことで同級の長澤まさみと親しくなる。運動もできて、頭もよくかわいい彼女はみんなから羨望のまなざしで見られている。そんな彼女と親しくなり付き合うようになる。深夜放送のリクエストでのやり取りをしたり、離島へ遊びに行ったり楽しい青春時代を過ごすが、あるとき彼女が突然倒れる。彼女は白血病に犯されていたのだ。。。。。

普通の健康な男子高校生だったら、誰しもが長澤まさみのような女の子と付き合ってみたいと思うであろう。陸上競技のユニフォーム姿は実にかっこいいし、大沢の青春時代の場面で一緒にバイクに乗るしぐさ、前日の深夜放送をネタに校内の廊下でいちゃいちゃする場面はうらやましいとさえ思ってしまう。
彼女の作品で他に印象深かったのが、テレビの「ドラゴン桜」である。今で考えてみるとそうそうたるメンバーが生徒役をやっていた。新垣やダルビッシュの奥さんになったサエコも含め、ものすごくかわいい女の子ばかりで少々驚いた。時代が違うのであろうか?私の高校の同期から2人東大にいった女性がいた。ちょっとイメージが違う。しかし、その中でも長澤まさみはありうるのかな?という印象を持った。

大沢たかおは普通。柴咲コウは長澤まさみのオーラに裏方のようだ。しかし、この本は柴咲のコメントでバカ売れにつながったとも言われている。大沢の学生時代を演じるおにいちゃんは、顔もどことなく似ていていい感じだ。がんばっていると思う。山崎努はいかにも彼らしくここでも素晴らしい。
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クリフハンガー  スタローン

2009-04-16 06:08:13 | 映画(洋画 99年以前)
シルヴェスタースタローンはなんでもやってしまう。絶壁の素手での登りまでやってしまうんだからたいしたものだ。ロッキーの山の美しさだけでなく、スリリングな高さでのバタバタ劇がどきどきさせる。

最初から映画は飛ばしていく。いきなり山の上での救出劇からスタートする。
スタローンはロッキーの救助隊員、同じ救助隊員の仲間が素人の恋人を連れて絶壁を登るが往生してしまい、救出に向かう。ところが、仲間の男は助かるが、恋人は身体に連結している紐がほどけてしまい危ない状態に、スタローンは懸命に助けるが谷底へおちてしまう。
自信喪失したスタローンは救助隊をしばらく休むが、元恋人の救助隊員のところへ来る。そこにSOSの無線が届く。元恋人からスタローンに救助に行ってほしいといわれ、最初は拒絶するが、最後には救助に行く。しかし、救助する相手は財務省の飛行機をハイジャックした国際的犯罪組織の生き残りであった。ハイジャックでせしめた1億ドルの大金が入った3つのバックを山の中に飛行機から落としてしまい、それを探すようにスタローンと仲間に命令するが。。。。。

いきなりどきどきさせる。
ものすごい高いところでの撮影。やっているほうがもっとたいへんだと思うが、ロープに伝わりながらの撮影はすごい。その後もスリリングである。これでもかこれでもかと次から次へとネタを提供する。格闘シーンも単純ではない。むちゃくちゃ痛みつける。暴力的な色彩も強い。

ヘリコプターを使った空中からの撮影も多い。本当にこれで死人が出ないのであろうかと心配になってしまうほどアクションシーンがリアルである。
楽しめるいい映画だ。
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夜叉  高倉健

2009-04-15 20:10:51 | 映画(日本 昭和49~63年)
高倉健は、ヤクザ映画を卒業した後も、元ヤクザの役が多い。足を洗ってもその世界から抜け切れない役は彼以外には考えられない。降旗監督とのコンビは絶妙、独特の雰囲気がいい。

高倉健は北陸若狭湾に面する漁村で妻いしだあゆみと暮らしている。彼は元は夜叉の修治といわれたヤクザである。今は足を洗って15年静かに漁師として暮らしている。
その村に田中裕子がやってきて、居酒屋蛍をはじめる。高倉の仲間田中邦衛をはじめ地元の漁師たちが通いつめている。そこに田中の情夫ビートたけしが住み始める。たけしは飲みにきた地元の漁師たちと麻雀をして、遊びにきた漁師たちに覚せい剤を横流しにして一儲けしている。田中はそれをやめさせようとして覚せい剤を捨ててしまう。怒ったたけしは包丁を振り回して大暴れ。止めようとした高倉健がたけしに背中を切りつけられたところ、背中には美しい刺青が入ってた。。。。。

漁村を取り巻く風景が美しい。荒くれる波、大漁の旗を掲げている漁船、激しく降る雪と雪景色の海岸潮のにおいがする素敵な画面である。そのバックにはジャジーな曲が流れる。演歌ではない。その響きが映像にぴったり合っている。しみじみと情感が高まる。特に高倉と田中が雪の中戯れる映像に。。




高倉健は当時54歳、一番良かった時代である。立ち回りもかっこいい。
田中裕子も一番美しかった時代ではなかろうか。美人ではないが、不思議な色気をぷんぷんさせる。居酒屋のママ役、こんな素敵なママがいるなら毎日通ってしまいたくなるようなオーラを感じさせる。当時の彼女に沢田研二が夢中になるのもわかる。
ビートたけしは本格的に俳優業や映画に足を突っ込んでいないころ。演技は鋭い。彼もチンピラ的なヤクザの役は良く似合う。

後半の脚本の展開がちょっと不自然で、無理やりストーリーを作っている印象がある。しかし、全体に流れる高倉、降旗コンビの雰囲気が良いのでそれを補っている。映像のコンテの選択がよく感心した。荒波の美しさをこれほどまでに表現しているのは他には「ライアンの娘」くらいで非常に素晴らしい。
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ドライビングmissディジー  モーガンフリーマン

2009-04-12 21:03:55 | 映画(洋画 99年以前)
90年のオスカー作品賞。当時意外な感じを覚えた気がする。
派手なアクションは何もなく、主演のモーガンフリーマン、ジェシカタンディとジェシカの息子ダンエイクロイドの3人を中心に坦々とドラマが進む。

アトランタの会社のユダヤ系社長ダンエイクロイドはちょっと気難しい母親に手を焼いている。あるとき母親ジェシカタンディが自ら運転して池に車を飛び込ませてしまう。ダンは運転は無理と考えて黒人運転手モーガンフリーマンを雇う。
ジェシカの家には黒人の家政婦がいるが、自分は運転手は要らないと拒絶する。モーガンは気難しいジェシカに取り入ろうとするが、なかなかうまくいかない。それでもだましだましジェシカを乗せて運転し始める。いろんな会話の中でモーガンが文字を読めないことがわかる。昔教員だった彼女はモーガンに単語を教え始めるが。。。

ジェシカは最初から老母という設定ではあるが、映画の中でだんだんと年をとっていく姿を見せる。仕えていた黒人家政婦がいなくなって一気に老ける。その姿が見ものの一つでその演技が評価されてオスカー主演女優賞となったのであろう。オスカーの主演賞って一気に老けたり、病気になったりする俳優が選ばれることが多い気がする。
モーガンの演技はいつもながら安定している。しかし、この作品がオスカーをとった後のほうが、いい作品に恵まれてきたのではなかろうか?代表作「許されざる者」、「ショーシャンクの空」はいずれもこの作品の後である。でもまだまだ健在で現役を外れないところがすごい。
ダンエイクロイドがコメディアン的な動きを見せない作品も少ないと思う。アトランタの経済界の大物の役で、老けていく姿も堂に入っている。気難しい母親に音を上げながらかまっていく役をうまく演じる。

この映画も情景がきれいである。主人公の住む家のインテリアもいかにもアメリカンスタイルだ。ドライブしながら美しいアメリカ南部を見せる。50年代から60年代にかけての車もいい味出しているし、桜?見たいな花が咲いたり、雪景色が主人公の家にきれいにマッチするところ、クリスマスパーティーのイルミネーションの美しさも優しいドラマの雰囲気を盛り上げる。
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素晴らしき日曜日  中北千枝子

2009-04-11 21:29:02 | 映画(日本 黒澤明)
中北千枝子といってわからなくても「ニッセイのおばちゃん」の自転車に乗ったCMのおばさんといえばなんとなくわかる人も多いかもしれない。おばさんの顔は誰でもブラウン管で見たものだ。
成瀬巳喜男作品では彼が死ぬまでずっと付き合い続けた。「稲妻」「めし」「浮雲」「流れる」「娘妻母」などなど。彼女や加東大介が画面に登場すると待ってましたと言いたくなる雰囲気がある。成瀬が死んだ後、映画にほとんど出なくなって「ニッセイのおばちゃん」になりきった。「娘妻母」の原節子の友人のセールスレディ役が後の彼女の運命を変えた気がする。

脇役中心の彼女が主演しているのが黒澤明の「素晴らしき日曜日」である。
戦後昭和22年まだ焼け跡が残る東京で若い二人の一日を描いた作品だ。
顔がまだふっくらしている。21才くらいの作品なので声は同じだけど、「ニッセイのおばちゃん」とはダブらない。そののち昭和25年すぎの作品ではもっとやせてのちの顔とダブってくる。

お金のない二人が35円をもって一日ぶらぶらする。
今であればいくらであろうか?100倍の3500円といえばそうかもしれないが、もう少し少ない気もする。昭和25年の日経平均を100として現在が9000円と考えると、22年から25年まで多少のインフレがあったとしてもイメージ3000円くらいなのであろうか?結婚したいのだけれども住まいがない。動物園へ行ったり、旧友を訪ねてキャバレーに行ったりする。
何より傑作なのは東京公会堂に「未完成交響曲」を見に行く場面だ。A券25円、B券10円の切符の価格、二人には25円2枚を買うお金はなく、持ち金で買えるのは10円2枚である。並んでいたところ二人の前のアンちゃんが10円券を買えるだけ売ってくれと言ってまとめ買いをするので券が売り切れてしまって二人はコンサートに入れない。買ったアンちゃんがすぐさま10円の券を15円でダフ屋のように売り出すという場面である。
他にも戦後間もないことを示すセリフや場面がたくさん出てくる。

黒澤映画としては傑作の部類にはならないかもしれない。セットや美術も稚拙な感じがする。二人が演じる演劇的なタッチは物足りなさを感じるが、「貧しくても心は豊か」ということを物語は語っていく。戦後間もない時なのに、なぜか楽天的なのかもしれない。
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おくりびと  本木雅弘

2009-04-10 06:03:12 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
昨年は父母とも亡くなって葬式2回やった。7月父が亡くなったあとこの映画をやったが、見る気にはなれなかった。
11月母が亡くなったとき、死化粧をしてもらった。若い女性が来て母にとっておきの着物を着せて化粧をしたら、亡くなる少し前の悲壮な状況からうってかわった。そのときこの映画が気になった。
本木の動きが非常にしなやかでやわらかい映画である。

オーケストラのチェロ奏者本木は、観客動員少ないことでオーケストラが解散してしまい、妻広末良子の同意を得て故郷山形酒田へ帰る。職探しをしようとしたときに「旅のお手伝い」という求人広告を見て応募する。そこへいくと社長山崎努と事務員余貴美子がいた。面接をはじめるとすぐさま採用といわれる。給料は50万で無職の本木は驚き仕事に就く。ところが、旅ではなく(来世への)旅立ちだということに気づく。納棺の仕事であった。

いきなり寝たきり老人の孤独死に遭遇する。現場には腐食したからだと、食べかすを襲う虫たちの異臭で本木は戻してしまう。家に帰って広末はごちそうを作るがやはり食べられない。その後広末を強烈に求める。そうしていきながら仕事を続けていく。ところが内緒にしていた仕事のことがわかり、広末は本木を罵倒する。。。

基本的には本木、山崎、余、広末の4人で映画は展開する。4人ともすばらしい。

本木のしなやかさ、山崎の老練さ、広末のかわいい奥さんの演じ方、場末の事務員余のしたたかさいずれも良い。
本木はきわめてしなやかな動きをする。死人を扱う動きがまるでマッサージをしているようだ。端正な顔立ちで広末とのカップルぶりがいかにも現代夫婦像といった感じがする。広末も非常にかわいい奥さんである。男なら誰しもこういうしぐさの奥さんと結婚したいと思うであろう。セリフもわざとらしさがなく、きわめて自然に夫へのやさしさを表現する。山崎努はいい味を出す。脚本も山崎の良さを引き出す。彼は裏街道まっしぐらの役が似合う。さっと本木にチップを渡すときの身のこなしがリアルだ。

なぜかこの4人の映画には縁がある。特に一番縁があるのは山崎努だ。黒澤の「天国と地獄」の犯人役からはじまって、一連の伊丹作品など、最近でも「GO」「クロサギ」などこの人でなければ無理な作品に存在感を示す。本木は「しこふんじゃった」で、余は「ヌードの夜」で、広末は「鉄道員」がいずれも気になる作品だ。

そういう演技に酒田の風景が色を添える。それが料理のスパイスのように効いていく。美しい山、雪景色、花、さびれた町、白鳥のはばたきいずれもいい。

峰岸徹が出演して映画の中で亡くなっていく。あれ彼って実際にも死んだんでは?新聞で見た気がした。どうもこの映画の撮影ではすでにがんにむしばれていたようだ。映画で死んだ役をするとそのまま死んでいくことってよく目にする。先日取り上げた「情婦」でもタイロンパワーがそのまま映画のあと亡くなっている。岡田有希子事件からもう20年たつのかと思うと自分の年令を急に感じる。
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わが青春に悔なし  原節子

2009-04-08 21:06:21 | 映画(日本 黒澤明)
黒澤明の初期の作品、終戦翌年21年公開である。
原節子が男子学生と写っているポスター写真を見て、さわやかな青春ものを想像していた。そのためか見る機会がなかった。最近原節子さんの上品さに惹かれることが多く、この作品も見てみたくなった。
想像を超えるすさまじい原節子の汚れ演技ぶりに正直驚いた。

題材は京大滝川事件とゾルゲスパイ事件である。
題材をそこから得ているが、まったくのフィクションである注釈がいきなり出ている。

昭和8年、京大の教授大河内伝次郎のもとに学ぶ7人のグループがいる。教授の娘は美しい原節子
7人の中でも特に彼女に思いを寄せる二人の男性がいる。教授は政府批判の自由主義的論調に対して、文部大臣から更迭されてしまう。そのため言論の自由を求めて学内の紛争が起こる。二人の男性のうち藤田進は急進的な思想を持ち、当局に拘置されてしまう。もう一人は育ててくれた母親を思い、検事になる道を歩む。原節子は激しい言動の藤田のほうに惹かれるが、拘置されてしまったため恋は実らなかった。
5年後検事になった友に助けられ、執行猶予を与えられた藤田は軍部にかかわる仕事に携わるとのことで教授と原節子の前に現れる。思想転向した藤田を見て原節子は落胆する。そして、自宅を離れて東京で暮らすことを選ぶ。ところが上京後政治問題を研究所を開いている藤田に出会う。結局は二人は同棲し、実質結婚生活をするようになる。
ところがある日帰りを待っている原節子の前に現れたのは特高警察であった。。。

原節子は、育ちのいい上流のお嬢さまを演じさせたら天下一品である。
小津安二郎は娼婦を演じるよりも、良家のしつけのいいお嬢さんを演じるほうが
はるかに難しく、原節子ほどそれらしく演じられる女性はいないと言ったそうである。
まさに同感である。

最初の男子学生とのピクニックシーンで原節子の顔アップが出てくる。
非常に美しい。小津安二郎や成瀬巳喜男の映画では出てこないアップである。
しかしこのあと次から次に出てくる原の汚れたシーンがすさまじい。
特高にとらわれたシーンはまだ序の口で、彼の父母の故郷に行って、隣組の村八分にあいながら杉村春子と農作業に携わるシーンには恐ろしいほどの凄みを感じる。
ここではセリフも少なく、カメラワークも執拗に原節子を追いかける。
そののち黒澤作品を何度もとる中井朝一の撮影がすばらしい。

ちがった一面を見せる原節子を見るだけでもこの作品は価値がある。
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