映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「悪女」

2018-07-18 17:43:20 | 映画(韓国映画)
映画「悪女」は2017年日本公開の韓国映画


韓国得意のクライムアクションだ。小さい頃から格闘の訓練を受けてきた女が、犯罪組織から国家の秘密警察へ立ち位置を変えながら、敵味方入り乱れる争いに巻き込まれる話である。スタントもいるであろうが、主人公はスタミナのいる格闘シーンをこなす。悪女というと、一連の「ゆりかご」や「蜘蛛女」のレナオリンのような女を思い浮かべる。この映画は違う。強い女だけど、悪い女ではない。

犯罪組織の殺し屋として育てられたスクヒ(キム・オクビン)は、育ての親ジュンサン(シン・ハギュン)にいつしか恋心を抱き、結婚する。甘い新婚生活に胸躍らせていた矢先、ジュンサンは敵対組織に無残に殺害されてしまい、逆上したスクヒは復讐を実行。しかしその後、国家組織に拘束されてしまい、政府直属の暗殺者として第2の人生を歩み始める。やがて新たに運命の男性に出会い幸せを誓うが、結婚式の日に新たなミッションが降りかかり――(作品情報引用)


いきなり格闘シーンから始まる。カメラは大勢いる相手のみを映す。ゾンビのように次から次へと敵が現れるが、バッタバッタと倒していく。これは強いな!と思わせるシーンで観客の目を引かせる。ようやく女が映像の中に姿を現すのはしばらく経ってからだ。ゴツイ難敵と戦う場面となる。猛獣のような相手だ。それでも徹底的にやり尽くした後で階下に降りる。そこには警察官が大勢で待っていた。さすがに身柄を拘束される。


時間軸を前後に軽く振る。いくつかの回想シーンを交える。最初の格闘が何であったか?ということを説明するかのように。元々ある犯罪組織で格闘訓練された女だ。小さい頃に親が刺客の襲撃を受け、一人ぼっちになり、怪しい組織の中で育つ。そして育ての親が敵対組織にやられた後で、復讐のためヤクザ組織に乗り込むのだ。スタートはそのシーンだ。


結局警察に捕まる。懸命に留置所からの脱出を試みるが追手に捕まる。できる女と見込まれ、国家の秘密組織で訓練を受ける。女だけの組織だと意地悪な奴もいる。それもかわしながら、プロとしての力を蓄える。そして、これを終えたらシャバに戻してやると言われ、射的を定めると、そこには見慣れた男の顔があった。


アクションシーンが凄い。全速力で映画の間中駆け抜けるキム・オクビンは魅力的な女だけど、それを演出する監督の腕も大したものだ。
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映画「レッド・スパロー」 ジェニファー・ローレンス

2018-07-16 07:17:41 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「レッド・スパロー」は2018年公開のアメリカ映画


ジェニファー・ローレンスがロシアのスパイを演じるという。おもしろそうだ。アカデミー賞主演女優賞を受賞して着々と大女優の道を歩むが、まだまだ若い。とっさにシャーリーズ・セロンが最近演じた「アトミックブロンド」を連想する。ここでのセロンはムキムキの筋肉派できっちり鍛えて迫力ありなかなか見ごたえがある。それと比べると、若干落ちるかな。ただ、脇役陣がなかなか個性的でいい味を出しているのに助けられている。

スパローとはロシア語でスズメだ。これをもって女スパイに読み替える。元ロシアの外交官だった佐藤優の著作にもロシア秘密警察によるハニートラップの話はよく出てくる。ここでは予備学校で育成されるスパローを映し出す。


ボリショイ・バレエ団のドミニカ(ジェニファー・ローレンス)は、本番中に負った大怪我により再起不能になってしまう。ロシア情報庁幹部の叔父・ワーニャ(マティアス・スーナールツ)にある弱みを握られた彼女は、スパイの養成学校に送られ、自らの肉体で相手を誘惑し、心理操作する技術を学ぶ。スパロー(女スパイ)となった彼女に与えられた任務は、ロシア情報庁の上層部に潜む、アメリカとの内通者を見つけ出すことだった。その人物と通じているCIA捜査官のナッシュ(ジョエル・エドガートン)にブダペストで接触すると、2人は強く惹かれ合うようになる。そしてアメリカのみならず、母国からも命を狙われる立場になってしまう。(作品情報引用)


話のテンポは序盤からわるくない。最初バレリーナだった主人公の可憐な姿を映し、舞台上での接触事故で足を大けがする様子やその後後任のプリマドンナが男性ダンサーと親しくするのを見て、大暴れした後に別の道に入っていく姿を簡潔に映し出す。

その後の養成所での鍛錬が面白い。素人がスパイに育て上げられる過程の話はたまにある。でもハニートラップを含めた教育というのは意外に少ない。男を骨抜きにして秘密を得るためのスパイ指導をするのがシャーロット・ランプリングだ。これがなかなかいい味をだしている。


シャーロットランプリングといえば、最近では老人同士のふれあい映画で見かけることが多い。フランソーズオゾン監督映画でいい味を出す。自分でベストと思うのは、ポールニューマン主演「評決」である。当時まだ30代、これがまたいい女だ。できの悪いポールニューマン演じる弁護士が不利な訴訟に立ち向かう中、謎の女が現れ、適切な助言を与えてストーリーメイキングをする。今とは想像できないくらい色っぽい。

ジェニファーローレンスもかなりいいギャラをもらっているであろう。昔の東映で池玲子や杉本美樹が演じたような軽く汚れたお色気シーンもこなす。シャーリーズ・セロンのようなシャープさはない。脂もタップリのっているような全裸もご披露する。ワニ分署の若き日の横山エミーを連想させる。この辺りは目の保養だが、シャーロットランプリングがご指導する男扱いの心理戦を身につけ、徐々にプロになる。研修後の実技も含めて見ていて面白い。


そこに絡むのはロシアの情報局の幹部である主人公のおじさん役マティアス・スーナールツだ。これがプーチン大統領に似たいかにもロシア人ぽい顔である。でも、喋るのは英語、仕方ないけどなんか不自然。それでもこの男もいい味を出す。

最後に向けては途中で結末が見える。昔フランス映画で「密告」というアンリ−ジョルジュ−クルーゾー監督の傑作があったが、街中を騒がせる告発文書を書いているのは誰か?と真犯人を追う映画だ。途中まで読めなかったが、ある時点で「密告」と同じだなと思う。ストーリーの定跡にかなった展開だった。
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映画「否定と肯定」レイチェル・ワイズ

2018-07-15 17:50:39 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「否定と肯定」は2017年の英国映画


二次世界大戦中のホロコーストといえば、ナチスドイツによるユダヤ人虐殺として繰り返し取り上げられる。当時のナチスドイツ幹部は戦後生き延びても捕まって裁判を受け裁かれる。ハンナアーレントの映画では逃げ切れず逃亡先で捕まった元ナチス幹部アイヒマンの裁判がテーマになった。

ところが、アウシュビッツ刑務所でのユダヤ人惨殺が本当にあったのかと異議を唱える学者もいるという。英国の歴史学者デイヴィッド・アーヴィングだ。その学者がホロコーストの悲惨さを訴える学者デボラ・リップシュタットに対して、自分への批判を名誉毀損として訴える裁判を起こすというのがこの映画の主題だ。南京大虐殺があったか?なかったか?という話のドイツ版というべきか。

1994年、アメリカのジョージア州アトランタにあるエモリー大学でユダヤ人女性の歴史学者デボラ・E・リップシュタット(レイチェル・ワイズ)の講演が行われていた。彼女は自著「ホロコーストの真実」でイギリスの歴史家デイヴィッド・アーヴィング(ティモシー・スポール)が訴える大量虐殺はなかったとする“ホロコースト否定論”の主張を看過できず、真っ向から否定していた。アーヴィングはその講演に突如乗り込み彼女を攻め立て、その後名誉毀損で提訴という行動に出る。


異例の法廷対決を行うことになり、訴えられた側に立証責任がある英国の司法制度の中でリップシュタットは〝ホロコースト否定論“を崩す必要があった。彼女のために、英国人による大弁護団が組織され、アウシュビッツの現地調査に繰り出すなど、歴史の真実の追求が始まった。

そして2000年1月、多くのマスコミが注目する中、王立裁判所で裁判が始まる。このかつてない歴史的裁判の行方は…(作品情報引用)


最初はこんなの相手にするな!と主人公のユダヤ人教授リップシュタットは無視していたら、虐殺はなかったとするアーヴィング教授自身が大学の講義に乱入して反論を述べたり、巧みなマスコミ誘導で主人公に不利な場面をつくる。しかも、訴訟を提起した場所は英国である。英国では被告人が自分の無罪を証明する反証を出す必要がある。相手は手強い。これまでもこういう裁判を乗り越えてきた。一流の弁護団と乗りきる必要がある。手弁当という訳にはいかない。金も必要だ。それでも、全世界に散らばるユダヤ人から援助の申し出がある。入念に準備して裁判に立ち向かう。


悪戦苦闘を描いた映画だ。
映画でも取り上げられるが、アウシュビッツ刑務所内でのホロコーストの指摘に対して、細かい矛盾点をピックアップしながら原告アーヴィング教授は対抗者を論破して乗り切ってきた。被告人であるリップシュタットのもとには自分が証人台に立つという被害に遭われた人たちが訪れる。彼女は証人として被害者を登壇させようとする。しかし、それは原告の思うツボだと言って、弁護団は断固拒否する。当惑する主人公だ。何で被害者を証人申請できないのと訴えてもダメだ。どうやってしのぐのであろう。


法廷劇としては見ごたえがある映画だ。映画「情婦」のチャールズ・ロートンの緩急自在な演技を思わせる法廷弁護士のトム・ウィルキンソンの名演が光る。ただ、どうしても主人公に共感できない。嫌いなタイプの女だ。常に女のいやらしいところばかりさらけ出す。そんなところは苦手だ。
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映画「ギフテッド」 クリス・エヴァンス&マッケナ・グレイス

2018-07-15 08:43:21 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)

映画「ギフテッド」は2017年公開のアメリカ映画


孤児になってしまった数学の天才少女をめぐり、育ての親である叔父とその叔父や実母の親である祖母の間で娘の養育権を争うという話である。誰が育てるのが望ましいという問題提起がストーリーの根底に流れる。

独身のフランク(クリス・エヴァンス)は、フロリダの海辺の町でボートの修理で生計を立てながら、生後すぐに母(=フランクの姉)を亡くした姪のメアリー(マッケナ・グレイス)と、片目の猫と楽しく暮らしている。メアリーが7歳になり学校に通い始めて間もなく、数学の“ギフテッド(天才)”である彼女は問題児になってしまう。周りは特別な教育を受けることを勧めるが、フランクは「メアリーを普通に育てる」という姉との約束を守っていた。しかし、天才児にはそれ相応の教育を望むフランクの母イブリン(リンゼイ・ダンカン)が現れ、フランクとメアリーの仲を裂く親権問題にまで発展していく


小学校に少女が通うようになるが、彼女にとって初歩しか教えない授業は退屈だ。周りは1桁の足し算がやっとなのに、2桁の足し算や掛け算をスラスラ答える。担任は驚く!もっと難しいレベルの問題を担任が与えてもこなす。父親はよくバーでたむろっている優男だ。

担任は名前をネットで追っていくと、同姓に数学の天才女性の名前を見つける。どうやら、その数学の天才女性は少女の母親で、父親と称している男はその数学の天才女性の弟ということがわかる。この親の元で育った方がいいのか?一般レベルに合わせた授業を受けるのではせっかくの数学の才能がもったいないのでは?と担任教師は男性に近づいていく。



数学の才能が天才的でという設定は意外に多い。どれもこれも面白い。ここで他とちょっと違うのは、少女が快活で明るく人の気持ちもわかるということ。映画にでてくるこの手の天才は、人付き合い苦手な自閉症タイプが多い。この辺りがちょっと違うかな?

それにしても、こんな小さな女の子が難しい数式を書くのはたいへんだったのでは?∫∫積分マークにせよ、指数関数 の底eやそのべき乗 など、普通の数字すら書くのがやっとな女の子が普通は書けないよね。微分方程式が好きだなんて出てくる。父親もそれなりの素養があるとはいえ、7歳までほぼ独学でここまでのレベルまで達することができるかどうかは疑問だな。突っ込むとなるとそこだ。

でも、その天才少女を普通に飛び級で大学レベルまでの教育をさせてしまうシステムがあるのが、日本とアメリカの違い。公平という言葉が浸透してしまい、なかなか日本では難しいが、これから先はどうなるのか?


映画にスパイスを与えるのはアフリカ系名女優オクタビアスペンサーだ。どの映画に出ても特別な存在感を示す。隣人で主人公の数少ない理解者だ。そんな隣人がいても母親と息子が争う。その対決を法廷で行うということに別に金がからんでいるわけではない。双方に言い分がある。どちらもごもっともだ。こんなパターンいやだな。

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