映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ちょっと思い出しただけ」池松壮亮&伊藤沙莉&松居大悟

2022-02-28 19:29:33 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「ちょっと思い出しただけ」を映画館で観てきました。


映画「ちょっと思い出しただけ」池松壮亮と伊藤沙莉主演の青春ドラマである。最近公開の日本映画では観てみたいと思うものがなかった。舶来モノばかりになっているなと感じたところで、ピックアップしてみた。松居大悟監督はどうやら自分の後輩のようだ。

観客には若者が目立ち、カップルというより男性2、3人できている。思いがけず客席は埋まっている。現代若者事情の映画といえば、昨年の花束みたいな恋をした」のようなオーソドックスな恋をたまには見てみたい気分になることもある。

もともとダンサーを目指していて、足をケガして照明係になっている男性と、タクシーの女性ドライバーとの恋物語である。

思いがけずよかった。
女性がタクシー運転手というだけで先入観はほぼない状態で見始める。最初から主役のカップルでくっついてというわけではない。それぞれのプロフィールを語っていくが、あれ「なんだか変!」マスクをしている世相なのに、だんだんマスクがなくなる。もしかして、「時間が戻っているの?」気づくのに時間がかかる。池松壮亮と伊藤沙莉それぞれを追っていくが、2人並んで映るとなるのに映画が始まって40分以上かかる。


⒈多彩な登場人物
池松壮亮宮本から君へで一皮むけた印象をもつ。斜に構えた雰囲気を持つ若者役が多かったせいか、冷めた若者から熱い若者への変貌に応援してあげたい気分になれる。マイナー劇団でダンサーなんてどう考えても金はなさそう。さびた鉄骨階段の昭和風アパートに住む。しかも、足をケガして照明係に変わらざるを得ない。東京によくいる志があっても貧乏系若者に同じ目線の高さを感じる観客も多いのでは?

伊藤沙莉
の出演作はいくつも観ているけど、あまり意識していなかったなあ。主演の「タイトル拒絶」はDVDスルーでみたけど、イマイチ。寝ても覚めてもでは唐田さやかの友人役だったよね。タクシーでたまに女性運転手に出会うけど、オバさんばかりで若い子って地方でしか見たことない。制服着てなんかいい感じだ。それにしても声ハスキーだよね。タバコぷかぷかなのかしら?スナックにいる中年のホステスによくいる声だ。


永瀬正敏と國村隼が脇役ででていると安心感がもてる。2人ともすごい出演量をこなしている。また、外国映画にも出演する国際派俳優でもあるのも共通だ。きっとオーダーは多いんだろうけど、どういう判断基準で出演しているんだろうか。


濱口竜介監督「偶然と想像での大学教授役で注目を浴びた渋川清彦は、本当は閉鎖病棟極悪精神病院患者の方が似合う。岬の兄妹で障がい者の妹に売春させる悪い兄貴だった松浦祐也ONODAで小野田少尉と島に残る兵士役で出ていたしコミカルな役が似合う。成田凌もスナックにたむろう酔客の役で、今回は豪華な酔っ払いが揃った。

⒉街の上と比較して
「街の上で」は下北沢を舞台に現代若者事情を描いた昨年の映画だ。「街の上で」はあまり好きになれなかった。古着屋に務める主演の若葉竜也は好感を持ったけど、性格の悪い女が自分勝手な動きをするので気に入らない。セリフもちょっとしゃべりすぎだと感じた。

「ちょっと思い出しただけ」の方が映画らしい余計な状況説明を省いているのもいい。小さなエピソードを積み上げて主役2人の人間像を描いていくが、多分たくさんのアイディアから選んだのであろう。簡潔でムダがない。自分をムカつかせるような場面もなく快適に現代若者事情を観れる

⒊好きなシーン
先行情報なしに観たので、時間軸を飛ばす映画かと思った。途中で時間が戻っていくのに気づく。恋の盛り上がりって、知り合ってからまもない時期で、終焉が近づくにつれて冷めていく。時間軸が逆なのでむしろ、映画の中間から後にいいショットがあったな。

休館中の誰もいない水族館で2人がシュモクザメがゆうゆうと泳ぐ水槽の前でいちゃついてダンスを踊るシーンって好きだな。行ったことがあるので八景島シーパラダイスとすぐ気づいたけど、池松壮亮が赤いシーパラダイスと背中に書いてあるTシャツを着ていて確信した。


告白のシーンっていくつもある。どれもこれもいい感じだけど、あえて中途半端にしてしまっている。なんかせつない。あとは最終に向けて、池松壮亮がたぶん伊藤沙莉が運転するタクシーだと思って何も言わずにたたずむシーンも好きだ。

⒋コロナタクシー事情
いかにもコロナ禍以降の現代を思わせるマスクをした運転手の伊藤沙莉を映すシーンで始まる。新宿の青梅街道のガードあたりを車内から見た映像を何度も映す。歌舞伎町からタクシーで深夜帰る時に向かういつもよく見る風景だ。客が最近どうと聞いてサッパリと答えるシーンを見てどこでも同じこと言っているんだなあと感じる。

タクシー車内のエピソードも多い。小話の積み重ねで何かが見えて来る。浮気相手とデートの約束をするサラリーマンが家に仕事で遅くなると言っている電話をすると、急ブレーキをかけていじわるする。かわいいもんだ。高岡早紀演じるクラブママ(これがピッタリ)らしき姐さんからいい仕事あるよと誘われたり、松浦祐也演じる酔客とあと2人がタクシーの中で大騒ぎするんで凄んでみたり逸話がたくさんあるのも魅力的。


親からタクシーチケットをもらって塾へ通っている賢そうな少年から、今日はイヤなことあったんですか?と同情されるシーンで伊藤沙莉は微妙な表情をしていたのが印象的だ。そういえば、2月3日に食事行ってからタクシーチケット使っていないや。蔓延防止が早く終わらないかなあ。
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映画「選ばなかったみち」ハビエル・バルデム

2022-02-27 16:11:23 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「選ばなかったみち」を映画館で観てきました。


映画「選ばなかったみち」ハビエル・バルデムが認知症患者を演じるサリー・ポッター監督作品である。主役のみならず、エル・ファニングやローラ・リニーと脇を固める共演者たちとの自分の相性はよく、観に行くことにした。ビックリするくらい不入りだった。

認知症をわずらっているメキシコ人移民の作家レオ(ハビエル・バルデム)が娘モリー(エル・ファニング)の手を借りながらニューヨークで一人で生活しているが、昔メキシコにいたころに好きだった女性との関わりやギリシャでの創作活動を脳裏で思い浮かべながら現実と空想を混在させてしまう話だ。


残念ながらおもしろくなかった。
ハビエル・バルデムは殺人鬼を演じたアカデミー賞作品「ノーカントリー」をはじめ、気味が悪いくらい強いというイメージを持つ。その一方で彼にはがんの末期患者を演じたビューティフルという傑作がある。これはよかった。ここでも同様に認知症患者を演じて、演技自体のレベルは高い。

でも、見どころがまったくない。娘との関わりを映す現実の世界、メキシコ時代に付き合っていた女性との関わり、ギリシャでの創作活動で現地で若い女性と知り合う話のどれも起伏も中身もない。一人で夜のニューヨークを彷徨うシーンもあるが、エピソードといえるものではない。ちょっとがっかり。

レオはニューヨークのループ鉄道に接する古いアパートに1人住む。誰が金銭の面倒を見ているのかわからないが、ヘルパーが面倒見ている。でも、すべてのことに反応が薄い。とても平常の生活ができる状態でない。判断能力もないし、自宅の住所さえも言えない。普通だったらどこかの施設で厄介になってもおかしくない。大けがをして入院した時に娘が連絡をして、母親(ローラリニー)が来るが、とっくに離縁しているようだ。


まあたいへん面倒な事態に陥っているようだ。自分も初老の域に達しているので、ちょっとは気になる。幸い、死んだ両親は意識を失う寸前まで頭は冴えていた。周囲には認知症の身内を抱えている人もいるので、こうはなりたくないと思ったというだけの映画か。たまにはこういう作品に出会うこともあるかな。
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映画「ドリームプラン」ウィル・スミス

2022-02-23 18:24:41 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ドリームプラン」を映画館で観てきました。


映画「ドリームプラン」はウィルスミスが、テニスのウィリアムズ姉妹の父親リチャードを演じる新作だ。原題は「King Richard」であくまで父親がメインの映画である。ウィリアムズ姉妹といえば、プロテニスに関心のない人でも知っている存在だろう。大坂なおみが初めて4大メジャーで優勝した時、決勝の相手がセリーナウィリアムズと知ってヤバイと思った日本人は多いと思う。ウィリアムズ姉妹はとんでもなく強かった。その姉妹が幼いころから父親の英才教育を受けていたというのはこの映画の存在で初めて知った。

姉のビーナス・ウィリアムズが生まれる前から、父親リチャード(ウィルスミス)は78ページに及ぶ世界チャンピオンになるための計画書にまとめて、幼少の時から妹のセリーナとともにテニスのレッスンを始める。腕を磨いた娘を有名コーチのもとに強引に押し込みながらも、自分の指導信念を貫き2人の娘を育てたという話である。


成長がテーマになる映画には高揚感がある。気分がいい。
今回は、ウィリアムズ姉妹というより頑固で偏屈で変わり者のオヤジにスポットを当てる。ジュニアの大会に出れば絶対に勝てるとコーチに言われても、父親は出場させない。映画を観ていて、誰もがオヤジのことを変な奴だなあと思うであろう。そんなシーンが次から次に続く。実はそれが映画の見どころである。


⒈ウィリアムズ姉妹の父母
父親リチャードは警備員である。両親ともに離婚をしていて妻にはつれ子がいる。ウィリアムズ姉妹以外にも女の子が3人いて合計5人姉妹だ。みんな仲が良い。一般にプロテニスプレイヤーを育てる家庭と比較すると豊かとはいえない。練習していてもエリアの不良グループがちょっかいだして邪魔しに来る。育ったのはまともなエリアではない。

リチャードはマッケンロー並みの変わり者というセリフがある。一斉を風靡したマッケンローの変人ぶりは映画「ボルグ/マッケンロー」でも映し出された。母親も夫を支えるが、あまりの偏屈ぶりに耐えきれない場面もいくつか出てくる。妻の「自分一人で育てたと思ったら大まちがいだ!」なんて我が家でも妻がのたまうセリフもあるけど、外では変人に見えるパフォーマンスをとるが、家ではやさしい。

映画「シャインで息子を音楽家にさせようとする厳格で頑固なオヤジが自分には近く感じる。「シャイン」のオヤジはともかく厳格すぎるのだ。自分の元で教育すればいい音楽家になれるという国内外からの誘いを断りまくる。結局、子どもは精神に異常をきたす。ある意味ウィリアムス家も似ている。ただ、ウィリアムズ家のいいところは、根底にやさしさがあるところだ。


⒉有名コーチ
父リチャードは娘2人のテニスの腕前が認められるようになる前から有名テニス関係者に自分の娘を売り込んでいた。でも相手にはしてもらえなかった。

ある一定のレベルまで達したので有名コーチに自分の娘を指導してもらおうとリチャードは考えた。そこで無理矢理飛び込んでいってピート・サンプラスのコーチ、ポールコーエンに自分の娘を売り込む。仕方なくテニスの腕前をコーエンが見てこれはものになると預かる。でも、オープンスタンスにこだわるリチャードとコーエンと意見が合わない。そのころからビーナスウィリアムズのテニスの腕に注目するスポンサーが現れるがリチャードは取り合わない。

そして、フロリダでテニススクールをしているリックメイシーの世話になるため移住する。プロコーチの世話になってもリチャードの信念とプランは変わらない。そんな頑固さをうっとうしくも感じるが、映画のキーポイントである。

⒊懐かしのテニスウエア
時代設定は80年代から90年代前半にかけてである。コーチが着ているFILAのテニスウェアが懐かしい。70年代後半からスウェーデンのボルグの活躍とともに日本でも流行った。大学に入って、我がキャンパスではテニス系クラブの連中がFILA のウェアを普段着で着ていてカッコよく、六本木のディスコでも目立った。テニスと関係なく自分も着てみた。スキーセーターも着たなあ。

先日北京オリンピックのオランダ選手がチームカラーのオレンジのウェアにFILAのマークがあるのを見て懐かしいと思ったところだった。あの当時、イタリアンタッチの原色が強調されたデザインが斬新に感じた。何気なく調べたら、韓国資本になっていたのね。これには驚く。


FILAとは関係ないが、ウィルスミスのテニスウェア姿はカッコいい。

⒋父と娘の交情
自分にも娘がいるせいか、父と娘が情を交わし合う映画にはついつい点数が甘くなる。熱烈指導で世界的プレイヤーになることを目指すが、リチャードは学校の勉強もちゃんとやれとうるさい。テニスだけだと後々大成しないと言い切る。本来ジュニアの大会に出るべきだが、そうしない。娘の将来を思ってのことだが、14 歳になったとき、周囲に同年齢でプロになる女の子も現れる。さすがに何とか試合をやりたいとコーチを通じてビーナスは申し出る。そこでの父娘そして母親との触れ合いも見どころだ。

ただ、自分がいちばん好きなシーンは、年長である姉がプロデビューした後、妹のセリーナがテニスコートを見てたたずんでいるのをリチャードが見て、やさしく声をかける場面だ。「セリーナのプランもちゃんと考えているんだよ」と語りかけるウィルスミスの姿がやさしくて素敵だ。
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映画「白い牛のバラッド」マリヤム・モガッダム

2022-02-19 20:02:10 | 映画(アジア)
映画「白い牛のバラッド」を映画館で観てきました。


映画「白い牛のバラッド」イラン映画、日本で公開される作品はいずれもレベルが高い。予告編で冤罪で死刑執行された男の未亡人の物語だというのはわかっていた。 マリヤム・モガッダム、ベタシュ・サナイハの共同監督マリヤム・モガッダムが主演の未亡人を演じる。

殺人犯で死刑となった夫を亡くして、聴覚に障害のある娘と2人で暮らすシングルマザーのミナの元に裁判所から真犯人が捕まったという報告が来る。賠償金がもらえることになる。その後、夫から金を借りたというレザが現れ、住居の移転先を斡旋してくれたり親切にしてくれる。しかし、レザにはミナに告白していない秘密があったという話である。


おもしろいとは到底言えない重い映画である。
サスペンス的な要素もあり、ストーリーの先行きが常に気になる緊迫感がある展開で飽きない映像の構図は上質できれい。類似するパターンのいくつかの映画が思い浮かぶが、今回のような設定は初めて観る。イスラム教や古代メソポタミアの倫理観が影響している感を持った。

⒈金銭的に困窮する主人公
テヘランの牛乳工場で働きながら耳の聞こえない幼い娘ビタを育てるミナは、賃料も滞納して、生活も困窮している。遺族年金をわずかしかもらえない。娘も学校になじんでいない。そんな時に裁判所に呼ばれる。


夫ババクの殺人容疑裁判の証人になった2人のうちの1人が真犯人とわかったのだ。すでに死刑は執行されており、夫はこの世にいない。賠償金をくれるというが、裁判所当局の判事に怒りがこみ上げる。映画が始まって早い時間に冤罪だったということがわかる。この映画は冤罪を証明するという内容でないことがわかる。

⒉突然訪ねてくる夫の友人
突然、未亡人ミナのもとへ1人の男性が尋ねてくる。予告編で男性が訪問するシーンがある。これって真犯人なのかな?と観る前に想像していた。実際には、真犯人が分かっているので尋ねてくるわけがない。夫ババクの友人だという男性レザは夫から多額のお金を借りているという。あれ?詐欺師かな?と思ったら、普通にそのお金を返す。しかも、ミナと娘に親切にしてくれるのだ。


日本の倫理観と違うのか、イスラム教の考えなのか?男性が訪ねて来て部屋に入ったのを見たというだけで大家から追い出されることになる。部屋探しで不動産屋を回っても、未亡人は受け入れてくれないことが多い。途方に暮れているミナにレザは安い賃料で借りられる部屋を紹介するのだ。レザに助けられるのだ。

こういうシーンがある一方で、レザがミナに夫の無罪を説明した裁判官と2人であっているシーンが映る。いったい何者なんだろう?

⒊高倉健の唐獅子牡丹
高倉健の任侠映画ってわりと似たような設定になることが多い。昔はヤクザだったけど、今は出所して堅気なんてパターンは「夜叉」や「冬の華」など何度もある。その「冬の華」に類似しているのが、主題歌があまりにも有名な「唐獅子牡丹」である。三田佳子との共演だが、三田佳子演じる組の姐さんの亭主を義理の世界でやむなく殺したのが、高倉健で刑務所から出てきて名乗らずに姐さんと子どもをかわいがるという設定だ。映画を観ながらアナロジーを感じる。


⒋主人公の変化
親切にしてくれるレザは夫が亡くなった後に神が授けてくれた人だと思うようになる。聴力のない唖の娘もレザと一緒に映画を観たりしている。レザの顔を見るミナの表情が変化していく。心臓発作を起こしたレザに渾身の看病をする。いなくてはならない人になる心境の変化をマリヤム・モガッダムが巧みに演じる。


しかし、観客であるわれわれはレザがどういう人物かを知っている。いったいどんな結末にもっていくのか?おそらく観客の誰もがそう思っていたところで、最終転換を迎える。

イスラム教の教義の影響もあるのだろうか?と思いながら、最終局面を眺めていた。いや、高校の世界史で習った古代メソポタミア文明のハンムラビ法典だと思いつつ、日本と違った強い遺伝子がイラン人にあるのかなと感じていた。
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ドキュメンタリー映画「THE RESCUE 奇跡を起こした者たち」

2022-02-17 04:37:39 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
ドキュメンタリー映画「THE RESCUE 奇跡を起こした者たち」を観てきました。


「THE RESCUE 奇跡を起こした者たち」はドキュメンタリー映画だ。タイで洞窟探検をしていた少年たち13 人が大雨で浸水して洞窟内に取り残された話はニュースで見た記憶がある。その事件をドキュメンタリー映画「フリーソロ」でアカデミー賞を受賞したエリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィとジミー・チン監督夫婦が映画にまとめた。


映画の予告編を観ていて、何気なく洞窟で閉じ込められた少年たちを救出するドキュメンタリーが放映されることを知った。予告編映像では洞窟の奥に少年たちがいることをダイバーが突き止めたところまでは出ていた。でも素潜りで水で満ち溢れた洞窟を抜けるなんてこともできないだろうし、どうやって助けられたんだろう。自分の頭で考えても方法は、水を抜いたんだろうか?穴を開けたのか?としか思い浮かばない。とりあえず観てみることにした。

これはすごい。
自分の謎がこんなにすごい脱出劇だったことにひたすら驚く。まるでスパイ映画の脱出の場面がリアルにとり行われたわけだ。想像以上に危機一髪だった。

作品情報の最初だけ引用する。

2018年6月23日、サッカーチーム「ムーパ(イノシシ)」に所属する少年12 人がサッカーの練習後、コーチ同行のもとタイ北部チェンライ県のタムルアン洞窟探検に入った。しかしその日は豪雨により洞窟が浸水し、出入り口が塞がれてしまった。少年たちは帰宅できなくなり、不審に思った家族から行方不明と報告され、捜索作業が始まった。(作品情報 引用)

ここまでは引用したが、その先に作品情報に書いてあることは違う。
現地に捜索隊が大挙して集合して捜索に難航した後に、ダイバーが呼ばれたとなっているが、映画を見る限りでは洞窟に閉じ込められていることがわかった後、早い時期に英国にいる2人のダイバーはタイに来ている。しかも、洞窟のどの辺りに13人の少年たちがいるかはその時点では想像はできても、まったくわかっていない。



タイの現地にいる海軍の特殊部隊をはじめ捜索隊の人たちは洞窟ダイバーの実力を信用していない。邪魔するなと言いたげだ。まずはダイバーたちは潜って、入り口に近いところにいる逃げ遅れた男たちを見つける。かなり難儀しながら、ボンベを口に加えさせて脱出させる。

洞窟の中をダイビングすることの難しさが捜索隊にわかって、すいすいと潜る中年ダイバーたちはここで実力を認められる。そして先頭を切って潜らせてもらえるようになる。

洞窟の地形はわかっている。しかし、奥まで進んでも少年たちはいない。酸素ボンベには容量がある。あまり先まで行ってしまうと、下手をすると戻る前に酸素不足でお陀仏だ。何度かトライした後で、無臭の洞窟で匂いを感じる。洞窟の中は基本的には無臭だそうだ。そして、13人がそこにいるのを発見し、出口に戻る。ここまで9日から10日間かかった。殉死者も出てしまっていた。


世界中に歓喜にあふれたTV映像が映る。やったー!
日本ではここまで騒いでいなかったのでは?CNNとか全米のメジャーTVとかのニュース報道がすごい。さてどうして救出するのか?

捜索隊もあとは救助隊に任せることとなった。ところが、救出案を練ってもうまくまとまらない。洞窟の中の水を出そうとしても、数センチしか水位は下がらない。仏教国だけに偉い僧侶まで来てお祈りする。シャーマンの世界に近い。
結局はダイバー2人と世界中から集められたダイバーに頼らざるを得ないことになった。一体どうなるのかは観てのお楽しみ。

実際には13 人を見つけた後が大変だった。救出途中で呼吸が止まった少年もいた。どうやるのか想像できなかったが、洞窟ダイバーたちはともかく助けねばということで知恵を絞って救出に向かう。ヒントではないが、1人医師のダイバーがいた。だからと言って容易ではないよね。日本だったら無理なんじゃないという気がした。

このダイバーたちは本当にすごい。子供の頃から内気でいじめっ子にいじめられたなんて話まで出てくる。それがなぜかダイバーに共通している。戻ったら母国英国で大騒ぎ、エリザベス女王から勲章を直接もらっている。日本だったら天皇陛下が直接授与するのかな?そんなこと考えていた。


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映画「ブルーバイユー」

2022-02-15 18:58:53 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ブルーバイユー」を映画館で観てきました。


映画「ブルーバイユー」は韓国系アメリカ人ジャスティン・チョンが自ら脚本、監督、主演を兼ねるアメリカ映画である。韓国では孤児院にいる孤児が養子縁組で外国人に引き取られるケースが多いのを韓国映画「冬の小鳥」で初めて知った。それ以来、養子縁組の題材は「バービー」など韓国映画で何度も観た。今回は国際養子縁組のその後が必ずしもうまくいっているとは限らないことを題材にしている。

幼い頃に養子縁組でアメリカに来た韓国系アメリカ人アントニオ(ジャスティン・チョン)は連れ子のいるアメリカ人女性(アリシア・ディキャンベル)と結婚した。親が移民の手続きをしていなかったせいで強制送還を言い渡され、なんとか回避しようと右往左往するという話だ。


監督兼主演のジャスティン・チョンは実にうまくまとめている。
例によって社会学者が好みそうなアメリカ下層社会が描かれる。ポータブルビデオで撮っているみたいな映像もある。養子縁組に絡んだ移民問題だけが題材ではない。複雑な家族関係に関わる題材も取り上げ、個性あふれる登場人物をチョンは映像に放つが、きめ細かに捌いている。登場人物は映画の途中で徐々に増えてくる。普通だったら、登場人物が多いと頭の整理がつかなくなることが多い。この映画は大丈夫だ。

将棋の駒の特性を知り尽くして指す棋士のようにキャストの個性をうまく活かせる監督とみた。不思議な肌合いを感じる作品だ。

腹立たしくさせる話を連発する。アントニオは窃盗団の友人などの下層レベル以下の人間と付き合い、悪いことをする。常識人が見ると、たぶん呆れるであろう主人公の行動と発言が続く。わざとだろう。観客に嫌気を起こさせるのも、これはこれで意図的なものだろう。半年ごとに里親が変わったこともあるというアントニオが普通に考えるとまともに育つはずがない。そんな嫌な感じが続いても、徐々に監督がいろんなことを計算し尽くしているのに気づき、深みのある映画だと感じるようになる。

⒈強制送還命令と反論
妻には警察官の前夫がいる。娘とはたまに会っているが、強引なので妻も娘も嫌がっている。ある時、偶然スーパーで警察官の相棒といる前夫にバッタリあったときにアントニオが逆らって大暴れ、結局留置される。その時、移民の手続きをしていなかったことがわかり、前科があって心証も悪く強制送還の命令を受けてしまう。

赤ちゃんも産まれる妻も含めて大慌て。でも、弁護士に言わせると、2000年以前に養子縁組でアメリカに来た人たちに同じ境遇の人が多いらしい。弁護費用は5000ドル、ただでさえも金のないアントニオにはすぐにだせない。そこでアントニオは暴挙にでるのだ。


⒉まともじゃない主人公アントニオ
本業はタトゥー師だ。タトゥを彫る場所を借りているけど、場代は滞納したままだ。妻が懐妊して、金が必要なので別の仕事を求職するが、前科二犯でもあり雇ってくれない。

映画を観ているあいだ、こいつ変なやつだなあと思っていた。オイオイ何でこんなことするの?と、まともな教育を受けているようには見えない。ベストセラーになった宮口幸治著「ケーキの切れない非行少年たち」に出てくるような男だ。やることなすことハチャメチャな奴だけど、妻と娘には愛情を持って接している。ここだけは救われる。


⒊アリシア・ディキャンベル
アントニオの妻役には「リリーのすべて」アカデミー賞助演女優賞を受賞しているアリシア・ディキャンベルを起用する。好演だと思う。パーティのシーンで題名になった「ブルーバイユー」を歌う。これがなかなかいい。そういえばディズニーランドの「カリブの海賊」の隣にレストラン「ブルーバイユー」があったなあ。映画では青い入り江という訳を与えていたが、ニューオリンズの街を船から眺める船上でいい感じで歌っていた。


⒋リン・ダン・ファン
金に困っているアントニオが街でタトゥーをやらないかと呼び込みをしていると、1人の上品なアジア人女性が近づいてくる。冷やかしかと思ったら本気でやって欲しいという。手首にユリの花のタトゥーを彫ってあげる。この後重要な存在になっていく。松任谷由実に似た風貌を持つ女性はベトナム生まれだ。この年になるとこういう40代女性がよく見える。

終わった後で配役を確認してリン・ダン・ファンということがわかる。これには驚いたカトリーヌ・ドヌーブ主演「インドシナ」で王女役を、フランス映画「真夜中のピアニスト」でピアノ教師役を演じていて強い印象を残した。自分も感想を残している。フランスが主戦場だけにアメリカ映画で会えるとは思わなかった。魅力的な女性だ。


⒌連れ子が恐れること
連れ子の女の子の使い方がうまい。両親に自分の妹が産まれることを恐れている。両親にとって実の子供が産まれたら自分には愛情がそそがれないのではと心配する。いくつかの場面で見せる心配そうな表情が巧みだ。荒井晴彦の脚本が冴えた日本映画「幼な子われらに生まれ」で、連れ子の少女が浅野忠信と田中麗奈演じる両親に赤ちゃんが産まれるのを恐れる設定を連想した。


最後に向けてはブライアン・デ・パルマ監督の「愛のメモリー」を連想させるシーンがでてきた。お涙頂戴の世界にも見えるが、映画の引用がうまいなということに気を取られていた。
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映画「国境の夜想曲」

2022-02-13 17:12:30 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「国境の夜想曲」を映画館で観てきました。


「国境の夜想曲」はイタリアとアメリカの国籍を持つ映画監督ジャンフランコ・ロージによるドキュメンタリー映画である。ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した「海は燃えている」を見た記録が残っているが、感想は書いていない。インテリ系評論家の評価がよく、濱口竜介監督との対談の記事もあり、とりあえず映画館に行ってみる。


ジャンフランコ・ロージ監督イラク、シリア、レバノン、クルディスタンの国境エリアに滞在して、3年がかりで作った作品である。もちろん娯楽性はあまりなく、紛争で揺れ動きこれまでの生活を破壊された現地を徘徊する中で出会った人たちの姿を映し出す。

戦争で失った息子を想い哀悼歌を歌う母親たち、ISIS(イスラム国)の侵略により癒えることのない痛みを抱えた子供たち、政治風刺劇を演じる精神病院の患者たち、シリアに連れ去られた娘からの音声メッセージの声を何度も聞き続ける母親、夜も明けぬうちから家族の生活のため、草原に猟師をガイドする少年。


監督自らカメラを持ち、触れ合った人たちを映像にしていく。美的感覚にすぐれた監督だけに、広大な平原や海をバックに油田の炎が映る映像ショットなどは飛び切り美しい。夜半に水辺に浮かぶ舟の向こうで、遠くに銃声が聞こえながら戦火の赤い光が見えるシーンも映像の美的センスにすぐれている。空がこんなに広かったのかとうなる場面が多い。


ただ、美しい風景描写を見せる映画ではない。しかも、この上なく暗い悲惨な生活を戦闘シーンなしで描く映画だ。観るのに疲れて途中で退席する観客も目立った。正直、インテリ筋の評価ほど傑作という感じはしない。観に行こうとする人には覚悟がいるだろう。

⒈ISISの悲惨さ
印象に残ったのは、幼稚園から小学校低学年と思しき少年が、子どもたちがクレヨンで描いた絵を見せながらISISの行為の悲惨さをしゃべって伝えるシーンだ。子どもたちの集落はISISの襲撃を受けている。連中は頭を切り落としたりするらしい。われわれがTVニュースで聞くイスラム過激派の酷さを子どもたちが見ているのだ。本当に怖かったんだろう。昨年末観た「モスル あるSWAT部隊の戦い」の映画でもISISとのゲリラ交戦を描いていた。アラブの人たちから見ても敵なのだ。


⒉学校も行けず一家の生計を立てる14 歳の少年
14 歳の少年が一家の家計を成り立たせるために、働く話で、猟師のガイドを日雇いでしている。いつも客がいるわけではない。普通だったら学校に就学する年齢だけど、そんな余裕はない。レバノンの映画で「存在のない子供たち」という映画があった。同じような年齢で、妹は金目当てで嫁に行かされるし、自身にはIDカードはなく何もできず八方塞がりで自分を産んだ親を訴える。この少年は街のスラム街で育ち口八丁手八丁でウソばかりついていた。この映画の少年は田舎の子でそんな度量はない。


朝が来ない日はないと宣伝に書いているが、とても来るようにも見えない。かなしい。

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映画「ウェストサイドストーリー」スティーブン・スピルバーグ

2022-02-11 23:19:05 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「ウェストサイドストーリー」を映画館で観てきました。


1961年の名作「ウエストサイドストーリー」スティーブンスピルバーグ監督がリメイクした新作がようやく公開された。もちろん字幕版で観た。巨匠スピルバーグもこの作品に憧れみたいなものもっていたのかな?生きているうちにつくりたかったんだろう。シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を基調にして作られたストーリーはあまりにも有名であるので、ネタバレも問題ないだろう。

1950年代後半のマンハッタンのウェストサイドでは、ポーランド移民とプエルトリコ移民の不良グループが縄張り争いをしていた。中立エリアでのダンスパーティでポーランド系のトニー(アンセルエルゴート)とプエルトリコ系のマリア(レイチェルゼグラー)がお互い一目惚れで恋に落ちる。争いに決着をつける決闘が決行され、トニーが止めようと向かったが、逆に争いに巻き込まれてしまうという話である。オリジナルストーリーの基調とレナードバーンスタイン作曲の音楽は変わらない。でも、進化した新作が生まれる。

繰り広げられるダンスには圧倒された。本当にすごい!
前半からスピルバーグは飛ばす。まだ幼児で1961年の作品はリアルで観ていないが、その後映画館の大画面で迫力たっぷりの完璧なダンスを堪能している。そんな名作を受けた本作は、前作をさらにボリュームアップしたダンスで気分を高揚させる。ものすごい躍動感である。しかも、衣装や美術も色彩感覚にすぐれ、カラフルなドレスを身にまとった女性陣の動きはこんなの観たことないと思わせる凄みがあった。


⒈ダンス会場での出会い
プエルトリコの移民であるマリアは自分の兄ベルナルドとその恋人アニータと一緒にダンスパーティに向かう。プエルトリコのシャーク団の仲間だけでなく、ポーランドのジェット団の連中も来ている。まだ若いマリアにとっては晴れ舞台である。ダンスフロアでは、双方がペアでまちまちにマンボダンスを踊っている。動きに隙のないテクニックでピタッと決まっている。前作でも、このダンスはすごかった。これぞ完璧なダンスだと思ったものだ。


今回は一段とボリュームアップした印象を受ける。カラフルなドレスでより躍動的だ。圧倒的なダンスシーンが続くうちに、トニーとマリアが目をあわせる。お互いビビっとくるのだ。そして、恋のはじめのときめきを得た2人の恋がはじまる。むしろマリアの方がみずからキスをして積極的だ。常夏の島で育ったマリアの情熱を感じさせる。

⒉トゥナイト
1961年の前作でナタリーウッド演じるマリアが夜トニーと落ち合い、アパートの階段で「トゥナイト」を歌うシーンは映画史上で最も好きなシーンの一つである。マリアがレナードバーンスタインのオーケストラに合わせて歌い始める場面はいつ見ても背筋がゾクゾクしてしまう。ナタリーウッドは自ら歌っていないという有名な話があってもどうでもいいことだ。


「ウエストサイドストーリー」予告編で、レイチェルゼグラー演じるマリアがゆったり「トゥナイト」を歌うので、少し違った感じかな?と思ったら、基調は同じだった。新作でもマリアの歌声で背筋に電流が走った。座席の斜め前の若い男性が歌に合わせて身体の動きが変化するのがよくわかる。ただ、2人を映すカメラワークにちょっと疑問、マリアの顔が階段にかぶさってしまうのはちょっとどうかな?それでも3万人の俳優から選ばれたレイチェルゼグラーの歌唱力は抜群だった。

⒊アメリカ
「アメリカ」で踊るダンスが映画のピークかもしれない。前作でもジョージチャキリスとリタモレノを中心に盛り上がった場面である。スタジオでのダンスと思われるが、今回は大挙して一気にアウトサイドに飛び出し踊りまくる。そこでリードを取るのはマリアの兄ベルナルドの恋人アニータだ。演じるアリアナ・デボーズエキゾチックな雰囲気をもった色っぽい女性だ。周囲はカラフルなドレスを着た女性が躍動的なダンスを踊っている。ビシッと決まっていて、動きにスキがない。こんなダンスは見たことがない。アリアナデボーズアカデミー賞助演女優賞は当確に思える


⒋ジョージチャキリスとリタモレノ
小学校の頃、映画「ウエストサイドストーリー」がたびたびロードショーで公開されていた記憶がある。洋画好きの父はミュージカルには関心がなく、連れていってもらえなかった。街に貼ってある映画紹介のポスターでは男性ダンサーが大きく足を上げている写真が写っていた。てっきりあのダンサーが主人公かと思っていた。なぜなら雑誌などの「ウエストサイドストーリー」の記事で紹介されるのは、ジョージチャキリスの写真だったからだ。ようやく映画を観ることができたのは大学生になった後かもしれない。


今回ベルナルドはジョージチャキリスと比較すると、ワイルドな中米系の顔をした俳優が演じている。前作では、プエルトリコ側は普通の白人が若干黒く見えるメイクをしていた。当時リタモレノはプエルトリコ出身だけど、よりらしく見えるメイクをしていた。
リメイクをするにあたり、スティーブンスピルバーグピュアなヒスパニックメンバーを集める。顔つきがちがう。スペイン語が飛び交うのは前回には見られない。よりリアルに移民生活であることを示す。人種差別が顕著に見えた時代と異なり、ダイバーシティ(多様性)が尊重される現代にあい成功している。

今は便利な世の中で、ウエストサイドストーリーの重要シーンがYouTubeで見ることができる。そこで見られるジョージチャキリスとリタモレノのダンスはビシッと決まっていてすばらしい。新作でもう一度リタモレノを登場させるのはすごい。ドラッグストアの老いた女性店主を90近い年齢で演じる。これが効いている。


今のご時世で考えると、こんな不良グループの争いというのはちょっと考えづらいかもしれない。こんなバカな決闘をする奴はいないだろう。しかも、前作の原型を保ったストーリーは後半に向かって高揚感が急激に失速する。なんか寂しい気持ちになってくる。それでも、この新作で株を上げた若手メンバーの活躍を引き出したスティーブンスピルバーグの手腕はさすがとしかいいようにない。
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5000日目の雑感

2022-02-10 19:15:32 | Weblog
ブログを開始して5000日目となった。日が経つのは早い。もともと何気なくクリックしただけでスタートしたブログだ。映画とライフデザインで、日常をもう少し語ろうとしていた。でも、周囲にはブログをやっていることは13 年以上言っていない。妻と娘は知っているが読んでいない。あくまで備忘録にすぎない。


映画鑑賞を通して、日常の出来事やいろんな事象に触れていければ良いと思っている。コロナになってもエンドレスに映画が製作されている。選択しながらより優れた作品を観るようにしている。本と映画それぞれ年間200本が基本的な目標だ。もともとDVDレンタルも併用しながらの200本であった。でも、近くのTSUTAYAはなんと閉店だ。これからTカードの更新はどうするんだろう。ネットフリックスやprimeでは代替えにはならない。


新作映画を観るときは、日経新聞の映画欄と文春のシネマチャートが主な情報源だ。ここで星4つ以上のいい評価だったものはハズレもあるが、80%以上は一定以上の水準を保っていることが多い。評者により評価が大きく分かれる時がある。逆にそれも注目だ。おもしろい映画である場合も多い。この考えを基本に映画館に観にいく作品を選択する。ここで取り上げられていなくても、この監督作品だけは観にいくという人が国内外を問わずいる。スケジュールは最優先で空ける。愚作駄作にはこだわらないというのは押井守先輩から学んだ。

旧作は昭和20年代から50年代半ばまでの日本映画を名画座でチェックする。自分が幼少時の日本ってすごく興味があるし、薄く残っている記憶を蘇らせるのは楽しい。新幹線が通り、東京オリンピックがあった1964年以前の日本には雑然とした魅力がある。自分のベスト3のうちの1つ黒澤明の「天国と地獄」がすばらしいのも、その転換期直前の映画だからだ。旧こだま号が走っていた日本の原風景を知るには映画を観るのがいちばんだ。現在からみると、何から何まで古くさい。でもそれがいいのだ。


図書館のネット利用方法のコツを覚えて以前よりも読書量が増えた。以前はネット検索してどこかの図書館にあると分かると一冊のために車に乗ってわざわざ借りに行っていた。今はネットで予約して近くの図書館に取り寄せる。

本は手に取ってみないとわからないものだ。そのための下調べは神保町の東京堂書店や新宿のブックファーストが主戦場だ。本屋で立ち読みして気になる本も、図書館にあるかをまずチェックする。意外にあるもんだ。新刊から半年も経つと超人気作を除いて予約ゼロ状態だ。図書館の予約が異常に多かったり、なかったりするとamazon中古本の値を確認して購入する。購入するのは新刊中心になる。

借りたら、付箋をつけながら読書スピードを上げて読む。もう自分に残された時間は短い。期間短縮が鉄則だ。読み終わった後で、付箋のついたページだけiPadで写真を撮る。以前はノートに書き写していた。図書館で借りる場合、返却時期を気にすると、良いことはない。雑にでも一通り読んで期限前に写す。


好きな本の抜き書きや本の中身を写真で撮ったものは口述でgoogleドキュメントに記録する。そうすれば、iPadとiPhoneの両方でいつでも編集ができる。内蔵マイクに話しかけるとわずかな推敲であっさり文面になってくれるのも助かる。

昭和のビジネス書では、口述筆記はこうなってほしいという世界だった。物理の竹内均先生の本でも秘書を使って口述するのが精一杯だ。今ではそれが身近に実現する。

学術本の本のように内容が濃い場合は、一太郎padを使って写真から文章を起こすことができる。これも便利だ。でも、口述か一太郎padのどちらがいいかは場合による。そして、そのドキュメントも記憶から薄れてしまったら困る。付箋でピックアップした部分を20個の単語+αにするのだ。それ自体はソラで言えるように、繰り返し週数回練習する。自分にとってのバイブルのようなものだ。頭の体操にもなる。

映画を観るのは約2時間拘束されるので、それは別として、本を読むのも、文章を書くのも、仕事の作業をするのも基本単位は18分だ。携帯のタイマーで時間をセットする。終わったら別のことをやる。そうやって集中した18分が1日何回とれるかが勝負だ。多くの仕事は作業の集まりだ。しかも分解できる。

若いころ何でこういうことに気づかなかったのだろう。もっと早く気づいていればということがたくさんありすぎる。

5000日目になった今こう考えている。この先はわからない。この一年で学校の同期など周囲にはリタイアする人も少し増えてきた。逆に最近とんでもない大出世をした仲間もいる。メールが飛びまくった。まだ自分は恵まれている方で、収入はある。若い人はあくせくしているが、長い間働いていていろんなことがわかってきた。

12月に決めた食事のアポは2月3日までこなした。それでいったん休憩に入ることにした。こんな美食にありつけていいのかと思うものが食べられるのもあとだれだけか。仕事もいつまでやるのか?あと5000日生きた時にどう考えるのか?未知の世界を進んでいく。
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映画「クレッシェンド 音楽の架け橋」

2022-02-10 05:47:12 | 映画(アジア)
映画「クレッシェンド 音楽の架け橋」を映画館で観てきました。


クレッシェンドは10代の頃からイスラエルを絡めた中東情勢に関心を持っており、観てみたいと思っていた作品である。アラブ対ユダヤという根深い対立状態にある両人種からドイツ人指揮者が音楽好きを集めて合同でコンサートを開こうとする話である。

予想ほどにはいい映画ではないが、後半盛り上がる。
一方的なユダヤとアラブの対立の構図に、恋物語を混ぜた設定は悪くはないが、あまりにユダヤ人女性がおかしな行動をとるのに呆れてしまったことで点数が急降下してしまった。ちょっと不自然すぎる。音楽に関する内容は悪くはない。曲の選択もよく、最後に向けての盛り上がりはまさにクレッシェンドといえる。


世界的指揮者のスポルク(ペーター・シモニシェック)は、紛争中のパレスチナとイスラエルから若者たちを集めてオーケストラを編成しコンサートを開くという企画を引き受ける。ユダヤ人、アラブ人両方の若者が家族の反対や軍の検問を乗り越えオーディションに参加した。スポルクが人種にこだわらずに演奏する姿を隠して選抜し、20名あまりの精鋭メンバーが選ばれる。しかし、お互いの憎しみは強く予想通り激しくぶつかり合ってしまうのだ。そこでスポルクは彼らをスイス南チロルでの合宿に連れ出し、コンサートのための準備を始めるのであるが。。。


いきなり検問所が出てきて、イスラエルの近代的都市テルアビブに行くために、アラブ人の演奏家たちがイチャモンつけられるシーンが出てくる。陸でつながっていても、許可書がなければ入れない。しかも、オーディションに参加することを家中が賛成しているわけではない。

そんなエピソードを並べ立てて、ユダヤとアラブの対立を浮き彫りにする。それでも何とか融合を目指そうとするところに映画の意義があるわけではあるが。

⒈中学生で習ったユダヤとアラブの対立
自分が中学生の頃、社会科の先生がユダヤとアラブの対立に関して語ってくれたことがあった。ユダヤ人が突然訪ねてきて、ここは自分たちが2000年前に住んでいたところなので戻してくれと言って、アラブの人たちを追い出した。そのためにアラブ人たちはテントで流浪のキャンプ生活を送っていると。

ユダヤ人がこの地に来たことを、同じようにこの映画でもアラブ系の人たちは言っている。

みんなの家に突然大昔に住んでいた人が訪ねてきて、昔住んでいたのでどいてくださいといったらどうする?え!そうなんだ。今から50年ほど前の講義だけど、鮮明に覚えている。当時、一世を風靡したマクドナルド社長藤田田が「ユダヤ人の商法」という本を書いてベストセラーになる。商売上手のユダヤ人というのは中学生の自分にはすごい存在に見えた。

自分の高校では地理を高校1年で学んだ。毎週の授業は課題を基にした生徒の発表であった。中学時代に社会科の先生から聞いた言葉が気になり、自分はイスラエルにおけるシオニズムの研究を課題に選んだ。紀元前からスタートして、第一次大戦時のシオニズムやイスラエル建国、中東戦争を題材に選んだ。その流れはその後も続いて、中東情勢に関する本を読むようになった。ユダヤ人陰謀説はどれもこれも気になって仕方なかった。

大学でイスラム史の先生が娘の指導教授だったのも何かの縁かもしれない。

⒉ドイツ人指揮者
名高い指揮者がユダヤ人とアラブ人の混合オーケストラの企画にのった。ドイツ人指揮者スポルクである。スポルクの父親はナチスの強制収容所で医師をやっていたという。まさしく戦犯の1人だ。イタリア経由で南米に逃亡を企て、移動途中に射殺された。まさに南米に逃亡してしばらく経って捕まったアイヒマンの話も出てくる。アイヒマン裁判は「ハンナアーレント」でも取り上げられた。古くはアルフレッドヒッチコックの映画「汚名」でもナチスの残党の話が出てくる。

アラブ対ユダヤの構図もあるけど、ナチス対ユダヤの構図もある。指揮者自体も何かの標的になっている。怖い世界があるのだ。


⒊ラベルのボレロ(ネタバレ注意)
オーケストラでのアラブとユダヤの争いは絶えない。それでも、ドイツ人指揮者の指導で、何とかコンサート開催にこぎ着けそうになってくる。リハーサルでは、ヴィヴァルディ「四季」の冬が演奏される。2020年の傑作「燃ゆる女の肖像」のラストで「四季」の冬が流れた時、思わず背筋に電流が流れた。感動的なシーンだった。それを思い出したせいか、この映画でも同じようにゾクゾクした。

この延長でいいコンサートが見れるのかと思ったら、思いがけない展開となる。さみしいなあと思ったときに登場するのがラベルのボレロだ。この曲は個別のいくつかの楽器で次々と主旋律を流して、それがいくつか続いた後徐々に他の楽器が加わるまさしくクレッシェンドの展開となる。映画にも時間制限もあるので簡略化するが、ここでこの曲を選択したのは大正解である。さすがに盛り上げるいいシーンだった。
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映画「ひかり探して」キム・ヘス

2022-02-08 20:33:30 | 映画(韓国映画)
映画「ひかり探して」を映画館で観てきました。


ひかり探しては最近活躍が目立つ韓国女流監督によるサスペンス映画である。「コインロッカーの女」や「国家が破綻する日」で主役を張った女優のキム・ヘスが主役の刑事を演じ、アカデミー賞作品「パラダイス」のお手伝い役で強い印象を残したイ・ジョンウンが重要な目撃者として共演する。女性監督パク・チワンが脚本を書き、メガホンを自ら持つ。韓国の映画賞で脚本賞を受賞したということで期待する。

遺体が発見されない自殺した女性の消息を確認している女性刑事が、その女性の境遇が自分と似ていることに気づき深くのめり込んでいくという話である。

残念ながら結果的にイマイチであった。

俳優の演技のレベルが高いのに評価が低いのは、映画を観ていてさっぱり意味がわからないのだ。説明がくどいのも問題があるのだが、こちらがわかっていると推測して多重に人と人の関係をつくってしまう。セリフが飛び交っているが、意味不明なのだ。困ったものだ。主だった登場人物が女性で、男性が敵のように扱われているのもちょっとどうかと思う。韓国の女性監督が近年傑作を作ってきたけど、これはちょっと。

しかも、結末はこうなるだろうと予測させ、結局本当にその通りになるのはミステリーとしてお粗末という印象を受ける。


台風が吹き荒れるある日の夜、遺書を残し離島の絶壁から身を投げた少女。休職を経て復帰した刑事ヒョンス(キム・ヘス)は、少女の失踪を自殺として事務処理するため島に向かう。少女の保護を担当した元刑事、連絡が途絶えた少女の家族、少女を最後に目撃した聾唖の女(イ・ジョンウン)、彼らを通じて少女がとある犯罪事件の重要参考人だった事実を知ったヒョンスは、たった一人孤独で苦悩していた少女の在りし日に胸を痛める。

捜査を進めていくにつれ、自身の境遇と似ている少女の人生に感情移入するようになり、上司の制止を振り切って、彼女は次第に捜査に深入りして行く…。(作品情報 引用)


ここのところ観に行った3作連続で言葉の話せない出演者がいる。偶然だ。前2作は傑作だったんだけどなあ。主演のキムヘスは前から思っているけど、余貴美子に似ている。普通の刑事だというわけでなく、休養して復活した女性で、夫とは離婚訴訟寸前のトラブルが続いている。お互いに罵り合っている。性格が悪いわけではないが、自分の理解度も低いのか話している内容がよくわからない。まあこういうこともあるだろう。残念

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2021年キネマ旬報ベストテンを見て

2022-02-05 09:18:49 | 映画 ベスト
恒例のキネマ旬報ベストテンが発表された。
権威ある日本の映画賞というとこれに限られるだろう。自分のブログ記事「2021年自分が好きだった作品10作」と比較しながら語ってみる。別にキネマ旬報ベストテンを意識して自分が作品を選んでいるわけではないが、比較すると面白い。

日本映画ベストテンでは水俣病の映画「水俣曼荼羅」以外は全部観ている。日本映画であえてベスト3を選んだ「すばらしき世界」4位、「いとみち」9位、「由宇子の天秤」8位、「ドライブマイカー」1位いずれも入っていた。


ドライブマイカー」が一位に選ばれたのは順当というべきだろう。村上春樹の短編集「女のいない男たち」から「ドライブマイカー」を選んで「木野」と「シェエラザード」のエッセンスを取り入れ,濱口竜介監督が適切に1つの作品に仕上げたのはお見事としか言いようがない。ただ、個人的には4位になった「すばらしき世界」の方が映画作品としてよく見えた。西川美和監督が各方面への取材を積み重ねて,練りに練ってこの作品を作ったのがよくわかる。

2位となった「茜色に焼かれる」も石井裕也監督による傑作である。よくできている映画だけど、いつのまにかお口でサービスする風俗嬢に転落するという設定が、最近よくありがちで好きか?というとちょっと違うかな?という理由で自分の好きな映画に入れなかった。宮台真司が日経の映画評で絶賛していた。社会学者が好むような設定もすこし疲れてきたのかもしれない。


3位の「偶然と想像」ももちろんいいけど、TVドラマのような感じがしてしまう。「ドライブマイカー」は広島や北海道などロケも多く、濱口竜介監督が本気でつくった感があるけど偶然と想像にはそれがないので、自分としてはドライブマイカーほどはひかれない。

それにしても、主演男優女優、助演男優女優賞の4名の選出には全員納得できる。「すばらしき世界」の刑を終えた受刑者が、復帰後の日常になじめないという設定を役所広司が巧みに演じた。さすがである。尾野真千子が風俗嬢で生計をたてる役を演じた「茜色に」についても異論はない。ただ、瀧内公美が「由宇子の天秤」で演じた役柄も難しく、すごくいい女優になった。彼女が受賞してもおかしくないとも感じる。

狐狼の血LEVEL2」の鈴木亮平は実質主演といえる活躍である。ともかく身体も大きく圧倒的に強い。トコトン強い脇役のでる映画にハズレはない。ヤクザ映画の常連ともいえる俳優たちを手玉に取るという設定もよく、強さを際立たせる。逆に松坂桃李がイマイチ突っ張っていてもひ弱にしか見えない。相性が悪いのか7位となった「告白」を評価しない1つの理由も松坂桃李の存在である。


ドライブマイカー」の三浦透子はまさに適役だった。彼女自体は魅力的な女性だが,村上春樹が小説の中で語っている必ずしも美人でない容姿にはぴったりなのかもしれない。冷静で適切な運転技術をもったドライバーになりきっているし、北海道の田舎出身で自分のルーツを語り、原作にない一緒に西島と雪の故郷に運転して行くシーンが好きだ。

洋画については、2位「ボストン市長」と9位「MINAMATA」を見ていない。「ボストン」は長さに怖じけつく。でも機会を見つけていかなきゃ。やはり1位は「ノマドランド」なの?という印象で、フランシス・マクドーマンドは好きな女優だけど,この映画に関してはそんなに好きではない。変人というべきキャラクターである主人公に感情流入できないからかもしれない。「プロミシングヤングウーマン」が3位で予想以上に評価されている印象を持つ。どちらかといえば清純派のキャリーマリガンがどぎつく変貌した演技は確かにうまいが、この復讐劇が女性に受けるのかな?



自分の一押しは6位「ラストナイトインソーホー」だが、好き嫌いはあるだろう。自分自身の好きな作品は10位台から20位台に固まっていた。「インザハイツ」は抜群のミュージカルだと思うが、それほどの評価でないのが意外だ。

ただ、自分が好きだった作品にもチョイスした中国映画の「春江水暖」が7位と「少年の君」が10位に入っていたのは、むしろ意外だった。「春江水暖」の川での長回しシーンは圧巻で、杭州市の風光明媚な情景のバックもよく全体に流れるムードは裏社会の話をすこし入れても心地よい。「少年の君」は中国の現代大学受験事情と裏社会事情の両方に切り込んでいて興味深く勉強にもなった。


ついに北京オリンピックが始まったが、国家当局の統制がとれている中で、裏社会を描いた中国映画にハズレは少ない。
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映画「Coda コーダあいのうた」エミリア・ジョーンズ

2022-02-02 19:20:22 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「Coda コーダあいのうた」を映画館で観てきました。


「コーダ」はサンダンス映画祭で人気を集めた作品だ。いくつかの映画の前に観るつもりであったが、お決まりの健全なストーリーという評価もあり後回しにした。でも、先に観た映画には容認できないキャラクターが並び少々疲れ気味になっていた。ここではまったく真逆で応援したくなる人たちばかりである。

といっても、規範逸脱の話に満ち溢れている。コンプライアンスとは無縁の人たちだ。それなのに登場人物に感情移入してしまうのには女性監督のシアン・ヘダー監督の手腕を感じる。以前タルーラというエレンペイジ主演の赤ちゃん泥棒の映画を見たことがある。それも良かった。

さわやかな映画だ。
耳が聴こえない障がい者ばかりの家族なのに暗さはまったく感じない。家族愛もわざとらしくない。心が和らぎ快適な時間を過ごせた。

海辺の町に暮らす17歳のルビー(エミリア・ジョーンズ)は、漁業を営む両親と兄の4人家族の中で1人だけ耳が聴こえる。毎朝漁船に乗って家業を手伝っている。獲れた魚を市場に卸す通訳の役も背負っている。


新学期が始まると、憧れていたマイルズ(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)と同じコーラス部に入部する。顧問のV先生(エウヘニオ・デルベス)はルビーに音楽の才能を見いだし、秋のコンサートでマイルズとデュエット曲を歌うことになる。進学するつもりはなかったのに、名門バークリー音楽大学を勧められてV先生からレッスンを受けることになる。

父兄は漁獲量制限などうるさい漁協と対決して自ら販路を作って魚を売ろうとする。それにはルビーの力が必要だ。しかも海上警備隊に父と兄が捕まったり、レッスンにかかりっきりにはなれずV先生から遅刻連発でクビ宣告を受けるのであるが。。。


ルビー演じるエミリア・ジョーンズに心がひかれる。普通の家庭とは違う。3人耳が聞こえない家族がいて、3人の代わりにやらなければならないことがたくさんある。普通の高校生とは違うのだ。でも、困難な状況であってもルビーはいつもめげない。そんなルビーに応援歌を歌いたくなるのだ。久々に好きなキャラクターに出会えた。


⒈海と池
映画がはじまり、大画面に航行している船から見る海の映像が映る。オオーと唸ってしまう。漁のシーンもダイナミックだ。これだけで映画館で観るべき映画だと感じる。父母と兄は耳が聴こえない。魚が獲れても売り渡すのは通訳に入るルビーの仕事だ。そんなルビーは家族のために自分が犠牲にならざるを得ないと自覚している。大学進学なんてありえないのだ。

そんなルビーにとっての気晴らしの場所が湖とも池ともなんとも言えないところだ。崖から飛び込む。一緒にデュエットをすることになったマイルズと泳ぐシーンは青春の響きを感じさせて清々しい。透き通った水のようにピュアな心が流れている。初老の域に入ってこんな高校生にひかれることが多くなった。


⒉ちょっとおかしいコーラス部の顧問教師
ルビーが所属するコーラス部の顧問教師V先生がいい味だしている。映画に深みを与える。メキシコ系でラテン系の匂いを出す。少し見て、「シャルウィーダンス」でラテンダンスを踊る竹中直人が登場した時の髪型を連想する。宮本亜門の雰囲気も若干残っている。

ルビーは歌が上手いのになぜか自信がない。コーラス部に入っていても人前で歌いたがらない。そんなルビーだけど、歌声を聴いただけで、V先生は才能を見出す。男子高校生のマイルズとデュエットのコンビを組ませるのと同時に、個別レッスンを引き受ける。V先生の母校バークリー音楽院を目指せというのだ。こんな面倒見のいい教師はそうはいないだろう。キャラクターに魅かれる。


⒊ジョニミッチェル
ピアノレッスンでV先生のピアノで歌うのはジョニミッチェルの歌だとすぐわかる。先生はジョニミッチェルの歌だからちゃんと歌えよと言う。世の中に反戦の空気が高まる真っ只中1968年に歌った「青春の光と影」が引用される。この名曲を聴いて、60代後半から70代の人たちの方は違った感動を持つであろう。


⒋愛情あふれる家族とおかしなシーン
デュエットを練習するのにルビーの家にマイルズが来て2人で歌っていると、きしむ音となんかおかしな音が聴こえる。ルビーは両親を疑い、すぐさま2人のベッドルームへ行くとメイクラブをしている最中だった。両親は身体がかゆいので通訳係のルビーを連れて病院に行くと、インキンタムシだからSEXを控えるようにと言われ困るなあという顔をしていたばかりの話だ。

セックスレス夫婦の真逆の話だ。まさに夫婦生活が円満で、仲がいい。そんなルビーの家は幸せに満ち溢れる。この映画の好感度が高いのも素朴で裏がない家族全員に魅かれるからだろう。


⒌無音の効果
「ドライブマイカー」で主人公の西島とドライバーが雪の北海道に向かうシーンがある。その際、完全な無音となるシーンがある。いい感じだった。そして、「ゼログラビティ」サンドラブロックが宇宙を彷徨うシーンでも無音になった。この無音の感覚は映画館でしか味わえない醍醐味だ。

それを「コーダ」でも体験できた。どこで体験するかは観てのお楽しみだが、耳が聴こえず娘の才能がわからない父親にある示唆を与える。素敵なシーンだった。
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番外3 鮨

2022-02-02 08:01:31 | 食べもの
食べログ4点以上の高級鮨を食べた。
これはすごい!
イカ


クエ


甘エビ


ずわいがに

これははじめて食べた。すごくおいしい

うに

とろける

あなご


赤貝


小トロ


中トロ


大トロ


かき


こはだ


のどぐろ


キス


まだまだあるけどこの辺で
やっぱりすごい!日本酒に合うねえ。
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