映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ぼくたちの家族」 妻夫木聡&池松壮亮

2014-12-29 16:44:53 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「ぼくたちの家族」は石井裕也監督による2014年の作品


昨年2013年「舟を編む」では賞を軒並み受賞した石井裕也監督のことを「川の底からこんにちは」からずっと注目している。普通だったら映画館に向かうが、なんか暗そうな雰囲気が漂いDVDスル―にした。母親が急に物忘れが激しくなり、病院の診断ではあと一週間の余命だという。病気の発覚を機に、家族が必死にもがく姿を描くヒューマンドラマである。
長まわしの多い演出はこれまでと同じであるが、今回の場合登場人物に感情流入できない。むしろみんな嫌いな奴ばかりといった印象で、自分には好きな作品ではなかった。しかも石井裕也監督のこれまでの作品のようには元気をもらえなかった。

若菜家の妻・玲子(原田美枝子)は長男の浩介(妻夫木聡)に初孫ができるということで喜んでいた。ところが、夫(長塚京三)と一緒に妻の両親とあった懐妊祝いの会食で長男の嫁の名前を間違えたり、突飛なことを話しはじめた。あわてて父と息子は妻を病院に連れて行く。CT検査の結果、脳に腫瘍が見つかった。医者から余命1週間を宣告され、すぐに入院、家族は唖然とする。


大学生の次男・俊平(池松壮亮)も駆けつける。夫と長男ほど動揺してはいなかった。その一方で玲子の病状は進んでいた。相手が誰だかわからなくなるのだ。治療費の捻出をどうしようかとしていると、妻に消費者金融からの多額の借金があることが分かる。しかも、自宅の住宅ローンはまだたくさん残っていて、脱サラして会社を起こした父親は会社でも多額の借金をしていた。家庭内の問題が次から次へと発覚して、若菜家は問題を数多く抱えていたことが判明する。しかも、病人の扱いが面倒だと入院した病院の医師が退院させて、自宅療養を勧める。2人の息子浩介と俊平は何とか他の病院で預かってもらおうと動き始めるが。。。引き取り手は探すのは困難であった。


自分も母親の病状が悪いのが突然判明するという経験をしている。それなので、こういう映画を見ると、共感を覚えてジーンとすることが多かった。でも違うんだなあこの映画は。。

1.恒常所得仮説(ミルトン・フリードマン)
以前はよかったが、今は家計が火の車というのを説明するには、ミルトンフリードマンの恒常所得仮説が適している。
典型的な貧困家庭はその日暮らしで貯蓄がない。でも貯蓄の少ない理由は収入の違いだけではない。貧困家庭にもかつて裕福だった時期がある。高い「恒常所得」に慣れているので、以前よりも低い金額を「変動所得」として受け取っていても、かつての消費行動が染みついているので貯蓄に回せない。それなので貯蓄率が低いというのだ。実感としてよくわかる。
若菜家も同様だ。父親は自分が営む会社が軌道にのっているという状況でもないのに、車を買い換えようとしている。妻は昔と同じように友人たちと遊び歩いている。しかも、次男の金の無尽にもなけなしの金を払って妻の借金は増える一方だった。。

6500万円も借りていたら、毎月の金利負担だけでバカにならないだろう。しかも、1200万円は長男が保証人になっているという。自己破産したら、息子に責任がまわってくるし、ローンで家も買えなくなる。おいおい今まで何やっていたの?会社なんか成り立つの?数人いる従業員の給料払えるの?突っ込みたくなる設定だ。

2.登場人物を嫌う理由
母親の病気を自分の妻にも最初か正直にら話さない長男のしぐさは見ていてイヤな感じだ。夫婦2人なのに、母親の看病で家に帰ってこない。それだったら、母親の病状を妻に言うのが普通だろう。しかも、会社の上司にも仕事が中途半端になっているのにきっちり話さない。変な奴だ。その妻も義母を見舞いに行こうともしない。変な夫婦だ。いずれも途中で変化があるけど、見ていて不愉快な感じだ。


オヤジも変だ。この家計ちゃんと成り立っているの?次から次へと毎月のショート分を借り入れに次ぐ借り入れでやっているんじゃないの?妻の入院費払えるかどうかわからないのに、夫は車のカタログを見て買い換えようとしている。ダメ人間の固まりだ。

それでも、途中から運が上向く。
病院を出されそうになり、別の病院を探す。いくつかまわる中で、自分のところでは引きとれないが別の病院にという話が出てくる。
病院を6か所まわっている次男の動きを見て、鶴見辰吾演じる医者が同情して助け船を出すのだ。


その後は極度に良くなったわけではないが、少しづつ上向いていく。
住んでいる街を俯瞰するように見渡せる場所で、妻夫木聡と池松壮亮が何とかしようと話し合うシーンはいい感じだった。
石井裕也らしいシーンかもしれない。
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映画「テルマエ・ロマエⅡ」 阿部寛

2014-12-29 07:52:24 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「テルマエ・ロマエⅡ」は好評だった1作目を受けて製作された2014年のコメディ映画だ。


1作目は映画館で見て、このありえない設定と阿部寛のパフォーマンスに笑ってしまった。2作目は「二匹目のドジョウ」かな?と思い、DVDスル―。2作目なのに、本年度興行収入は邦画で第4位、1作目の59億には及ばないものの、44億も稼いだという。大したものだ。
1作目で使っていないお風呂ネタにプラスして、相撲取りを登場させたり、忘れかけていた昔の有名人が脇役として登場するなど観客を楽しませようとする努力は買う。


タイムスリップした先である現代日本の風呂文化から着想を得て斬新な浴場建設をした古代ローマ浴場技師ルシウス(阿部寛)に、コロッセオで決闘するグラディエーター用の浴場を作るよう命令がくだる。頭を悩ませたルシウスは再び現代日本へタイムスリップしてしまう。
銭湯で気がつくと、大勢の相撲取りたちがいた。平たい族だが、やけに太っている。マッサージチェア、ツボ刺激の足ふみくん、バスクリンなどにえらく驚き、力士たちに笑われる。草津温泉では風呂専門雑誌のライターになった真実(上戸彩)と再会する。


一方ローマ帝国では、占領した国々との和平路線を進める皇帝ハドリアヌス(市村正親)とグラディエーターたちの戦いを通して市民の好戦意欲を高めようと企んでいた強硬派の元老院が反発しあう状況にあった。ルシウスの存在が邪魔になり、さらなる陰謀をめぐらせる。

日本に再度ルシウスが戻った早々から風呂ネタギャグが連発する。相撲取りの真ん中で阿部寛が驚くその顔がおかしい。テンポがいい展開だ。加えて温泉でのストリップやラーメンネタそしてウォータースライダーに、のたうちまわるところもいい。どうやって観客の笑いをとろうかとじっくり練っている様子がうかがえる。


コロッセオではグラディエーターたちが本気の決闘を繰り広げている。強い闘士の1人に横綱曙演じるアケボニウスや琴欧州演じるコトオウシュウヌスなんていうのがいる。この戦いもすごいよね。そのために相撲取りがくつろいでいる銭湯にタイムスリップするなんて発想がいい。

1.ハドリアヌスとローマ皇帝
我々は世界史で「五賢帝」というのを習った。ネルヴァ、トラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌス-ピウス、マルクス-アウレリウス-アントニヌスの5人だ。トラヤヌス時代に領土が最大になったと習った。ここではハドリアヌスが占領した土地を地元民にもどそうとしていると映画の中で解説する。

この映画のいいところは、ニセの名前でなく史実の名前で皇帝を登場させるところだ。後継ぎは北村一輝演じるケイオニウスであるが、彼が結核にかかるということになる。それを現代の日本からタイムスリップした上戸彩演じる真実がケイオニウスが風呂に入るとみんなが結核になると阻止しようとして、捕まってしまいそうになる。歴史を後年から見ると、こんなこともできる。


映画を見ている間はわからず、調べてみたが宍戸開演じるアントニヌスってアントニヌス-ピウスのことなのかなあ?今から30年以上前にマルクス-アウレリウス-アントニヌス名前を全部覚えるのに難儀したのでむしろそっちの方かと思ってしまった。でもアントニヌス-ピウスハドリアヌスの後継者に指名され、その後でケイオニウスマルクス-アウレリウス-アントニヌスが共同帝ということで同時に皇帝になっているようだ。この映画でもその設定になっているが、ケイオニウスは相当な放蕩ものだったみたいだ。世界史の時間では彼の名前は習わない。

2.昭和の有名人を絶妙に脇役起用
白木みのるには驚いた。自分はテレビの「てなもんや三度笠」をリアルタイムでみた最後の世代だと思う。藤田まこととのデコボココンビが絶妙だった。何がおかしかったのか記憶に残っていないが、「あたり前田のクラッカー」だけは頭にこびりついている。そんな白木がラーメン屋の店主として登場する。阿部寛扮するルシウスにラーメンや餃子をだすと、ルシウスは怪訝そうな顔をするが、食べてみるとおいしいので一気にガツガツ食べて、ローマに持って帰ろうと餃子を1個持ち帰ろうとする場面がおかしい。


温泉のマッサージ場に、浪越徳治郎の銅像がかかっている。すると本人が出てくる。元気そうだった浪越徳治郎がおじいちゃんになっていたのかとマジに思った。あのじいさんまだ生きていたのかと思ったら、錯覚だった。ネットをみたらもう死んでいる。そうだよな。でもここに出てきたじいさんは、浪越が生きていればああなったのかな?と。。。お風呂ネタなので、自分より年長の人たちがこの映画を見に行ったのかもしれない。きっと自分と同じように浪越がまだ存命と思ったに違いない。「指圧の心は母ごころ」と念仏のように唱えた浪越徳次郎のパフォーマンスは昭和のお人でなければわかるまい。


あと松島とも子も出てきて、猛獣とたわむれるシーンがある。昭和の匂いをプンプンさせて、観客の老人たちへのサービス精神も旺盛だ。

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映画「超高速 参勤交代」 佐々木蔵之介

2014-12-28 21:05:55 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「超高速 参勤交代」は今年2014年公開のコメディ映画


福島磐城の小さな藩が、幕府老中の陰謀で5日で江戸に向けて参勤交代せよという難題を与えられ、それをこなしていくという話だ。奇想天外な発想がおもしろく、飽きずに映画を見れた。主人公佐々木蔵之介の好演が目立つだけでなく、悪役を演じた陣内孝則がうまさが光る。深田恭子がかわいすぎる。

享保20年(1735年)春、磐城国の湯長谷藩の藩士たちは江戸より参勤交代を終えて戻ったばかりであった。そこへ徳川八代将軍吉宗(市川猿之助)の治める江戸幕府から、通常8日かかる道のりにも関わらず突然5日以内に参勤交代をするよう命じられる。湯長谷の金山を手中に入れようとする老中・松平信祝(陣内孝則)の策略によるものだった。


わずか1万5千石の小藩にとって、あまりにも短い日程を強いられたこの参勤交代は到底できようもないものだった。それでも、藩主・内藤政醇(佐々木蔵之介)は家老の相馬兼嗣(西村雅彦)に対策を講じさせる。そして、藩の少人数のみで山中を近道して駆け抜けていき、道中の人が見ている宿場町では、大人数に見せかけるという作戦を立てる。さらに忍びの戸隠流の抜け忍・雲隠段蔵(伊原剛志)が道案内役をかって出て、山の中を進む。しかし、幕府の老中らはこの参勤交代を阻もうと忍びの者を派遣するのであるが。。。


藩主も家来たちも田舎侍でのんびりしたものである。そこへ突然の命令が下る。どう考えても無理な話なのに、知恵を振りしぼって江戸へ向かう。
参勤交代は、チンタラ歩きながら進むというのがよく時代劇で見る光景だが、ここは殿様をはじめとして長距離走のように走っていくのだ。


登場人物は内藤政醇や老中・松平信祝をはじめとして実在の人物である。この話のモデルのような実話があったかどうかは知らないが、フィクションであってもひたすら面白い。

この物語の葛藤を引き起こしているのが、陣内孝則演じる幕府老中の松平信祝だ。金山があるのにそれを申告せずに隠しているとみなす。あわよくば藩をつぶして金の利権をゲットしようとするのである。5日で来いというのも酷だが、そればかりでなく忍びの達人を送り込んで途中で始末しようとする。それに対して山を越えて向かおうと作戦をたて、しかも少ない人数をカバーするために現地で人を雇って大行列に見せかけようとする。西村雅彦のご家老ぶりにはひたすら笑ってしまう。コメディだとすごく光るねえ。
藩主はお尋ね者のようになり、命を狙われる。そこに深田恭子演じる酌婦が絡んでくる。


こういう男くさい物語に色を添えているのが深田恭子だ。
牛久の宿で酌婦のような女を演じている。これがいい。彼女も色っぽいなあ。しかし、最後のオチがいい。
元々同じ町民でも位の低いでであった彼女が側室になってしまうのだ。昔の殿様はいいねえ。
イスラムじゃないけど、一夫多妻制のようなものだもんね。



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映画「るろうに剣心 伝説の最期編」 佐藤健&福山雅治

2014-09-15 14:10:48 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「るろうに剣心 伝説の最期編」を映画館で見てきました。
前作京都大火編の最後で突如大物が登場して、三作目を楽しみにしていました。そう福山雅治の登場です。前作はなんと45億を超える興行収入があるそうだ。2作目見た人は普通であればついつい3作目も行ってしまうのでは??自分もそのくちです。

前作のラストでは海岸で倒れている剣心を福山が助ける。その福山雅治と対決する場面を予告に見てしまったので、どうなってしまうのか気になっていました。


1.福山雅治
倒れている死人を、穴を掘って埋めようとする男がいる。その男に声をかけるのが福山だ。前作の続きの流れかと思ったら、その男は佐藤健ではない、少年だ。誰??アレー!と観客を煙にまく。


福山雅治は剣心の師匠比古清十郎だったのだ。15年ぶりに会う二人だった。最初のシーンは剣心が弟子に入るところを映していたのだ。剣の腕に自信を失っていた剣心は、もう一度師匠のもとで修行をする。予告で見ていた対決は修行の場面だったのだ。ここでも予告をみた観客をだます。
さすが大物、ここでは絶妙な活躍をしていた。

2.伊勢谷友介
前作で田中泯と対決していた剣の達人だ。剣心をずっと追いかけているが、1作目では接触しない。
今回はいきなり対決する。


ここでの対決が見ごたえある。伊勢谷は「あしたのジョー」の力石徹役のイメージが強い。
こういうスピード感のある剣の対決ってこれまでの時代劇にあっただろうか?
大友監督の腕が冴える。

3.神木隆之介
前作では意外な強さを発揮した。剣心と互角以上の活躍だ。
いいキャラしてるなあと感心していた。ここでも2人は対決する。
なぜなら藤原竜也演じる志々雄真実にぶち当たるには神木演じる瀬田と対決せざるを得ないのだ。


オチは神木の本来のキャラであった。それはそれでいいじゃない。

4.藤原竜也
これがまた強い!しかも今回は軍艦の主になって、日本政府を脅かす。
1対1で対決しても、剣心にそう簡単には優位に立たせてくれない。


こういう映画では圧倒的に敵役は強くなくてはならない。剣心に加勢が加わる。それでも勝てない。
イヤー強い!
どうなるのか???結末は「ウルトラマン」を連想させる時間との闘いであった。

5.佐藤健
1作目は圧倒的に強かった。向かうところ敵なしというキャラクターだったのが、2作目で陰りを見せる。
剣心にも不遇のときがあるとするのだ。物語の定石である。


福山雅治演じる比古清十郎との出会いの後、目つきが変わる。
これまで見せていない目つきだ。佐藤健は1作ごとに深みを見せている。いい役者になりそうだ。
そして武井咲も今回も登場する。


それにしてもかわいいなあ。共演者キラー佐藤健がまんできるかなあ?

この3作で日本の剣アクション映画という新たなスタイルが生まれたと思う。
このスピード感、まさに現代の剣豪劇である。大友啓史監督を絶賛したい。

(参考作品)

るろうに剣心
佐藤健の剣の速さに驚く
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映画「るろうに剣心 京都大火編」 佐藤健

2014-08-03 15:32:29 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「るろうに剣心 京都大火編」を映画館で見てきました。
相変わらず佐藤健の剣はすばやい。
前作るろうに剣心同様、佐藤健のスピード感あふれる剣さばきを十分楽しめた。


前作では吉川晃司、香川照之の悪役に強い存在感があった。今回も同様である。
藤原竜也ダークナイトライジングトムハーディ演じた「ベイン」のように顔をマスクで隠して見せない。大やけどした顔をさらさないが、「ダークナイトライジング」での「ベイン」の強さを思い出して気味が悪い。

神木隆之介はほんわかした現代の男のようで、実は強い。剣心の刀を真っ二つにしてしまう。
そして伊勢谷友介が不気味に強い。そして、剣心のみをひたすら狙っていく。その他現代のツッパリあんちゃんのような三浦涼介などのライバルが盛りだくさんなので、ストーリーに重厚感が出てくる。
そこに加えての大友啓史監督と谷垣健治のアクション指導がするどい。なかなかの作品である。

かつて“人斬り抜刀斎”と恐れられ“最強”の伝説を残した男・緋村剣心(佐藤健)は、新時代を迎え、神谷薫(武井咲)ら大切な仲間たちと穏やかな日々を送っていた。

そんなある日、剣心は新政府から、剣心の後継者として“影の人斬り役”を務めた志々雄真実(藤原竜也)を討つよう依頼される。志々雄は新政府に裏切られ焼き殺されたはずだったが、奇跡的に復活、京都で戦闘集団を作り上げ日本征服を狙っていた。

剣心は必死で止める薫に別れを告げ、京都へと向かう。
かつては剣の腕も頭脳も剣心と互角だったが、今や誰もが恐れる魂の凶悪さを持つ志々雄とついに宿命の対面を果たす剣心。だが、志々雄は部下の瀬田宗次郎(神木隆之介)に相手を命じ、その最速の技は剣心の逆刃刀を真っ二つにしてしまう。

さらに剣心は、元御庭番衆の四乃森蒼紫(伊勢谷友介)が自分を狙っていることを知る。彼は、剣心に勝って己こそが最強だと証明しようとしていた。
逆刃刀を失くし、最大の危機に立つ剣心のもとへ、薫と仲間たちが駆けつける。一方、志々雄は京都大火を企てるが、その炎の影には恐るべき陰謀が隠されていた……。 (作品情報より)

危機一髪の場面が波状攻撃で訪れる。でも主人公が絶対優勢なわけではない。
その展開なので、何が起こってもおかしくないとこちらに思わせる。そこがうまいところだ。

1.佐藤健の剣さばき
落ち着いた生活に戻っているという設定である。人斬りと恐れられたパフォーマンスを懸命に抑えようとするが、それですまない。維新の大物大久保利通から直々に依頼を受ける。しかも、大久保利通は志々雄の部下に暗殺されてしまう。
小田原で志々雄の一派に町が崩壊された場所で、悪に立ち向かう剣さばきが実に鋭い。
次から次へと斬りまくるこのシーンが一番自分にはよく見えた。

ただ、この映画では相手のキャラがはっきりしないその他大勢には、めっぽう強いが、個人勝負で絶対的な強さを発揮するようにはつくっていない。そこがミソ、悪役が強い映画は面白い。

2.武井咲
相変わらずかわいい。京都に行くなといいつつ付いていく。これツッコミだけど、いくらなんでも極悪相手に長刀もって立ち向かうなんて設定ないでしょといった感じだ。普通であれば、男性剣士にすぐさま切られてもおかしくない。最後に向けてのストーリーに合わせるのかもしれないが、うーん?といった感じ。

3.カメラワークの巧みさ
前作でも感じたが、横だけでなく縦の動きもある。空間を十分に使っているアクションだ。それを映しだすカメラワークがうまい。スピード感をうまくとらえる。先ほど指摘した小田原での佐藤健の剣さばきを映しだす場面にはほれぼれした。神木隆之介の映し方もうまいなあ。時代劇をアクション劇にする監督の意図をファインダーの底からうまく伝える。

最後にある人物が登場する。大物だ。
この次作が楽しみになってくる。
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映画「渇き」 役所広司&小松菜奈

2014-06-30 05:53:28 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「渇き」を早速映画館へ見に行ってきました。
予告編を見て、役所広司の動きに刺激的な匂いがした。二階堂ふみが出演しているというのも気になる。

中島哲也監督作品はコメディの傑作「下妻物語」以来告白まで連続して見ている。コミカルに編集されているのが特徴。前作「告白」は巷の評判ほどいいとは思わなかった。松たか子はよかったが、映像をいじりすぎている印象をうけた。原作深町秋生の「果てしなき渇き」は未読で「告白」の時と違い原作に関する先入観はない。

いきなり短いカット割りで、激しく場面が変わる。一体何?という感じで見始める。
不良グループ、ヤクザなど似たような連中が大勢出てきて見分けがつかない。深作欣二監督「仁義なき戦い」と同じで登場人物が多いからテロップで名前の但し書きがあってもいいかも?役所広司の怪演で激しいシーンが多いので途中退屈にはならない。終わってみると、ストーリーは単純なのであるが、途中は訳がわからないまま目をスクリーンに向ける場面も多い。

元刑事のロクデナシ親父・藤島(役所広司)に離婚した元妻(黒澤あすか)から連絡が入った。
成績優秀なうえ、容姿端麗、学園のカリスマでもある女子高生の娘・加奈子(小松菜奈)が失踪したという。

自分のせいで全てを失った男が、再び“家族”を取り戻すべく、姿を消した娘の行方を追うことに。娘の交友関係をたどって行く先々で、語られる「知らない加奈子像」に戸惑う藤島。想像を超えて肥大し、踏み入れるほどに見失う娘の正体。やがて藤島の激情は、果てしない暴走をはじめる―。

離婚した妻が依頼者になり、警察を退職した今は警備員の主人公が自分の娘を探すというわけだ。
本来であれば、警察に任せればいいものの、娘の所持品から覚せい剤が見つかっている。別れた元夫のこと、本当は大嫌いなのに仕方なく頼っている。でもこうやって娘の行方を探そうとしても手掛かりがない。母親も男と遊んだりしているので、娘は好き勝手に夜遊びをしているようだ。
でも主人公が元いた所轄署の刑事(妻夫木聡)と相談しながら、刑事流に担当医(国村隼)、高校の担任(中谷美紀)、友人(橋本愛)を追跡すると出てくる出てくる悪い話が。。。


1.役所広司
改めてここ10年くらいの彼のキャリアを見直してみたが、ここまで狂喜に浸る役所は初めてかもしれない。ともかくめちゃくちゃな男を演じる。この手の元刑事はアメリカ映画にはよく出てくるかもしれない。
何をするにも自分勝手で、捜査中も酒は浴びるほどのむし、公私混同はする。刑事を退職したのにもかかわらず、昔の名刺を持って知らん顔をして聞き込みをしている。相手に暴力をふるうなんてことは朝飯前だ。元妻をむりやり犯すシーンなどを見て、彼に同情する映画鑑賞者はいないだろう。
そういう男を演じた役所がうまい。

2.小池義幸の編集
モンタージュ理論丸出しで、かなりの数におよぶカット場面を巧みな編集でつなげている。アメコミの影響やタランティーノ映画の影響も見える。映画の最初に次から次へと変わるカットの連続は、映画のまとめをいきなり鑑賞者に見せるという役割のようだ。アニメ映像の挿入タイミングがいい。

こういう映像がつくれる編集者も日本には他には見当たらない。さすがだ。

でもこの映画ツッコミたくなることが多すぎるなあ(ネタばれ注意)
1.何で死なないの?
刺されても、バットで打たれても、車に轢かれても簡単に死なない。
こんなに人間って不死身かしら?

2.真昼のスーパーの屋上に誰もいないなんてことあるのかしら?
役所広司とオダギリジョーがビルの屋上で対決する。後ろにはスーパーらしい効果音が流れる。でも誰もいない。
真昼のスーパー屋上駐車場に車も人もいないなんてことないでしょう

3.警察の追跡かわせるの?
役所広司がオダギリジョーとの格闘を終えて、ボロ車で必死に逃げる。スーパーの屋上には警察が来ている。ボロ車で脱出する。でもこれって逃げ切れるはずがないでしょう。当然緊急体制をひいているし、逃走車をヘリで行き場所を追うことだってできる。GPSなんて現代の兵器もある。役所広司が逃げ切れるのはありえない気がするけど

4.雪の中に死体を隠す?
最後真犯人と役所は遺体を探しに、雪が深く積もる場所へ一緒に向かい、掘り出そうとする。雪が溶けたら遺体見つかるじゃん。仮に雪の下にある地面の下だとすると、ここまで埋めるのは一人じゃ無理だよ。。。
これも不自然

今回は期待した割には、出番も少なく二階堂ふみちゃんは普通でした。モスクワ映画祭グランプリはおめでとう!「私の男」いい演技だったよね。よかった。
役所広司の怪演ばかりが目立つ映画だったなあという印象冷たい熱帯魚で使い古した?乳輪(失礼)をあらわにしていた黒澤あすかの好演も目立った。
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映画「春を背負って」松山ケンイチ&蒼井優

2014-06-18 08:53:10 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「春を背負って」を映画館で見た。
名カメラマンとして名高い木村大作監督が「劔岳 点の記」に引き続いてメガホンをとった。
監督として撮った前作は雪山を美しく捉えてすばらしい映像だった。70過ぎてもそのカメラワークは冴え渡る。
当然のごとく映画館に足を運ぶ。

今回も山を映し出す映像コンテが素晴らしい。春の桜を映し出し、夏山の爽快感、秋の紅葉、雪に埋もれた立山を最高のアングルで映し出す。その木村監督のもとへ集まったのは、松山ケンイチと蒼井優の若手に加えて豊川悦司だ。久々に檀ふみが登場する。3000m級の高地で撮影するわけだから、これはしんどい。出演者には敬意を表したい。
脇役として登場するのもベテランがそろう。

ただし、映画のストーリーはちょっと単調でプロットが弱い。緊迫感がない。
もっともこれは原作があっての映画なので必ずしも木村監督のせいではない。
しかも、音楽が池辺晋一郎の音楽がちょっとうるさすぎるという難点はあるが木村大作の技をじっくり堪能できた。

長嶺亨(松山ケンイチ)は外資系金融機関につとめるトレーダーだ。運用成績が落ち込み上司から叱咤激励をうけている。そんな時母(檀ふみ)から父の訃報の連絡があった。
亡き父(小林薫)は、立山連峰で山小屋〝菫小屋〟を営んでおり、小さい頃から亨は父に厳しく育てられていた。父は雪山から転落した登山者を助けようとして、頭を岩にぶつけて亡くなった。
亨が母(檀ふみ)のもとへかけつけると、地元の山仲間が大勢葬儀に参列していた。その中には親友(新井浩文)と前年から山小屋を手伝っていた高澤愛(蒼井優)の姿があった。
葬儀のあと始末をしながら、亨は久々に母や愛とともに雪に埋もれた山小屋に向うことにした。小屋でたたずみながら、母は山小屋を誰かに譲らねばという話をした。亨はとっさに自分がやると言い出す。都会での生活を捨て小屋を継ぐことを決意する。
愛も一緒にやるということになった。

トレーダーをやめて、山小屋の主として重い荷物を抱えて登山する途中で、ゴロさんこと多田悟郎(豊川悦司)が現れる。
父親の山岳部の後輩であるゴロさんは慣れない亨を手伝うためにやってきたのだ。
3人の山小屋生活が始まった。

1.池辺晋一郎の音楽
ともかく不必要にうるさい。全部がそうではないが、映像とあっていない。木下恵介監督の作品で、木下忠司の音楽がうるさすぎてうんざりすることがある。同じようなものだ。例えばティムバートン監督の「バットマン」で、マーラーの交響曲を思わせるダニーエルフマンの音楽が高らかに鳴り響いている。これもうるさいが、映像にはあっている。
それとはちがうのだ。フェリーニが「音楽、音響効果はイメージの強化を目指すべきである」といっている。逆に池辺は映像のイメージをつぶしている。残念である。

2.過酷な撮影条件
標高の高いところでの撮影は大変だったよなあ。ここでも松山ケンイチが60kgの荷物を担ごうとして悪戦苦闘するシーンが写る。スタッフ一同に厳しい登山に音を上げたのではないか?長身で体格のいい豊川を松山や新井がおんぶするのも大変そうだ。あとは激しく降る暴風雨の中のシーンも、きつそうな映像だなあ。
そんな中夕日を見つめながらたたずむシーンや岩のテラスで松山と豊川が映し出されるショットも美しい。


3.演技巧者が集まる
個性的な実力派の俳優たちが揃っているけど、井川比佐志、石橋蓮司というあたりの起用がうまい。
いつもながら井川比佐志の笑顔っていいなあ。味がある。昔から木村大作と縁が深いのでは?
市毛良枝を映す映像も解像度を落としているのでふけて見えない。
吉田栄作、仲村トオルなど二枚目はそれなりに適役だけど、現代の名優安藤サクラはせっかく出ているのに力が発揮できる役柄ではない。いつもは不良の匂いをプンプンさせる新井浩文もこういう役だと不自然な感じがする。

4.蒼井優
不倫の恋に破れ、1人で立山登山を目指し遭難しかけたところを亨の父に助けられた。義に感じ、山小屋で働くようになったという設定だ。ここでの蒼井は笑顔がかわいい。ベリーショートに近いショートカットだ。でも、若い2人が山小屋という閉鎖空間にいるのに何にもないのはおかしい。
70歳を過ぎた木村大作には恋愛の映像コンテは苦手なんだろう。ちょっともったいない。

5.檀ふみ
久々に映画でみた。もしかして、監督の好みなのであろうか?民宿の女将としての着物のいでたちが素敵だ。
登山ルックに長身の身を包んだ姿もいい。もう60になったのね。「青春の蹉跌」のお嬢さん役がなつかしい。
昔はキャンパスで何回か見かけたことがある。たしか、2年くらい留年していたのではないかな?
本来であればキャンパスで出会うことがないはずなのにね。
もう30年以上経つので時効だけど、深夜六本木の居酒屋T坊で男と深夜2人でいるところも見かけた。
やさしそうな好男子だったけど結局縁がなかったみたい。父親の血はついでいないようだ。


6.物語の構造
主人公 亨
依頼者 亡き父 母
援護者 ゴリさん  愛    大勢の山の仲間たち
主人公の使命 山小屋の管理

プロットに意外性がない。何でなんだろう
出演者をこうやって整理すると、主人公に敵対する人物がいない。それなので単調なのであろう。
亨にはライバルがいない。「劔岳 点の記」のときは登頂を競い合うライバルがいて緊張感があった。
例えば東京にいる亨に恋人がいる設定にすると、愛との間で敵対する葛藤が生まれる構図ができるのにそうしていない。
山小屋で3つの逸話を通じて、亨に「難題」を与える。それ自体は大きな難題ではない。
原作の問題なのか?ちょっとものたりない。

この映画は74歳になった木村大作監督が、自身の集大成のつもりで作ったのではなかろうか?
プロットが弱いといったが、そんなことはどうでもいいのかもしれない。
ここで見せるリアルな高山での映像それ自体はこれから30年たっても語り継がれる気がする。

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映画「青天の霹靂」 劇団ひとり&大泉洋

2014-05-28 20:12:14 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「青天の霹靂」を映画館で見た。
劇団ひとりの監督作品で、大泉洋の主演だ。

情報によると大林宣彦監督作品「異人たちとの夏」と似たようなタッチだという。この映画を見た時泣けて泣けて仕方なかった。「異人たちとの夏」では主演だった風間杜夫も出ているというではないか。期待感を持って映画館に向かった。

タイムスリップして若き日の父母に会うという設定こそ「異人たちとの夏」と同じだが、まったくのオリジナル脚本である。生まれてから会うことのなかった実母との交情は思わずシーンとくる。図ったように涙が止まらなくなる。

場末のマジックバーで働く39歳の晴夫(大泉洋)は、母に捨てられ、父とは絶縁状態。ある日、父の訃報を聞いて絶望した晴夫は、気がつくと40年前の浅草にタイムスリップしていた。浅草の演芸場で若き日の父・正太郎(劇団ひとり)と母・悦子(柴咲コウ)と出会い、スプーン曲げのマジックで人気マジシャンになった晴夫は、父とコンビを組むことになる。

やがて母の妊娠が発覚し、10カ月後に生まれてくるはずの自分を待つ晴夫は、自身の出生の秘密と向き合うこととなる。

主人公が40年前にタイムスリップしたとき、まだ赤ん坊は生まれていない。
もし生まれたら2人は同じ世界に生きていることはできない。それまでしか40年前の世界にいることができないのである。そこで自分の母親と初めて会話を交わす。
巨人がV9の優勝をすることなど主人公が予言してきたことが当たっていた。それなので「自分の将来はどうなるの?」と母親が主人公に聞く。言葉を詰まらす主人公と母親を映すところは実にジーンとくる。あと少ししか生きない母親のことを思うとせつない主人公がポツリポツリ話す。素敵なシーンだった。
私事だが、母が6年前に亡くなった時、自分が生まれる時の経緯を書いた母の日記帳がでてきた。それを読んでいると泣けて泣けて仕方なかった。その時のことを思い出す。


1.マジック
売れないマジシャンという設定がうまい。マジックと映画との相性はいい。最近の洋画では「グランドイリュージョン」香港映画「大魔術師Xのダブル・トリック」などいずれも楽しまさせてもらった。そういえば日本映画ではあまりないなあと思っていた。マジックのレベルはさほどではないがいい感じだ。

2.胎盤剥離
母親は主人公を捨てて飛び出したと父親に伝えられてきた。ところが、真相はそうではなかった。胎盤剥離で生むと同時に亡くなってしまったようなのだ。
実は自分の娘が生まれる時、妻が早期剥離で危険な状態になった。母体の方を優先させますが、2人とも極めて危険な状態と医師から伝えられたのである。結局帝王切開で娘は母体から脱出、母親は大出血だったがなんとか生き延びた。娘が看護婦さんに抱かれているのを見て、一旦はあきらめた子が生きているということに驚いた。
妻はなかなか自宅に戻れず、一か月近く入院した。うちの家族はそういった意味ではラッキーだったが、この映画の母親は残念なことになる。改めて娘が生まれた済生会病院に感謝の気持ちを持った。

3.時代背景
昭和48年のはずだが、自分が見ている感じでは走っている車や街角の風景など昭和42年~44年前後くらいの設定のように感じる。少し古めじゃないかな?万博を起点に街の雰囲気はずいぶん変わるんだけどなあ。劇団ひとりも昭和52年生まれだけにこれは仕方ないか

4.エンディング
この終わり方はよかった。大泉洋のセリフを聞いてすがすがしく映画館をあとにすることができた。

劇団ひとりの映像作りのセンスに驚いた。
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映画「謝罪の王様」 阿部サダヲ

2014-05-24 21:09:29 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「謝罪の王様」はこのところ上昇基調を強める阿部サダヲ主演のコメディ映画である。
映画ポスターが強烈、土下座する阿部サダヲの顔を見て吹き出した人も多いと思う。

阿部は「奇跡のりんご」では菅野美穂、「夢売るふたり」では松たか子と共演している。美人女優と共演が続き、今度は井上真央だ。現代日本映画を代表する若手女優との主演が続くということ自体阿部サダヲの格が上がっているということだ。その期待にこたえるような活躍ぶりである。
吹き出すほど笑うというわけではなかったが、人生訓としてためになることが盛りだくさんにある。
若手研修にはもってこいの部分もある。

話に連続性があるのかと思ったら、それぞれが独立しているストーリーだ。
その独立した話が究極的にはつながっていくオムニバス映画に近い展開をとる。謝罪というくらいだから、謝る方にもミスがある。でも謝る立場なのに妙に頭が高い。よって感情的にもつれる。
それをどう始末をつけるかが映画の見所だ。

東京謝罪センター所長、“謝罪師”を生業とする黒島譲(阿部サダヲ)は、ケンカのような小さなトラブルから国家存亡の危機まで、ひと癖もふた癖もある依頼人から舞い込む様々な事件に遭遇。降りかかる難問を次から次へと謝罪のテクニックを駆使して解決していくのだった……。

〈CASE1〉司法書士を目指す帰国子女の倉持典子(井上真央)は、車の運転中に追突事故を起こしてしまい、車から現れたヤクザ風の男たちに対しうまく謝罪ができず、気が付くと組事務所で内容を読まないまま誓約書に判を押してしまう。それは「示談金400万円、毎月12万円の返済、利子が10日で3割、来週から大阪のデリヘルに就職」という最悪のものだった……。

明らかに倉持という女性は変だ。こんなバカな交通事故を起こす女性って多い。自分勝手な女ぶりをみるとそのままデリヘル行ってしまえという気になる。世間知らずの女とは逆に、主人公の老練な活躍はすごい。

〈CASE2〉下着メーカーの中堅社員・沼田卓也(岡田将生)は、開けっ広げな性格が災いし、飲み会で酔った勢いで共同プロジェクトの担当者・宇部美咲(尾野真千子)にセクハラ三昧。さらには軽いノリで謝る沼田に対し、美咲は怒り心頭。結局、沼田はプロジェクトをはずされ、セクハラで訴えられてしまう……。

これは話の決着の仕方がおもしろい。あのシーン本当に鉄道上の鉄橋でロケしているのかしら??

〈CASE3〉大物俳優・南部哲郎(高橋克実)の息子が傷害事件を起こし、南部が謝罪会見を行うことになった。そんな中、黒島が謝罪の指南をするが、芝居じみた謝罪で糾弾され結果は裏目に。仕方なく元妻の大物女優・壇乃はる香(松雪泰子)を引っ張り出すと、自身の出演舞台の十二単の衣装で登壇、宣伝までしてしまう始末。そして拘置所から出所した息子のTシャツには「Kill You Next Time」の文字が……。

よくありそうなパターンだ。芸能人の息子たちはよく不祥事を起こす。全然関係ないのに親は大変だ。このバカ親も別のところですごい活躍をする。

〈CASE4〉一流国際弁護士・箕輪正臣(竹野内豊)は、沼田の訴訟の弁護士であり、典子の大学時代の講師でもある。コロンビア大学卒、27カ国で弁護士資格を取得した完璧なエリート弁護士の彼だが、離婚して離れ離れになってしまった当時3歳だった娘に手を挙げてしまったことを今でも謝りたいと思っている。法律に携わる人間として自分が許せないと言うが……。

ここですごい少女が現れる。何バカなこと言っているのかと思っていたけど。。。実はすごい秘密が

〈CASE5〉映画プロデューサー・和田耕作(荒川良々)がプロデュースした作品に、たまたまお忍びで来日していたマンタン王国・皇太子がエキストラ出演していたことが発覚。マンタン王国皇族の肖像権侵害は懲役20年の重罪であることが判明し、黒島を介し謝罪に行くものの国の習慣や国民性の違いから誤解が生じ謝罪は失敗に終わる。正式に日本政府に謝罪を求めるという国際問題へと発展していく中、マンタン王国は日本との貿易停止を発表。打開策の見えない黒島は絶体絶命の窮地に追い込まれる……。

〈CASE6〉謝罪師・黒島譲はなぜ、謝罪を生業とするのだろうか。なぜ謝罪にこだわるのだろうか。それは、ほんの些細な出来事が発端であった……。(kinenote 引用)

こんなことくらいでこだわるなよ!と言ってやりたいが、これ自体が官藤の人生観なのか?

「わき毛ぼうぼう 自由の女神」そう叫ぶ少女のセリフが最後に向かって重要な言葉になっていく。
まとめ方のうまさは、さすが官藤官九郎の脚本というべきであろう。

映画の終りまであきないでさらっと見れた。
最後の「マンタン王国」の話はちょっとアホくさいなあといった感じかな?

「ただあやまってくれればよかったんだよ」
クレーム客も「誠意をみせろ」なんて言わないで、そんな感じでいつも終わればいいんだけど
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映画「二郎は鮨の夢を見る」 小野二郎

2014-05-15 22:08:59 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「二郎は鮨の夢を見る」 
すごいドキュメンタリーである。
銀座の名店すきやばし次郎を撮った映画の存在は知っていたが、こんなレベルまで達しているとは思わなかった。
1度ならず2度見てしまった。いやもっと見てみたいと思わせるすばらしい作品だ。

東京・銀座の地下にあるたった10席ほどの鮨店・すきやばし次郎の店主・小野二郎。88歳の今でも職と技に対するこだわりを持つ彼が握る鮨は、「ミシュランガイド東京」で7年連続で最高の三つ星の評価を受け、フランス料理最高シェフのジョエル・ロブションや、ハリウッドセレブなど、世界中の食通たちをうならせてきた。

そんな彼の作り上げていく鮨の味に驚嘆し、職人としての技や生き様に魅了された、アメリカ人監督のデヴィッド・ゲルブ。あのメトロポリタンオペラの総帥、ピーター・ゲルブ氏の息子でもある彼は、来日中に「すきやばし次郎」の鮨と出会い、その芸術性に感動して映画制作を決意。約3ヵ月にわたり東京、静岡と密着取材を敢行した。
(作品情報より)

おまかせ握り3万円也の銀座ならではの店、オバマ大統領が来日で寄ったことで一段と有名になっている。
何せ88歳にして現役ということ自体が凄すぎる。ここにきて予約の取りにくさが異常になっているらしい。

でもこの映画はその小野二郎さんだけを映し出しているわけではない。
実質本店店長の長男、六本木店の店長の二男の目に見えない葛藤を映しだすだけでなく、築地市場や下ごしらえをする職人たちにもカメラを向ける。それがいい。

1.築地のセリ
長男が自転車に乗って築地魚市場に向かう。まぐろ、えびそれぞれに最高の食材を次郎に提供する仲買人から仕入れる。そしてセリの場面が映し出される。かつてこんなに緊迫感のある映像で場内を映しだしたことってあるだろうか?少なくとも自分は見たことがない。何を言っているのかわからないセリ用語を発する築地のお兄さんの粋の良さはさすがである。

2.若い衆の手際の良さ
4人いる若い衆が分担して手際よく、下ごしらえをして焼き物などをつくっている。仕入れてきた活きの良い食材を捌いていく姿に驚く。アナゴにしろ単純にご飯にのっけて出すわけではない。若い衆がきっちりとした包丁さばきでつくったものを最終的に二郎さんが絶妙の手さばきでお客に出す。こういう助手たちの仕事ぶりにも感動した。
単なる個人プレイではなく、チームプレイだということに気づいた。


3.美しい握り
映像で美しい握りを映しだす。しなやかな二郎さんの手からお客の前に出されるその手つきも美しい。
人間国宝と言ってもいい二郎さんの姿を映し出すこの映像はずっと語り継がれるだろう。

4.水谷のおやじ
銀座の「水谷」と言えば、泣く子も黙る有名頑固おやじだ。その彼が以前次郎に修行していたとは知らなかった。水谷のオヤジが映画の中でインタビューを受けている。これがなかなかいい感じだ。さすがミシュラン三ッ星の銀座の老舗である。

5.昭和48年発行の「新東京うまい店」(柴田書店)
亡き父が所有していた40年前のグルメ本だ。團伊久磨や三井家の人をはじめとしてそうそうたるメンバーが共同で書いている。まさに口の肥えた人ばかりだ。そこに次郎のことが書いてある。(以下引用)
「久兵衛」「なか田」「与志乃」の三軒が銀座の、すなわち東京のうまい寿司屋の御三家というのが定評である。すぐそれに続く店が何軒かあるが、この「次郎」もその一つである。元来「与志乃」の数寄屋橋支店だったのが独立したのだから、御三家並みなのに不思議はない。
この店の気持ちのいいのは、清潔で明るく、若いモンの動作に一つのリズムがあり、気合いが漲っていることで、これは主人小野二郎君の人柄なのであろう。

そのルーツは知らなかった。昭和40年に独立と伝えられているから、昭和48年当時ではまだまだ開店してから歴も少ないはずだ。それでも評価が高い。今どき「君」付けで呼ぶ人はいないと思うけど。。。
「味は一流で、値段が二流のところが気に入っているんだ」と言って小野君を苦笑いさせている
さすがにこれは今は違うよね。
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映画「許されざる者」 渡辺謙

2014-05-03 12:56:18 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「許されざる者」は2013年公開渡辺謙主演の日本映画

映画「許されざる者」で1992年クリントイーストウッドがアカデミー賞作品賞を受賞した。その作品のリメイクとしてつくられる。今回は舞台を維新後の日本へ移した。元来西部劇で、荒野の中にある小さな町が舞台だ。それを日本に移すとなると当然北海道の広大な荒野が選ばれる。これが実に相性が良かった。天候を選んで撮影したと思われる映像も美しく、夏冬両方の映像を楽しんだ。

以前見たイーストウッド版を基調にはしているが、変更しているところも多く、結末もちがう。
個人的には「何でここまでひねるの?」といった印象を持つがハリウッドのリメイクとしては成功したほうではないだろうか。

明治13年北海道鷲路村の娼婦が顔を切り刻まれる事件が発生した。犯人は旧仙台藩士の2人堀田兄弟(小沢征悦と三浦貴大)だった。些細なことで女郎なつめ(忽那汐里)が笑ったというのが原因だったが、顔を切り刻まれる女郎には客はつかない。使い物にならない状況になった。それでも捕われた堀田兄弟の2人は馬を6棟に差し出すということでの決着となり、大石一蔵警察署長(佐藤浩市)は罪に問わないことにした。それを聞き、年長の娼婦お梶(小池栄子)は怒る。2人を殺してくれたら、娼婦仲間から集めた金で千円の懸賞をだすことにした。

一方その話を聞いた馬場金吾(柄本明)は昔人斬り十兵衛と恐れられた釜田十兵衛(渡辺謙)のところを訪れる。幕末から維新にかけて十兵衛は江戸幕府側について戦っていた。新政府側は彼を追い詰めたが、追う新政府軍の兵士たちを皆殺しにする。
今はアイヌの妻と死別したあと、娘2人と静かに農業をやりながら暮らしている。その腕を知って、鷲路村での賞金首の一件を話して一緒に行こうという。もう刀を握っていない状態だったが、貧困暮らしの彼は後をついていく。争いとは縁のない彼は馬にも乗れないような状態であった。

途中で十兵衛たちは、1人の若者と出会う。アイヌの少年沢田五郎(柳楽優弥)だ。自分も賞金稼ぎに付き合って欲しいと訴える。彼は粋がっている若者を本来は連れて行きたくはなかったが、彼は付いてきた。

一方懸賞金の話を聞いて、長州藩の旧藩士だった男(国村隼)が村にやってくる。しかし、新政府の警察署長率いる警察部隊にコテンパンにやられた。強い武士が返り討ちにあうその姿を見て、2人の首をとるのは難しいと娼婦たちは思った。

3人は村に向かう途中で屯田兵たちに出会う。アイヌを迫害している様子を見て、沢田は反撥するが十兵衛は気を静めようとする。そこでまず堀田兄弟の弟と出会う。いよいよ衝突の場面で弟を討つが、その様子は村に報告されていく。そして村に入っていく

1.北海道との相性
開拓時代の北海道を舞台にするという設定は成功していると思う。アイヌと江戸幕府軍の残党、新政府の役人、屯田兵という面々が争い合うという史実もあり、原作の流れをうまくストーリーに盛り込みやすい。しかも、北海道には他の本州の地にはないすばらしい大自然がある。まさに相性がいいと言えよう。


2.原作と違う点
警察署長と十兵衛が早いうちに対面する。これには驚いた。
原作では終末が近づくまで、クリントイーストウッドジーンハックマンは出会わない。
新政府の役人である署長は十兵衛の顔を知っていた。それなら当然お仕置きをするわけであるが、立ち直り不可能にするもしくは殺してもいいくらいだ。牢屋に閉じ込めてもいい。近代日本なのだからそう簡単に警察が人を殺したりしないということなのであろうか?そこに疑問を感じる。


3.ラスト
原作は最後にイーストウッドが元の住処に帰る。そこで静かに余生を過ごすのだ。
自分自身はそのほうが良いと思っている。
今回は李監督の思想がかなり盛り込まれていると思う。まったく同じなのは芸がないとばかりに、設定を一部変えたのであろう。でもやりすぎと思しき所も数多くみられる。

4.ロケと撮影
これは絶賛されるべきである。北海道の大自然をふんだんにアングルの中に取り入れる。大自然の中には余計な近代の産物がないので、十兵衛たちの振る舞いは、明治時代と言ってもおかしくないように見える。李監督は「悪人」の時に灯台の使い方など抜群のロケハンティングの能力を発揮していた。ここでもロケハンティングは成功している。ロケは主に上川町と言うが、雪の場面はきつそうだなあ。映像は美しいけど。

5.こんなところに女を買いに来るの?(ツッコミ)
賞金の資金源は女郎の貯めたお金だ。でもここへ女買いに来るのかな?東海道などの街道沿いの主要宿場町にはたいてい女郎屋があった。品川の宿にある娼館は有名だ。でもここってそんなに通る人っているのかしら?まあ開拓地だから土木作業員的な流れ者が来る可能性があるけど、冬場はそんな人たちがいるはずはない。近くにいる屯田兵たちが来たということなのかな?

許されざる者
イーストウッドの傑作


許されざる者
北海道の大自然と相性のいい日本版
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映画「共喰い」

2014-04-30 07:33:41 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「共喰い」は昨年公開の日本映画だ。

田中慎弥の芥川賞受賞作を青山真治監督で映画化したものだ。原作は未読
下関の「川辺」と呼ばれる地域を舞台に社会の底辺を彷徨う人たちの偶像を描く。映像を見ると汚れた下水が流れる全然冴えない地域だ。自分の感触としては普通

昭和63年の夏、山口県下関市の「川辺」と呼ばれる地域に篠垣遠馬菅田将暉は住んでいた。産みの母仁子田中裕子は川一本隔てた魚屋で一人暮らしをしている。戦争中の空襲で左腕の手首から先を失った仁子は、終戦後、父の円(光石研)と出会い結婚した。父の円には悪い癖があった。セックスの時女を殴りつけるのだ。仁子は籍を抜かぬまま、遠馬を家に残して魚屋に移り住んだ。

17歳の誕生日になり、遠馬は千種(木下美咲)と社の神輿蔵の中で交わった。
今は琴子(篠原友希子)が円と遠馬と一緒に住んでいる。飲み屋街の店に勤める琴子は、円に殴られ頬や目の周りにあざを作っていた。 ある日、琴子は遠馬に赤ちゃんができたことを報告する。 「馬あ君は承知してくれるかいねえ」「なんでそんなこと俺に訊かんといけんの?」 遠馬は家を飛び出すと千種を神輿蔵へ呼びつけ押し倒した。

祭の前日、大雨の中を琴子は出ていった。家へ戻って来た父に、遠馬は琴子がもう家へ戻らないことを教える。「わしの子、持ち逃げしやがってから!」下駄を履き、琴子を探しに飛び出した円は、遠馬を待つ千種がいる神輿蔵へと向かっていくが。。。

きわどい映画だ。映画を見た後、中上健次の作品を読了した時のような感触を得た。中上健次は紀州半島南部の被差別エリアを描いている。昨年は若松孝二監督が中上作品「千年の愉楽」を遺作として残した。ここで描かれる下関の「川辺」も同様な場所なのであろうか?ドツボエリアを映す「赤目四十八瀧心中未遂」と同じようにうなぎなどの生きものの画像の混ぜ方がうまい気がした。

1.荒井晴彦の脚本
個性が強いので色々と言われることも多い。自分が好きな脚本家の一人だ。80年代の「遠雷」「ダブルベッド」は大好きで、原田芳雄の遺作「大鹿村騒動記」もよかった。今回はにっかつポルノを意識したという。アブノーマルな絡みが多くまさにその色彩が強い。荒井は当時かなりの日活作品をのこしているからお手のものか?成人指定になるのは仕方ないだろう。

2.若手女優の活躍
監督は木下美咲と篠原友希子に大胆な演技を要求する。特に父親の女である篠原友希子の演技が光る。

この脱ぎっぷりの良さがいい。しかも、顔にあざを作ったりする。まさか本当に殴られたわけでもないだろうけど、大変な役柄だ。主人公の彼女役木下美咲のバストが普通でリアリティを感じた。

3.田中裕子
本当に変な顔になってきた。80年代に天城越え」「夜叉あたりで見せた妖艶なムードがまったくない。何せ当時人気絶頂の沢田研二を仕留めたくらいの色気を持っていたと言っても、この作品や「はじまりのみち」あたりしか知らない若者からすると、往年の魅力は信じられないだろう。映画後半にかけて意外な活躍を見せる。光石研のダメ男ぶりに合わせるような絶妙な演技で実にうまい。「いつか読書する日」あたりから能面の表情を見せるようになった。この顔を求めて彼女を起用する監督も多いのであろう。

どん底に落ちていくような感覚で神経が麻痺した。

第30作 男はつらいよ 花も嵐も寅次郎
田中裕子と沢田研二の出会い


天城越え
松本清張の傑作、田中裕子が妖艶


夜叉
影のある男高倉健にからみつく田中裕子が可愛い
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映画「凶悪」 ピエール瀧&リリー・フランキー

2014-04-21 20:14:11 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「凶悪」をようやくDVDで見れた。昨年の映画賞をずいぶんと受賞している作品だ。

これは強烈な映画だ。そもそもの題材は実在する話である。

こんなにむごいことをやりつづけた男たちっているんだなあと思うと、どうあっても裏社会との縁を持たずに生きねばという気がしてくる。リリーフランキーも好演だが、ピエール瀧の怪演が光る。映画「冷たい熱帯魚」と似たテイストがあるが、あの映画でのでんでんと今回のピエール瀧の演技は甲乙つけがたい強烈さをもつ。いずれも死体を肉屋のようにカットしていく。凄すぎる!

スクープ雑誌「明潮24」の記者として働く藤井修一(山田孝之)は、東京拘置所に収監中の死刑囚 須藤純次(ピエール瀧)から届いた手紙を渡され、面会に行き話を聞いてくるよう上司から命じられる。

面会室で向かい合った須藤は、「私には、まだ誰にも話していない余罪が3件あります」と話しはじめる。その余罪とは、警察も知らず闇に埋もれた3つの殺人事件だった。そして、これらすべての事件の首謀者は、“先生”と呼ばれる木村孝雄(リリー・フランキー)という不動産ブローカーであり、記事にしてもらうことで、今ものうのうと娑婆でのさばっている“先生”を追いつめたいのだと告白される。

半信半疑のまま調査を始める藤井だったが、須藤の話と合致する人物や土地が次々と見つかり、次第に彼の告発に信憑性がある事に気付き始める。死刑囚の告発は真実か虚構か?先生とは何者なのか?藤井はまるで取り憑かれたように取材に没頭していくのだが…(KINENOTEより引用)

須藤が死刑囚となった事件の映像が映る。むごい映像だ。
あっさり銃で撃って殺した方が、苦しまずに死ねる。
彼はもったいぶって相手が生きたままに、地獄に陥らせるところがいやなところだ。

一番印象的だったシーンは保険金殺人に加担している場面だ。
借金地獄の電気屋の家族が父親に多額の保険金をかける。保険金で清算しないと借金は支払えない。
ピエール瀧とリリーフランキー演じる殺人鬼は、手下を使って父親に大酒を飲ませる。酒を飲みすぎて死んでしまったという形にするためである。もともと大酒のみなので死んでも不自然ではない。家族は殺人鬼が父親をむごい目にあわせるのに合意する。
父親は死にたくない、まだ生きたいというが、殺人鬼たちは手数料をもぎ取るため次から次へと酒を与える。同時に道具を使っていたぶる。でもそう簡単には死なない。最後は90度以上の酒を一気飲みさせる。死んだあと死亡推定時間を遅らせるために冷たい風呂に入れる。死体は殺人鬼たちにスタンガンでいいようにやられているのに、警察がそのままにしているのが不思議だ。
でも悪いことをやっていると必ず天罰が下る。

こんなようなシーンが続く。
水戸ナンバーの車が映る。茨城が舞台の殺人事件が次から次からおき、死体を他人地に埋めていく。
親から相続した茨城の土地がある。正直使い物にならないような土地だ。
死体を埋めている映像に出てくる土地に似ている。おいおいこんな奴うろうろしないでくれよ。

主人公である記者も変な奴だ。
認知症の母親と若妻と3人で暮らしている。母親の認知症は悪化する一方なのに、妻に任せっぱなしだ。
若妻が母親を施設に入れようとすると主人公は拒否する。お前が面倒見ろよという。おいおいお前本気かよ!!
事件の真相をつかむために、夜を徹した取材が続くが、家のことは無関心。妻は怒る。当然だろう。
この母親は主人公の母親である。それってないじゃない!!
あまりに変な奴なので主人公に感情流入することはなかった。山田孝之の顔を見てもムカつくばかりだった。

どいつもこいつも変な奴といった印象の映画だった。

(その後)
原作を読了した。よくできたドキュメンタリーだ。実名入り。
本の中に書いている殺人をうまく映像化したなと言う印象を改めて持つ。
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映画「奇跡のリンゴ」 阿部サダヲ&菅野美穂

2014-01-05 18:30:01 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「奇跡のリンゴ」は2013年公開作品

最近あたっている阿部サダヲの主演だ。映画でその力量を発揮する名コメディアンに育ってきた。実際にはシリアスドラマとなってもおかしくないこの題材も彼が主演だと和らいだタッチで映画が流れていく。相手役には菅野美穂をもってきた。表情に大衆的な要素を含んだ彼女の起用も成功である。

青森県中津軽郡が舞台だ
この地で生まれた秋則(阿部サダヲ)には、付近一帯を覆うリンゴ畑や農業への関心はなかった。普通に都会に出て勤め人になった。そんな彼に転機が訪れる。リンゴ農家の娘・木村美栄子(菅野美穂)とお見合い結婚して木村家に入ることになったのだ。リンゴ造りは秋則にとっては初めての経験だった。しばらくたって妻の身体に異変が起きることに気づく。リンゴの木は害虫がついてしまうので、農薬なしでは生産不可能な果物である。繰り返し散布する農薬の影響で皮膚がかぶれ、数日間寝込むこともあった。

そんなとき、秋則は無農薬による栽培の本をみつける。本の通りにうまくいけば妻は健康になるはずだ。そう考えて「リンゴの無農薬栽培」への挑戦を決意し、若い仲間の賛同を得た。しかし、木には大量の害虫がついてしまうのだ。最初は関心を示した若手後継者も徐々に離れていった。そんな秋則を美栄子の父・征冶(山崎努)は、私財を投げ打ち応援してくれた。

しかし、うまくいかない。周囲の農家から「カマドケシ」(破産者)とバカにされ、家族は貧困にあえいでいた。およそ10年の間、リンゴ畑に奇跡が起きることはなかった。

追い詰められ、秋則は1人で岩木山を登り、自殺しようとした時、山の中に1本のリンゴの木が目に止まった。その枝には、果実がぶら下がっていた。その樹木に近づき、秋則はあることに気づくが。。。。


「奇跡のリンゴ」という本は本屋でよく見かけた。表紙の写真を見て変なオヤジだなあと思っていた。立ち読みする気にもならなかった。予告編やTVの特集でストーリーの大体の予想はできた。最終的に失敗する話ではないだろうなんて思うと劇場から足が遠のく。見てみると実際予想通りであった。
この話ちょっと出来過ぎかな?といった印象を受ける。バイトなどをやっているとはいえ、いくらなんでも農業従事して10年無収入でいいのかな?ということが気になる。「見切り千両」ではないが、どこかで方向転換しないと破産してしまってもおかしくないはずだ。この映画で語られている以上に親は裕福で援助があったのかもしれない。そうでなかったら、借金したならばとっくにパンクしてもおかしくないはずだ。
ちょっと自分にはあわない話だと感じた。

それでも、山の中でたくましく花を咲かせている木に行き、気づいたことは「なるほどそういうことがあるのか」と感心した。農業の知識はゼロ、植物方面が全くわからない自分なので、雑草や豆の効用ということは知らなかった。自宅に梅の花やらバラやら色々と咲く花がある。そういえば、父母が生きている時よりも死んでからの方がきれいに花が咲くようになった気がする。どちらかというと死んでからちゃんと手入れをしていない。花壇には雑草のようなものも生える。この映画の理論でいうとその方がいいという話になる。なるほどなあ。

阿部サダヲ、菅野美穂いずれも好演である。まわりを固める俳優も上級者だらけで問題なし。山崎努もあの世に行く役を演じることがここにきて出だした。名優まだまだ頑張ってもらいたいけど。。。


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映画「はじまりのみち」 加瀬亮

2014-01-05 08:01:45 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「はじまりのみち」は戦後日本映画界を代表する木下恵介監督の若き日を描いたオマージュ映画だ。

これも予想以上にいい映画だ。胸にしみるシーンがいくつかあった。
木下恵介が好き?と言われれば、「それなりに」と答えるしかない。戦後の著名作品はそれなりに見ている方だ。「二十四の瞳」は少年のころ見てすごく感動した。今でも素晴らしいと思う。他はそれほどでもない。そんなこともあり、DVDスルーしていたが、正直この作品にはビックリした。

昭和20年4月の松竹撮影所で木下恵介監督(加瀬亮)と松竹幹部の城戸四郎(大杉)が向かい合う。
木下恵介が監督に昇格して2作目の「陸軍」は陸軍の士気高揚を図るためにつくられた映画であった。しかし、ラストシーンで母親が子を見送るシーンがめめしく、兵隊の士気が上がらないと陸軍から文句をつけられた。それで城戸に注意され、次の作品の話が没となった。木下は辞表を出す。城戸は辞表を預かるといったが木下は故郷の浜松に帰ることになった。

実家は浜松で食料品店を営んでいた。戦火激しく郊外に疎開していた。母(田中裕子)は脳溢血を患い、満足に話ができない状態になっていた。その母を別の疎開先に移動させることになった。しかし、戦火激しく母を輸送する車を用意できる状況ではない。バスで移動というわけにも行かない。そこで恵介はリアカーで運び込むことにした。距離は60キロに及ぶ。家業を継いでいる兄(ユースケ・サンタマリア)と兄が雇った便利屋(濱田岳)が同行することになった。歩いても歩いても先は遠い。3人とも神経をピリピリしながらの珍道中である。

休憩の時、便利屋が職業を恵介に聞く。映画監(館)とまで言いかけて、今は無職だという。「そうか映画館に勤めていたのか。」と便利屋がひとり合点する。恵介は正体を表わさず、道中は続く。
途中で旅館で休もうとしたが、どこも満室で入れない。病人を抱えて難儀したが、ようやく探しあてた旅館に入って一泊することになった。気を紛らすために、恵介が一人川辺をたたずんでいると、便利屋が近寄ってくる。映画館で働いていたとことを知り、便利屋があの映画よかったなあと話に出したのが「陸軍」だった。知っているか?と聞かれ、恵介はとぼける。
便利屋が熱を込めて、この映画の良い所を力説するにつれて、恵介はあの映画のことを思い出すのであるが。。。。

(陸軍)
このあと映画「陸軍」のラストシーンが流れる。異様なテンションの高さに感動した。背筋がぞくっとしてしまった。映画ファンを自称しながら、この映画を今まで知らなかったことを恥じた。それくらいのすごいシーンである。
ある地方の町で、田中絹代扮する母親が自宅で出征に向かう兵隊の行進する響きを聞きつける。外に飛び出て懸命に街道に向かって走る。街道では陸軍の兵隊が行進している。母親はわが子を探そうとする。大勢いてわからない。カメラがそれを追いかける。そして見つける。

行進とともに母は一緒に駆けていくが、沿道には大勢の人だかりで母親はころんでしまう。何もなかったように行進は進んでいく。最後無事を祈り、母親は手を合わせる。
陸軍の士気高揚を目指した映画だけに、福岡市の目抜き通りがエキストラで一杯になる。陸軍の命令かもしれない。これ自体今ではありえない。実際の行進に合わせてつくられたドキュメンタリーではないかと思ってしまうくらいだ。しかも、田中絹代を追いかけるカメラワークが躍動的だ。彼女が息子を追いかけていく途中で、自分の身体の中でものすごい蒸気が高まる。沸点をこえる。やはり田中絹代は大女優だ。改めて感じる。感動した。

途中で陸軍の1シーンが流れ、いったんこの映画のピークを迎える。
それまでは木下恵介の強情さが鼻についたシーンが多かった。そのなかで暗い戦争の話を茶化すように濱田がうまく使われている。恵介兄弟や旅館の娘たちとのやり取りで笑わせてくれる。やっぱり彼はうまい。昨年の「みなさんさようなら」は年間ベスト3に入る快作だと自分は思っている。同時にクセの強い木下恵介を演じた加瀬亮もうまい。ユースケサンタマリアもいつもより抑えた演技で、家督相続があった時代の長男らしい思いやりのある兄貴を演じる。

(気になるシーン)
監督はいくつかヤマをもってきている。その中でも2つ印象に残るシーンがある。
まずは宮崎あおい扮する女教師が子どもたちを引き連れている場面だ。映画「二十四の瞳」の1シーンを連想させる。それを恵介が手でファインダーを見るように彼女たちの動きを追いかける。もう映画監督を辞めたと言い切った後の恵介が何かを構想したはずだ。いいシーンだ。宮崎あおいのナレーターも実に良かった。

田中裕子扮する母はリアカーで運ばれるが、道中強い雨に降られて、顔には泥が飛んでいる。旅館についた時、恵介は井戸を貸してもらって手拭いに水を付けて、母の顔をふく。女優が映画の撮影の前に化粧をするような雰囲気でふいていく。これが実に美しい。老いた母の顔がきれいになっていく。田中裕子の映画で好きな映画をいくつも取り上げてきた。「天城越え」「夜叉」「いつか読書する日」の3つはいずれも傑作だ。若き日の方が妖艶な魅力をもつが、今の彼女もすばらしい。



最後にはオマージュのように戦後の木下恵介の代表作が映される。見たことある映画も多い。まだ見ていない「破れ太鼓」で主演の阪東妻三郎の顔を見て、つい数年前に亡くなった息子の田村高廣に瓜二つなのに驚いた。ここでは流れないが、弟の木下忠司の音楽はちょっとしつこい。「喜びも悲しみも幾年月」のように音楽と情景が合わないで映画のムードをぶち壊すこともあった。逆にこの映画の音楽はよかった。ロードムービーであるデイヴィッド・リンチ監督「ストレイトストーリー」や「パリテキサス」の匂いを感じさせる。「パリテキサス」のライクーダのギターを思わせるアコースティックギターの使い方は絶妙であった。

以前お世話になった人で、少年時代木下恵介作品に出演した方がいた。話を聞くと木下監督はかなりの完全主義だったそうだ。自分が思う青空が映し出されるまで、撮影はストップになったとおっしゃっていた。この映画でも木下恵介はかなり偏屈だったというイメージを醸し出す。独身で潔癖症の気難しい男だったのであろう。
木下作品を流す時間のウェイトが意外に長く、しつこい印象も持ったが仕方ないだろう。

いずれにせよ、この映画にはビックリした。
「陸軍」はさっそく探り当ててみる。
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